事業所得とは何か、個人事業主が得する確定申告の全知識

事業所得とは何か、個人事業主が得する確定申告の全知識

事業所得とは、個人事業主が知るべき所得の基礎と節税の全知識

副業で赤字を出すと、給与から税金が戻ってくることがあります。


この記事でわかること
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事業所得の定義と計算方法

「総収入金額−必要経費」で求める事業所得の基本構造と、どんな収入が対象になるかを整理します。

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雑所得との違いと判断基準

帳簿の有無・収入規模・継続性など、国税庁が示す判断ポイントを具体的に解説。誤申告リスクを回避できます。

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青色申告で使える節税策

最大65万円の特別控除、純損失の3年繰越、少額減価償却の特例など、事業所得だけが使える節税制度を網羅します。


事業所得とは何か:個人事業主が押さえる基本定義

事業所得とは、農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などの事業を継続的に営むことで得られる所得のことです。国税庁の定義によると、「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性・有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」とされています。


所得税法では、所得が10種類に分類されています。その内訳は「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」「雑所得」です。事業所得はこの10種の一角を担いますが、不動産の貸付けや山林の譲渡で得た収益は、それぞれ「不動産所得」「山林所得」として別区分になります。これが基本です。


個人事業主の日々の売上から必要経費を差し引いた金額が、事業所得の金額になります。たとえばフリーランスのWebデザイナーが年間400万円の売上を上げ、外注費や通信費などの経費が100万円だとすると、事業所得は300万円です。この計算式はシンプルですが、何を経費にできるか、どの収入が計上対象かの判断が実際には複雑です。




事業所得には、一般にはあまり知られていない例外があります。有料駐車場の運営収入や、下宿業のように食事提供などの役務が含まれる収益は、一見「不動産所得」に見えても事業所得または雑所得として扱われます。また、事業用口座に入った預貯金利息は「利子所得」に分類され、事業所得には含まれません。


参考:国税庁による事業所得の課税のしくみについての公式解説


No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁


事業所得の計算方法:個人事業主が正確に把握すべき総収入と必要経費

事業所得の金額は次の計算式で求めます。


項目 内容
総収入金額 1年間(1月1日〜12月31日)の事業売上の合計
必要経費 事業売上を得るために直接要した費用
事業所得の金額 総収入金額 ー 必要経費


ここで重要なのが「売上の計上タイミング」です。入金された日ではなく、商品を引き渡した日やサービスを提供した日が計上日になります。末締め翌月払いの取引では、12月に提供したサービスの代金が翌1月に入金されても、それは12月分の売上として計上しなければなりません。見逃しやすいポイントです。


必要経費として認められる主な費目を整理すると次のとおりです。


  • 🛒 売上原価:飲食業の食材仕入・サービス業の外注費など
  • 📱 通信費:電話代・インターネット料金
  • 💡 光熱費:電気代・ガス代(事業使用分)
  • 🚗 旅費交通費:打ち合わせのための交通費
  • 📣 広告宣伝費:チラシ制作費・Web広告費
  • ✏️ 消耗品費:文房具・事務用品


自宅を事務所として使っている場合、家賃・光熱費・通信費などは「家事按分」によって事業使用割合の分だけ経費に算入できます。たとえば総面積100㎡の自宅のうち20㎡を仕事部屋にしているなら、家賃の20%分が経費になります。毎月の家賃が10万円なら、月2万円・年間24万円が経費として計上できる計算です。これは使えそうです。


なお、事業用の車を売った場合の利益は「譲渡所得」となり、事業所得にはなりません。事業用の預貯金についた利息も「利子所得」扱いです。事業に関係する資産だからといって、すべてが事業所得に含まれるわけではない点は注意が必要です。


参考:家事按分の割合の決め方・仕訳方法について詳しく解説


按分とは?確定申告での家事按分の割合の決め方や仕訳方法|弥生


事業所得と雑所得の違い:個人事業主と副業の判断基準を整理する

事業所得と混同されやすいのが「雑所得」です。フリマアプリの販売収入・原稿料・講演料などは、規模が小さければ雑所得として扱われます。どちらに区分されるかによって、受けられる税制上の優遇が大きく変わります。雑所得には青色申告が認められず、他の所得との損益通算もできません。


2022年10月の国税庁の通達改正により、事業所得か雑所得かの判断基準が明確化されました。ポイントを整理するとこうなります。


状況 区分の目安
帳簿・書類の保存あり+収入が主たる収入の10%以上 事業所得として認められやすい
帳簿・書類の保存あり+収入が例年300万円超 事業所得として認められやすい
帳簿なし・収入が例年300万円以下かつ主収入比10%未満 雑所得と判定される可能性が高い
毎年赤字で改善策なし 雑所得と判定される可能性が高い


「帳簿さえつければ必ず事業所得になる」というのは誤解です。帳簿の保存はあくまで必要条件のひとつにすぎず、収益性・継続性・規模なども総合的に判断されます。これが条件です。


また、FX取引や有価証券の売買で損失が出た場合、事業所得として申告して給与所得と損益通算しようとするケースがありますが、裁判例では「投機性が高く安定した収入を生まない」として事業所得と認められなかった事例が複数あります。取引額1億3,000万円・取引回数1,400回でも却下された事例があるほどです。意外ですね。


副業収入を事業所得として申告するには、継続的な帳簿記録・開業届の提出・社会的基盤の構築といった実態整備が重要です。確定申告前に慌てることなく、日常から記録をつけておくことが基本です。


参考:副業の事業所得・雑所得の判断基準について税理士が詳細に解説


副業は事業所得?雑所得?判断基準と300万円ルールを税理士が解説


事業所得で使える青色申告の節税メリット:個人事業主が知らないと損する制度

事業所得の最大のメリットは、「青色申告」を選択できることです。青色申告は事業所得・不動産所得・山林所得に限られた制度で、雑所得では利用できません。青色申告を使いこなすかどうかで、年間の税負担は数十万円単位で変わります。


青色申告の主なメリットは次の4つです。


  • 青色申告特別控除(最大65万円):所得から直接65万円を差し引ける
  • 純損失の3年繰越・繰戻し還付:赤字を翌年以降3年間持ち越せる
  • 30万円未満の少額減価償却特例:年間300万円まで一括経費計上できる
  • 青色事業専従者給与:同居家族への給与を全額経費にできる


青色申告特別控除の節税効果は具体的に大きいです。所得税率20%の事業者が65万円の控除を受けた場合、所得税だけで13万円(65万円×20%)の節税になります。さらに住民税国民健康保険料の計算にも影響するため、実際の節税額はさらに大きくなります。所得税率が33%の場合は約21.5万円の節税です。


最大65万円控除を受けるには、①複式簿記による記帳、②貸借対照表損益計算書の添付、③e-Taxでの電子申告(または優良な電子帳簿保存)の3つの要件をすべて満たす必要があります。紙で申告した場合は55万円控除に留まるため、e-Taxの設定は必須です。


また「純損失の繰越控除」も強力です。たとえば開業1年目に100万円の赤字が出た場合、翌年以降3年以内に黒字が出れば、その黒字から100万円を差し引いて課税所得を計算できます。翌年150万円の黒字なら課税所得は50万円となり、税負担を大幅に圧縮できます。雑所得ではこれが使えません。痛いですね。


青色申告の承認を受けるには、開業から2カ月以内に所轄税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。期限を過ぎると、その年は白色申告になってしまいます。提出期限だけは覚えておけばOKです。


参考:青色申告特別控除の要件と節税効果についての詳細解説


青色申告特別控除とは?65万円控除を受ける要件や節税効果をわかりやすく解説|freee


事業所得の確定申告:個人事業主が押さえる手続きと注意点

個人事業主の事業所得は、毎年2月16日〜3月15日の確定申告期間中に申告・納税します。還付申告の場合は1月1日から5年間遡って申告できます。手続きの流れは大きく3ステップです。


ステップ 内容
①帳簿・書類の整理 1年分の収支記録・領収書・請求書をまとめる
②決算書・申告書の作成 青色申告決算書または収支内訳書を作成し、確定申告書に転記する
③提出・納税 e-Tax・郵送・税務署窓口のいずれかで提出し、期限内に納税する


事業所得にかかる税金は「所得税」「住民税」「個人事業税」の3種類です。所得税は累進課税で、課税所得195万円未満なら5%、330万円未満は10%、695万円未満は20%…と段階的に税率が上がります。2037年までは所得税額の2.1%を復興特別所得税として上乗せして納付する必要があります。


個人事業税は、法定業種に該当する事業者に課される地方税で、業種によって3〜5%の税率が設定されています。物品販売業・飲食店業・広告業などは5%が適用されますが、法定業種に含まれない業種(たとえばライター業・コンサルタント業の一部)は課税されません。自分の業種が対象かどうか、事前に確認しておくことが大切です。


確定申告書類の作成は、帳簿記録から始まります。会計ソフトを使えば、日々の取引を入力するだけで自動的に貸借対照表・損益計算書・確定申告書が生成されるため、簿記の知識がなくても対応できます。弥生やfreeeなどの会計ソフトは月額数百円〜数千円で利用でき、e-Tax連携にも対応しています。これは使えそうです。




帳簿の保存期間は青色申告で原則7年間、白色申告で5年間(法定帳簿は7年間)です。電子帳簿保存法の改正により、2024年1月以降は電子データで受け取った書類は電子保存が義務化されています。紙への印刷だけでは保存要件を満たさないケースがあるため、電子保存の設定は早めに確認しておきましょう。


参考:弥生の事業所得・確定申告の総合解説ページ


事業所得とは?計算方法や雑所得との違い、確定申告のやり方を解説|弥生


【独自視点】事業所得の「赤字活用戦略」:個人事業主が給与所得者より有利な理由

あまり語られないことですが、個人事業主は赤字でも税金面でメリットを得られる可能性があります。これは給与所得者にはほぼない特権です。


事業所得で赤字が出た場合、給与所得・不動産所得・譲渡所得などと「損益通算」できます。たとえば本業の給与所得が500万円で、副業の事業所得が▲80万円の赤字だった場合、課税所得は420万円になります。単純計算で、所得税率20%なら16万円・住民税なら8万円の節税につながります。損益通算が基本です。


さらに青色申告を選択していれば、損益通算で吸収しきれなかった純損失を翌年以降3年間繰り越せます。たとえば開業初年度に設備投資で200万円の赤字が出たとしても、2年目・3年目の黒字と相殺できるため、起業直後の税負担を大幅に軽減できます。また前年も青色申告をしていれば、前年分の税金を還付させる「繰戻し還付」も選べます。




この仕組みを最大限に活用するには、以下の点を整えておくことが重要です。


  • 📋 開業届を提出しておく:事業所得として認められる前提条件
  • 📒 青色申告承認申請書を提出する:開業から2ヶ月以内が期限
  • 🖥️ 複式簿記で日々記帳する:65万円控除と繰越控除の両方に必要
  • 🗂️ 領収書・請求書を7年間保存する税務調査に備えるため


副業でも同じ仕組みが適用できます。会社員が副業を事業所得として申告し、赤字が出た年に損益通算を活用すれば、会社が源泉徴収した所得税の一部が確定申告によって戻ってくることがあります。ただし、税務署から「事業性がない」と判断されると損益通算が否認されるリスクもあります。実態を整え、帳簿をしっかり管理することがすべての前提になります。


赤字経営が続く場合は注意が必要です。毎年赤字で改善策が見られないケースは「営利性なし」と判断され、雑所得に区分されるリスクがあります。節税目的で意図的に赤字を作り続けることは、税務上の問題につながりかねません。赤字の繰越控除はあくまで「事業再建期間の一時的な救済措置」として位置付けて活用しましょう。


参考:純損失の3年繰越控除の具体的な手続きと申告方法


青色申告者が損失申告で赤字(純損失)を3年間繰越控除するには?|マネーフォワードクラウド