

税務調査の通知が来る前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税はゼロ円になります。
過少申告加算税とは、確定申告で申告した税額が本来納めるべき税額よりも少なかった場合に課されるペナルティの税金です。国税通則法第65条に規定されており、「附帯税」と呼ばれる種類の税金に分類されます。
大切なポイントは、「期限内にきちんと申告した」としても対象になるという点です。期限を守って3月15日までに確定申告書を提出していたとしても、申告した税額が正しい金額より少なければ、過少申告加算税の対象になります。計算ミスや経費計上の誤り、売上の記録漏れなど、意図的でないケースでも課税対象です。
過少申告が発覚するのは、主に①税務署による定期的な税務調査、②取引先への反面調査、③従業員や関係者からの匿名の密告、④銀行口座の不審な入出金、⑤SNSやブログの発信内容と申告内容の矛盾、といったルートが多いとされています。近年は税務署がSNS(Instagram、X、YouTubeなど)の投稿も積極的に確認しており、申告所得が低いにもかかわらず高額な旅行や買い物の投稿をしている場合に調査対象となるケースが増えています。
つまり「バレないだろう」という考えは通じません。
なお、過少申告加算税は損金に算入できないため、法人の場合は納税後も節税効果がなく、純粋な追加コストとして企業の収益に影響します。これが問題なのです。
国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」:自主的な修正申告と過少申告加算税の関係が公式に解説されています。
過少申告加算税の計算式は、以下のとおりです。
| 状況 | 税率 |
|---|---|
| 調査通知前に自主的に修正申告 | 0%(免除) |
| 調査通知後〜更正予知前に修正申告(増差額の基準額以内) | 5% |
| 調査通知後〜更正予知前に修正申告(基準額超過部分) | 10% |
| 調査後または更正予知後の修正申告(基準額以内) | 10% |
| 調査後または更正予知後の修正申告(基準額超過部分) | 15% |
ここで登場する「基準額」とは、「当初申告した税額」と「50万円」のどちらか大きい方の金額のことです。この基準額を増差税額が超えた分に15%が適用されます。
具体的な数字で確認しましょう。
金額感をイメージすると、ケース②の80万円という超過分は、給与数か月分に相当するような出費になります。これが「計算ミスだっただけ」でも課されるわけです。
さらに、過少申告加算税が課される局面では、ほぼ同時に延滞税も発生します。延滞税は「法定納期限の翌日から全額納付の日まで」の日数に応じて課されるもので、税率は期間によって異なります(2か月以内は年約2〜3%台、2か月超は年約8〜9%台が目安)。つまり、問題が長く放置されるほど支払総額は雪だるま式に膨らみます。延滞税が加わると要注意です。
端数処理のルールも覚えておく価値があります。国税通則法第119条の規定により、計算した過少申告加算税が5,000円未満の場合は徴収されません。また、増差税額が1万円未満の場合も過少申告加算税は不徴収です。少額の申告誤りであれば、実際には追加コストがかからない場合もあります。
財務省「加算税制度の概要」PDF:過少申告加算税・無申告加算税・重加算税の税率一覧が図表で整理されています。
過少申告があった場合でも、必ずしも加算税が課されるわけではありません。免除される条件が3つあります。
1. 税務署からの調査通知が来る前に自主的に修正申告をした場合
これが最も有効な手段です。国税通則法第65条第5項に基づき、税務調査の通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合、過少申告加算税は課されません(0%)。たとえ100万円以上の増差額があったとしても、自主修正であれば加算税は一切かかりません。
注意点があります。「調査通知後、でも調査が始まる前」に修正申告した場合は5%が課されます。つまり、自主修正の効果は「通知が届く前」に限定されます。通知が届いてからでは遅いのです。
2. 過少申告加算税の計算額が5,000円未満だった場合
国税通則法第119条第4項により、計算した過少申告加算税が5,000円未満の場合は徴収されません。例えば、増差額が4万円だった場合、加算税は「4万円×10%=4,000円」で5,000円を下回るため免除となります。少額の誤りは実質コストゼロで修正できるケースがあります。
3. 正当な理由があると認められた場合
国税通則法第65条第4項に基づく規定です。具体的には、税務署職員の誤った指導に従った場合や、税法の解釈が難解で専門家でも判断が分かれるようなケースが該当します。ただし、正当な理由があることの立証は納税者自身が行わなければならないため、証拠書類の保管と丁寧な説明が必要です。これが条件です。
この3つのうち、金融や投資に関わる方が日常的に活用できる手段は圧倒的に「①自主修正」です。e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使えば、修正申告書の作成・提出を自宅から完結できます。申告内容に疑いが生じたら、税務署から連絡が来るのを待つのではなく、まず自主的に動くことが最善です。
国税庁「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」:e-Taxで修正申告書をオンライン作成・提出できる公式ページです。
過少申告の内容が「単純なミス」ではなく「意図的な隠蔽・仮装」と判断された場合、過少申告加算税ではなく重加算税が課されます。税率は35%(無申告の場合は40%)です。過少申告加算税の最大15%と比較すると、負担が2倍以上になります。痛いですね。
重加算税が適用される典型的な行為は以下のようなものです。
重要なのは、重加算税が課されると調査対象期間が通常の3〜5年から最大7年に延長されることです。さかのぼって追徴される期間が2年以上長くなるため、過去の不正が全て掘り起こされるリスクがあります。
また、近年は電子帳簿保存法(電帳法)との関係も注目されています。令和3年の改正以降、電子データに関連した仮装・隠蔽行為があった場合は、通常の重加算税(35%)にさらに10%が加重される措置が導入されました。つまり合計45%の税率になり得るのです。電子データを扱う現代のビジネスにとって、この加重措置は無視できないリスクです。
なお、過少申告加算税と重加算税は同時に課されることはありません。どちらか一方が適用されます。ただし、延滞税はいずれの場合にも同時に課される点を覚えておきましょう。重加算税が適用された上に延滞税まで加わると、追加納税の総額が本税の半額近くに達することもあります。
重加算税が課される基準と税率の詳細:仮装・隠蔽と認定される具体的な行為が事例付きで解説されています。
過少申告加算税のリスクを語る記事の多くは「正しく申告しましょう」という一般論で終わります。しかし、金融・投資に関心のある方が実際に注意すべきポイントは、もう少し具体的です。
まず、株式・投資信託・FX・仮想通貨(暗号資産)などの投資所得は「過少申告が起きやすい代表的な分野」です。理由は3つあります。
次に、帳簿・記録の保存習慣が防衛策になります。国税庁が認める「優良な電子帳簿」として保存を行い、その旨を届け出ておくと、万が一指摘を受けた際の過少申告加算税が5%軽減される特例(通則法65条8項)があります。通常10%が5%になる可能性があるわけです。これは使えそうです。
また、修正申告をするタイミングが重要であることは前述の通りです。申告内容に誤りに気づいた時点で、速やかに行動することが最大の節税策になります。なお、修正申告は「納め過ぎた税金を取り戻す」更正の請求とは異なり、追加納税が必要なケースに使うものです。更正の請求は法定申告期限から5年以内であれば行うことができ、こちらは還付に使います。両者を混同しないようにしましょう。
申告の精度を高めるために、クラウド会計ソフトや確定申告ソフトの活用は有効な選択肢です。口座・証券会社との自動連携機能を持つサービスを使えば、転記ミスや計上漏れのリスクを大幅に下げられます。
日々の記録を積み重ねることが、過少申告加算税という余計なコストを避ける最も現実的な方法です。記録が基本です。
国税庁「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例措置」:帳簿を電子保存することで過少申告加算税が5%軽減される届出制度の公式解説です。