特定同族会社の留保金課税を国税庁の基準で徹底解説

特定同族会社の留保金課税を国税庁の基準で徹底解説

特定同族会社の留保金課税を国税庁の基準で理解し対策する

資本金が1億円を超えるオーナー会社でも、利益を社内に残したまま申告すると最大20%の追加法人税を請求されます。


この記事でわかること
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特定同族会社の定義と判定方法

同族会社との違い・3ステップ判定・国税庁の基準となる株主グループの考え方を解説します。

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留保金課税の計算式と税率

留保金額・留保控除額・課税留保金額の算定方法と、10〜20%の段階税率の具体例をわかりやすく説明します。

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留保金課税の具体的な対策

配当・役員報酬・設備投資・資本金の見直しなど、追加課税を回避・軽減するための実践的な手段を紹介します。


特定同族会社と同族会社の違い:国税庁が示す判定の基本


「同族会社」と「特定同族会社」は名称が似ているため混同されがちですが、税務上の取り扱いは大きく異なります。これが基本です。


同族会社とは、法人税法上、3つ以下の株主グループが発行済株式の50%超を保有している会社を指します。一方、特定同族会社はさらに絞り込まれた概念で、「被支配会社」に該当するうえに一定の要件を満たす会社のことです。被支配会社とは、ひとつの株主グループだけで発行済株式の50%超を保有されている会社を意味します。


判定は3ステップで行います。


ステップ 確認内容 結果
① 同族会社の判定 3グループ以下で発行済株式50%超を保有しているか Yes→同族会社
② 被支配会社の判定 1グループだけで発行済株式50%超を保有しているか Yes→被支配会社
③ 特定同族会社の判定 上記グループ内に「被支配会社でない法人株主」が含まれず、なおかつ被支配に該当するか Yes→特定同族会社


ここで重要なポイントがあります。資本金または出資金が1億円以下の法人は、原則として特定同族会社には該当せず、留保金課税の対象外です。ただし、資本金5億円以上の大法人との間に完全支配関係がある場合(100%子会社等)は、この除外規定が適用されません。


大企業の完全子会社でも要注意ということですね。


国税庁の通達(法人税基本通達16-1-2)では、特定同族会社かどうかの判定は定時株主総会等の「決議」を用いる戸籍上の関係だけでなく、実質的な支配関係で判断する点も明記されています。株主名簿上の名義と実態が乖離しているケースでは、税務調査で問題になるリスクがあります。


国税庁が公開している法人税の取扱いに関する情報は以下から確認できます。


(判定基準の根拠となる法令解釈通達・特定同族会社の特別税率に関する取扱いが詳述されています)
国税庁|Ⅳ 税額の計算に関する改正(特定同族会社の特別税率)


特定同族会社の留保金課税とは:国税庁が定める課税の趣旨と仕組み

留保金課税は、一言で言えば「利益を配当せずに会社に溜め込みすぎると余計に税金を取りますよ」という制度です。厳しいところですね。


特定同族会社では、オーナーと経営者が同一人物であるケースが多く、配当を出すと累進課税所得税が重くなるため、あえて利益を社内に蓄積し続けるインセンティブが働きやすい構造があります。所得税の最高税率は現在45%(住民税込みで最大55%)に達するため、法人税率(23.2%程度)との差を利用した租税回避が問題視されてきました。


そこで法人税法第67条は、特定同族会社が許容額(留保控除額)を超えて利益を留保した場合、通常の法人税に加えて「特別税率」を上乗せすることを定めました。これが留保金課税の本質です。


特定同族会社の留保金課税が適用される流れを図解すると以下のようになります。


  • 📋 ステップ①:通常通り法人税の所得計算を行う
  • 📋 ステップ②:「留保金額」(社内に残った利益ベース)を算出する
  • 📋 ステップ③:「留保控除額」(適正な留保として認められる金額)を算出する
  • 📋 ステップ④:留保金額から留保控除額を差し引いた「課税留保金額」に特別税率をかける
  • 📋 ステップ⑤:通常の法人税額に留保金課税額を加算して申告・納付する


つまり課税留保金額が基本です。留保金課税の申告は国税庁の定める「別表三(一)」という法人税申告書の付属明細書を使って行います。所得が0円でも、受取配当金の益金不算入額などの課税外収入がある場合は留保金課税が発生する可能性があるため、決算時に必ず確認が必要です。


国税庁のパンフレットや別表書き方については以下が参考になります。


(別表三(一)の記載方法・留保金額の計算手順が具体的に説明されています)
国税庁|別表三(一)「特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書」(2025年版PDF)


特定同族会社の留保金課税の計算方法:税率・留保控除額・具体例

実際にどのように課税額が計算されるのか、数字を使って整理します。これは使えそうです。


① 留保金額の計算


留保金額は次の式で求めます。


  • 留保金額 = 課税所得 + 課税外収入(受取配当金の益金不算入額・繰越欠損金の損金算入額など)- 社外流出額(配当・役員賞与など)- 法人税・地方法人税・住民税


受取配当金の益金不算入額も留保金額に加算される点は見落としがちです。「所得が出ていないから関係ない」と思っていると、益金不算入の課税外収入が積み重なって課税留保金額が生じるケースがあります。


② 留保控除額の計算


留保控除額は、以下の(1)〜(3)のうち最も大きい金額が採用されます。


基準 計算式
(1) 所得基準額 当期の所得等の金額 × 40%
(2) 定額基準額 2,000万円 × 当期の月数 ÷ 12
(3) 利益積立金基準額 期末資本金 × 25% -(期首利益積立金額 − 前期末配当額)


3つの中で最も大きい数字が使えるため、利益が大きい年度は(1)の所得基準額が有利に働き、留保控除額が増えることもあります。


③ 特別税率(段階課税)


課税留保金額に対する税率は以下の3段階です。


課税留保金額(年額) 特別税率
3,000万円以下の部分 10%
3,000万円超〜1億円以下の部分 15%
1億円を超える部分 20%


具体的な計算例(12か月決算・資本金2億円の会社)


  • 📌 当期所得金額:5,000万円
  • 📌 法人税等(合計):約1,300万円
  • 📌 配当支払額(社外流出):200万円
  • 📌 留保金額:5,000万円 − 1,300万円 − 200万円 = 3,500万円
  • 📌 留保控除額(所得基準40%):5,000万円 × 40% = 2,000万円(最大)
  • 📌 課税留保金額:3,500万円 − 2,000万円 = 1,500万円
  • 📌 特別税額:1,500万円 × 10% = 150万円の追加課税


この例では通常の法人税に加えて150万円の追加負担が生じます。痛いですね。なお事業年度が12か月未満の場合、3,000万円・1億円の基準額も月数按分して計算することに注意が必要です。


より詳しい実務的な計算手順については以下が参考になります。


(課税留保金額・留保控除額の具体的な計算フローと数値例が掲載されています)
実務家のための法人税塾|Ⅲ.留保金課税の計算(具体例つき)


特定同族会社の留保金課税を回避・軽減する4つの対策

特定同族会社であっても、適切な対策を取れば留保金課税を大幅に軽減できます。留保金課税を発生させる「課税留保金額」をゼロまたはマイナスにすることが目標です。


対策① 配当を活用して社外流出を増やす


配当を支払うと留保金額の計算上「社外流出」として差し引かれるため、課税留保金額が減少します。たとえば年間500万円の配当を出せば、それだけ留保金が減少し、留保金課税の発生を防ぎやすくなります。ただし、配当所得は株主個人の総合課税または申告分離課税の対象となるため、個人の税負担とのバランスが条件です。


税理士への相談の際は「留保金課税を減らしたい」と伝えた上で、配当額の最適化シミュレーションを依頼するのが効率的です。


対策② 役員報酬の最適化で所得を分散させる


役員報酬を適正に設定することで法人の課税所得が下がり、結果として留保金額も減少します。ただし、「不相当に高額な役員報酬」は税務調査で否認される可能性がある点に注意が必要です。税務調査では特定同族会社の役員報酬は特に厳しくチェックされる傾向があります。国税庁の通達でも、同族会社における役員給与の損金不算入規定(法人税法第34条)との整合性が問われます。


対策③ 設備投資・事業投資で内部留保を合理的な形に変える


設備投資や研究開発費として利益を使えば、利益積立金(留保金)そのものが増えない形で会社の資産を増やせます。機械装置・建物の購入などで固定資産が増えると、それは正当な事業目的の留保として評価されます。投資と節税を同時に達成できるという意味では最も実益が大きい方法です。


対策④ 資本金を1億円以下に減資する


資本金の額を1億円以下に減資すると、原則として特定同族会社の留保金課税の対象外となります。ただし、減資には株主総会の特別決議が必要であり、また会社の規模に関わる信用力・金融機関との取引条件に影響する場合があります。また大法人(資本金5億円以上)の完全子会社の場合は、減資しても対象外にはならない点が注意事項です。


対策①〜④のいずれも、単独で実施するよりも組み合わせることで効果が高まります。なお問題は全て「課税留保金額がゼロ以下になるかどうか」に帰着するため、決算前に数値シミュレーションを行うことが最も確実な対策です。


税理士法人レガシィによる特定同族会社の判定や留保金課税に関する解説はこちらが参考になります。


(留保金課税の計算方法・対策の視点から事業承継との関係も解説されています)
税理士法人レガシィ|特定同族会社とは?同族会社との違いや判定方法


特定同族会社の留保金課税で見落とされやすい盲点:中小企業でも対象になる例外ケース

「うちは資本金1億円以下だから関係ない」と思い込んでいる経営者が、実は留保金課税の対象になっていたというケースが実務上で発生しています。意外ですね。


資本金1億円以下でも特定同族会社に該当し、留保金課税が適用されるのは以下の4つの例外ケースです。


  • ⚠️ ケース①:資本金5億円以上の大法人が発行済株式の100%を保有している会社(完全子会社)
  • ⚠️ ケース②:複数の大法人(資本金5億円以上)から100%支配されており、いずれか一つが完全支配しているとみなせる場合の法人
  • ⚠️ ケース③:投資法人(不動産投資信託など)
  • ⚠️ ケース④:特定目的会社(資産流動化法に基づく会社)


特に実務で問題になりやすいのはケース①です。国内外の大企業グループ傘下に入った中小法人が「自社は中小企業だから大丈夫」と誤解したまま、数年間にわたって留保金課税を申告していなかった事例が、税務調査で発覚するケースがあります。


会計事務所の損害賠償事例としても、外国親会社の完全子会社である国内法人について、留保金課税の適用を見落としたという事例が実際に報告されています。複数事業年度にわたる申告漏れ延滞税・加算税の対象にもなるため、グループ会社の株主構成を定期的に確認しておくことが重要です。


また見落としが発生しやすいのが「所得がゼロでも課税が発生するケース」です。受取配当金の益金不算入額(課税外収入)は所得計算には反映されませんが、留保金額の計算には加算されます。つまり所得ゼロであっても、大きな受取配当が発生した事業年度には留保金課税が生じる可能性があります。この点は別表三(一)の記載を細かくチェックしなければわからないため、実務上の見落としが起きやすい点です。


国税庁の大法人の100%子法人等における中小企業向け特例措置の取り扱いについては以下で確認できます。


(資本金1億円以下でも特定同族会社に該当するケースの法令解釈が説明されています)
国税庁タックスアンサー|No.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用




わかりやすい同族会社の税務処理と節税ポイント