

投資信託の分配金はすべて益金不算入だと思っていませんか?実は、普通の投資信託の分配金は1円も益金不算入にならず、全額が課税対象になります。法人として投資信託を保有しているなら、この事実は見逃せません。
受取配当等の益金不算入制度とは、法人が他の法人から受け取った配当金について、法人税の計算上、その一部または全部を課税所得(益金)に算入しなくてよいとする制度です(法人税法第23条)。
まず、この制度がなぜ設けられているのかを理解しておくことが大切です。配当金の支払いは、一度法人税を課された後の「税引後利益」から行われます。その配当を受け取った側の法人がさらに法人税を払うと、同じ利益に対して2回課税されることになります。
これが「二重課税」です。
受取配当金の益金不算入制度は、この二重課税を解消するために設けられた仕組みです。なお、個人株主については「配当控除」によって二重課税が調整されますが、法人株主にはこの「益金不算入制度」が適用されます。
つまり二重課税防止が原則です。
配当金を支払う法人の利益を「1,000万円」とした場合、法人税率23.2%を適用すると約232万円が法人税として徴収され、残り768万円が配当の原資となります。その768万円の配当を受け取った別の法人が、再び約23.2%の法人税を払うと、さらに178万円前後が持っていかれる計算になります。最初の1,000万円の利益に対して、実質的に合計で約40%超が税として課されることになり、これが二重課税の問題点です。
益金不算入制度があれば、受取法人での課税が軽減されるため、企業グループ内での資金移動や投資活動が税制上の理由で歪められることを防ぎやすくなります。
| 配当を受ける株式の区分 | 持株比率 | 益金不算入割合 |
|---|---|---|
| 完全子法人株式等 | 100% | 100%(全額不算入) |
| 関連法人株式等 | 1/3超〜100%未満 | 100%(ただし負債利子控除あり) |
| その他の株式等 | 5%超〜1/3以下 | 50% |
| 非支配目的株式等 | 5%以下 | 20% |
持株比率が高いほど益金不算入割合が高くなる点が基本です。完全子法人(持株比率100%)であれば受け取った配当の全額を益金不算入にできます。一方、5%以下の株式からの配当は20%しか不算入にならず、残り80%は課税対象となります。
受取配当金の益金不算入制度が「投資信託の分配金にはほぼ適用されない」という事実は、多くの投資家に見落とされがちです。これが今回の記事でもっとも重要なポイントです。
法人税法第23条第1項が規定する益金不算入の対象は、大きく分けて以下の区分です。
注目すべきは、「投資信託の収益の分配(通常の分配金)」は、上記のいずれにも含まれていないという点です。通常の投資信託の運用資産は株式だけに限らず、公社債や外貨建資産も含まれます。そのため、分配金の内訳が何由来かを個別に特定しにくいことが、益金不算入の対象から除かれている理由の一つです。
これが原則です。
では、特定株式投資信託だけが例外的に対象となる理由はなぜでしょうか。特定株式投資信託とは、信託財産を株式のみに対する投資として運用することを目的とする証券投資信託のうち、受益権が上場されているもの(いわゆるETF)を指します(租税特別措置法第3条の2)。株式のみで構成されているため、分配金が配当・売買益等に由来するものと判断できることから、例外的に益金不算入の対象とされています。
以下の表で整理すると分かりやすいでしょう。
| 投資信託の区分 | 益金不算入の対象か | 理由 |
|---|---|---|
| 公社債投資信託 | ❌ 対象外(全額益金算入) | 公社債のみに運用され、株式に運用されないため |
| 特定株式投資信託(国内ETF等) | ✅ 対象(20%不算入) | 株式のみに運用されるため |
| 外国株価指数連動型特定株式投資信託 | ❌ 対象外(全額益金算入) | 外国法人からの配当は益金不算入の対象外のため |
| 上記以外の証券投資信託(一般的な株式投信等) | ❌ 対象外(全額益金算入) | 純粋な投資商品であるため |
この区分を覚えておくのが最重要です。「株式投資信託なら配当と同じく益金不算入になる」という思い込みは誤りです。一般的な投資信託(インデックスファンドや毎月分配型投信など)の分配金は、国内ETF以外は全額が課税対象になります。
国内上場ETF(外国株価指数連動型を除く特定株式投資信託)は、非支配目的株式等として益金不算入の対象となります。その益金不算入割合は20%です。
たとえば、法人が国内ETFの分配金として100万円を受け取った場合の計算は以下の通りです。
80万円が課税対象です。
裏を返すと、80%はしっかり課税される点に注意が必要です。ETFだから全額非課税というわけではありません。この点を誤って理解していると、税負担の見込み違いが発生します。
また、特定株式投資信託の益金不算入は「非支配目的株式等」として扱われるため、別表8(一)での記載も非支配目的株式等の欄に記入することになります。持株比率の計算や関連法人株式等の区分には該当しないため、区分の判定が比較的シンプルです。
これは使いやすいポイントですね。
なお、平成27年(2015年)の税制改正以前は、特定株式投資信託の分配金に対して50%の益金不算入割合が認められていましたが、改正によって20%に引き下げられました。改正前の水準を基準に節税効果を計算していた場合、現行制度ではその効果が半減以下になっている点も押さえておきましょう。
法人が投資信託を保有している際、分配金には「普通分配金」と「特別分配金(元本払戻金)」の2種類があります。この2種類の違いを正しく理解しておかないと、会計処理と税務処理の両方でミスが生じます。
普通分配金とは、投資信託の運用益から支払われる分配金です。個別元本(保有者ごとの平均取得価額)を上回った基準価額から支払われる部分であり、収益に相当します。法人が受け取った場合は「受取配当金」として計上し、15.315%の源泉所得税が徴収されます。
特別分配金(元本払戻金)は、基準価額が個別元本を下回っている際に支払われる分配金です。名前に「分配金」とついていますが、実質的には元本の払い戻しです。そのため源泉税は徴収されず、収益ではなく保有している有価証券の取得価額を減額する処理を行います。
間違えると損が大きいですね。
特別分配金を誤って「受取配当金」として収益計上してしまうと、収益が水増しされた形になり、法人税の過払いにつながります。また、特別分配金は益金不算入の対象外であることも明確にされています(投資信託の収益分配金ではないため)。法人が複数の投資信託を保有している場合、銘柄ごとに普通分配金か特別分配金かを確認する手間が生じますが、支払通知書を必ず確認する習慣をつけることが重要です。
投資信託を「換金する」場面にも、税務上の重要な区分があります。それが「解約請求」と「買取請求」の違いです。この2つは換金という点では同じですが、税務上の取り扱いが根本的に異なります。
買取請求の場合、有価証券の譲渡として扱われます。売却益は譲渡益(法人の場合は事業所得の一部)として処理されます。
源泉徴収は行われません。
解約請求の場合、配当金の受け取りとして扱われます。解約請求による利益(解約価額と帳簿価額の差額がプラスの場合)には、15.315%の所得税が源泉徴収されます。
仕訳は以下のように処理します。
```
(解約請求の仕訳例)
借方:預金 × × × 円
法人税等(源泉所得税) × × 円
貸方:投資有価証券(帳簿価額) × × × 円
受取配当金(差益部分) × × 円
```
解約請求による受取配当金部分が、益金不算入の計算の対象となります。ただし、対象となる投資信託の区分(特定株式投資信託かどうか)によって不算入割合が変わる点は分配金の場合と同様です。
買取請求と解約請求では源泉徴収の有無が変わります。中途換金の方法を選択する際は、税務上の取り扱いの違いを意識してから判断することが望ましいでしょう。
一見すると「配当をもらって益金不算入にすれば節税できる」と感じるかもしれません。しかし、配当取りを目的とした短期売買に対しては、法人税法上で「短期保有株式等」の規制が設けられています。
短期保有株式等とは、配当等の支払いに係る基準日(=配当支払法人の決算日)以前1ヵ月以内に取得し、その基準日後2ヵ月以内に譲渡した株式等を指します(法人税法第23条第2項)。
この短期保有株式等に係る配当等の額は、益金不算入の対象にならず、全額が益金に算入されます。
なぜこのような規制があるのでしょうか。株式の価格は一般に配当落ち前に上昇し、配当落ち後に下落する傾向があります。配当直前に株式を取得して配当を受け取り、その後すぐに売却すると、「配当収入(益金不算入)+株式の売却損(損金算入)」という組み合わせで、実質的に税負担を作り出すスキームが可能になります。
規制の目的はスキーム防止です。
たとえば100万円で株式を購入し、配当10万円を受け取った後に90万円で売却した場合、配当10万円が益金不算入になりつつ、売却損10万円が損金算入できるという「理論上ゼロコスト」の節税が可能になってしまいます。この規制はその抜け穴をふさぐためのものです。
投資信託においても、特定株式投資信託(ETF)については、同様に短期保有に関する規定が適用されます。分配金直前に購入して直後に売却する行為は、上記と同様の判定を受ける可能性があります。
平成27年(2015年)4月1日以後に開始する事業年度から、受取配当等の益金不算入制度が大きく見直されました。この改正による投資信託への影響は非常に大きく、改正前後の違いを把握していない場合、節税効果の計算が大幅にずれてしまいます。
改正の主な内容は以下のとおりです。
| 投資信託の区分 | 改正前 | 改正後(現行) |
|---|---|---|
| 通常の証券投資信託 | 収益分配金の1/2 × 50%が不算入 | 全額益金算入(対象外) |
| 外貨建資産割合または非株式割合50%超75%以下の投資信託 | 収益分配金の1/4 × 50%が不算入 | 全額益金算入(対象外) |
| 外貨建資産割合または非株式割合75%超の投資信託 | 全額益金算入 | 全額益金算入(変更なし) |
| 特定株式投資信託(国内ETF等) | 収益分配金の50%が不算入 | 20%が不算入(引き下げ) |
この改正によって、一般的な株式投資信託(アクティブファンドやインデックスファンドの多く)は、改正前は部分的に益金不算入の恩恵を受けられていたのに、改正後は一切適用されなくなりました。また、特定株式投資信託(ETF)についても不算入割合が50%から20%へと大幅に引き下げられています。
税負担が増えた改正です。
この改正の背景には、「持株比率が低い株式等への投資は、債券投資など他の投資機会との税負担の均衡を図るべきだ」という考え方があります(財務省の資料より)。投資信託は多種多様な資産に分散投資する商品であり、純粋な「株式の二重課税防止」の趣旨に直接当てはまらないと整理されたわけです。
法人として投資信託を活用した資産運用戦略を立てる際、この改正の影響を踏まえた上で、ETF(特定株式投資信託)と一般投資信託との税務上の扱いの違いを考慮することが欠かせません。
益金不算入の適用を受けるためには、確定申告書に別表8(一)「受取配当等の益金不算入に関する明細書」を添付することが必要です。この添付を忘れると、制度の適用が認められない可能性があります。実務では、この手続きの失念が税理士賠償責任に発展したケースも報告されています。
別表8(一)は国税庁ホームページからダウンロードでき、記載する主な項目は以下のとおりです。
特に投資信託に関しては「ETFかどうかの確認」が重要です。証券会社から受け取る「投資信託収益分配金・償還金のお知らせ(兼支払通知書)」に、当該投資信託が特定株式投資信託(国内ETF)に該当するかどうかの情報が記載されていることが多いため、この書類を必ず保管してください。
また、関連法人株式等(持株比率1/3超)に係る益金不算入額の計算では、「負債利子控除」という計算が必要です。これは、借入金などの負債に係る支払利子の一定割合を益金不算入額から控除するものです。支払利子等の額の合計額の10%が上限とされており、計算が複雑になります。
負債利子の計算が必要です。
支払利子に含まれるものとしては、借入金利子、支払手形の割引料負担額、従業員預り金の利子、社債の金銭債務の償還差損の損金算入額などがあります。一方、利子税・延滞金は含まれず、売上割引料も対象外です。区分の判定を誤ると、益金不算入額が変わり、最終的な法人税等の金額も変わってくるため注意が必要です。
受取配当金の益金不算入と投資信託をめぐる実務上の失敗には、いくつかの典型的なパターンがあります。これらを知っておくことで、余分な税負担や税理士との間のトラブルを防ぐことができます。
失敗① 一般的な投資信託の分配金を益金不算入として申告してしまう
「株式投資信託の分配金だから益金不算入になる」という誤解が原因です。ETF(特定株式投資信託)以外の株式投資信託の分配金は全額益金算入です。別表8(一)に誤って記載してしまうと、過少申告加算税のリスクが生じます。
失敗② 特別分配金を受取配当金として収益計上してしまう
特別分配金は元本の払い戻しであり、収益ではありません。「受取配当金」として処理すると収益が過大計上され、不要な法人税負担が発生します。支払通知書で普通分配金と特別分配金の区分を必ず確認することが必要です。
失敗③ 平成27年改正前の情報をそのまま使用している
古い参考書や資料を使うと、改正前の「50%益金不算入」が現行でも適用できると誤解するケースがあります。ETFについては現行では20%、一般投資信託は対象外という現行ルールを常に確認してください。
失敗④ 解約請求と買取請求の税務処理を混同してしまう
投資信託の換金方法によって税務処理が変わります。特に解約請求時の源泉徴収の有無を確認せずに仕訳を切ると、法人税申告での調整が複雑になります。
これは防げる失敗です。
上記のような実務上のミスを防ぐためには、投資信託の保有一覧を証券会社の「支払通知書」と照らし合わせながら年度末に整理することが効果的です。特に複数の投資信託を保有している法人では、ファンドごとに「ETFか否か」「分配金の種類は何か」「解約か買取請求か」を一覧表にしておくと、申告書作成時の確認がスムーズになります。
法人として投資信託を保有するケースとして、資産管理会社(プライベートカンパニー)での運用が増えています。事業所得ではなく、資産運用を目的とした法人で投資信託を保有するケースです。このような場面で、受取配当金の益金不算入制度の恩恵を最大限に活用しようとする際の「落とし穴」があります。
資産管理会社では、親会社や個人オーナーが子会社株式を100%保有するケースが多く、関連法人や完全子法人からの配当は100%益金不算入となります。しかし、投資信託の分配金については、ETF以外は一切の益金不算入が受けられないことを見落としがちです。つまり、株式からの配当は完全非課税でも、投信の分配金は100%課税対象という「同じ配当収入でも全く異なる扱い」が生じます。
扱いが全然違います。
また、資産管理会社が持株比率25%以上〜1/3以下で株式を保有しているケースでは、平成27年の税制改正によって益金不算入割合が100%から50%に引き下げられた影響を受けています。改正前は持株比率25%以上であれば100%益金不算入でしたが、現行では1/3超でなければ100%にはなりません。資産管理会社のオーナーは保有割合の見直しも検討の余地があります。
このような複雑な判断が絡む場合は、税理士への相談が最も確実です。法人の決算・申告の際に「受取配当金の益金不算入制度を正しく適用しているか」「別表8(一)の記載は正確か」をチェックリストとして確認することを強くお勧めします。税務申告ソフト(弥生会計、マネーフォワード クラウド会計、freee)を利用している場合でも、投資信託の区分の判定は自動では行われないため、手動での確認が必要です。
益金不算入制度を正しく適用するために、申告前に確認すべき最終チェックポイントをまとめます。制度の適用誤りは過少申告加算税や延滞税のリスクにつながるため、丁寧に確認することが大切です。
チェック1:受け取った分配金の種類を確認する
証券会社からの「投資信託収益分配金・償還金のお知らせ(兼支払通知書)」を確認し、普通分配金と特別分配金に区分してください。
特別分配金は収益計上しない点が重要です。
チェック2:該当する投資信託がETF(特定株式投資信託)かどうかを確認する
ETFに該当する場合のみ、益金不算入の適用(20%)が可能です。一般的な株式投資信託・公社債投資信託・外国株価指数連動型ETFは対象外です。銘柄コードを確認するか、証券会社に問い合わせて確認できます。
チェック3:別表8(一)を作成し申告書に添付する
確定申告書への添付が適用の条件です。別表8(一)は国税庁のサイトからダウンロードできます。
国税庁「法人税等各種別表関係(令和5年4月1日以後終了事業年度等分)」
チェック4:株式の保有割合を正しく判定する
株式の配当を受け取っている場合、持株比率に応じた区分(完全子法人・関連法人・その他・非支配目的)を正確に判定します。特に「1/3超」「5%以下」の境界線付近は特に注意が必要です。
チェック5:関連法人株式等の場合は負債利子控除を計算する
持株比率1/3超の株式からの配当は、支払利子等の10%を上限に負債利子控除を行う必要があります。借入金がある法人では特に忘れがちなポイントです。
以下の参考リンクも確認しておくと、理解がさらに深まります。
国税庁の公式パンフレットで別表8(一)の具体的な記載例を確認できます。
国税庁「別表八(一)受取配当等の益金不算入に関する明細書の記載例」(PDF)
財務省の資料で、制度の設計背景と持株比率別の考え方の根拠を確認できます。
平成27年税制改正による変更点の詳細は以下の国税庁資料が参考になります。
国税庁「特定株式投資信託の収益の分配に係る受取配当等の益金不算入の特例」(PDF)