

副業収入が20万円以下なら申告しなくていい、そう思っていると最大年14.6%の延滞金を取られます。
副業を始めた人が最初にぶつかる壁が「どこから申告が必要なのか」という問題です。
所得税には「給与所得者の副業所得が年間20万円以下なら申告不要」という特例があります。この特例はよく知られているため、「20万円以下なら何もしなくていい」と思い込んでいる方が多いのですが、実はこれは所得税だけに限った話です。
住民税にはこの20万円免除のルールが存在しません。副業による所得が黒字である限り、金額の大小を問わず住民税の申告が義務となります。つまり副業で1万円の純利益が出た場合でも、住民税の申告は必要だということです。
所得税と住民税は似て非なる税金です。所得税は国に納める「国税」であるのに対し、住民税は都道府県・市区町村に納める「地方税」です。課税の仕組みや申告先が異なるため、一方の申告が不要であっても、もう一方が不要にはならないケースが生じます。
| 項目 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 納付先 | 国(税務署) | 都道府県・市区町村 |
| 20万円以下の特例 | ✅ あり(給与所得者のみ) | ❌ なし |
| 申告が必要な最低ライン | 副業所得20万円超(原則) | 副業所得が黒字なら1円から |
| 確定申告との関係 | 確定申告で完結 | 確定申告すれば別途申告不要 |
ポイントは「確定申告を行えば住民税の申告は不要」という点です。確定申告した情報が税務署から自治体へ自動的に通知され、住民税額が決定します。住民税の申告が別途必要になるのは、確定申告をしない場合に限られます。所得税の申告と住民税の申告、この二本立ての構造を理解しておくことが基本です。
参考:副業所得が20万円以下でも住民税の申告が必要な理由について、国税庁と市区町村の住民税申告の仕組みをあわせて確認できます。
freee「副業所得20万円以下でも確定申告と住民税の申告は必要?」
副業所得が20万円以下で確定申告を行わない場合、住民税の申告は自分で市区町村に対して行う必要があります。手順は以下のとおりです。
住民税申告書は各市区町村の窓口で入手できます。郵送申請が可能な自治体もあるため、事前に各自治体のウェブサイトで確認することをおすすめします。
近年はオンラインでの申告も広がっています。eLTAX(地方税ポータルシステム)を利用すれば、マイナンバーカードがあれば自宅のパソコンやスマートフォンから住民税申告の電子送信が可能です。24時間365日対応しているため、窓口の営業時間を気にせず手続きできます。これは使えそうです。
eLTAXを利用する手順は①マイナンバーカードと必要書類を準備する、②eLTAXの個人住民税電子申告システム(https://www.eltax.lta.go.jp/)にアクセスする、③画面の指示に従って収入・控除情報を入力する、④送信して完了、という流れになります。
参考:eLTAXによる個人住民税の電子申告方法について、詳しい手順が記載されています。
eLTAX「個人住民税 電子申告システム」(地方税共同機構)
申告書には収入だけでなく、副業にかかった経費も記入します。経費を正確に計上することで課税対象となる所得額が下がり、住民税の負担を適切な水準に抑えることができます。副業で使用したパソコン購入費・通信費・書籍代などは、按分して計上できる可能性があるため、領収書は必ず保管しておきましょう。経費の把握が基本です。
住民税の申告で多くの副業者が気にするのが「会社に副業を知られないか」という点です。この問題を理解するには、住民税の徴収方法が2種類あることを知る必要があります。
「特別徴収」とは、会社が従業員の代わりに毎月の給与から住民税を天引きして自治体に納める方法です。「普通徴収」とは、自治体から自宅に届く納税通知書を使って、本人が自分で年4回(6月・8月・10月・翌1月)に分けて納める方法です。
会社員の本業の住民税は原則として特別徴収です。副業で収入が増えると住民税額が上がります。この増額分が本業の給与から天引きされると、経理担当者が「住民税が例年より増えている」と気づき、副業がバレるリスクが生まれます。
副業バレを防ぐには、確定申告書の第二表「住民税に関する事項」欄で「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れることが有効です。これにより、副業分の住民税だけを自分で納めることができ、会社への通知額に副業分が加算されなくなります。
ただし、ここに重要な落とし穴があります。副業がパート・アルバイトなどの「給与所得」の場合、原則として特別徴収が義務付けられており、自治体の判断で普通徴収への切り替えに応じてもらえないケースがあります。普通徴収が使いにくいですね。
副業がフリーランス案件・業務委託・ブログ収入・投資収益などの「事業所得・雑所得」であれば、普通徴収を選択しやすくなります。会社バレを特に気にする場合は、副業の所得区分を意識して選ぶことが重要です。
参考:住民税の普通徴収・特別徴収の仕組みと副業バレとの関係について詳しく解説されています。
マネーフォワード クラウド「副業は住民税でバレる?会社にバレない方法と正しい確定申告方法を解説!」
住民税の申告義務を知らずに放置してしまった場合、どのような影響があるのかを把握しておくことが大切です。
まず、住民税の申告を行わないと、延滞金が課されるリスクがあります。延滞金の計算は複雑で、納期限から2か月以内は原則として年「7.3%」または「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合、2か月を超えた場合は年「14.6%」または「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合が適用されます。最大で年14.6%という数字は、銀行の定期預金金利と比較しても桁違いの負担です。痛いですね。
さらに、申告・納付が大幅に遅れると、自治体から督促状が届きます。督促状が届いてから10日を経過しても納付がない場合は、給与・預金・不動産などの財産が差し押さえられる可能性があります。差押えは実際に執行されるケースがあり、決して他人事ではありません。
住民税の申告漏れは金銭的なペナルティだけにとどまりません。住民税の申告が未了の状態では、所得証明書・課税証明書が適切に発行されない可能性があります。これにより、住宅ローンの審査・各種助成金・保育所の申込み・国民健康保険料の計算など、日常生活の多くの場面で支障が生じます。金融に関心のある方にとって、ローン審査への影響は特に気にしておきたいリスクです。
申告を忘れていたと気づいた場合は、速やかに居住地の市区町村窓口に相談することが大切です。延滞金の計算は申告・納付が完了した時点で止まるため、早期に手続きを進めるほど損害を最小化できます。気づいたら即行動が条件です。
参考:住民税の延滞金の計算方法や滞納リスクについて、大阪市のページで詳しく確認できます。
住民税の課税対象となる「所得」は「収入 − 必要経費」で計算されます。つまり、経費を正しく計上するほど課税対象額が減り、住民税の負担を合法的に下げることができます。これは使えそうです。副業の種類ごとに認められる経費の範囲が異なるため、自分の副業に合わせて把握することが重要です。
| 副業の種類 | 計上できる経費の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| ブログ・YouTube・SNS | サーバー代、ドメイン代、撮影機材、書籍代、Wi-Fi料金(按分) | プライベートと兼用の場合は家事按分が必要 |
| フリーランス(ライター・デザイナーなど) | 通信費(按分)、PCソフト、交通費、書籍代、セミナー費 | 収入を得るために直接必要な費用のみ対象 |
| ハンドメイド販売 | 材料費、梱包資材、送料、販売手数料、撮影費 | フリマ手数料も経費として計上可能 |
| 不動産投資(賃貸) | 管理費、修繕費、固定資産税、減価償却費、ローン利息 | 元本返済分は経費にならない |
| FX・株式投資(雑所得扱いの場合) | セミナー受講料、投資関連書籍、情報ツール料金 | 特定口座(源泉徴収あり)の場合は申告不要のケースも |
自宅を業務スペースとして使用している場合、家賃・電気代・通信費などの「家事関連費」を業務用と私用に分けて按分計上する「家事按分」が認められています。例えば自宅の床面積のうち20%をワークスペースとして使用しているなら、家賃の20%を経費に算入できます。
一方、注意すべき点があります。副業収入が年間300万円以下で帳簿書類を保存していない場合、その副業収入は「事業所得」ではなく「雑所得」として扱われる可能性が高くなります(国税庁の2022年改正通達)。雑所得は損益通算(赤字を他の所得と相殺すること)ができないため、節税の選択肢が狭まります。帳簿の保存が原則です。
帳簿の作成・保存が苦手な方には、freeeやマネーフォワード クラウドといったクラウド会計ソフトが便利です。銀行口座やクレジットカードと連携させることで、収支の自動記録が可能になります。まず無料プランで試してみるという行動が一番です。
参考:副業の所得区分(事業所得・雑所得)の判断基準と経費の考え方について国税庁の公式情報が参照できます。
金融に関心のある方が取り組みやすい副業として、FX取引・株式投資・ポイント投資・アフィリエイトなどがあります。これらは通常の給与所得型の副業とは異なる税務ルールが適用されるため、住民税申告においても特別な注意が必要です。
まず、FX取引(外国為替証拠金取引)の利益は「雑所得(先物取引に係る雑所得等)」として扱われ、申告分離課税が適用されます。税率は所得税15%・住民税5%の合計20.315%(復興特別所得税含む)の一律課税です。株の売却益と合算して損益通算できるという特徴があり、FXで損失が出た年は株の利益と相殺して住民税を下げることが可能です。
株式投資については、証券口座の種類によって住民税の申告要否が異なります。「特定口座(源泉徴収あり)」を選択した場合は、証券会社が住民税分も含めて自動的に源泉徴収するため、原則として別途の住民税申告は不要です。一方、「一般口座」または「特定口座(源泉徴収なし)」の場合は、自分で確定申告または住民税申告を行う必要があります。特定口座の選択が条件です。
アフィリエイトやブログ・YouTubeの広告収入は「雑所得」または「事業所得」に区分されます。ここで注意したいのが、確定申告が不要な20万円以下の場合でも住民税申告が必要だという点です。例えばアフィリエイト収入が年間15万円(経費差引後)あった場合、所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要になります。金額が小さくても申告が基本です。
さらに、複数の金融系副業を組み合わせている場合に見落としがちなのが「損益通算のルール」です。FXの損失と株の配当収入は損益通算できますが、FXの損失と給与所得は損益通算できません。同じ「損失がある」状況でも、損益通算できる組み合わせとできない組み合わせがあるため、誤った計算をすると住民税を過払いしてしまう可能性があります。
参考:FX取引や株式投資の課税ルールについて国税庁の公式情報で確認できます。
国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」
損益通算の計算は複雑になりがちです。年間取引が多い場合や複数の口座を使っている場合は、税理士への相談や確定申告書等作成コーナー(国税庁ウェブサイト)の利用を検討しましょう。確定申告書を正しく作成することで、住民税への連携も自動的に行われます。