

貯蔵品は仕入の40%を経費にできません
棚卸資産とは、企業が営業目的を達成するために所有し売却を予定する資産を指しますが、実は販売目的ではない短期消費品も含まれます。貯蔵品は棚卸資産の一種であり、切手や収入印紙、事務用消耗品、梱包材など、販売を目的とせず社内で使用・消費するために保有している物品で、かつ決算日時点で未使用のものを指します。
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会計基準では「販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等」も棚卸資産に含まれると明記されています。つまり、切手や印紙のような有価物だけでなく、コピー用紙や文房具などの事務用品も、期末に未使用分があれば貯蔵品として資産計上する必要があるということです。
参考)会計基準詳細
棚卸資産に含まれるということですね。
貯蔵品が棚卸資産に含まれる理由は、企業の正確な財政状態を把握するためです。購入時に全額を経費計上すると、実際には未使用の資産があるにもかかわらず費用が過大に計上され、利益が実態より少なく見えてしまいます。これは利益操作につながる可能性があるため、税務調査では貯蔵品の処理が重点的に調べられることが多いです。
参考)https://www.nisshinfire.co.jp/corp/pdf/si105_03.pdf
棚卸資産と貯蔵品の最大の違いは、その物品が直接売上に関わるかどうかという点にあります。
参考)土地家屋調査士法人共立パートナーズ
棚卸資産に分類される物品には以下のようなものがあります:
一方、貯蔵品に分類されるのは以下のような物品です:
参考)貯蔵品と棚卸資産の違いとは?該当する資産について詳しく解説 …
これが原則です。
判定が難しいケースもあります。例えば、製造業で使用する梱包材は、商品を販売するために必要な資材ですが、直接的な売上原価ではないため貯蔵品として処理するのが一般的です。また、小売業で使用するレジ袋やラッピング用品も、販売活動に付随するものですが貯蔵品に分類されます。
参考)新着情報
区分を間違えると、売上原価の計算が不正確になり、損益計算書の信頼性が損なわれます。売上に直結するかという視点で判断することが重要です。
貯蔵品の会計処理には、原則的な方法と簡便法の2種類があります。
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原則的な方法では、購入時に貯蔵品(資産)として計上し、使用時に経費に振り替えます。例えば、10,000円分の切手を購入した場合、購入時は「借方:貯蔵品 10,000円/貸方:現金 10,000円」と仕訳し、そのうち3,000円分を使用した際に「借方:通信費 3,000円/貸方:貯蔵品 3,000円」と処理します。
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これが基本的な処理ですね。
簡便法では、購入時に経費として処理し、期末に未使用分を貯蔵品に振り替えます。継続的に購入し使用している場合に限り認められる方法で、例えば10,000円の切手を購入時に「借方:通信費 10,000円/貸方:現金 10,000円」と仕訳し、期末に未使用分が500円あった場合「借方:貯蔵品 500円/貸方:通信費 500円」と修正します。
ただし、簡便法を採用する場合は毎年同じ処理を継続する必要があります。前年度は経費計上したのに今年度は資産計上する、といった処理の変更は原則として認められません。
継続性の原則に反するためです。
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期末の実地棚卸では、帳簿上の数量と実際の在庫数量を照合し、差異があれば原因を調査して適切に処理する必要があります。紛失や盗難があった場合は雑損失として処理し、カウントミスであれば帳簿を修正します。
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貯蔵品も棚卸資産の一部であるため、法人税法で定められた評価方法を適用する必要があります。企業は評価方法を一つ選んで税務当局に届け出る必要があり、届出がない場合は法定の評価方法である最終仕入原価法が適用されます。
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評価方法には以下のようなものがあります:
最終仕入原価法が一般的です。
重要なのは、選択した評価方法を継続して適用することです。評価方法を変更する場合は、税務署に「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を提出し、承認を得る必要があります。
税務調査では、利益操作を目的とした貯蔵品の大量購入が特に注意されます。決算期末に大量の切手や印紙を購入して経費計上することで、意図的に利益を圧縮する行為は否認される可能性が高いです。貯蔵品は使用時に数量をコントロールしやすいため、不正会計の温床になりやすいからです。
通常の使用量を大幅に超える購入は避けるべきですね。
棚卸資産の計上漏れは、税務調査で最も指摘されやすい項目の一つです。計上漏れがあると、その分が売上原価(費用)に過大に含まれ、利益が実態より少なく計上されている状態になります。
例えば、期末に100万円分の貯蔵品があるのに計上せず全額を経費としていた場合、本来は「資産100万円、費用0円」とすべきところを「資産0円、費用100万円」と処理していることになります。これは100万円分利益を過少申告していることと同じです。
修正すると追徴課税が発生します。
税務調査で指摘されると、本税に加えて過少申告加算税(10%)や延滞税が課されます。悪質と判断されれば重加算税(35%)が適用される可能性もあります。100万円の計上漏れなら、法人税率を約30%と仮定すると本税30万円に加えて加算税や延滞税が上乗せされ、総額で40万円以上の追徴になることもあります。
計上漏れを防ぐためには、期末の実地棚卸を確実に実施することが重要です。倉庫や事務所の隅に置かれた切手や印紙、消耗品のストックを見落とさないよう、チェックリストを作成して組織的に棚卸を行いましょう。特に複数の拠点がある企業では、各拠点の在庫を漏れなく集計する仕組みが必要です。
棚卸資産の計上漏れに関する詳細な解説(PDF)
上記PDFには、棚卸資産の計上漏れがもたらす財務諸表への影響と、実務上の対応策が具体的に記載されています。
会計実務では「重要性の原則」により、金額的に重要でない貯蔵品は資産計上を省略できる場合があります。ただし、明確な金額基準は法令で定められておらず、企業の規模や業種、取引慣行などを総合的に考慮して判断します。
一般的な目安としては、以下のような判断基準が用いられます:
実務的な判断が求められます。
ただし、切手や収入印紙など換金性の高い有価物については、金額の多寡に関わらず厳格に管理すべきです。これらは現金同等物として扱われるため、紛失や横領のリスクが高く、内部統制上も重要な管理対象となります。
重要性の原則を適用する場合でも、一度決めた処理方法は継続的に適用する必要があります。ある年は省略して、別の年は計上するといった恣意的な処理は認められません。税務調査で利益調整と判断されれば、過去にさかのぼって修正を求められる可能性があります。
処理方針を社内規定として明文化し、経理担当者が変わっても同じ処理が継続されるようにしましょう。「期末在庫が5万円以下の消耗品は重要性が乏しいため資産計上を省略する」といった具体的な基準を定めておくと、判断のブレを防げます。