収支内訳書の書き方と国税庁の様式を完全解説

収支内訳書の書き方と国税庁の様式を完全解説

収支内訳書の書き方と国税庁様式を使った完全ガイド

収支内訳書を白色申告で提出しなくても、直接の罰則は存在しません。


📋 この記事の3つのポイント
📌
収支内訳書の提出が必要な人・不要な人

事業所得・不動産所得がある白色申告者は原則提出必須。ただし副業の雑所得は前々年収入が1,000万円以下なら提出不要という条件あり。

✏️
一般用・不動産用・農業用の3種類の書き方

所得の種類によって使用する様式が異なる。1ページ目に収入・経費、2ページ目に売上明細・減価償却費の計算を記入するのが基本。

💻
e-Tax・確定申告書作成コーナーの活用

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に沿って入力するだけで自動計算・作成が可能。スマホからも利用できる。


収支内訳書の書き方:国税庁が定める様式の基本構成と対象者

収支内訳書は、白色申告を行う際に確定申告書と一緒に税務署へ提出する書類です。その年の1月1日から12月31日までに発生した収入・仕入・経費を勘定科目ごとにまとめ、最終的な所得金額を算出することを目的としています。国税庁が定める令和7年分の様式は、一般用・不動産所得用・農業所得用の3種類があり、それぞれ所得の種類に合わせて使い分けが必要です。


収支内訳書の提出が必要になるのは、以下のいずれかに該当する場合です。









所得の種類 使用する様式 提出条件
事業所得(営業・自営業フリーランスなど) 一般用 白色申告者は必須
不動産所得(賃貸収入など) 不動産所得用 白色申告者は必須
農業所得 農業所得用 白色申告者は必須
雑所得副業など) 一般用 前々年の業務収入が1,000万円超の場合のみ


青色申告者の場合は収支内訳書ではなく「青色申告決算書」を提出するため、収支内訳書は原則として不要です。これは基本中の基本ですね。


なお、令和4年(2022年)分の確定申告から、副業収入が一定基準を超える場合に収支内訳書の提出が義務化されました。具体的には、前々年の業務にかかる雑所得の収入金額が1,000万円を超える方が対象となります。それ以下であれば提出不要なため、副業収入が年間数十万円程度の規模であれば多くの方は対象外となります。


一方、副業収入が300万円超1,000万円未満の場合は収支内訳書の添付こそ不要ですが、領収書などの取引関係書類を5年間保存する義務が発生している点には注意が必要です。つまり「書類を捨てて大丈夫」とはならないのです。


参考:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分)」にて最新様式をダウンロード可能です。


国税庁|確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分)


収支内訳書(一般用)の書き方:1ページ目の収入・売上原価・経費の記入方法

収支内訳書(一般用)の1ページ目は、事業の収支全体を把握するための記入欄が並んでいます。記入の流れは「収入を確認する→売上原価を引く→経費を差し引く→所得金額を出す」という順番です。


まず基本情報の記入から始めます。「令和◯年分」には申告対象の年(たとえば2025年分なら「令和7年」)を記入し、「業種名」には「Webデザイン業」「飲食業」などのように具体的な業務内容を書きます。令和3年4月以降は押印が不要になっているため、印鑑を押し忘れても問題ありません。


次に収入金額欄へ進みます。①の「売上(収入)金額」には年間売上合計を記入します。②「家事消費」は、事業用に仕入れた商品を自分や家族が使用した場合の金額で、これを収入に計上しないと経費との帳尻が合わなくなるため重要な項目です。③「その他の収入」には空き箱の売却収益やリベート受取などを記入し、①〜③の合計を④に記入します。


売上原価欄は、仕入れを行っている事業者のみが記入します。計算式は「期首棚卸高(⑤)+仕入金額(⑥)−期末棚卸高(⑧)=差引原価(⑨)」です。サービス業など仕入れのない業種では、この欄を空白にして問題ありません。


経費欄は以下の主要科目があります。


| 科目 | 記入する内容の例 |
|------|----------------|
| 給料賃金 | 従業員(専従者以外)への給与・賞与 |
| 外注工賃 | 外部への加工・デザイン・システム開発の発注費 |
| 減価償却費 | PC・車・建物の減価償却計算結果 |
| 地代家賃 | 事務所・店舗の家賃(家事按分後の金額) |
| 水道光熱費 | 事業使用分の電気・ガス・水道代 |
| 通信費 | 事業使用分の電話代・インターネット料金 |
| 広告宣伝費 | SNS広告・チラシ・Webサイト制作費 |
| 雑費 | 上記に当てはまらない少額の費用 |


雑費については注意が必要です。決算書の信頼性を担保するためには、雑費は経費全体の5〜10%程度が目安とされています。これを大きく超えると税務署からの問い合わせを受ける可能性があるため、できる限り適切な勘定科目に振り分けるようにしましょう。


所得税や交通違反の罰金、延滞税などは経費として認められません。これが原則です。また、自宅と事業の両方で使用している家賃・光熱費・通信費などは「家事按分」によって事業使用割合に応じた金額のみを経費に計上することになります。白色申告の場合は、事業での使用割合が50%以上であることが家事按分の条件とされています。


参考:収支内訳書(一般用)の書き方PDFは国税庁サイトで無料配布されています。


国税庁|令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方(PDF)


収支内訳書(一般用)の書き方:2ページ目の売上明細と減価償却費の計算

1ページ目で経費の合計を出したら、次は2ページ目の詳細情報を記入します。2ページ目は主に「売上・仕入れの明細」「減価償却費の計算」「地代家賃の内訳」の3つが中心です。


売上(収入)金額の明細欄では、取引先ごとに「名称・所在地・インボイス登録番号・売上金額」を記入します。金額の大きい取引先から順に記入し、欄に書ききれない場合は「上記以外の売上先の計」欄にまとめて合算した金額を記載します。登録番号が不明な場合は空欄のままにして構いません。


減価償却費の計算欄は、10万円以上・使用年数1年以上の資産を購入した場合に記入が必要です。減価償却費の計算方法には定額法定率法がありますが、個人事業主は原則として定額法で計算します。


定額法による計算式は以下のとおりです。


$$\text{減価償却費} = \text{取得価額} \times \text{定額法の償却率(耐用年数に応じた率)}$$


たとえばノートPC(取得価額15万円、耐用年数4年、定額法償却率0.250)を購入した場合、減価償却費は以下のようになります。


$$15\text{万円} \times 0.250 = 37{,}500\text{円(年間の減価償却費)}$$


つまり15万円のPCを4年間にわたって毎年3万7,500円ずつ経費に計上することになります。一括では経費にできないため、購入した年に全額を計上しようとするとミスになります。なお、取得価額が10万円以上20万円未満のものは「一括償却資産」として3年での一括償却も選択でき、こちらのほうが節税効果を早期に得やすい場合もあります。これは使えそうです。


主な固定資産の法定耐用年数は以下のとおりです。










資産の種類 耐用年数の目安
パソコン(業務用) 4年
乗用車 6年
木造の建物 22年
鉄筋コンクリートの建物 47年
家具・器具・備品 8〜15年程度(種類による)


地代家賃の内訳欄には、1ページ目で計上した地代家賃について「貸主の住所・氏名」「賃貸料」「経費とした金額」を記入します。自宅の家賃を家事按分している場合も、忘れずに記入しましょう。


本年中における特殊事情欄は、不良在庫の廃棄・売上計上基準の変更・自然災害による損失など、例年と異なる処理を行った場合にその理由を記載する欄です。特殊な事情がなければ空欄で問題ありません。


収支内訳書の書き方:不動産所得用・農業所得用の注意点と独自の記入項目

一般用以外の収支内訳書についても、それぞれ固有の記入項目があるため確認しておきましょう。不動産所得用と農業所得用は、対象の所得に特化した構成になっており、一般用と混同しないよう注意が必要です。


不動産所得用の収支内訳書(1ページ目)は、一般用と比較して「売上原価」の欄がなく、経費は不動産に関する項目のみに絞られています。また「不動産所得収入の内訳」として、物件ごとに所在地・賃借人の住所氏名・賃貸料・更新料などを個別に記入する表があります。物件数が多く1枚に収まらない場合は、別紙を添付しても問題ありません。


不動産所得で見落とされがちな点として、「不動産の売却による収入は不動産所得ではなく譲渡所得」という区別があります。アパートを売却して得た利益は収支内訳書(不動産所得用)ではなく、確定申告書第三表と譲渡所得の内訳書で申告する必要があります。これは間違いやすいポイントです。


不動産所得用の2ページ目では、減価償却の計算に加えて「貸付不動産の保有状況」「保証金等の運用状況」を記入します。受け取った敷金や保証金の使途(「入居者管理費に充当」など)を具体的に記載することが求められており、記入漏れが起こりやすい箇所です。


農業所得用の収支内訳書は、農業・畜産・養蚕・養蜂業などを営む方が対象です。一般用と比べて「種苗費」「肥料費」「農具費」「動力光熱費」「農業共済掛金」など農業特有の勘定科目がはじめから印刷されているため、記入しやすい設計になっています。1ページ目に「雇人費の内訳」「小作料・賃借料の内訳」欄があり、収穫時期のみの臨時雇人は作業内容ごと、長期雇用の年雇人は氏名を記入します。


農業所得用の2ページ目には「作付面積・収穫量・販売金額等の明細」があり、どの作物をどれだけ作付けし、いくらで販売したかの内訳を記入します。また「果樹・牛馬等の育成費用の計算」欄では、成熟して収益を生む前段階の育成期間の費用を資産計上するための計算が必要です。農業特有のルールが多く、初めての方は国税庁の「農業所得用の書き方」PDFと合わせて確認することをおすすめします。


国税庁|令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方(PDF)
国税庁|令和7年分 収支内訳書(農業所得用)の書き方(PDF)


収支内訳書の書き方に必要な事前準備:帳簿記帳と減価償却資産の確認

収支内訳書を正確に作成するためには、日々の記帳が土台になります。帳簿をつけていないと、いざ確定申告の時期に「いくら売り上げたのか」「経費はいくらかかったのか」がわからなくなり、申告書の作成が困難になります。


白色申告で義務付けられている帳簿は、主に「収入金額や必要経費を記載した法定帳簿(保存期間7年)」と「それ以外の帳簿(保存期間5年)」の2種類に分かれます。具体的には現金出納帳・預金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳などが該当し、これらを日々付けておくことで収支内訳書への転記がスムーズになります。7年というのは思ったより長い期間ですね。


記帳の方法には「単式簿記(簡易簿記)」と「複式簿記」があります。白色申告では、一つの取引に一つの記録を行う単式簿記を使用します。複式簿記が必要な青色申告と異なり、比較的シンプルに記録できるのが白色申告のメリットです。


減価償却資産の確認も収支内訳書作成前に必須の作業です。取得価額が10万円以上かつ耐用年数が1年以上の資産(PC・カメラ・自動車・業務用機器など)を購入した場合、その年に全額を経費計上するのではなく、耐用年数に応じて分割して計上する必要があります。購入した資産について「いつ買ったか」「いくらだったか」「何年使えるものか」を記録した固定資産台帳を整備しておくと、減価償却費の計算欄への記入がスムーズになります。


インボイス(適格請求書)に関連する記帳のポイントとして、2023年のインボイス制度導入以降、消費税の課税事業者は仕入先がインボイス発行事業者かどうかを帳簿に記載する必要があります。また、8%の軽減税率が適用される費用は10%と分けて記録する必要もあります。記帳ルールが複雑になっているのが現状です。


帳簿作成に時間をかけたくない場合は、freeeやマネーフォワード クラウド確定申告、弥生の白色申告オンラインなどの会計ソフトを使うと、日々の取引を入力するだけで収支内訳書を自動的に作成できます。これらのサービスの多くは無料プランから利用可能なので、まず試してみるのも良い選択肢です。


国税庁|個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について


収支内訳書の提出方法:e-Tax・郵送・窓口の3つの選択肢と手順

収支内訳書を含む確定申告書類の提出方法は主に3つあります。それぞれの特徴を理解した上で、自分に合った方法を選ぶことが大切です。


① e-Taxで提出する方法は、最もスムーズで近年利用者が増えています。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、画面の案内に沿って金額を入力すると収支内訳書が自動的に作成されます。マイナンバーカードとスマートフォン(またはICカードリーダー)があれば、24時間いつでも提出が可能です。計算ミスの防止にもなります。


具体的な手順は次のとおりです。



  1. 国税庁の確定申告書等作成コーナーにアクセス

  2. 「決算書・収支内訳書(+所得税)」を選択

  3. 収支内訳書の種類(一般用・不動産用・農業用)を選択

  4. 収入・経費・減価償却の各項目を入力(自動計算)

  5. 確定申告書(第一表・第二表)の作成に進む

  6. マイナンバーカードで本人認証し、e-Taxで送信


e-Taxの利用は無料です。


② 郵送で提出する方法は、作成した収支内訳書と確定申告書を印刷して所轄の税務署宛に郵送します。期限は原則として翌年の3月15日(土日祝日の場合は翌平日)の消印有効です。「申告書在中」と封筒に記入し、控えを取るために書類を2部用意して返信用封筒を同封しておくと安心です。


③ 税務署の窓口へ直接提出する方法では、記入済みの書類を持参して窓口で提出します。不明な点をその場で確認できるメリットがある一方、確定申告期間中(2月16日〜3月15日)は窓口が大変混雑するため、時間に余裕をもって訪問することが重要です。税務署の窓口は平日午前8時30分〜午後5時が基本の受付時間となっています。


収支内訳書を提出しなかった場合はどうなるでしょうか。実は収支内訳書の提出自体に直接の罰則はありません。しかし収支内訳書の提出が必要な状況で確定申告を怠ると「無申告」として扱われ、無申告加算税(納税額の15〜20%)や延滞税が発生します。さらに悪質と判断されれば税務調査の対象になり、最悪の場合は重加算税(35〜40%)という大きなペナルティを受けることになります。手間を惜しんで申告しないことが最もリスクの高い選択です。


国税庁e-Tax|作成コーナーで「決算書」・「収支内訳書」を作成したい