

出資比率が1%違うだけで、手元に残る配当が数百万円変わることがあります。
法人が他の法人から配当を受け取ると、会計上は「受取配当金」として収益に計上されます。しかし、その配当の原資はすでに出資先の法人で法人税が課されたあとの利益です。受取った側でもう一度課税してしまうと、同じ利益に二重に税金がかかることになります。
この経済的二重課税を排除するために設けられたのが「受取配当等の益金不算入制度」です。つまり原則です。
対象となる受取配当金は、法人税の申告書において「別表八(一)」への記載を通じて益金不算入額を計算し、課税所得から除外します。会計上は収益に計上したままですが、法人税の計算上は一定額を「益金に入れない」という処理です。これが基本です。
制度の対象となるのは内国法人から受け取る配当金だけではありません。投資信託・投資法人(REIT)からの金銭の分配、一定の特定株式投資信託の収益の分配も含まれます。一方、外国法人から受け取る配当(外国子会社からの配当を除く)や、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配は対象外となる点に注意が必要です。
制度を利用するには確定申告書に益金不算入額とその計算明細の添付が必須となります。添付を失念すると、そもそも適用できないため要注意です。
受取配当等の益金不算入制度の核心は、出資比率(持株割合)によって受取配当がどの区分に該当するかを判定し、その区分に応じた不算入割合を適用することです。4区分が条件です。
現行の区分と益金不算入割合は以下のとおりです。
| 区分 | 持株割合 | 益金不算入割合 | 負債利子控除 |
|---|---|---|---|
| 完全子法人株式等 | 100% | なし | |
| 関連法人株式等 | 1/3超〜100%未満 | 100%(負債利子控除後) | あり |
| その他の株式等 | 5%超〜1/3以下 | 50% | なし |
| 非支配目的株式等 | 5%以下 | 20% | なし |
この表が示すように、出資比率が高いほど益金不算入割合も高くなります。完全子法人(100%保有)であれば配当の全額が課税されず、グループ内での資金移動を実質的に無税で実行できます。
一方、5%以下の株式(非支配目的株式等)だと不算入割合はわずか20%です。たとえば1,000万円の配当を受けても800万円が課税対象の益金となり、法人税率が約30%とすると240万円もの税負担が生じます。
「5%以下の投資先から配当を受けているが、てっきり50%不算入だと思っていた」という誤りは実務でも散見されます。意外ですね。国税庁や会計検査院も過大計上の誤りとして注意喚起しているほどです。
正しい判定の手順は、まず「完全子法人株式等か?」→「関連法人株式等か?」→「非支配目的株式等か?」という順で確認し、いずれにも該当しない場合にはじめて「その他の株式等」とする、というステップを踏むことが重要です。
出資比率が1/3超100%未満に該当する「関連法人株式等」の配当は、原則として100%益金不算入です。しかし完全子法人株式等と異なり、「負債利子控除」という調整計算が必要になります。厳しいところですね。
負債利子控除とは、株式取得に使った借入金の利息(支払利子)に対応する部分を、益金不算入額から差し引く仕組みです。令和4年4月1日以後開始の事業年度からは、控除額の計算方法が次のとおりに改正されました。
具体的な数字で見てみましょう。甲社が乙社(持株比率40%)から1億円の配当を受け取り、その期に関連する支払利子が1,000万円あった場合を考えます。
この場合、低い方の100万円が負債利子控除額になります。益金不算入額は1億円 − 100万円 = 9,900万円です。
改正前は「基準年度の支払利子比率を使う簡便法」も認められていましたが、現行は原則4%・特例10%の比較という明快な計算式に統一されています。これが条件です。
ただし、負債利子がまったくない会社(無借金経営)であれば控除額はゼロとなり、完全子法人と同様に配当全額が益金不算入となります。それなら問題ありません。
国税庁|通算制度における関連法人株式等に係る受取配当等の益金不算入額の計算(公式Q&A)
出資比率だけ満たしていれば安心、というわけにはいきません。完全子法人株式等と関連法人株式等には、「継続保有要件」という別の落とし穴があります。
完全子法人株式等(100%保有)および関連法人株式等(1/3超保有)について、100%または1/3超の保有が「配当の計算期間の初日から末日まで継続して」いる必要があります。これが原則です。
M&Aで子会社を買収してすぐに配当を実行すると、計算期間の途中から保有したことになるため、この継続保有要件を満たせません。その結果、区分が「その他の株式等」に落ち、益金不算入割合は100%ではなく50%になってしまいます。痛いですね。
たとえば10億円の配当を実行した場合、100%不算入なら課税ゼロ、50%不算入なら5億円が課税対象です。法人税率30%で単純計算すると、1億5,000万円の税負担差が生じます。これは使えそうです。
なお、関連法人株式等に関しては、計算期間が6カ月を超える場合には「計算期間末日以前6カ月間、継続して1/3超保有」という緩和要件も認められています。配当の計算期間が長い場合にはこの特例の活用も検討に値します。
M&A後すぐに資金回収が必要な場面では、いったん期中に少額の臨時配当を実行して配当計算期間をリセットし、その後本配当を実施するという対策も考えられます。ただし、税務調査で「益金不算入適用のための形式的な配当」と否認されるリスクがあるため、事前に専門家への相談が欠かせません。
マロニエ会計事務所|子会社配当で二重課税を回避する方法・益金不算入制度の適用要件と注意点
令和4年4月1日以後に開始する事業年度から、持株割合の判定方法に大きな変更が加えられました。単体の保有比率だけで判定していた時代は終わっています。
改正前は、各法人が単独で保有する株式数で区分を判定していました。改正後は、「その法人との間に完全支配関係がある他の法人(グループ会社)が保有する株式を合算して判定する」という方式に変わりました。これが今の基準です。
具体例で確認しましょう。A社がB社株式を20%保有し、A社の完全子会社であるC社がB社株式を20%保有している場合、合計保有比率は40%となります。
この改正によって、グループ内の持株比率を合算すると区分が上がるケースが多く生まれました。いいことですね。逆に、グループ全体で合算することで、想定より低い区分に該当してしまうパターンも理論上ありえます。
ただし、冒頭に紹介した税務Q&Aのケースのように、合算による区分アップを狙っても、各社の「継続保有要件」を満たしていなければ適用されません。C社が配当計算期間の途中から株式を取得した場合、合算後の比率だけで判定することはできず、期間全体を通じた保有が確認できないとして区分アップが認められないことがあります。つまり、比率と保有期間の両方をセットで確認することが条件です。
制度改正の恩恵を受けるためには、グループ各社の株式取得日・保有比率・配当の計算期間を一覧化し、どの区分に該当するかを事前にシミュレーションする体制が求められます。
AZN税理士法人|受取配当等の益金不算入制度の見直し(令和4年改正の持株割合判定変更を解説)
国内法人間の配当だけでなく、海外子会社からの配当にも益金不算入制度が存在します。これが「外国子会社配当益金不算入制度」で、平成21年度税制改正で導入されました。
適用要件は2つです。グループ全体で外国法人の発行済株式の25%以上を保有していること、そしてその保有が配当の支払義務確定日以前6カ月以上継続していることが必要です。
要件を満たすと、受け取った配当の95%が益金不算入となります。残り5%は、海外での配当収受に要する費用相当額として益金に算入されます。
国内完全子会社の配当(100%不算入)と比べると5%分だけ多く課税される形になりますが、従来の方式(外国税額控除方式)と比べると圧倒的にシンプルで手続きコストも低くなりました。
なお、租税条約を締結している国の法人については、条約による軽減割合(例:日米租税条約では10%以上保有で適用可)で保有要件が緩和される場合があります。
一方、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の適用対象となる外国関係会社からの配当については、一定の制限が設けられる場合があります。海外展開を進める企業が配当を国内に還流させる際は、まずこの制度の要件確認を専門家と一緒に行うのが賢明です。
東京都中小企業振興公社・X-HUB TOKYO|受取配当金の益金不算入とは?外国法人からの受取配当金の扱い
益金不算入制度を使いこなすと、グループ間の資金移動を実質的に無税で実行できるため、かつては「無税で配当を吸い上げて子会社の時価を下げ、株式を低価格で譲渡して多額の損失を計上する」という節税スキームが横行しました。
その代表例がソフトバンクグループによるスキームで、このスキームにより1〜2兆円規模の譲渡損を作り出したとされています。このスキームを防止するために2020年度税制改正で創設されたのが「子会社簿価減額特例(通称:ソフトバンク税制)」です。意外ですね。
この特例は、完全子法人株式等の配当・適格現物分配・外国子会社配当益金不算入の適用を受けた場合に、益金不算入となった配当額のうち一定額を子会社株式の帳簿価額(税務上の簿価)から減額する仕組みです。税務上の株価の下落分と帳簿価額の減額分が連動するため、配当後に株式を譲渡しても損失が計上されなくなります。
簡潔に言えば、「無税配当で株価を下げて損失を作る」という抜け穴が塞がれたということです。
ただし、一定の要件(たとえばその事業年度中に受けた益金不算入配当額が子会社株式の帳簿価額の10%以下である場合など)を満たす場合は、この特例の適用対象外となります。子会社から多額の配当を受けた後に株式の譲渡・M&Aを検討する場合は、必ずこの特例の影響を事前計算した上で意思決定することが重要です。
益金不算入制度は「知っていると得をする」制度ですが、節税目的で積極的に使いすぎると思わぬ税負担が生じることもあります。出資比率の管理・保有期間の確認・簿価減額特例の把握の3点セットで理解して初めて制度を正しく活用できます。これだけ覚えておけばOKです。
汐留パートナーズ税理士法人|受取配当金の益金不算入制度と関連法人株式等に係る実務判断(具体的なQ&A形式で解説)