確定申告が必要な人・年金受給者の判断基準と損しない申告術

確定申告が必要な人・年金受給者の判断基準と損しない申告術

確定申告が必要な人・年金受給者が知っておくべき全知識

年金だけもらっていれば確定申告は完全に不要と思っていると、毎年数万円単位で損をし続けることになります。


📋 この記事の3つのポイント
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確定申告不要制度の2つの条件

公的年金収入が年間400万円以下、かつ年金以外の所得が20万円以下なら確定申告は不要。ただし「不要」と「申告すると得」は別の話です。

⚠️
確定申告不要でも住民税申告が必要なケースがある

所得税の申告が不要でも、年金以外に1円でも所得があると住民税の申告が別途必要になる場合があり、放置すると過払いになることも。

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確定申告することで税金が戻ってくる8つのケース

医療費控除・生命保険料控除・ふるさと納税など、確定申告不要の対象者でも申告すれば還付を受けられる制度が複数あります。


確定申告が必要な年金受給者の判断基準と2つの条件


年金も税法上は「雑所得」に分類されるため、受け取った瞬間から課税の対象になります。これは老齢基礎年金・老齢厚生年金のいずれも同様です。ただし、高齢者の手続き負担を軽くするために「確定申告不要制度」が設けられており、一定の条件を満たす年金受給者は確定申告をしなくてもよい仕組みになっています。


確定申告不要制度が適用されるのは、次の2つの条件をすべて満たす場合です。


- 条件①:公的年金等の収入金額の合計が年間400万円以下であり、かつその全部が源泉徴収の対象になっている
- 条件②:公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が年間20万円以下である


「年間400万円以下」という基準は、一見すると多くの人が該当するように思えます。これが原則です。ただし、年金を複数箇所から受け取っている場合は、それぞれの金額を合算して判断する必要があります。たとえば、国民年金と厚生年金を両方受け取っている人は、2枚の源泉徴収票の支払金額を足した合計で確認しましょう。
























年金収入額 年金以外の所得 確定申告の要否
400万円以下 20万円以下 ✅ 不要(申告不要制度の対象)
400万円以下 20万円超 ❌ 必要
400万円超 金額問わず ❌ 必要


また、遺族年金障害年金は非課税所得のため、金額にかかわらず確定申告の対象外です。これは注目すべき点で、老齢年金との扱いが全く異なります。遺族年金だけを受け取っている方はそもそも課税自体が発生しません。


自分が対象かどうかは、毎年1月頃に日本年金機構から郵送されてくる「公的年金等の源泉徴収票」の「支払金額」欄で確認できます。複数の年金を受けている場合は、その合計金額が判断の基準になります。


参考:年金受給者の確定申告不要制度について(国税庁・政府広報)


確定申告が必要な年金受給者の代表的な4つのケース

確定申告不要制度の条件から外れるケースは、大きく分けて4つあります。具体的な数字と事例で確認しましょう。


① 年金収入が年間400万円を超えるケース


年金収入が年間400万円を超えると、確定申告不要制度の対象外になり、必ず確定申告が必要です。たとえば65歳以上で年間480万円の年金を受け取っている場合、まず公的年金等控除(480万円×0.15+68.5万円=140.5万円)を差し引いた339.5万円が課税対象の雑所得となります。これを放置すると無申告加算税の対象になります。つまり無視は厳禁です。


② 年金以外の所得が年間20万円を超えるケース


年金収入が400万円以下でも、パートやアルバイトで年間20万円超の給与所得があれば確定申告が必要です。たとえば65歳以上で年金120万円+アルバイト収入150万円(給与所得控除55万円を差し引いた給与所得95万円)の方は、年金の雑所得10万円と合わせて合計所得が105万円となり、申告義務が生じます。


③ 個人年金が年間20万円を超えるケース


公的年金とは別に民間の個人年金(iDeCoを含む)を受け取っている場合も注意が必要です。個人年金の所得(受取金額から必要経費を差し引いた額)が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。「公的年金とは別物」という認識が条件です。企業年金も同様の扱いです。


④ 外国の公的年金を受け取っているケース


日本に住みながら外国の公的年金を受け取っている場合、その年金は日本での源泉徴収の対象になりません。そのため確定申告不要制度の「全部が源泉徴収の対象」という条件を満たせず、原則として確定申告が必要になります。意外ですね。海外勤務の経験がある方は特に注意が必要です。
























ケース 確定申告の必要性
年金収入が400万円超 ❌ 必ず必要
アルバイト・パート収入が年間20万円超 ❌ 必要
個人年金・iDeCoの所得が20万円超 ❌ 必要
海外からの年金を受給している ❌ 必要(源泉徴収されないため)


参考:国税庁「公的年金等の課税関係(No.1600)」公的年金等控除の計算方法の詳細
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm


確定申告が必要な人でも見落としがちな「住民税申告」の落とし穴

所得税の確定申告が不要でも住民税の申告義務が発生する、という事実を知っている年金受給者は多くありません。これが意外な落とし穴です。


国税庁も「所得税及び復興特別所得税の確定申告が必要ない場合であっても、住民税の申告が必要な場合があります」と明示しています。具体的には、所得税では「年金以外の所得が20万円以下なら申告不要」とされていますが、住民税の世界では1円でも所得があれば申告が必要になる場合があります。


たとえば、年金収入300万円のAさんがの配当で15万円を得たとします。所得税の観点からは20万円以下のため申告不要ですが、住民税では配当所得15万円について市区町村への申告が求められることがあります。厳しいところですね。


また、確定申告不要制度の対象者が生命保険料控除や医療費控除を受けたい場合も、住民税を含む各種控除のために市区町村への申告を行う必要があります。源泉徴収票には記載されていない控除項目(個人で支払っている生命保険や医療費など)は、自分から申告しなければ一切反映されません。


住民税の申告を怠ると、本来受けられるはずだった控除が消え、翌年の住民税が数万円単位で割高になるケースもあります。痛いですね。


確定申告と住民税申告は管轄が異なり、前者は税務署、後者は市区町村の窓口です。「税務署に行かなくていい=何もしなくていい」とはならない点を覚えておけばOKです。


参考:国税庁「公的年金等を受給されている方へ」(住民税申告についての注意事項あり)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/campaign/r3/Dec/02.htm


確定申告が必要な年金受給者が申告すると得する7つのケース

確定申告不要制度の対象に当てはまる方でも、「任意で申告する」ことで税金が戻ってくる可能性があります。これを「還付申告」といい、申告しないと払いすぎた税金が返ってこないまま終わるため、大きな損につながります。


医療費控除


年間の医療費が10万円を超えた場合(所得200万円未満の方は所得の5%超)、超過分が医療費控除の対象になります。たとえば、年収150万円の65歳以上の方が年間30万円の医療費を支払った場合、所得税11,250円+住民税22,500円の計33,750円が軽減されます。これは使えそうです。領収書は必ず1年分まとめて保管しましょう。


生命保険料控除・地震保険控除


生命保険・医療保険・個人年金保険の保険料は所得税から最大12万円、住民税から最大7万円が控除されます。年金の源泉徴収票には生命保険料の支払い情報は反映されていません。自分で申告するのが条件です。


扶養親族等申告書の提出と確定申告


日本年金機構から届く「扶養親族等申告書」を提出しなかった方は要注意です。未提出だと本来の約2倍の税率(約5%→約10%)で所得税が源泉徴収され続けてしまいます。日本年金機構の調査では、未提出のまま高い税額を引かれ続けている方が72万8,000人以上いたことが判明しており、確定申告で払いすぎた分を取り戻すことができます。2ヶ月分の年金で約28,000円も余分に引かれていた実例もあります。


ふるさと納税(寄附金控除)


ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」は確定申告をしない前提で利用できる仕組みですが、年金受給者で確定申告が必要な方は使えません。確定申告の場面でまとめて寄附金控除として申告する必要があります。また、ワンストップ特例を利用していたとしても、後から確定申告をするとワンストップ特例は無効になるため、ふるさと納税の寄附先も確定申告書に記載する必要があります。


その他の控除


以下の控除も確定申告で適用できます。


| 控除の種類 | 主な内容 |
|----------|---------|
| 社会保険料控除 | 国民健康保険料介護保険料の支払い |
| 配偶者控除扶養控除 | 生計を同じくする家族がいる場合 |
| 寡婦(寡夫)控除 | 死別・離婚後の場合、年27万円 |
| 雑損控除 | 災害・盗難・横領の被害を受けた場合 |
| 住宅ローン控除 | 住宅取得・リフォームをした場合 |


還付申告には期限がなく(申告年の翌年1月1日から5年以内)、通常の確定申告とは別に税務署に提出することで税金が口座に振り込まれます。「自分には関係ない」と思っていた方でも、年間で数千円から数万円の還付が出るケースは少なくありません。


参考:SMBCマネービバ「年金受給者の確定申告~必要?不要?知らないと損するケースを解説」医療費控除や各種控除の詳細な解説あり
https://www.smbc.co.jp/kojin/money-viva/nenkin/0003/


年金受給者の確定申告の手続き・提出書類・期限まとめ

実際に確定申告をするにあたって必要なものと手順を整理します。難しいと感じる必要はありません。手順が分かれば、一度やれば次からは慣れます。


📅 申告期間


確定申告の対象期間は前年1月1日〜12月31日、申告期限は原則として翌年の2月16日〜3月15日です。ただし、還付申告(税金を取り戻す申告)は1月1日から受け付けており、最長5年間さかのぼって申請できます。「去年分を忘れていた」場合も、5年以内であれば取り戻せるのは大きなメリットです。


📄 必要書類リスト


- 全員共通:マイナンバーカード(またはマイナンバー通知カード+本人確認書類)、印鑑、還付を受ける場合は銀行口座情報
- 収入関係:公的年金等の源泉徴収票(毎年1月頃に届く)、給与がある場合は給与の源泉徴収票
- 控除関係:医療費領収書(または医療費控除の明細書)、生命保険料控除証明書、社会保険料(国民年金)控除証明書、ふるさと納税の寄付金受領証明書


💻 申告方法は3つ


1. e-Tax(インターネット):国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からオンラインで作成・送信。マイナンバーカードがあれば自宅から完結します。


2. 郵送:作成した申告書を所轄の税務署に郵送する方法。


3. 税務署に持参:窓口で職員に相談しながら作成できます。初めての方にはこの方法がおすすめです。


源泉徴収票を紛失した場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」から確認・再発行申請が可能です。スマートフォンでも利用できます。「ないから申告できない」とあきらめる必要はありません。


⚠️ 確定申告をしなかった場合のリスク


申告義務があるのに申告しないと、「無申告加算税」(原則15〜20%)や「延滞税」(最大年14.6%)が課される可能性があります。悪意がなくても課税される点に注意が必要です。また、住民税が決定されず、翌年の国民健康保険料の算定にも影響が出ることがあります。


申告書の作成が不安な場合は、確定申告会場や最寄りの税務署に相談することを強くおすすめします。税務署の職員が一緒に確認してくれるので、初めての方でも安心して手続きできます。


参考:国税庁「確定申告の際にご持参いただくもの」必要書類の公式リスト
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm






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