
厚生年金保険料の「労使折半」とは、企業に勤める従業員が加入する厚生年金保険において、保険料を従業員と会社が半分ずつ負担する法的に義務付けられた制度です 。現在の厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、従業員は9.15%、会社も同額の9.15%を負担することが法律で定められています 。
参考)マネイロ
この制度により、従業員が支払う保険料と同額を会社も負担し、合計額を日本年金機構に納付する仕組みとなっています 。例えば、従業員が月15,000円の厚生年金保険料を支払っている場合、会社も同額の15,000円を負担し、合計30,000円が従業員の厚生年金保険料として納付されることになります 。
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労使折半の仕組みは日本の社会保険制度における重要な特徴の一つであり、会社が従業員の社会保障を支えるという考え方に基づいて設計されています 。これにより従業員は自身の負担額の2倍の保険料が積み立てられるため、将来受け取る年金額が国民年金のみの場合よりも手厚くなる仕組みです 。
給与明細から厚生年金保険料が適切に折半されているかを確認するには、まず標準報酬月額を把握することが重要です 。標準報酬月額は給与などの平均額を等級に分類したもので、社会保険料の計算に使用されます 。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/how-to-calculate-social-insurance-premium-deduction-from-salary/
厚生年金保険料の計算式は「標準報酬月額×18.300%」で、従業員が負担する厚生年金保険料は「厚生年金保険料÷2」となります 。具体的な計算例として、標準報酬月額30万円の場合、「300,000円×18.300%÷2=27,450円」が従業員負担分となります 。
💡 給与明細の確認ポイント。
保険料率の誤認や標準報酬月額の誤解により計算が合わないケースも多く、残業代や通勤手当なども含んだ総支給額が対象となることを理解していない場合があります 。また、賞与からも厚生年金保険料が控除されますが、その計算方法は月々の給与とは異なるため、混同しないよう注意が必要です 。
厚生年金保険料を適切に処理しない企業には深刻なリスクが伴います。社会保険料の滞納により延滞金が発生し、料率年7.3%〜14.6%の延滞金が加算されます 。さらに年金事務所による財務調査が入り、支払いがない場合は財産差し押さえに発展する可能性があります 。
参考)事業資金に困った場合の社会保険料滞納リスクとその回避策
日本年金機構では「国税源泉徴収義務者情報」を利用して未適用事業所の調査を実施しており、法人を設立した場合は在籍者が代表者1名であっても原則として社会保険の加入が義務付けられています 。年金事務所は法人毎の給与支払状況を把握していることから、制度の理解不足は言い訳として通用しません 。
参考)年金事務所調査がやってきた!? ~ 調査のポイントや慌てない…
⚠️ 企業が直面する主要リスク。
社会保険未加入や滞納の事業所が虚偽の申告をしたり、複数回にわたって加入指導を拒否する悪質なケースでは、6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金のペナルティもあります 。
厚生年金保険料が適切に折半されていない状態を放置すると、従業員にとって重大なデメリットが生じます。将来の年金受給額への直接的な影響として、厚生年金保険料が適正に納付されていない場合、将来受け取れる年金額が減少してしまう可能性があります 。年金額は保険料納付額や期間に基づいて決定されるため、正規の保険料が納付されていなければ記録上の標準報酬月額が低くなったり、加入期間が短縮される恐れがあります 。
厚生年金保険料を滞納すると、従業員の年金記録に「未納期間」として反映される場合があり、日本年金機構は事業主からの納付情報をもとに個人の年金記録を作成しているため、滞納が続くと従業員の年金記録に納付実績が正しく反映されないおそれもあります 。これにより将来の年金受給額が減少するだけでなく、最低受給要件(原則10年)を満たせなくなるケースも起こり得ます 。
参考)社会保険料の滞納・未払いで何が起こる?会社と従業員への影響と…
📋 従業員が受ける具体的な不利益。
健康保険も同様に標準報酬月額に基づいて給付額が決定されるため、保険料が適正でないと病気や出産で休業した際の給付金が少なくなる可能性があります 。退職後も事業主の滞納による影響は残り、健康保険の任意継続制度を利用できない場合や、離職票の発行遅れにより失業手当の申請・支給に遅れが生じることもあります 。
厚生年金保険料の折半に関する問題が発生した場合、段階的な対処法を実施することが重要です。まず自身での確認作業として、給与明細と標準報酬月額を照合し、計算に誤りがないか検証します。誤解や勘違いの可能性も考慮し、保険料率や標準報酬月額の正確な理解を深めることが必要です 。
問題が確認された場合の対処手順として、冷静に会社の人事・経理担当者へ問い合わせを行います。多くの場合は説明により解決しますが、質問しにくい状況や解決しない場合は外部の専門機関への相談を検討します 。
🏢 相談可能な専門機関。
従業員は給与明細など天引きの証拠があれば、年金事務所に申し立てを行い記録を訂正してもらうことが可能です 。また、会社が従業員から本来よりも多くの保険料を徴収している場合、その過払い分は従業員の損失となり、返還を求める権利があります 。
年金事務所では適正に社会保険の手続き等が行われているか事業所に対して調査を実施しており、未適用事業所の調査や新規適用時の調査などを通じて加入漏れの防止に努めています 。問題解決には早期の対応が重要であり、放置することで状況が悪化するリスクを避けるため、適切な相談窓口を活用することが推奨されます。