

永久差異と一時差異を混同したまま申告すると、数百万円規模の税務調整ミスにつながります。
会計と税務は、同じ「利益」を扱っているように見えて、実は出発点となるルールがまったく異なります。会計(企業会計)は「投資家や債権者に正確な業績を伝えること」を目的とし、税務(税務会計)は「公平な課税所得を算出すること」を目的としています。この目的のズレが、会計上の利益と税務上の課税所得の差異を生み出す根本的な原因です。
計算式で整理すると、次のようになります。
「費用」と「損金」、「収益」と「益金」は似ているようで必ずしも一致しません。そこで生まれる差異が「一時差異」と「永久差異」の2種類です。
一時差異は、会計と税務で費用・収益の認識タイミングがずれているために生じる差異で、いずれ将来的に解消されます。一方、永久差異は、会計と税務の考え方そのものが異なるために生じる差異で、将来にわたって絶対に解消されません。
つまり一時差異です。この分類が税効果会計の適用有無を決定するため、どちらに該当するかを正確に判断することが非常に重要です。
| 分類 | 定義 | 税効果会計の適用 |
|---|---|---|
| 一時差異 | 認識タイミングのズレ。将来解消される | ✅ 対象 |
| 永久差異 | 考え方自体の違い。永久に解消されない | ❌ 対象外 |
一時差異はさらに2種類に分かれます。差異が解消されるときに課税所得が「減る」ものを将来減算一時差異、「増える」ものを将来加算一時差異と呼びます。それぞれの代表的な例を確認しましょう。
将来減算一時差異の条件です。将来減算一時差異が解消するときは課税所得が減り、税金も少なくなります。これは「将来の税金の前払い」と考えることができるため、貸借対照表(B/S)に繰延税金資産として計上します。
【将来減算一時差異の具体例】
将来加算一時差異の条件です。将来加算一時差異が解消するときは課税所得が増え、税金も多くなります。これは「将来の税金の未払い」に相当するため、B/Sに繰延税金負債として計上します。
【将来加算一時差異の具体例】
これが基本です。将来減算は「繰延税金資産(資産)」、将来加算は「繰延税金負債(負債)」という対応関係を押さえておくと、仕訳への理解も深まります。
参考:一時差異と永久差異の種類や別表四・五(一)への反映方法について詳しく解説しています。
一時差異と永久差異の種類|税効果会計・別表四・五(一) | 経理のお仕事
永久差異は「そもそも会計と税務の考え方が違う」ために生じるため、いつになっても差異は縮まりません。差異が解消されない以上、税効果会計を適用して繰延税金資産や繰延税金負債を計上することはできないのです。意外ですね。
【永久差異の具体例】
永久差異が原則です。永久差異の場合、法人税申告書の別表四では「社外流出」の欄に記入します。一時差異が「留保」欄に記入されるのと異なり、別表五(一)への転記は不要です。この区別を誤ると、申告書の記載ミスにつながるため注意が必要です。
参考:EY Japanによる「一時差異と永久差異」のわかりやすい解説シリーズ。図解を交えた解説が参考になります。
わかりやすい解説シリーズ「税効果」第2回:一時差異と永久差異 | EY Japan
税効果会計は、一時差異が生じた際に「将来の税負担の増減を先取りして財務諸表に反映させる」会計処理です。これにより、損益計算書(P/L)の税引前当期純利益と法人税等の金額に一定の対応関係を持たせることができます。
税効果会計を適用する際の基本的な流れは次の通りです。
具体的な数値例で確認しましょう。仮に、ある企業が賞与引当金100万円を会計上に計上したが、税務上は損金として認められなかった(将来減算一時差異100万円)とします。法定実効税率を30%とすると、繰延税金資産は以下のように計算されます。
繰延税金資産 = 100万円 × 30% = 30万円
この30万円は「将来、賞与が支払われるときに税金が30万円安くなる権利」と解釈できます。発生時の仕訳は次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 30万円 | 法人税等調整額 | 30万円 |
翌期に実際に賞与を支払い差異が解消されたとき(取り崩し時)の仕訳はこうなります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税等調整額 | 30万円 | 繰延税金資産 | 30万円 |
これが条件です。ポイントは、繰延税金資産(負債)は貸借対照表(B/S)科目であり、法人税等調整額は損益計算書(P/L)科目である点です。この2つの勘定科目を組み合わせて税効果会計が成立します。
なお、永久差異には税効果会計を適用しません。仮に永久差異に繰延税金資産を計上してしまうと、差異が解消されないため、その資産がB/Sに永久に残り続けるという深刻な問題が生じます。これは財務諸表の信頼性を著しく損ないます。
参考:マネーフォワード クラウド会計による永久差異・一時差異・税効果会計の解説記事です。
永久差異と一時差異の違いとは?例から解説 | マネーフォワード クラウド会計
繰延税金資産はすべて計上できるわけではありません。これは意外な落とし穴です。将来減算一時差異が生じても、将来的にその差異が解消されるタイミングで課税所得がなければ、税金が安くなる効果を享受できません。そのため「回収可能性がある部分のみ」しか資産計上が認められないのです。
回収可能性の判断は次の3つの観点から行います。
特に注意が必要なのが「取り崩し」が発生したときの影響です。業績が悪化して将来の課税所得の見込みが立たなくなると、それまで資産計上していた繰延税金資産を取り崩さなければなりません。この取り崩し額は損益計算書の「法人税等調整額」として費用計上されるため、当期純利益を直接押し下げます。
例えば、10億円の繰延税金資産を全額取り崩した場合、それだけで当期純利益が10億円悪化する計算になります。上場企業であればその結果が株価にも影響を与えることがあり、投資家が財務諸表を読む際に繰延税金資産の規模を重視する理由の一つです。
痛いですね。逆に言えば、繰延税金資産を適切に積み上げることは財務健全性の指標にもなりますが、過剰に計上していれば後の取り崩し時に財務諸表を大きく悪化させるリスクも孕んでいます。
この一時差異に関する回収可能性の管理は、特に上場企業や上場準備中のIPO企業にとって非常に重要な論点です。IPOを控えた企業では、監査法人が繰延税金資産の計上根拠を厳しくチェックするため、早い段階から課税所得の見通しを整理しておく必要があります。
参考:繰延税金資産の回収可能性・取り崩しの影響・仕訳までを詳しく解説。IPO準備中の企業にも参考になる記事です。
繰延税金資産とは?仕訳、計算方法、回収可能性および取り崩し解説 | 奉行シリーズ
ここまでは会計・税務の基本的な整理でしたが、この一時差異・永久差異の概念は、投資家や経営者の視点でも非常に重要な意味を持ちます。財務諸表を「読む力」に直結する知識です。
まず投資家の視点から考えてみましょう。企業のB/Sに多額の繰延税金資産が計上されていた場合、それは一見「資産が多い」と見えますが、実態は「過去に損金不算入になった金額が将来の税金と相殺される見込み額」に過ぎません。業績が回復しなければ、この資産は価値を持たない「幻の資産」になります。これは使えそうです。
逆に、B/Sに繰延税金負債が大きく計上されている企業は、将来的に大きな税金支払いが予定されているとも読めます。これは将来加算一時差異の裏返しであり、例えば圧縮積立金が積み上がっているということは過去に大型の補助金や保険差益を得たことを意味します。
次に経営者の視点です。交際費を年間で800万円超計上している中小企業(資本金1億円以下の法人)は、超過部分が永久差異として損金不算入となります。この費用は税務上まったく恩恵を受けられないため、税引前利益と実効税負担率のかい離を生み出します。経営管理の観点では、交際費の支出をコントロールすることが実効税率の最適化につながります。
また、受取配当金の益金不算入は、一定の持株割合を持つ子会社からの配当の場合、全額が益金不算入となります。例えば完全子会社(100%持株)からの配当は全額益金不算入のため、グループ会社間の資金移動を配当という形で行うと税負担なしで手元に資金を引き上げられます。これが「グループ経営における配当活用」の節税策として広く知られている理由です。
厳しいところですね。ただし、この永久差異の恩恵を享受するためには「持株割合」や「保有期間」など細かい要件があり、要件を外れると益金算入になる場合もあります。金融機関や機関投資家が財務諸表を精査する際は、法人税等の実効税率と名目税率(法定実効税率)の乖離幅を分析することで、永久差異や一時差異の状況を推し量ることができます。税率乖離が大きければ、何らかの差異が発生していると推測できるわけです。
参考:税効果会計の間違いやすいポイントや、繰延税金資産の回収可能性判断の手順について詳細な解説があります。

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