別表五(一)の書き方と別表四の検算・利益積立金の完全ガイド

別表五(一)の書き方と別表四の検算・利益積立金の完全ガイド

別表五(一)の利益積立金と申告書の書き方・検算を徹底解説

別表五(一)は「税務上の貸借対照表」とも呼ばれます。でも、その意味を正確に理解している人はほとんどいないのが現実です。


この記事でわかること
📋
別表五(一)の正体と2つの構成

「利益積立金額」と「資本金等の額」の2部構成。税務上の貸借対照表と呼ばれる理由を、会計との差異という切り口でわかりやすく解説します。

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別表四との連動と検算のしくみ

損益計算書と貸借対照表が連動するように、別表四と別表五(一)も密接につながっています。ズレがあったときの原因の見つけ方まで解説します。

⚠️
未納法人税・納税充当金の記載と注意点

混乱しやすい「未納法人税等」と「納税充当金」の違い、事業税がなぜ別表五(一)に登場しないかなど、実務でつまずきやすいポイントを整理します。


別表五(一)とは何か:利益積立金額と資本金等の額の計算


別表五(一)の正式名称は「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」です。法人税の確定申告を行うすべての法人、および仮決算で中間申告を行う法人が作成・提出しなければなりません。


この別表は上下2つのブロックに分かれています。上半分が「利益積立金額の計算に関する明細書」、下半分が「資本金等の額の計算に関する明細書」です。企業分析の観点でも、法人税の実務の観点でも、重要度が高いのは圧倒的に上半分の利益積立金額の部分です。


利益積立金額とは何か、簡単にいうと「会計上の利益剰余金に、一定の税務調整を加えたもの」です。一方、資本金等の額は「会計上の資本金・資本剰余金に、一定の税務調整を加えたもの」となります。この2つを合計したものが、税務上の純資産に相当します。


別表五(一)の構成は以下のとおりです。






































区分 ①期首現在利益積立金額 ②当期の増減(減) ③当期の増減(増) ④差引翌期首現在利益積立金額
利益準備金(1) 前期末残高 当期の取崩額 当期の積立額 ①-②+③
繰越損益金(25) 期首利益剰余金 期末利益剰余金
納税充当金(26) 期首未払法人税等 当期の取崩額 当期の繰入額 期末未払法人税等
未納法人税等(27〜30) △期首未納額 納付した税額 △期末確定税額 △期末未納額


④欄は「①-②+③」の計算結果になります。これが翌期の①欄にそのまま繰り越されるという仕組みです。


つまり連続性が原則です。


では、なぜ別表五(一)が「税務上の貸借対照表」と呼ばれるのかを整理しましょう。貸借対照表の純資産を出発点として、別表五(一)に記載されている調整項目を加減算すると、税務上の純資産が算出できます。つまり「会計上の貸借対照表 + 別表五(一)の記載項目 = 税務上の貸借対照表」という関係が成立するのです。


なお、資本金等の額の部分(下半分)は通常の中小法人では動きが少ないですが、法人住民税均等割額や法人事業税の資本割額の計算に影響することがあるため、確認は欠かせません。


参考:別表五(一)の公式様式・記載要領(国税庁
国税庁「別表五(一) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」


別表五(一)と別表四のつながり:留保項目の記載方法

「会計の損益計算書と貸借対照表が連動しているように、税務上も別表四と別表五(一)は連動している」—これが別表五(一)を理解するうえで最も重要な前提知識です。


別表四では、会計上の当期純利益を出発点として、税務上の所得(課税標準)を計算します。その過程で発生した「加算・留保」「減算・留保」の項目は、そのまま別表五(一)の利益積立金額の留保項目欄にも記載されます。留保項目が別表五(一)と別表四の両方に登場するのはこのためです。


具体的な例を使って整理しましょう。


例えば、会社が会計上100万円の貸倒引当金を計上したとします。ところが税務上、損金に算入できる繰入限度額は30万円のみだったとします。差額の70万円は「損金不算入(貸倒引当金繰入限度超過額)」として別表四で加算・留保されます。そして、同じ70万円が別表五(一)の留保欄(③増の欄)に記載されます。


わかりやすいですね。


翌期以降にこの引当金が実際の貸倒れに適用されて取り崩された際は、今度は別表四で減算・留保、別表五(一)の②減の欄に記載されて消えていきます。これが「一時差異の解消」です。



  • 📌 加算・留保(例:減価償却超過額、貸倒引当金超過額)→ 別表五(一)の③(増)欄にプラス記載

  • 📌 減算・留保(例:翌期以降に損金算入が認められる前払費用)→ 別表五(一)の③(増)欄にマイナス(△)記載


重要なのは、「社外流出」に分類される項目(例:受取配当等の益金不算入)は別表五(一)には記載されないという点です。別表四で「減算・社外流出」となった項目は、すでに会社の外に出たお金の話であり、利益積立金額の増減には影響しません。記載するのは「留保」項目のみという原則が基本です。


また、減価償却超過額の記載タイミングも重要な確認ポイントです。超過額が生じた期は別表五(一)に積み上がり、翌期以降に均等取り崩しを選択した場合は毎期少しずつ解消されていきます。解消が複数年にまたがる場合、年度ごとに④欄の残高が変わっていくことを意識しておきましょう。


参考:別表四と別表五(一)の連動に関する詳細解説
「法人税申告書から読み取れる会社の実態-別表5(1) とは?」(vision-cash.com)


別表五(一)の繰越損益金・納税充当金の書き方と実務のコツ

別表五(一)のなかで、特にミスが起きやすいのが「繰越損益金(25番)」と「納税充当金(26番)」の2つです。これを押さえるだけで記載精度はぐっと高まります。


繰越損益金(25番)の記載


会計上の「繰越利益剰余金」のことです。名称が異なるので注意が必要です。


①欄と②欄には当期首(=前期末)の利益剰余金の金額を記載します。③欄と④欄には当期末の利益剰余金の金額を記載します。別表五(一)の書き方として、この欄は少し特殊で、①と②に同じ金額、③と④に同じ金額を記載するという形が基本パターンです。損失が出ている場合は赤字(△)で記載します。繰越損失は赤(マイナス)が原則です。


納税充当金(26番)の記載


会計上の「未払法人税等」のことを、法人税申告書では「納税充当金」と呼びます。この名称の違いが混乱を招くことがよくあります。


①欄には期首の未払法人税等の金額を記載します。②欄には当期中に支払った(取り崩した)金額、③欄には当期末に新たに計上した(繰り入れた)金額、④欄には期末の未払法人税等の残高を記載します。④欄の金額と貸借対照表の未払法人税等は必ず一致しなければなりません。一致しない場合は記載に誤りがあります。


この点は必須の確認です。


また、納税充当金の欄はプラス(正の値)で記載されます。これは一見奇妙に感じるかもしれません。会計上、未払法人税等は「費用の見積もり(負債)」ですが、法人税では見積り費用をいったん否定するスタンスをとります。未払法人税等という負債をいったんなかったものとする、つまりその分だけ利益積立金額が増えると考えるため、プラス表記になるのです。


実務での確認ポイント



  • ✅ ④欄(繰越損益金)が貸借対照表の繰越利益剰余金と一致しているか

  • ✅ ④欄(納税充当金)が貸借対照表の未払法人税等と一致しているか

  • ✅ 前期の別表五(一)の④欄の金額が、当期の①欄にそのまま転記されているか


特に申告書を前年と別の担当者が作成した場合、前期の④欄と当期の①欄のつながりが切れていないかを最初に確認する習慣をつけるとよいでしょう。連続性が命です。


参考:納税充当金の計算に関する詳細
「法人税申告書の別表5とは?見方や書き方、注意点まで解説」(マネーフォワード クラウド)


別表五(一)の未納法人税等の書き方と事業税が登場しない理由

別表五(一)の27〜30番の欄には「未納法人税等」が登場します。ここは特に混乱しやすい箇所で、実務経験者でも誤りが多い領域です。


未納法人税等とは、法人税のルールに従って申告書(別表一など)で計算した実際の税金の未払額です。具体的には「未納法人税」と「未納住民税(道府県民税・市町村民税)」の2種類が登場します。


これらはすべて△(マイナス)で記載されます。


なぜマイナスなのか。先ほど説明した「納税充当金はプラス」という話と関係しています。納税充当金(未払法人税等)でいったん利益積立金額を増やしたあと、その内訳として実際に計算された法人税・住民税を△で記載することで、「会計上の未払額(見積もり)から、税務上の正確な未払額(計算値)へ置き換える」という処理になります。


つまり、置き換えが目的です。


期首・中間・期末の3段階で記載が変わる



  • 📌 期首未納額:前期末に計上した未納税額を当期中に納付したことを表す。②(減)の欄に記入し、①の期首残高を消します

  • 📌 中間納付:中間申告で支払った法人税・住民税は、③(増)欄に△記入し、②(減)欄にも同額を記入します(期末残高ゼロ)

  • 📌 期末未納額:今期確定した税額のうちまだ未納のものを③(増)欄に△記入します


なぜ事業税は別表五(一)に出てこないのか


「未納法人税等」という言葉を聞くと、事業税も含まれると思いがちです。しかし、事業税は別表五(一)には登場しません。これが実務での盲点です。


理由はシンプルで、事業税は「申告・納税時点で損金に算入する」という現金主義的な扱いをしているからです。前期の事業税が翌期に損金になるため、「未納のまま翌期へ繰り越す」という発想がそもそも存在しません。


事業税は別表五(二)の租税公課の記載に登場しますが、別表五(一)の未納欄には記入しません。これは法人税と住民税だけの話というのが原則です。


事業税は損金算入タイミングが違うというのが基本です。


この区別を知らずに事業税の未納額を別表五(一)の27〜30番に記入してしまうと、後の検算で必ずズレが生じます。毎年のように申告書を作成しているベテランの担当者でも、この点を再確認する価値があります。


参考:未納法人税等の記載の詳細解説
「別表5-1の検算の方法を簡単な数値例と図解でわかりやすく解説」(内田会計事務所)


別表五(一)と税効果会計の関係:繰延税金資産の記載と一時差異の扱い

別表五(一)は、税効果会計を採用している法人(主に上場企業・大会社)では特に複雑な記載が生じます。この関係を理解することで、より深い申告書の読み取りが可能になります。


税効果会計とは、会計上の税金費用と税務上の納税額のズレを財務諸表上で調整する会計処理です。そのズレの源泉となっているのが「一時差異」であり、この一時差異は別表五(一)の留保項目欄に記載された金額に対応しています。


具体的には以下の関係が成立します。



















別表五(一)の留保項目 税効果会計上の区分 計上される勘定科目
プラス(加算留保)例:減価償却超過額、引当金超過額 将来減算一時差異 繰延税金資産(借方)
マイナス(減算留保)例:圧縮積立金、特別償却準備金 将来加算一時差異 繰延税金負債(貸方)


例えば、会社が100万円の貸倒引当金超過額(損金不算入)を別表四で加算・留保した場合、別表五(一)の留保欄にプラス100万円が立ちます。この100万円が「将来減算一時差異」に相当し、法定実効税率(例:約30%)をかけると30万円の「繰延税金資産」が計上されます。


繰延税金資産が増えているということは、将来の税金が減る権利を持っていると考えてください。


会計上、税効果会計を適用すると「繰延税金資産 30万円 / 法人税等調整額 30万円」という仕訳が生じます。この繰延税金資産は貸借対照表の資産の部に計上され、財務諸表上の税金費用(法人税等)を適切に期間対応させる役割を担います。


一方、別表五(一)で税効果会計に関連する記載が生じるのは、繰延税金資産・繰延税金負債の増減が生じる場合です。例えば、前期に計上した繰延税金資産が当期に取り崩された(一時差異が解消した)場合には、別表五(一)の②(減)欄に記載が現れます。


ただし、中小法人(非上場の中小企業など)は税効果会計の適用が不要なケースが多く、この論点は実務上、大企業・準大規模法人の申告書で特に重要になります。一方、投資家として上場企業の申告書・財務諸表を読み解く立場であれば、この関係を理解しているかどうかで、企業の将来の税負担の予測精度が大きく変わります。


参考:税効果会計と一時差異の考え方
「わかりやすい解説シリーズ「税効果」 第2回:一時差異と永久差異」(EY Japan)


別表五(一)の検算方法:別表四との一致確認で申告ミスを防ぐ

別表五(一)が正しく作成されているかを確認するための「検算」は、申告書作成において非常に重要なステップです。多くの税理士や経理担当者が、申告書提出前の必須チェックとして実施しています。


検算の核心は「別表五(一)の利益積立金額の差引合計額(31番の④欄)が、一定の計算式と一致するかどうか」を確認することです。


具体的な検算式はこちらです。











検算式(差引合計額④)
別表五(一)「31」④ = 別表四「51」②(留保所得)+「52」②(前期留保所得計)
-(「27」「29」「30」の③の合計)± 「28」③


この式が一致しない場合は、留保項目の転記漏れ、未納法人税等の記載誤り、納税充当金の金額のズレ、といった原因が考えられます。


もう一つの重要な検算として「前期の④欄と当期の①欄が一致しているか」というチェックがあります。これは当たり前のように思われますが、会計ソフトの切り替えや担当者交代などのタイミングで欠落しているケースが実際に存在します。


よくあるミスとその原因



  • 🔴 事業税の未納額を27〜30番に記入してしまう:事業税は別表五(一)には登場しません。別表五(二)のみの記載です

  • 🔴 繰越損益金(25番)と会計の繰越利益剰余金の名称混同:名称は違っても金額は同じです。誤った科目を転記しないよう注意が必要です

  • 🔴 納税充当金と未払法人税等の不一致:別表五(一)④欄と貸借対照表の未払法人税等は必ず一致しなければなりません

  • 🔴 適格合併等の組織再編が生じた場合の特殊処理:通常の検算式が合わないことがあります。組織再編があった期は専門家への確認が必要です


実際の申告実務では、会計ソフト(弥生会計マネーフォワード クラウド会計、freeeなど)の法人税申告機能を使って自動作成するケースが増えています。ただし、自動作成であっても、上記の検算ポイントを手動で確認する作業は省略できません。ソフトが自動入力する内容の前提として正しい会計データが入力されていることが必要で、そこにミスがある場合は申告書のミスに直結します。


申告書の正確性が最終的な税負担を左右します。金額が大きな法人ほど、別表五(一)の検算を最低でも2人以上の目でチェックする体制を整えておくことが、税務リスクを最小化するうえで効果的です。


参考:別表四と別表五(一)の検算・整合性確認に関する解説
「法人税申告書別表四と五の検算」(税理士法人シグマパートナーズ)




法人税申告書 別表四、五(一)のケース・スタディ(令和6年度版)