
社会保険料の計算基準となる標準報酬月額は、従業員の毎月の報酬を一定の幅で区切った等級制度によって決定されます。健康保険では1等級(58,000円)から50等級(1,390,000円)まで、厚生年金保険では1等級(88,000円)から32等級(650,000円)までの区分が設定されています。
参考)https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html
この等級制度により、実際の給与額が多少変動しても社会保険料は一定期間固定されるため、事務処理の簡素化と安定した保険料徴収が実現されています。例えば、月収295,000円の従業員は「290,000円~310,000円」の等級に該当し、標準報酬月額は300,000円として扱われます。
参考)標準報酬月額とは?決め方や社会保険料との関係をわかりやすく解…
💡 実務ポイント: 標準報酬月額は給与の変動に左右されず、等級区分により一定期間安定した保険料計算が可能になります。
参考)標準報酬月額に賞与は含まない?含まれる場合や計算方法を解説
定時決定は毎年7月に実施される標準報酬月額の見直し制度で、4月から6月の3ヵ月間の報酬平均額を基に算定されます。算定基礎届は7月1日から7月10日まで(土日祝の場合は翌営業日)に年金事務所へ提出し、新しい標準報酬月額は9月から翌年8月まで適用されます。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/what-is-social-insurance-premium/
算定対象となる報酬には基本給、各種手当、通勤手当、年4回以上支給される賞与が含まれますが、年3回以下の賞与や臨時的な支給は除外されます。支払基礎日数が17日以上の月を対象とし、3ヵ月すべてが17日未満の場合は15日以上17日未満の月を使用します。
参考)https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.html
⚠️ 注意事項: 6月1日以降に入社した従業員や7月改定の月額変更届を提出する従業員は算定基礎届の提出対象外となります。
随時改定は昇給や降給により固定的賃金が大幅に変動した際、定時決定を待たずに標準報酬月額を変更する制度です。適用条件は①固定的賃金の変動、②継続した3ヵ月の平均報酬が現在の標準報酬月額から2等級以上の差、③3ヵ月とも支払基礎日数17日以上の3要件すべてを満たす必要があります。
参考)https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html
固定的賃金には基本給、役職手当、家族手当、住宅手当などが含まれ、残業代のような非固定的賃金の変動のみでは随時改定の対象になりません。月額変更届は変動から4ヵ月目の月末までに提出し、通常は4ヵ月目から新しい標準報酬月額が適用されます。
参考)社会保険の定時決定・随時改定とは?概要や適用条件、重なる場合…
📋 手続きのポイント: 昇格による基本給増額で2等級上昇した場合、継続3ヵ月の報酬を確認後、速やかに月額変更届を提出することが重要です。
2025年度の社会保険料率は健康保険料率(東京都)9.91%、介護保険料率1.59%(40歳~64歳)、厚生年金保険料率18.3%で、いずれも労使折半となります。標準報酬月額300,000円の40歳未満従業員の場合、健康保険料14,865円、厚生年金保険料27,450円の合計42,315円が毎月の社会保険料となります。
参考)都道府県別・標準報酬月額表
介護保険第2号被保険者(40歳~64歳)は健康保険料に加えて介護保険料が賦課され、同条件では健康保険料14,865円+介護保険料2,385円+厚生年金保険料27,450円の合計44,700円となります。保険料は被保険者と事業主が折半負担するため、従業員の給与からは半額が控除されます。
参考)【2025年度】社会保険料の計算方法とは?保険ごとのシミュレ…
💰 実務での留意点: 保険料額表は毎年3月分(4月納付分)から改定される場合があるため、必ず最新の料率を使用することが重要です。
参考)令和7年度保険料率のお知らせ
標準報酬月額の過少申告は不法行為とされ、大阪地裁平成22年10月29日判決(Y工業事件)では、意図的な過少申告により生じた社会保険料の差額支払いと損害賠償責任が認められました。企業は正確な報酬額の把握と適切な届出により、法的リスクを回避する必要があります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/52ad9156b76016873177f260250e5cfb84f0038f
一方で、通勤手当は所得税法上は一定額まで非課税扱いとなりますが、社会保険では労働の対価として支給される報酬に含まれ、標準報酬月額の算定対象となります。この税務と社会保険の取扱い差異を理解し、正確な算定を行うことが企業の社会保険実務において重要です。
参考)通勤手当は非課税なのに、社会保険料対象なのはなぜ?
⚠️ コンプライアンス: 標準報酬月額の意図的な過少申告は法的責任を問われるリスクがあり、適正な報酬申告が必須です。
適用条件の詳細については厚生労働省の最新ガイドライン
厚生年金保険の保険料 | 日本年金機構
標準報酬月額の算定方法に関する公式解説
標準報酬月額・標準賞与額とは? | 全国健康保険協会
以下、検索結果を基にして記事構成を作成いたします。