時価評価とは何か:仕組みと投資判断への活用法

時価評価とは何か:仕組みと投資判断への活用法

時価評価とは:仕組みから投資活用まで徹底解説

含み益が50万円あっても、売らなければ税金はゼロ円のまま放置できます。


この記事の3つのポイント
📌
時価評価の基本

時価評価とは、資産を「買ったときの価格」ではなく「今この瞬間の市場価格」で評価する手法です。株式・投資信託・不動産・M&Aなど幅広い場面で使われます。

⚖️
簿価評価との違い

簿価評価は「買ったときの価格のまま固定」するのに対し、時価評価は日々変動します。どちらが正しいのではなく、資産の種類や目的によって使い分けが必要です。

💡
投資家が知っておくべき落とし穴

時価評価が高くても、課税されるのは「売却して利益を確定した瞬間」だけです。評価益と実現益の違いを理解しないと、投資判断を誤るリスクがあります。


時価評価とは何か:投資家向けにわかりやすく解説


時価評価(じかひょうか)とは、資産の価値を「購入時点の価格(取得原価)」ではなく、「現在の市場で成立している価格(時価)」を基準として評価する手法のことです。株式投資信託のように、市場で毎日価格が変動する金融商品において特に重要な概念です。


たとえば、100万円で購入した株式が、1年後に130万円になっていたとします。この場合、簿価評価では帳簿上は「100万円の資産」のままです。一方、時価評価では「130万円の資産」として評価されます。この差額30万円が、いわゆる「含み益(評価益)」にあたります。


つまり時価評価です。


「時価」という言葉はシンプルに見えますが、実際には複数の定義が存在します。金融商品会計では「市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合に、資産の売却によって受け取る価格」と定義されています(企業会計基準第10号)。不動産の場合は路線価・公示価格・鑑定評価額などが時価の参考指標となります。










資産の種類 時価の参照先
上場株式 株式市場の終値・終値平均
投資信託 基準価額(1日1回算出)
国債・社債 市場価格・償却原価法
不動産 路線価・公示価格・不動産鑑定
非上場株式 DCF法・類似会社比較法など


投資初心者が混乱しやすい点は、「評価額」と「実現損益」の区別です。時価評価はあくまで"今この瞬間"の価値を数字で示したにすぎず、実際に売却して初めて損益が「確定」します。含み益・含み損はあくまでも帳簿上の数字であることを、まず押さえておきましょう。


参考リンク(時価評価の会計基準・公式定義)。
企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準委員会)


時価評価と簿価評価の違い:どう使い分けるのか

時価評価と対になる概念が「簿価評価(ぼかひょうか)」です。簿価評価は資産を取得したときの原価(取得原価)をそのまま帳簿に記録し続ける方法で、別名「原価主義」とも呼ばれます。


簡単なイメージで説明します。10年前に3,000万円で買ったマンションが、現在の市場では5,500万円になっていたとします。


- 簿価評価:帳簿上は「3,000万円の資産」のまま
- 時価評価:帳簿上は「5,500万円の資産」として計上


この差額2,500万円が「含み益」です。簿価評価だと財務諸表を見ても2,500万円の上昇が見えないため、資産の実態が正確に把握しにくいという問題が起きます。


結論は、どちらが優れているかではなく「用途が違う」という点です。


日本の会計基準では、資産の種類ごとに時価評価・簿価評価の使い方が明確にルール化されています。



  • 売買目的有価証券:時価評価が義務。評価損益は損益計算書に計上。

  • その他有価証券(長期保有の株式等):時価評価。ただし評価差額は純資産の部に計上。

  • 子会社株式・関連会社株式:時価評価されない。取得原価で評価。

  • 満期保有目的の債券:時価評価されず、償却原価法を適用。


「すべての株式は時価評価される」と思い込んでいる方には意外かもしれません。子会社株式は「影響力の行使を目的とした投資」のため、時価の変動は投資成果とみなされず、取得原価のまま評価されます。


参考リンク(有価証券の評価区分の詳細)。
わかりやすい解説シリーズ「金融商品」第2回:有価証券の評価(EY Japan)


投資信託は基本的に「その他有価証券」に分類され、毎日公表される基準価額が時価として扱われます。100万円分の投資信託を買い、現在の基準価額ベースで120万円になっていれば、時価評価額は120万円です。これは実感しやすいですね。


時価評価のメリットとデメリット:投資判断に活かす視点

時価評価は「正確な今の価値がわかる」という大きな強みを持ちます。ただし、その性質ゆえのリスクも存在します。両面をきちんと理解しておくことが、賢い投資判断の基礎になります。


🟢 時価評価のメリット



  • 資産の現在価値が正確に把握できる:市場の動きをリアルタイムで反映するため、ポートフォリオ全体の今の価値を正確に知ることができます。

  • 投資判断のスピードが上がる:含み益・含み損の状況をすぐに確認できるため、売り時・買い増しのタイミングを素早く判断しやすくなります。

  • 財務透明性の向上:企業の財務諸表に時価情報が反映されるため、投資家はその企業の「本当の体力」を見極めやすくなります。1990年代の日本の金融危機では、時価評価が導入されず含み損が隠れていたことが事態を深刻化させた一因でもありました。


🔴 時価評価のデメリット



  • 評価額が不安定になる:市場の動向次第で価格が大きく振れるため、特に短期的な下落局面では「損失が大きく見える」状況になります。長期投資家には精神的な負担になることも。

  • 恣意的な評価になりやすい:市場価格が参照できない非上場株式などでは、評価するタイミングや手法の選択次第で価格操作が起きやすいリスクがあります。

  • 一時的な市場ショックで価値が歪む:2008年のリーマンショック時のように、市場全体が急落した局面では、本来の企業価値よりも低い時価がつくことがあります。


痛いですね。


長期投資をしている方にとっては、時価評価の「日々のブレ」に一喜一憂しないことが大切です。時価評価はあくまでも「現在地の確認ツール」として活用し、売却判断は長期的な目標と照らし合わせて行うのが原則です。


時価評価の計算方法:株式・投資信託・不動産それぞれの求め方

時価評価の具体的な計算方法は、対象となる資産の種類によって異なります。それぞれの計算手順をおさえておきましょう。


📈 株式の時価評価額


上場株式の場合はシンプルです。



  • 時価評価額 = 保有株数 × 現在の株価


例えば、トヨタ自動車株を200株保有していて、現在の株価が3,500円なら、時価評価額は70万円です。証券口座を見れば自動的に計算されているため、投資家が自分で計算する機会は多くありません。


📊 投資信託の時価評価額


投資信託は「口数」を基準に計算します。



  • 時価評価額 = 保有口数 × 基準価額 ÷ 10,000


たとえば100万口保有していて、基準価額が12,000円の場合、時価評価額は「100万口 × 12,000円 ÷ 10,000 = 120万円」です。基準価額はその投資信託が組み入れている株式や債券などを毎日時価評価して算出されます。


これは使えそうです。


🏠 不動産の時価評価


不動産の時価評価は株式より複雑で、主に以下の3つの指標が参考にされます。



  • 公示価格:国土交通省が毎年1月1日時点で公表する土地の標準価格。実勢価格の目安は公示価格の1.0〜1.1倍程度。

  • 路線価国税庁が公表する道路に面した土地の1㎡あたりの評価額。公示価格の約80%水準。

  • 不動産鑑定評価:不動産鑑定士が収益還元法・原価法・取引事例比較法などを使って算出する専門的な評価額。


相続や贈与の際の不動産評価は「路線価方式」が基本です。一方、M&Aや企業会計では「実際の市場価格に近い鑑定評価額」が用いられることが多いです。路線価は公示価格の約80%水準であるため、路線価から逆算すると「路線価 ÷ 0.8」でおおよその時価を把握できます。


参考リンク(路線価・公示価格の調べ方)。
時価評価資産の範囲(国税庁)


時価評価とM&A・企業価値評価への活用:投資家が知っておくべき視点

M&Aや企業分析の文脈でも「時価評価」は頻繁に登場します。上場株式を分析している投資家にとっても、企業の「本当の資産価値」を読み解くうえで欠かせない視点です。


M&Aにおける企業価値評価では、大きく3つのアプローチが使われます。



  • 🔵 コストアプローチ(純資産法):企業が持つすべての資産・負債を時価評価し、「時価純資産額 = 時価資産合計 − 時価負債合計」で企業価値を算出。清算・解散を前提とした企業評価に適しています。

  • 🟢 インカムアプローチ(DCF法など):将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算定。成長企業の評価に向いています。

  • 🟡 マーケットアプローチ(類似会社比較法など):上場している類似企業の株価倍率(PERやEBITDA倍率)を参照して評価。市場の実態を反映しやすい特徴があります。


時価純資産法が条件です。


中小企業のM&Aでは「時価純資産+営業権」という計算式がよく使われます。たとえば時価純資産が5,000万円で、営業利益の3年分(年800万円×3=2,400万円)を営業権として加算すると、企業価値は7,400万円と算出されます。


投資家目線でいえば、PBR(株価純資産倍率)という指標が「時価評価」の視点に近いものです。PBRが1倍を下回っているということは「株式市場が評価する時価総額が、企業の解散価値(時価純資産)を下回っている」ことを意味します。


PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産


2024〜2025年にかけて、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対して改善策の開示を求めたことは記憶に新しいところです。これは「簿価のまま眠っている資産を時価で評価し直し、株主に還元せよ」というメッセージでもありました。


参考リンク(M&Aにおける時価純資産法の解説)。
時価純資産法とは?原理から計算方法、M&Aでの実用例(M&A総合研究所)


企業の財務諸表を読む際には、「帳簿上の純資産(簿価)」と「時価ベースで修正した純資産」の差を意識するだけで、企業分析の精度が大きく上がります。特に不動産を大量に保有している企業(小売、不動産、鉄道など)は、含み益が簿価に反映されていないケースが多く、株価が割安に見えることもあります。


時価評価の落とし穴:投資家が見落としがちな3つの注意点

時価評価の概念を理解したうえで、実際の投資行動でよく起きる誤解や落とし穴を整理しておきます。これを知っているかどうかで、損失を避けられる場面があります。


⚠️ 注意点① 含み益・含み損はあくまで「未確定の数字」


時価評価額がいくら高くても、売却して利益を確定するまで課税は発生しません。個人投資家が株式投資で得た含み益50万円は、売却するまではゼロ課税です。逆に含み損が出ていても、売らない限り損失が確定したことにはなりません。


このため、年末に損益通算を目的として「含み損のある銘柄を一度売却して損失を確定させる」という節税テクニックが有効になります。たとえば含み損20万円の銘柄を売却して損失を確定させると、同年の利益20万円分の税金(約20.315%で約4万円)を節税できる計算になります。


⚠️ 注意点② 評価額が高い=今すぐ売るべき、ではない


時価評価額が上昇したからといって、すぐに売却するのが最善とは限りません。たとえば長期積立NISAで保有している投資信託の場合、非課税期間中に売却せず保有し続けることで税負担ゼロのまま複利効果を享受できます。


時価評価は「今の価値の確認」であり、売却タイミングの判断は別軸で考えるべきです。


⚠️ 注意点③ 非上場株式の時価評価は「主観」が入りやすい


上場株式と異なり、非上場株式には客観的な市場価格がありません。そのため、評価する手法(DCF法・純資産法・類似会社比較法など)や、前提となる数値(割引率・成長率など)の設定によって、評価額が数倍以上の幅で変わることがあります。


中小企業のオーナーが事業承継や株式贈与を検討する際、税務上の「時価」(相続税法上の評価額)と、M&A市場での「時価」(交渉価格)は別物であることも頭に入れておく必要があります。


節税目的で自社株の時価を引き下げる手法(株価対策)は合法ですが、やりすぎると少数株主への損害と判断されるリスクがあるため注意が条件です。



  • 📌 含み損で節税したいとき → 年末に損失確定売りを検討する

  • 📌 評価額の正確な把握をしたいとき → 証券口座の「評価損益」欄を定期チェックする習慣を持つ

  • 📌 非上場株式の評価が必要なとき → 税理士・公認会計士などの専門家に依頼する


参考リンク(含み損を使った節税の仕組み)。
含み損益|証券用語解説集(野村證券)




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