同族会社の判定と国税庁の基準を正しく知る方法

同族会社の判定と国税庁の基準を正しく知る方法

同族会社の判定と国税庁の基準・特別規定を徹底解説

株式を5%超持つ家族が「ただの従業員」のつもりでいると、給与が全額損金にならない場合があります。


この記事のポイント3つ
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同族会社の判定基準

3人以下の株主グループとその同族関係者が発行済株式の50%超を保有している場合、国税庁の法人税法上「同族会社」と判定されます。日本企業の約96%が該当します。

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見落としがちな特別規定

みなし役員への給与損金不算入・留保金課税(10〜20%の追加課税)・行為計算否認など、同族会社だけに課される税務上のリスクが複数存在します。

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親族の範囲は想像より広い

同族関係者には6親等以内の血族・3親等以内の姻族のほか、使用人や生計維持者まで含まれます。株主グループの構成を正確に把握することが重要です。


同族会社の判定基準とは:国税庁が定める50%ルールの仕組み


同族会社という言葉を聞いたことはあっても、正確な定義を把握している方は意外と少ないものです。法人税法第2条第10号では、「株主等の3人以下並びにこれらと特殊の関係のある個人及び法人が、発行済株式の総数または出資金額の50%超を保有している会社」と定義されています。つまり、いわゆる「上位3位グループ」が過半数の株式を握っている状態が同族会社です。


注目すべきは「3人以下」という部分です。これは3人の個人株主を指すのではなく、「株主グループ」の話です。例えばAさん(40株)、Aさんの妻Bさん(5株)、Aさんの弟Cさん(10株)は、みな「Aグループ」として一体で数えられます。この3人の合計は55株となり、100株中55株=55%超となるため同族会社の判定が下ります。これが基本です。


さらに2006年(平成18年)の税制改正により、株式の数だけでなく「議決権の数」や「持分会社の社員数」でも同族会社かどうかを判定できるようになりました。議決権制限株式を発行している会社や、子会社が親会社株式を保有していて議決権が行使できないケースなどでは、株式数だけで判定すると同族会社に該当しなくても、議決権ベースで判定すると該当することがあります。厳しいところですね。


国税庁の発表(会社標本調査)によると、2020年度において日本の単体法人の約96.3%(278万社のうち268万社超)が同族会社に該当します。資本金1億円以下の中小企業では97%以上が同族会社です。つまり日本の中小企業のほぼすべてが、同族会社として税務上扱われています。自社が「まだ大丈夫」と思っていた経営者も、一度確認してみることが重要です。








判定基準 内容 備考
株式数基準 3人以下の株主グループが発行済株式の50%超を保有 最も基本的な判定
議決権数基準 3人以下の株主グループが総議決権の50%超を保有 平成18年改正で追加
持分会社基準 3人以下のグループが社員総数の半数超を占める 合名・合資・合同会社が対象


国税庁による同族会社の法的根拠と判定基準の詳細はこちらで確認できます。


国税庁「2 同族会社」(改正の解説)


同族会社の判定における同族関係者の範囲:6親等まで含まれる驚きの広さ

同族会社の判定でよく誤解されるのが、「同族関係者(特殊の関係のある個人・法人)」の範囲です。多くの経営者が「家族くらいだろう」と思いがちですが、実際の範囲は想像をはるかに超えます。法人税法施行令第4条に列挙される同族関係者の範囲を正しく理解することが、判定精度を上げる第一歩です。


個人の同族関係者として含まれるのは、まず「6親等以内の血族」と「3親等以内の姻族」です。6親等というのは相当広い範囲で、例えば自分から見て「いとこの子(4親等)」や「はとこ(6親等)」まで含まれます。はとこまで、というのは意外ですね。さらに、事実上の婚姻関係にある者(内縁のパートナー)、個人株主の「使用人(雇っている人)」、そして株主等から金銭・資産を受け取って生計を維持している者まで含まれます。


法人の同族関係者については、ある株主が他の法人の発行済株式の50%超を保有している場合、その法人も同族関係者として扱われます。つまり、オーナーが個人で複数の会社を持っている場合、それらの会社間でも株式の持ち合い・影響関係があれば、すべてが同一グループとして計算される可能性があります。グループ全体で判定が必要です。


株主グループの判定は、株式保有割合が大きい順に並べ、上位3グループの合計が50%を超えるかどうかで判断します。ただし、必ずしも割合が大きい順番にグループを選ぶ必要はなく、選び方を変えれば同族会社と判定される組み合わせが見つかる場合もあります。これは実務上かなり複雑です。



  • ✅ 株主等の配偶者・6親等以内の血族・3親等以内の姻族

  • ✅ 事実上婚姻関係と同様の事情にある者(内縁関係)

  • ✅ 個人株主等の使用人(雇われている人)

  • ✅ 株主等から受ける金銭・資産により生計を維持している者

  • ✅ 上記の者の親族で生計を一にする

  • ✅ 株主が50%超の株式を保有する他の法人


同族関係者の範囲と判定方法について詳しく解説した参考記事はこちらです。


掛川総合会計事務所「同族会社の判定基準・特別規定等について」


同族会社だけに課される特別規定:みなし役員と損金不算入のリスク

同族会社と判定された場合、税務上の「特別規定」が複数適用されます。中でも見落とされやすいのが「みなし役員(法人税法上の役員)」の問題です。会社法の役員でなくても、一定の条件を満たせば法人税法上は役員とみなされ、給与や賞与の扱いが大きく変わります。


みなし役員に該当するには、基本的に「経営に従事していること」かつ「使用人以外の者であること」が前提です。同族会社の場合は、これに加えて次の3つすべてを満たすと役員認定されます。①その者が属する株主グループが、上位から積み上げて50%超になるグループに含まれること、②その株主グループの所有割合が10%超であること、③その者自身(配偶者等を含む)の所有割合が5%超であること、の3条件です。


つまり、株式を5%超保有しながら「自分は単なる従業員として働いているだけ」と思っている家族がいる場合、その方がみなし役員と認定されることがあります。みなし役員に認定されると、支払われた賞与は「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれにも該当しないため、原則として損金に算入できなくなります。これは痛いですね。例えば、年間200万円の賞与を支払っていた場合、その全額が損金不算入となり、法人税の課税所得がその分増加してしまいます。


みなし役員の問題は税務調査でも頻繁に指摘される論点のひとつです。事前に会社の株主構成と、業務に従事している親族の状況を整理しておくことが、思わぬ追徴課税を防ぐための第一手となります。株主名簿と役員・従業員の関係を顧問税理士とともに確認する、というアクションが有効です。


辻・本郷税理士法人「税務調査で問われる同族会社の親族給与・適正な支給のための留意点」(2025年7月)


特定同族会社の留保金課税:内部留保が多いと追加で10〜20%課税される仕組み

同族会社の中でも、より経営支配が集中している「特定同族会社」には、「留保金課税」という制度が適用されます。これは、会社が稼いだ利益を配当せずに社内に積み立て(内部留保)した場合、一定額を超えた分に対して通常の法人税とは別に10〜20%の追加課税が行われる制度です。


特定同族会社とは、1人の株主グループだけで50%超の株式等を保有している「被支配会社」のうち、さらに一定の条件を満たすものを指します。同族会社(3グループで50%超)よりも支配がさらに集中した状態です。資本金1億円以下の会社は原則として留保金課税の対象外ですが、期末資本金が5億円以上の大法人による完全支配関係がある場合は対象になるため注意が必要です。これが条件です。


留保金課税の税率は以下のとおりです。留保金額が年間3,000万円以下の部分には10%、3,000万円超〜1億円以下の部分には15%、1億円を超える部分には20%が課されます。たとえば、課税対象となる留保金が5,000万円あった場合、3,000万円×10%=300万円、2,000万円×15%=300万円で、合計600万円の追加課税が発生します。これは会社の節税計画に大きく影響します。








留保金額の区分 税率
年3,000万円以下 10%
年3,000万円超〜1億円以下 15%
年1億円超 20%


留保金課税に備えるためには、利益が出た期に適切な役員報酬の設定や設備投資、あるいは中小企業倒産防止共済(セーフティネット共済)などの積立制度を活用して内部留保を調整することが有効です。いずれの場合も「課税対象となる留保金額をどれだけ圧縮できるか」という視点で、期末前に税理士と相談することを検討してみてください。


留保金課税の計算方法や対策について詳しく解説されています。


マネーフォワードクラウド「留保金課税で特定同族会社がとるべき対策は?」


行為計算否認という「伝家の宝刀」:国税庁が税務調査で使う最終兵器

同族会社にだけ適用される規定の中で、最もインパクトが大きいのが「行為計算否認」(法人税法132条)です。これは税務当局が「伝家の宝刀」とも呼ぶ強力な規定で、形式上は法律違反でなくても、その取引を認めると法人税の負担が「不当に減少する」と判断されれば、税務署長が取引を否認して課税し直せるというものです。


具体的にどういった取引が否認されるのでしょうか?代表的な例としては、役員への過大報酬(相場と著しくかけ離れた高額報酬)、相場を大幅に下回る価格での同族間の資産売買、同族会社同士での不自然に高い取引価格の設定、親族への利息なしの多額貸付などが挙げられます。例えば、会社が社長の親族個人から、時価800万円の土地を200万円で購入したとします。このとき、通常の売買では800万円の対価が渡るはずが200万円しか渡っておらず、差額の600万円分が個人に留まる(=所得税課税を免れる)状態になります。これが「不当な税負担の減少」と判断されれば、取引価格が800万円に引き直されて課税されます。


重要なのは、この規定が「故意があるかどうか」に関わらず適用される点です。悪意のない節税スキームでも、結果として税負担が不当に減少しているとみなされれば否認されます。国税庁の基本通達では、不合理かつ不自然な取引を例示しており、税務調査で指摘されると追徴税額だけでなく延滞税過少申告加算税まで課される可能性があります。結論は「不自然な取引は常にリスク」です。


同族会社の行為計算否認のリスクを下げるには、親族間・会社間の取引に際して「第三者間で行われるのと同じ条件・価格」になっているかを事前に確認し、証拠書類(見積書・不動産鑑定評価書など)をしっかり保管しておくことが基本的な対策になります。


ON税理士法人「同族会社の税務リスクを回避!同族会社の行為計算否認の対策」(2025年8月)


同族会社の判定フローチャート活用法と別表二の正しい記載方法(独自視点)

毎年の法人税申告では、「別表二(同族会社等の判定に関する明細書)」を作成・提出する必要があります。この別表二は会社の同族状況を税務署に申告するための書類ですが、記載を誤ったり、軽視してしまったりするケースがあります。別表二の正確な記載が、その後のすべての同族会社特別規定の適用可否に直結します。これが原則です。


別表二の記載では、まず期末現在の発行済株式総数を記入し、次に株主ごとの保有株式数と、同族関係者を含めたグループ単位の持株割合を記載します。上位3位のグループ合計割合が50%超かどうかで「同族会社の判定」欄に結果を記入し、さらに上位1位のグループだけで50%超であれば「特定同族会社の判定」が必要になります。実務では、このグループ分けを誰が同族関係者になるかを正確に把握したうえで行う必要があります。


ここで多くの経営者が見落としがちな視点があります。それは、事業年度の途中で株主構成が変わった場合や、新たに親族が会社に関与した場合です。判定は原則として「期末時点」の状況で行いますが、同族会社特有の規定(みなし役員の判定など)は年間の状況全体で判断されることもあります。つまり、期末に向けて株主構成を整理するだけでは不十分なケースも存在するということです。意外ですね。


また、議決権制限株式を発行している会社では、株式数ベースと議決権数ベースで判定結果が異なる可能性があります。国税庁の通達(法人税基本通達1-3-1)は、株式数による判定で同族会社に該当しなくても、議決権数による判定を追加で行うことを求めています。したがって、種類株式を活用した持株比率の調整策は、必ずしも同族会社判定を外れることに直結しないと認識しておく必要があります。


実際に別表二をどう書くかについては、国税庁が公開しているPDF記載要領と、会計ソフトのガイドを合わせて確認するのが実務的に効率的です。法人税申告のたびに専門家に判定内容を確認してもらうことが、将来的な税務調査リスクを最小化する方法です。


別表二の記載要領と同族会社判定の明細書フォームはこちらから入手できます。


国税庁「別表二 同族会社等の判定に関する明細書 記載要領」(PDF)




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