

「租税公課」で帳簿に載せても、延滞税は1円も経費にならず法人税が増える。
延滞税とは、法定納期限までに税金を納付しなかった場合に、その遅延期間に応じて課される附帯税の一種です。いわば「税金の延滞利息」と考えると理解しやすく、滞納期間が長くなるほど金額が増えていく仕組みになっています。
延滞税の対象となるのは、法人税・消費税・所得税・相続税など「国税」全般です。一方、地方税(住民税・固定資産税など)の滞納に対して課されるものは「延滞金」と呼びます。名前は似ていますが、延滞税は国税、延滞金は地方税と、それぞれ対象が異なります。この区別が重要です。
延滞税が発生する主なケースは次の3つです。
納税が1日でも遅れれば、法定納期限の翌日から日割り計算でどんどん加算されます。厳しいですね。法人の経理担当者にとって、延滞税は「支払いたくないが発生してしまった場合にどう処理するか」を正確に理解しておくことが不可欠です。
なお、延滞税は「本税」にのみ課されます。つまり、過少申告加算税・重加算税などの加算税に対しては延滞税は課されません。これは意外と見落とされがちなポイントです。
参考:延滞税の計算期間や割合の根拠は国税庁が明確に公開しています。
法人が延滞税や延滞金を支払った場合、仕訳で使う勘定科目は「租税公課」が原則です。これは地方税の延滞金でも同じです。仕訳の見た目は他の税金と変わらないように見えますが、税務上の扱いがまるで異なります。租税公課が原則です。
以下に代表的な仕訳例を示します。
【例①:法人税の延滞税3万円を普通預金から支払った場合】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 租税公課 | 30,000円 | 普通預金 | 30,000円 | 法人税の延滞税 |
【例②:住民税5万円の滞納で、延滞金1,500円・督促手数料100円を含めて現金で支払った場合】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 預り金 | 50,000円 | 現金 | 51,600円 | 住民税本税 |
| 租税公課 | 1,500円 | 住民税の延滞金 | ||
| 支払手数料 | 100円 | 督促手数料 |
ここで重要なのは、督促手数料は「支払手数料」として別途仕訳することです。延滞金とは異なり、督促手数料は損金算入が認められているため、あとで税務処理を見直す際に区別できるよう分けて記帳しておくことを強くお勧めします。
消費税の区分についても確認しておきましょう。延滞税・延滞金の支払いは、消費税法上の「不課税取引」に該当します。課税仕入にはなりませんので、会計ソフトへの入力時には「不課税」または「対象外」として設定してください。これは使えそうです。
摘要欄には「延滞税」「延滞金」と明確に記載しておくことも重要です。同じ租税公課でも、自動車税や固定資産税のような損金算入できる税金と帳簿上で区別できるようにしておくことで、決算・申告時の処理ミスを防げます。
参考:法人の延滞税・延滞金の仕訳と勘定科目について詳しく解説されています。
延滞金・延滞税の仕訳に使う勘定科目まとめ|マネーフォワード クラウド会計
「租税公課」で経費計上した延滞税は、損益計算書上では費用として計上されます。しかし、税務上は損金として認められません。つまり、帳簿への記録と課税所得の計算が別になる点に注意が必要です。
損金不算入とは、会計上は費用として計上していても、法人税を計算する際の所得には「なかったこと」として加算調整される仕組みです。
法人税申告書での処理は次のように行います。
この2箇所の記載を忘れると、申告漏れ・申告誤りとなり、後から税務調査で指摘されるリスクがあります。別表5(二)への記載が必須です。
具体的なイメージとして数字で確認しましょう。仮に会計上の利益が500万円で、延滞税として3万円を「租税公課」に計上していたとします。この場合、法人税の課税所得は次のように計算されます。
3万円分の延滞税は経費として認めてもらえないため、その分だけ余計に法人税がかかります。痛いですね。損金算入できる自動車税や固定資産税などとは明確に区別して処理しましょう。
参考:損金算入の可否と申告書記載の根拠を国税庁が解説しています。
No.5300 租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期|国税庁
「延滞系の支払いはすべて損金不算入」と思い込んでいる経理担当者は少なくありません。しかし、これは正確ではありません。損金算入できる例外が存在します。
① 社会保険料の延滞金は損金算入できる
法人が社会保険料の納付を遅らせた場合に発生する延滞金は、法人税法第55条(損金不算入の規定)に列挙されていません。そのため、社会保険料の延滞金は損金として算入できます。
勘定科目は「法定福利費」または「租税公課」のどちらでも構いませんが、「法定福利費」を使う税理士が多い傾向にあります。社会保険料の本体と一緒に管理しやすいためです。
ちなみに社会保険料の延滞金の利率は、最初の3か月が年7.3%または特例基準割合+1%のいずれか低い方、3か月超は年14.6%または特例基準割合+7.3%のいずれか低い方と、税法上の延滞税よりも高めに設定されています。これは必須の知識です。
② 利子税は損金算入できる
「利子税」とは、申告期限の延長手続きや延納の手続きを行った納税者に課される税金です。延滞税とは名前が似ていますが、根本的に性質が異なります。
延滞税はペナルティ(罰則的性格)であるのに対して、利子税は正当な手続きに基づく「延納の対価」として位置づけられています。そのため、利子税は法人の損金として算入が認められているのです。
たとえば法人税の申告期限を1か月延長した場合、延長期間に対して利子税(現行は年0.9%程度)が発生しますが、これは損金算入できます。「申告期限延長 → 利子税が発生 → でも損金OK」という流れです。
③ 地方税の納期限延長に係る延滞金も損金算入できる
災害などのやむを得ない理由で地方税の納期限が延長された場合に生じる延滞金も、損金算入の対象となります。通常のペナルティとしての延滞金とは区別されます。
これらの例外を正しく把握しておくことで、余計な税負担を避けることができます。知っているだけで損をしないケースです。
参考:社会保険料延滞金の損金算入について詳しく解説されています。
延滞税の金額は「いつから・何日間・いくらの税金が未納か」で決まります。計算式は次のとおりです。
【基本の計算式】
> 延滞税 = 未納税額 × 延滞税率 × 経過日数 ÷ 365
ただし、税率は「納期限翌日から2か月以内」と「2か月超」で異なります。2026年現在(2025年まで)の具体的な税率は次のとおりです。
| 期間 | 税率(2024〜2025年適用) | 税率(2026年〜) |
|---|---|---|
| 納期限翌日〜2か月以内 | 年2.4% | 年2.8% |
| 2か月超〜 | 年8.7% | 年9.1% |
2か月を超えると税率が一気に跳ね上がります。年8.7%というのは、たとえば100万円の税金を1年間滞納した場合に8万7千円の延滞税が追加される計算です。1年が約13か月分の月利とも言える水準で、高金利のローンに近い感覚です。
【具体的なシミュレーション】
法人が消費税50万円を、納期限の翌日から61日後に納付したとします(2か月以内の範囲)。
2か月以内に納付すれば、延滞税の追加負担は比較的軽微と言えます。ただし、これが3か月・6か月と経過すると大きく変わります。2か月超の部分は年8.7%で計算されるため、2か月以内の3.6倍以上の速度で膨らむことになります。
また、延滞税の金額が1,000円未満の場合は納付不要です。さらに、自主的な修正申告によって追加税額が生じても、納期限から1年を超えた期間は延滞税の計算対象に含めない特例があります。これは使えそうです。
なお、税務署からの連絡を受けた後に修正申告する場合、この特例は適用されない点に注意が必要です。ミスに気付いたらすぐに動くことが大切です。
参考:延滞税の割合の推移と計算シミュレーターが公開されています。