有価証券投資有価証券違いと保有目的別分類の会計処理

有価証券投資有価証券違いと保有目的別分類の会計処理

有価証券投資有価証券の違いと分類基準

有価証券と投資有価証券の区別要点
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保有期間による分類

1年以内現金化可能な流動資産と1年超長期保有の固定資産

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保有目的別の4分類

売買目的、満期保有目的、子会社・関連会社株式、その他有価証券

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会計処理の相違

営業外損益計上と特別損益計上の処理区分

有価証券の基本的な定義と保有目的による分類体系

有価証券とは、銀行や証券会社が取り扱う国債、社債、投資信託などを購入する際に取得した権利を証する書類として財産価値を持つ証券のことです 。現在は株券を不発行としている企業もあり、手元に証券がないケースもありますが、証券の有無にかかわらず購入者が権利を有することに変わりはありません 。
参考)投資有価証券とは?保有目的で仕訳が変わるのか

 

企業が有価証券を取得する目的は様々で、売買で利益を得るために取得・保有する投機目的、過半数の株式を取得し他社の支配権を確保する会社支配目的、利息や配当金を継続して受け取るための満期保有目的などが挙げられます 。
平成11年に企業会計基準委員会が示した「企業会計基準第10号 金融商品会計基準」では、有価証券は保有目的や保有期間に応じて「有価証券」と「投資有価証券」に分けて表示することが求められています 。
会社のルールでは、有価証券を保有目的ごとに次の4つに分類します :
参考)有価証券の4分類|お役立ちコラム|経理アウトソーシングのCS…

 

  • 売買目的有価証券:短期売買を目的とした有価証券
  • 満期保有目的の債券:満期まで保有する目的の債券
  • 子会社株式及び関連会社株式:子会社・関連会社の株式
  • その他有価証券:上記以外のその他有価証券

有価証券と投資有価証券の貸借対照表上の表示区分

貸借対照表で「有価証券」と「投資有価証券」を区分するポイントは、当該有価証券の保有期間にあります 。売買目的有価証券以外の3つは、主として1年を超え保有する資産ですから「投資有価証券」として会計処理します 。反対に、満期保有目的債券でも満期日が1年以内に到来するものは「有価証券」と類別します 。
「有価証券」は流動資産であり、売買目的有価証券や満期まで1年以内の満期保有目的債券が含まれます 。一方、「投資有価証券」は固定資産であり、満期まで1年を超える満期保有目的債券、子会社株式・関連会社株式、その他有価証券が含まれます 。
参考)有価証券の種類や仕訳|経理担当者が知っておきたいポイントを解…

 

満期保有目的債券だけが、満期日の到来が1年以内か1年を超過するかによって、「投資有価証券」と「有価証券」に区別されていることが特徴的です 。売買目的有価証券は、期末日後1年以内に満期が到来する社債などは流動資産に表示され、それ以外は固定資産の部の投資その他の資産に、投資有価証券、子会社株式等として表示されます 。
参考)多摩市、立川市他東京西エリアで「融資」と「創業支援」に強いさ…

 

有価証券の売買目的と満期保有目的による会計処理の違い

売買目的有価証券とは、短期間の価格変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券のことです 。売買目的有価証券は時価評価が必要で、期末には「有価証券評価損益」科目を使って仕訳をします 。この評価損益は当期の損益として営業外損益に計上されます。
参考)売買目的有価証券とは?時価評価の仕訳方法や有価証券評価損益の…

 

満期保有目的債券とは、償還期限の定めのある有価証券のうち、その償還期限まで保有する目的で取得し、かつ、取得の日においてその旨を帳簿書類に区分記載したものをいいます 。満期保有目的債券は時価で評価しないため、貸借対照表には取得原価で計上されます 。
参考)https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-fcpac/20210226_022121.pdf

 

簡単に表現すると、短期所有目的なら有価証券、長期所有目的なら投資有価証券となります 。前者を処分すれば営業外損益に計上され、後者を処分すれば特別損益に計上されるという重要な違いがあります 。
参考)https://www.tokaitokyo.co.jp/kantan/term/detail_1457.html

 

売買目的有価証券は、いつか現金化することを想定しており、いつでも現金化することができるため流動性は高いといえます 。一方、満期保有目的債券については、満期までの期間が1年以下のものとそうでないものがあるため、扱いに注意が必要で、決算ごとにしっかりと確認を行う必要があります 。

有価証券の子会社株式と関連会社株式による支配権の評価

子会社・関連会社株式とは、その株式を発行する会社を支配、もしくはその会社に対して重要な影響を与えることを目的とする株式のことをいいます 。関連会社株式は他社に重要な影響を与えるもの、子会社株式は他社を支配するものという明確な違いがあります 。
参考)【簿記2級】有価証券とは?分類ごとの仕訳方法をわかりやすく解…

 

子会社・関連会社株式は、原則として取得原価で評価します 。売買目的有価証券とは異なり、時価による評価替えは行いません 。これは、保有目的が会社の支配や影響力を及ぼすことであり、売却を想定しておらず、長期間所有することから、時価の変動を認識する必要がないためです 。
関連会社株式と認められるためには、会社の事業方針などに対して重要な影響を与えられる場合で、子会社株式は会社を実質的に支配している場合に該当します 。これら2つの株式は毎期の評価替え、評価損益の計上は行わず、時価の変動はそれほど気にしないような債券として扱われます 。
参考)有価証券とは?関連会社株式・子会社株式とその他有価証券につい…

 

投資有価証券に分類される子会社株式・関連会社株式は、満期保有目的の長期保有債券や市場性のない関係会社の株式、市場での価格がない有価証券などと同様に、貸借対照表における資産のうちの「投資その他の資産」の一つとして表示されます 。

有価証券の金融商品会計基準に基づく実務上の留意点

同一銘柄の有価証券を異なる保有目的区分に分類した場合、売却原価の算定は、これを通算しないで保有目的区分ごとに行う必要があります 。これは実務上重要なポイントで、同じ銘柄であっても保有目的が異なれば別々に管理しなければなりません。
参考)https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/ikan_20240701_20.pdf

 

満期保有目的の債券への分類はその取得当初の意図に基づくものであり、取得後の目的変更には制限があります 。また、満期保有目的有価証券として分類するためには、取得の日においてその旨を帳簿書類に区分記載することが必要です 。
参考)税務情報

 

投資有価証券は、有価証券台帳などによって管理され、どのような種類や銘柄の有価証券を取得・売却したかを数量や単価(時価)などを記録して一覧できるようにして管理を行うことを目的として作成されます 。これにより、適切な資産管理と会計処理の透明性が確保されます。
参考)投資有価証券 - 勘定科目集 │ 税務コンテンツ

 

実際の取引例として、A社株式を1,000,000円で購入した場合、1年を超えて長期間保有する目的であれば「投資有価証券 1,000,000円」として借方に計上し、数年後に1,200,000円で売却した場合は「現金 1,200,000円」を借方に、「投資有価証券 1,000,000円」と「投資有価証券売却益 200,000円」を貸方に記帳します 。