給与所得と給与収入の違い!金融従事者が知るべき税制改正影響

給与所得と給与収入の違い!金融従事者が知るべき税制改正影響

給与所得と給与収入の違い

給与所得と給与収入の基本的な違い
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給与収入(年収)

勤務先から受け取った給与・賞与・手当等の合計金額(額面金額)

📊
給与所得

給与収入から給与所得控除額を差し引いた後の金額

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控除による違い

給与所得控除額は収入に応じて55万円~195万円の範囲で変動

給与所得と給与収入の基本概念

給与所得と給与収入は混同されやすい用語ですが、税制上明確な違いがあります。給与収入とは、源泉徴収される前の給与、賞与、諸手当などを全て合計した額面の金額で、いわゆる「年収」のことです。一方、給与所得とは、給与収入から給与所得控除額を差し引いた金額で、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄に記載される数字です。
参考)給与所得とは?給与収入との違いや計算方法、所得控除制度につい…

 

この違いは税制上非常に重要で、給与所得が所得税の課税対象となる基準額となります。例えば年収500万円の場合、給与所得控除額144万円を差し引いた356万円が給与所得となり、この額に対して所得税が計算されます。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/salary-income/

 

🔍 意外な事実として、現物給与も給与所得に含まれます。物品の譲渡や福利厚生施設の無償提供なども税制上は給与として扱われ、金銭的価値を評価して課税対象となります。

給与所得控除の仕組みと2025年改正

給与所得控除は、給与所得者の必要経費を概算で認める制度で、収入金額に応じて控除額が決定されます。2024年まで(令和6年まで)の給与所得控除額は、年収162.5万円以下で55万円、年収850万円超で上限195万円となっています。
参考)源泉徴収票の見方は?「給与所得控除後の金額」や計算方法につい…

 

2025年税制改正の重要ポイントとして、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。この改正により、年収190万円以下の給与所得者は一律65万円の控除を受けられるようになります。改正の施行時期は2025年12月1日で、同年12月の年末調整から新制度が適用されます。
給与所得控除の計算式は収入区分ごとに設定されており、年収360万円~660万円の場合は「収入金額×20%+44万円」、年収660万円~850万円の場合は「収入金額×10%+110万円」となります。

給与所得に関わる源泉徴収と確定申告

給与所得者の多くは年末調整により所得税の精算が完了しますが、一定の条件下では確定申告が必要となります。2020年分の確定申告から、給与所得の源泉徴収票の添付は不要となりましたが、申告書作成時には源泉徴収票の内容を正確に転記する必要があります。
参考)確定申告での源泉徴収票の見方は?添付は不要です

 

源泉徴収票の「支払金額」が給与収入、「給与所得控除後の金額」が給与所得に該当し、「源泉徴収税額」欄には年間で徴収された所得税額が記載されます。給与所得者が副業収入20万円超、医療費控除、住宅ローン控除初年度適用などの場合は確定申告が必要です。
参考)給与収入と給与所得のちがい/浜松市

 

📋 実務上のポイントとして、給与支払者は従業員に対して源泉徴収票を発行する法的義務があり、電子データでの交付も可能となっています。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-kakuteishinkoku/withholding-slip/

 

給与所得における特定支出控除の活用

特定支出控除は、給与所得者が業務上必要な支出をした際に適用できる制度で、給与所得控除額の1/2を超える特定支出がある場合に利用できます。対象となる支出には、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費(上限65万円)が含まれます。
金融業従事者にとって重要なのは、資格取得費が特定支出控除の対象となることです。FP技能士、証券アナリスト、金融窓口サービス技能士などの業務関連資格取得費用は、要件を満たせば控除対象となります。興味深いことに、資格試験に不合格だった場合でも、業務に必要な資格として認められれば控除対象となります。
勤務必要経費では、業務関連図書の購入費や勤務中着用する衣服代も対象となるため、金融関連書籍や制服代なども控除の可能性があります。

給与所得と年末調整実務の変更点

2025年の税制改正に伴い、年末調整実務にも変更が生じます。給与所得控除の改正により、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」が改正され、2025年12月の年末調整から新しい表を使用します。
参考)【令和7年税制改正対応】給与所得控除とは?所得控除との違いや…

 

年末調整では、改正後の控除額を反映して1年間の税額を再計算し、従来の税額表に基づいて源泉徴収された税額との差額調整を行います。給与所得者の基礎控除申告書の様式も変更され、新しい様式は国税庁ホームページからダウンロード可能です。
⚠️ 実務上の注意点として、2025年11月までの給与は現行制度での源泉徴収処理となるため、月別のスケジュールと処理基準の切り替え時期を正確に把握することが重要です。年末調整時には、改正前後の控除額差額を適切に調整する必要があります。