

法人を設立した直後に「青色申告の申請書は設立から3ヶ月以内でしょ?」と思い込んで出し忘れると、初年度に数十万円の節税が消えます。
法人が青色申告を利用するためには、事前に所轄の税務署へ「青色申告の承認申請書」を提出する必要があります。承認を受けずにそのまま決算を迎えると、自動的に白色申告となり、節税に有利な各種特典が一切使えません。
問題は、「設立から3ヶ月以内」という情報だけが独り歩きしている点です。正確には違います。
国税庁の規定によると、設立1期目の提出期限は次の2つのうちいずれか早い日の前日までとされています。
| 比較する日 | 内容 |
|---|---|
| ① 設立の日以後3ヶ月を経過した日 | 例:4月1日設立なら6月30日 |
| ② 第1期事業年度の終了日 | 例:決算月が5月31日なら5月30日が期限 |
つまり、決算月が設立から2ヶ月後に来る法人であれば、3ヶ月を待たずに期限が来てしまいます。これは見落としやすいポイントです。
期限が土曜日・日曜日・祝日と重なった場合は、翌営業日が提出期限となります。この点も合わせて確認が必要です。
提出方法は主に3つあります。税務署へ直接持参する、郵送する、そしてe-Taxを使ってオンラインで提出する方法です。設立直後は会社設立に関連する届出が多数あるため、「法人設立届出書」と同時に青色申告の承認申請書も一緒に提出してしまうと、提出漏れのリスクを大幅に下げられます。
提出後、税務署からは「承認しました」という通知は届きません。これが意外なポイントです。しかし、申告書を提出しようとする事業年度終了の日までに却下の通知がなければ、承認があったとみなされます。黙認ベースで進む制度だと理解しておきましょう。
参考:国税庁 C1-19「青色申告書の承認の申請」(提出時期・方法・様式の公式情報)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_14.htm
設立から間もなく手続きを忘れた場合でも、翌期以降に青色申告を適用することは可能です。ただし、この場合には別のルールが適用されます。
設立2期目以降に青色申告の適用を受けようとする場合の提出期限は、適用を受けたい事業年度の開始日の前日までです。たとえば4月1日から翌3月31日が事業年度の会社であれば、前の事業年度(3月31日)が終わる前、つまり3月31日までに提出する必要があります。
前期が終わってから申請しても、その時点ではすでに間に合っていません。これは原則として期限後申請を受け付けない制度のためです。
| タイミング | 提出期限 |
|---|---|
| 設立1期目から適用したい場合 | 設立日から3ヶ月 or 第1期期末のいずれか早い日の前日 |
| 設立2期目以降から適用したい場合 | 適用を受けたい事業年度の開始日の前日まで |
ちなみに、1期目の期間が3ヶ月未満という非常に短い事業年度になる場合(例:11月設立で12月決算)には、特別ルールが適用されます。この場合は、1期目の翌事業年度について、設立日から3ヶ月を経過した日と翌事業年度終了日のいずれか早い日の前日が期限とされます。
期間が短すぎる1期目は「特別扱い」になるということですね。
このような複雑なケースがある場合は、設立直後に税理士へ相談して、申請スケジュールを整理しておくことが安心です。設立後の最初の事業年度は税務手続きが集中するため、見落としが起きやすい時期でもあります。
参考:国税庁 No.5100「新設法人の届出書類」(届出書類の種類と提出期限の一覧)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm
青色申告を選ぶ最大の理由は節税効果です。法人が受けられる主なメリットは次の通りです。
特に注目したいのが欠損金の繰越控除です。これは原則です。
具体的に数字で見てみましょう。資本金1億円以下の中小法人が前期に500万円の赤字を出し、当期に500万円の黒字になったとします。法人税等の実効税率を30%と仮定すると、繰越欠損金を使わない場合の法人税は150万円です。一方、繰越欠損金を使えば課税所得がゼロになり、法人税は0円になります(均等割は別途発生)。繰越欠損金1件で150万円の節税になる計算です。
中小法人(資本金1億円以下)は所得の全額を欠損金で控除できますが、大法人は所得金額の50%までしか控除できません。これが条件です。
また、平成30年4月1日以降に開始する事業年度の欠損金は10年間繰り越せますが、それ以前に開始した事業年度分は9年間です。古い年度の欠損金を使い忘れないよう、会計ソフトや税理士のサポートで管理を徹底しておくことが必要になります。
参考:国税庁 No.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5762.htm
一度取得した青色申告の承認も、一定の条件を満たすと取り消される点には注意が必要です。取り消される主なケースは以下の通りです。
特に見落としやすいのが「2期連続の期限後申告」です。痛いですね。
1期だけ遅れた場合は即取り消しにはなりませんが、2期連続で遅れると2期目以降から白色申告として扱われます。さらに、取り消しの通知を受け取ってから1年間は再申請が一切できません。つまり、再申請が通ってから適用が始まるのはその翌事業年度になるため、最短でも「取り消し通知日から約2年以上は白色申告が続く」という状況になります。
| 状況 | 期間 |
|---|---|
| 取り消し通知日〜再申請可能日 | 1年間は再申請不可 |
| 再申請後〜再適用開始 | 申請が通った翌事業年度から適用 |
| 合計の空白期間(目安) | 最短でも翌々期まで白色申告が続く |
再申請の方法は、通常の青色申告承認申請書を再度提出するだけです。ただし、再申請が通っても直ちに適用されるわけではありません。再申請は早めに行い、承認を受けてから翌事業年度の開始を迎える必要があります。
取り消し後に白色申告になると、欠損金の繰越も止まります。取り消しの通知が届いたら、すぐに税理士に相談して再申請と申告スケジュールの立て直しを行うことが重要です。
参考:freee「青色申告が取り消されるケースとは?主なデメリットと再申請の方法」(取り消し条件・再申請の手順をわかりやすく解説)
https://www.freee.co.jp/kb/kb-blue-return/cancellation/
青色申告の承認申請書は、国税庁のウェブサイトからPDFをダウンロードして記入するか、e-Taxで電子申請できます。書類の形式はシンプルですが、記入する項目は複数あります。
主な記入項目は次の通りです。
帳簿組織の欄は実態に合った内容を記載する必要があります。これは必須です。
記帳方法は「仕訳帳」と「総勘定元帳」の2つを選んでおけば、最低限の要件は満たされます。法人の場合、白色申告でも決算書の作成は義務付けられているため、実質的に複式簿記への対応負担は青色と白色でそれほど変わりません。会計ソフト(freee、弥生会計、マネーフォワードクラウドなど)を導入すれば、日々の入力が自動仕訳に変換されるため、記帳の手間が大幅に減らせます。
会計ソフトの選定に迷った場合は、まず無料トライアルで操作感を確かめてから選ぶのが確実です。
参考:freee「法人が青色申告するメリットは?青色申告承認申請書の書き方などを解説」(記入項目一覧と提出方法を図解で解説)
https://www.freee.co.jp/kb/kb-blue-return/blue-return-corporation/
設立後の手続きが集中する中で青色申告承認申請書の提出を忘れる法人は一定数存在します。それだけではなく、提出したつもりが第1期に間に合っていなかった、という見落としも起きています。ここでは、申請後から節税を最大化するまでの流れを整理します。
まず確認したいのは「申請書を出したかどうか」ではなく、「承認の対象となる事業年度がいつから始まっているか」です。承認は自動的にすべての期に適用されるわけではありません。提出日と適用開始事業年度の関係を毎期確認しておく必要があります。
次に注意したいのは、欠損金の繰越控除は「青色申告で確定申告書を期限内に提出した年度に生じた赤字」が対象という点です。つまり、青色申告の適用を受けていても、申告書の提出が期限を過ぎた場合は、その年度の欠損金は繰越できません。申告期限の厳守が前提です。
以下のチェックリストを参考にしてください。
特に欠損金の管理は、多くの法人で後回しにされがちな部分です。ここが手薄だと気づいたら、会計ソフトの欠損金管理機能や、税理士との定期的な確認体制を整えることが節税の継続につながります。
青色申告の制度は、正しく使えば法人の財務体力を守る強力な仕組みです。初年度から漏れなく活用するために、設立直後の手続きリストに青色申告承認申請書を最優先で組み込んでおきましょう。