法人税申告書の作成手順と本の選び方完全ガイド

法人税申告書の作成手順と本の選び方完全ガイド

法人税申告書の作成手順と本の選び方完全ガイド

別表一から先に書くと、申告書全体が機能しません。


📋 この記事の3つのポイント
📖
別表は100種類以上あるが、実際に必要なのは数種類だけ

法人税申告書の別表は付表を含めると100種類以上ありますが、多くの中小法人が必ず作成すべき別表は別表一・二・四・五(一)・五(二)など限られた種類です。

🔢
作成順序を間違えると転記ミスが連鎖する

別表は「別表一から作る」のではなく、別表六以降→別表四→別表七→別表五(一)→別表一の順番が基本です。順序を守ることが最大のミス防止策になります。

📚
参考書の選び方で習得スピードが大きく変わる

初心者には対話式・ゼミナール形式の書籍が向いており、実務経験者には別表ごとの根拠法令まで解説した書籍が深い理解につながります。


法人税申告書の作成手順で「別表一を最初に書く」は間違い


法人税申告書を初めて手がける経理担当者の多くが、「一番最初に別表一(各事業年度の所得に係る申告書)を記入すればいい」と思い込んでいます。しかし、これは構造上不可能です。


別表一には、他の別表で計算された金額を転記する欄が多数あります。つまり、別表四や別表六などの計算が終わっていないと、別表一の数字が埋まりません。正しい作成手順を理解することが、ミスのない申告書への第一歩です。


法人税申告書の正しい作成順序は、おおよそ次のような流れになります。まず財務諸表(貸借対照表損益計算書など)を確定させ、その数字をもとに別表六(一)や別表十五(交際費等)、別表十六(減価償却費)といった各明細別表を作成します。次に、それらの計算結果を別表四(所得の金額の計算に関する明細書)に集約します。欠損金の繰越がある場合は別表七を作成し、別表五(一)・五(二)と連動させます。そして最後に別表一で法人税額を確定させ、同族会社の判定に必要な別表二を完成させる流れです。


これが原則です。別表の番号順に作業するのではなく、「数字の流れ」に沿って作成することが重要な点として覚えておきましょう。


別表の総数は付表を含めると100種類を超えますが、それがすべて必要というわけではありません。多くの中小法人にとって実際に提出が必要な別表は、別表一・二・四・五(一)・五(二)を中心とした数種類に絞られます。事業内容や税務調整項目によって、追加の別表が必要になるケースもあります。


初めての申告作業では、国税庁が公開している「法人税のあらましと申告の手引」(毎年更新)を手元に置いておくと作業の羅針盤になります。


国税庁|申告書作成上の留意点(令和7年版)PDF:各別表の誤りやすい点と留意事項が別表ごとにまとめられています


法人税申告書の作成手順で核となる別表四と別表五の書き方

別表四と別表五(一)(二)は、法人税申告書の中核をなす最重要別表です。この3つを正確に書けるかどうかで、申告書全体の精度がほぼ決まります。


別表四(所得の金額の計算に関する明細書)は、損益計算書の「当期純利益」を出発点として、会計上の利益と税務上の所得を調整する書類です。会計では費用として認められていても税務上は認められない項目(損金不算入)を加算し、逆に税務上だけ認められる減算項目を差し引くことで課税所得を算出します。たとえば、交際費の損金不算入額(一定の上限超過分)は別表十五で計算した金額をそのまま別表四に加算する形になります。


別表五(一)(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)は、税務上の純資産の内訳を示す書類です。別表四の加減算項目のうち「留保」に区分されるものを転記します。この別表は事業年度を越えて残高がつながる構造のため、前期末残高の確認が欠かせません。


別表五(二)(租税公課の納付状況等に関する明細書)は、法人税・地方税の納付状況を記録する書類です。期中に納付した中間申告納付額や、確定申告での納付予定額を記載します。別表五(一)とセットで理解することが条件です。


この3つの別表に転記する数字の流れをひとつひとつ確認しながら作業するには、設例付きの参考書があると大幅に時間を節約できます。フリーソフトの「全力法人税」など無料の法人税申告専用ソフトでも、数値入力時に自動転記が行われるため、転記ミスの防止に役立ちます。


マネーフォワード|法人税申告書の書き方解説(初心者向け):別表一〜七の概要と注意点を図解つきで解説しています


法人税申告書の作成に役立つ本・おすすめ5選の特徴と選び方

申告書の書き方を独学で習得する際、どの本を選ぶかによって理解の深さと習得スピードが大きく変わります。2026年2月時点で入手しやすい主要な参考書を、用途別に整理します。


① 対話式 法人税申告書作成ゼミナール(鈴木基史著/税務研究会出版局)


税理士と新入社員の対話形式で書かれており、簿記2〜3級レベルの知識があれば読み進めることができます。中小法人の一般的な申告書を一通り作れるレベルになることを目標としており、初めて申告書に向き合う経理担当者や、見様見真似で作業してきた方が仕組みを体系的に整理し直すのに最適です。令和8年1月に最新版が刊行されており(定価3,300円)、まず1冊選ぶならここから始めるのが基本です。


② 法人税申告書 別表4・5ゼミナール(鈴木基史著)


上記①の続編で、特に別表四と別表五(一)(二)の役割・記入方法・相互の関連性に特化した内容です。還付申告や修正申告時の書き方まで解説されているため、実務で幅広いケースに対応したい方に向いています。①を一通り読み終えた後の深掘り用として位置づけると効果的です。


③ 法人税申告書の書き方と留意点〈令和8年申告用〉基本別表編(税理士法人右山事務所著/中央経済社)


別表四・五(一)、交際費、寄附金、減価償却など、どの法人にも必須の基本別表を網羅的に解説した実務書です。価格は3,410円。設例と図解が豊富で、別表ごとに「書き方のポイント」が整理されているため、辞書的に使いやすい構成になっています。


④ やさしい法人税申告入門〈令和8年申告用〉(中央経済社)


会社の税務担当者が「最初に読む本」として設計されたエントリー書です。決算書と別表間の数字のフローを図解し、適宜確認テストが挟まれているため、読み終えた時点でどこまで理解できているかを自分でチェックできます。独学で体系的に学びたい方に適した1冊です。


⑤ とりあえず法人税申告書が作れるようになる本(税務研究会出版局)


タイトルのとおり、「まず一枚仕上げる」ことに特化した書籍です。赤字法人の申告書・中間納付がある申告書・中間還付がある申告書の3パターンに絞って解説しており、ケース別に実際の数字の流れが追えます。実務で特定のケースに直面したときのリファレンス用に手元に置くと便利です。


選び方の基準をまとめると、「初学者で仕組みから理解したい→①」「別表四・五を徹底理解したい→②」「辞書として使いたい→③」「読んで理解する形が好き→④」「特定ケースだけ速習したい→⑤」という形になります。


中央経済社|やさしい法人税申告入門(令和8年申告用)刊行情報:書籍の構成と対象読者について詳細が確認できます


法人税申告書の電子申告(e-Tax)義務化と自分で作成する際の注意点

資本金が1億円を超える法人は、2020年4月1日以後に開始する事業年度から法人税・地方法人税・消費税の申告について電子申告(e-Tax)が義務化されています。紙での提出は認められません。これは中央経済社や税務研究会の参考書に書かれているのと同じ内容です。


一方、資本金1億円以下の中小法人については、現時点で電子申告は義務ではなく、紙での提出も可能です。ただし、e-Taxを使った電子申告には、添付書類のPDF化が求められるなど一定の準備が必要です。


自分で申告書を作成する際に見落とされがちな注意点が3つあります。


1つ目は、提出期限の管理です。法人税申告書の提出期限は事業年度終了日から2か月以内とされていますが、主総会が6月に行われる3月決算法人では、5月末の期限に間に合わないケースがあります。そのような場合は、あらかじめ申告期限延長の特例申請(1か月延長可能)を行う必要があります。この申請を忘れると、期限後申告となり無申告加算税(納税額の15〜20%)が課せられるリスクがあります。


2つ目は、提出部数の確認です。資本金1億円以上の法人は申告書を3部、それ以下の場合は2部準備する必要があります。前期の状況と資本金が変わっている場合は、税務署からの送付物の記載内容だけを信用せず、当期の資本金を確認した上で部数を判断することが必要です。


3つ目は、修正申告のリスクです。申告書の作成後に誤りが発覚した場合、自主的に修正申告を行えば過少申告加算税は原則かかりません。しかし、税務署から調査の事前通知が来た後に修正した場合は、新たに納める税額の5〜10%が加算税として課せられます。さらに、税務署による更正・決定後は10%(または重加算税35%)が課せられる場合があります。申告書の内容を慎重に確認することが原則です。


国税庁e-Tax|大法人の電子申告義務化について:対象法人の範囲と適用時期が明記されています


法人税申告書の作成手順を習得する独自視点:「模擬申告書作成」が最速の近道

参考書を読んで理解する学習と、実際に手を動かして申告書を書く学習は、習得効率が根本的に異なります。これはあまり語られていない視点です。


国税庁が公開している「法人税のあらましと申告の手引」には、中小法人を想定した設例と模擬申告書の記載例が収録されています。この設例を使い、実際の別表様式(国税庁サイトからダウンロード可能、無料)に手書きで記入していく練習が、理解の定着に最も効果的です。なぜなら、別表間の数字の転記ルールは「読んで理解する」より「書きながら体感する」ほうが圧倒的に記憶に残るからです。


具体的なアプローチとして、参考書の設例を一通り読む(①理解フェーズ)→国税庁の様式をプリントアウトまたはPDFに直接書き込む(②実践フェーズ)→自分で書いた数字と参考書の解答を照合する(③検証フェーズ)の3段階を繰り返す方法があります。


この方法で特に効果が高いのは、別表四・五(一)・五(二)の連動関係を体感的につかむ段階です。この3つの別表は互いに数字が繋がる構造になっていますが、文字で読むだけでは構造が掴みにくく、実際に計算しながら書くことで初めて理解が深まる部分です。


また、赤字申告(欠損金)が発生するケースや、中間申告がある場合など、典型的な応用パターンも設例で練習しておくと実務対応力が大きく上がります。税務研究会の「とりあえず法人税申告書が作れるようになる本」は、このような応用パターンに絞った構成が特徴のため、実践フェーズの教材として組み合わせて使うのが効果的です。


さらに近年は、クラウド型の法人税申告ソフト(全力法人税・freee申告など)が、無料または低価格で利用できるようになっています。ソフト上でダミー数値を入力して申告書のプレビューを確認するという学習方法も、手順の全体像を俯瞰するには有効な手段です。ただしソフトへの依存が強くなると、別表間の構造を「理解せず操作だけ覚える」状態になりやすいため、参考書と組み合わせて使うことが条件です。


申告書作成の習得に最もかかる時間は「最初の1回目」です。設例を使った模擬申告書作成を1〜2回経験するだけで、2回目以降の作業スピードと精度は大幅に向上します。参考書選びと合わせて、この実践型学習のアプローチも取り入れることをおすすめします。


国税庁|令和7年版 法人税のあらましと申告の手引(申告書作成上の留意点):設例付きで申告書の記載例が確認できます




法人税申告書の最終チェック〈令和7年5月申告以降対応版〉