

手書きで複式簿記を始めるとミス修正に3倍の時間がかかります。
複式簿記は、1つの取引を「原因」と「結果」の2つの側面から記録する方法です。例えば「3,000円のプリンタインクを現金で購入した」という取引では、「消耗品費が3,000円増えた(原因)」と「現金が3,000円減った(結果)」の両面を記録します。
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これに対して単式簿記は、お小遣い帳のように「現金が3,000円減った」という一方向のみを記録する方法です。どういうことでしょうか?単式簿記は記帳が簡単な反面、青色申告の最大65万円の特別控除を受けられません。
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複式簿記では借方と貸方が常に一致する仕組みがあるため、記載漏れや計算ミスを発見しやすくなります。例えば借方に5,000円、貸方に3,000円と記帳した場合、合計が一致しないためすぐに誤りに気づけます。つまり自己チェック機能が組み込まれているということですね。
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一方で単式簿記には相互チェックの仕組みがなく、現金売上の記録を意図的に省いても帳簿上は不自然な点が現れません。このため税務調査で不正が発覚した場合、通常の加算税に5%または10%が加重される可能性があります。
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仕訳とは、各取引を勘定科目に基づいて借方(左側)と貸方(右側)に分類し、日付と金額を含めて記入する処理です。複式簿記の原則において、資産の増加や費用の発生は借方に、負債の増加や収益の発生は貸方に記録します。
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借方と貸方の金額は例外なく必ず一致します。複式簿記では1つの取引を借方・貸方の2方面から記録しているだけなので、金額が一致しないことはありえません。もし一致しない場合は何らかの仕訳ミスがあると考えられます。
取引の項目は「資産」「負債」「純資産」「費用」「収益」の5つに分類されます。それぞれの増減で借方・貸方のどちらに記入するかが決まっているため、この基本パターンを覚えることが重要です。
参考)簿記3級・2級頻出の基礎用語一覧|初心者向けにわかりやすく解…
具体例として、取引先との会食で1万円を現金で支払った場合を見てみましょう。費用に該当する「交際費」は借方に1万円、支出した「現金」は貸方に1万円を記載します。借方と貸方が一致していることが確認できますね。
間違えやすい仕訳として「現金過不足」があります。帳簿上の現金残高が50,000円なのに、実際に金庫を確認すると40,000円しかない場合、その差額10,000円を「現金過不足」という勘定科目で処理します。現金の実際残高に合わせて調整するのが原則です。
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勘定科目は取引の内容を表す項目で、「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の5つのグループに分けられます。資産には現金・受取手形・売掛金・商品・土地・建物などが含まれます。
負債の代表例は支払手形・買掛金・未払費用・社債です。純資産には資本金・資本剰余金・利益剰余金などがあり、返済義務のない企業が有する純粋な資産を指します。
収益には売上・受取利息・雑収入・固定資産売却益などが、費用には仕入・給料・支払家賃・租税公課・広告宣伝費などが分類されます。それぞれの勘定科目が5つのグループのどれに属するかを理解することで、借方・貸方の判断がスムーズになります。
特に間違えやすいのが「未払金・未収入金」「仮払金・仮受金」「立替金・預り金」といった科目です。例えば未払金は固定資産など商品以外を購入して後日支払う場合に使い、買掛金は商品の仕入れで後日支払う場合に使います。
使い分けが条件です。
勘定科目を誤って使用すると、決算書の数字が正しく表示されず、財務状況の把握や税務申告に影響します。日商簿記3級や2級で頻出の勘定科目については、その意味と使い方を正確に覚えておきましょう。
簿記3級・2級頻出の基礎用語一覧|初心者向けにわかりやすく解説
簿記試験でよく出る勘定科目と基礎用語の一覧が確認できます。
複式簿記で決算書を作成するには、まず日々の取引を「仕訳帳」に記録する作業から始まります。仕訳帳には日付・勘定科目・金額・摘要(取引内容のメモ)を記入します。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-blue-return/bs/
次に仕訳帳の内容を「総勘定元帳」に転記し、勘定科目ごとに取引を整理します。仕訳帳が日付順の記録であるのに対し、総勘定元帳では「現金」や「売上」など勘定科目ごとに取引の発生日や残高が確認できます。
期末には総勘定元帳をもとに「試算表」を作成します。試算表は記帳の整合性をチェックする集計表の役割を持ち、勘定科目ごとの借方・貸方の合計金額と残高を転記していきます。試算表でも借方と貸方の合計額は必ず一致します。
参考)貸借対照表(B/S)の作り方は?作成時の注意点をわかりやすく…
試算表に対して決算整理仕訳(減価償却費の計上や未払費用の調整など)を行った後、最終的に「貸借対照表」と「損益計算書」を作成します。貸借対照表は「資産=負債+純資産」という等式で表され、企業の財政状態を示します。損益計算書は「収益-費用」で当期純利益を計算し、経営成績を表します。
参考)貸借対照表の書き方・作り方を解説!簡単な作成方法や例、注意点…
この一連の流れを正確に実行することで、青色申告の要件を満たす決算書が完成します。仕訳帳や総勘定元帳は必ずしも単一のものである必要はなく、現金出納帳や売上帳、仕入帳などを特殊仕訳帳として使用することもできます。
参考)【2025年版】青色申告の65万円控除・55万円控除の違いと…
青色申告で最大65万円の特別控除を受けるには、4つの条件をすべて満たす必要があります。第一に、事業所得または不動産所得がある個人事業主であること。
第二に、複式簿記で記帳していること。
参考)青色申告の複式簿記を分かりやすく解説!必要な帳簿、手書き・エ…
第三の条件は、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して期限内に提出することです。期限を1日でも過ぎると65万円控除は適用されず、55万円控除以下になってしまいます。
期限内申告が条件です。
第四に、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行う必要があります。この条件を満たさない場合は55万円控除になります。つまり、紙での申告では最大でも55万円控除までということですね。
65万円と55万円の差は10万円ですが、所得税率が20%なら2万円、30%なら3万円の税額差になります。電子申告の手間を考えても、この金額差は大きいといえるでしょう。
なお単式簿記(簡易記帳)でも青色申告は可能ですが、その場合の控除額は10万円のみです。複式簿記を使うことで最大6.5倍の控除が受けられるため、節税効果は非常に大きくなります。
【2025年版】青色申告の65万円控除・55万円控除の条件まとめ
青色申告の控除額の違いと具体的な要件について詳しい解説があります。
複式簿記で最も多いミスは「二重計上」です。例えばクレジットカード払いした経費を、支払時に領収書を受け取ったタイミングで計上し、口座から引き落とされたときにも計上してしまうケースがあります。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-accounting/mistake/
二重計上が起こると売上や経費が実際より多く記録され、税金を多く支払ったり、財務状況を誤って把握したりする原因になります。防ぐには請求書と領収書に共通番号をつける、書き損じには赤字で明記するなどの工夫が必要です。
帳簿が合わない場合、複式簿記では計算ミスや二重計上に加えて、勘定科目や借方・貸方の誤りも要因として考えられます。ミスの発見と修正が複雑になるのがデメリットですね。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-accounting/importance-of-double-entry-bookkeeping/
手書きで帳簿を作成する場合は特に注意が必要です。システムによる補助がないため、簿記の専門知識がないと記帳方法を一から覚える手間が発生します。青色申告に必要な複式簿記は取引内容を勘定科目で借方と貸方に分けなければならず、書き間違いに細心の注意を払う必要があります。
参考)個人事業主の帳簿は手書きでもいい?書き方や注意点を解説
手間をかけて帳簿を作成しても、記載されている数字が正しくないと帳簿としての意味がなくなります。複式簿記は借方と貸方が一致していることで金額の正確性を示しているため、転記の際には数字を間違えないよう確認が必須です。
参考)複式簿記の書き方とは?記帳例から単式簿記との違いまで解説 -…
また、作成した帳簿や領収書などの証憑類は、確定申告の期限日翌日から7年間保存する義務があります。調査で帳簿保存の不備が把握された場合、通常の加算税に5%または10%が加重される可能性があるため、保管体制の整備が欠かせません。
会計ソフトを使えば、仕訳の入力時に借方・貸方の金額が自動で一致するようチェックされ、計算ミスや転記ミスのリスクを大幅に減らせます。初心者が複式簿記を始める場合、手書きではなく会計ソフトの利用を検討する価値があります。
参考)https://marketers-store.com/blog/2773/
経理でよくある失敗
領収証の二重計上など、経理実務で起こりやすいミスと対策が紹介されています。