
国税庁の統計によると、令和4年度における法人税務調査の実調率はわずか1.9%です。これは約52社に1社の割合であり、多くの法人が長期間税務調査を受けていない現状を物語っています 。
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過去のデータと比較すると、平成元年の実調率8.5%から大幅に低下しており、税務調査を受ける確率は年々減少傾向にあります 。この背景には、申告件数の増加に対して税務署の人員が限られていることや、電子申告の普及により書面調査で済むケースが増えていることが挙げられます。
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実調率の計算式は「実地調査件数 ÷ 対象法人数」で算出され、令和6年の公表データでは約5.9万件の実地調査が317万の法人に対して実施され、確率は約1.8%となっています 。
参考)税務調査の頻度や確率
税務調査が10年以上来ない法人には、明確な業種別の特徴があります。特に製造業や卸売業など、取引が比較的単純で現金取引の割合が少ない業種では、調査対象から外れやすい傾向があります 。
参考)税務調査が10年以上来ない法人と個人事業主の特徴とは?業種や…
一方、不正が発見されやすいとされる飲食業、建設業、風俗業などの現金取引が多い業種は、10年以上調査が来ない法人であっても将来的に調査対象となる可能性が高いとされています 。
また、海外取引が少なく、移転価格リスクが低い法人や、頻繁に消費税の還付申告を行っていない法人も、税務署のリソース配分において後回しにされがちです 。創業初期の小規模法人や、個人規模で堅実に事業を続けている法人は、特に調査が先送りされる傾向があります。
参考)税務調査の流れと事前準備、未然に防ぐポイントを解説
財務面から見ると、売上に対する利益率が同業他社と比較して極端に低くない法人は、税務調査の対象から外れやすいです 。KSK(国税総合管理システム)による分析では、所得率(所得÷売上)が業界平均と大きく乖離していない法人は優先度が下がります 。
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また、以下のような財務的特徴を持つ法人は、10年以上税務調査が来ない傾向があります。
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これらの指標が安定している法人は、税務署から「申告内容に不審点がない」と判断され、調査の優先順位が下がる結果となります。
過去の税務調査で問題がなかった法人は、税務署から高い信頼性を得ており、次回の調査が大幅に先送りされることがあります 。これは税務署が限られたリソースを効率的に配分するため、「信頼できる申告を行っている法人」と評価した先を後回しにするためです。
具体的には、以下のような実績を持つ法人が該当します。
ただし、この評価は永続的なものではなく、業績の急激な変化や業界環境の変化があった場合は、再び調査対象として選定される可能性があります 。
10年以上税務調査が来ない法人であっても、以下の要因が発生した場合は調査対象となるリスクが高まります :
売上・利益の急激な変動
売上や利益が前年比で大幅に増減した場合、その理由について税務署が関心を示す可能性があります。特に、売上が増加しているにも関わらず利益が少ない場合は、経費の過大計上や売上の計上時期のずれが疑われます。
消費税還付の頻発
設備投資などにより消費税の還付を多く受けている法人は、その妥当性について調査が入る可能性が高くなります 。
関連会社間取引の増加
グループ企業間での取引が増加した場合、移転価格税制の適用や寄附金認定のリスクが高まり、調査対象として選定されやすくなります。
これらのリスク要因を認識し、適切な対策を講じることが、継続的な税務リスク管理において重要です。