
投資有価証券は、企業会計基準委員会が1999年に公表した「企業会計基準第10号 金融商品会計基準」に基づいて定義されており、売買目的有価証券および1年以内に満期が到来する社債その他の債券以外の有価証券を指します。
具体的には、関連会社株式、企業の持ち合い株式、証券市場において流通しない債券、他の企業を支配する目的で1年以上保有する債券、国債などが該当し、会計上は固定資産の部に計上されます。
参考)投資有価証券
一方で、有価証券は保有目的や保有期間に応じて「有価証券」と「投資有価証券」に分けて表示されるため、この分類を正確に理解することが実務上極めて重要です。
投資有価証券の評価方法は、保有目的に応じて(1)満期保有目的の債券(2)子会社及び関連会社株式(3)その他有価証券の3つに分類され、それぞれ異なる会計処理が適用されます。
参考)わかりやすい解説シリーズ「金融商品」 第2回:有価証券の評価…
満期保有目的債券は取得原価で評価し、償却原価法により帳簿価額を調整します。子会社・関連会社株式は取得原価で評価し、事業戦略上売却する予定がないため時価評価は行いません。
参考)投資有価証券の期末評価
その他有価証券は期末時価で評価し、評価差額は損益計算書ではなく貸借対照表の純資産の部に直接計上する「純資産直入法」を採用します。これは時価変動により利益を得る目的ではないため、評価差額を業績に反映させる必要がないとする考え方によるものです。
参考)投資有価証券の評価損益と貸借対照表の表示
貸借対照表上の表示において、有価証券は流動資産に、投資有価証券は固定資産の「投資その他の資産」の部に計上され、1年基準による明確な区分が設けられています。
流動資産の「有価証券」には売買目的有価証券や期末日後1年以内に満期が到来する社債が含まれ、これらは流動性が高く短期間での現金化が想定されています。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-accounting/current-assets/
投資有価証券は満期まで1年を超える満期保有目的債券、子会社株式・関連会社株式、その他有価証券が該当し、長期保有を前提とした資産として位置付けられます。なお、時間の経過により満期まで1年以内となった債券は、流動資産として振り替える必要があります。
参考)投資その他の資産の部 | 貸借対照表 | 法人用 | 財務諸…
投資有価証券の時価が著しく下落した場合、下落分を評価損として損益計算書に計上する必要があり、これは与信管理において重要な指標となります。
参考)投資有価証券
取引所売買有価証券の場合、事業年度終了日の最終売買価格を期末時価とし、売買価格の公表がない場合は最終の気配相場価格を採用します。店頭売買有価証券についても同様の方法で時価を算定します。
時価と取得原価の乖離が大きい場合、実質的な債務超過の可能性もあるため、特にバブル期に取得した有価証券については現在の時価との比較検討が不可欠です。未公開株などの公正な時価がつかない有価証券は、原則として取得原価で評価されます。
法人が投資有価証券を保有することで、投資関連費用を経費として計上し利益を圧縮する節税効果が期待できます。書籍やPC代、投資セミナー参加費などは必要経費として処理可能で、個人投資とは異なる税制上の優遇があります。
参考)法人が証券口座で株式投資を行うメリットは?デメリットや注意点…
投資で損失が発生した場合、法人は最長10年間の繰越控除が可能で、この期間中に利益が出れば損失と相殺できるため、長期的な税負担軽減につながります。個人の繰越期間が最長3年であることと比較すると、法人の優位性は明確です。
参考)法人口座で株式投資するメリット、デメリットとは?実施時の注意…
さらに、法人では所得種類に区分がないため損益通算が可能で、株式投資の損失を自社事業の利益と相殺することができ、課税対象を効果的に圧縮できます。日本企業特有の株式持ち合いによる安定株主の確保や取引関係の維持といった戦略的意義も持ちます。