
日本の公的年金制度は、国民全体の老後保障を目的とした社会保険制度で、「2階建て構造」と呼ばれる体系を採用しています 。この制度は、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入することから「国民皆年金」と呼ばれています 。公的年金制度は、現役世代が支払った保険料を高齢者などの年金給付に充てる「世代間扶養」の仕組みで運営されています 。
参考)https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/20140710.html
1階部分となる国民年金(基礎年金)は、すべての国民共通の基礎的保障を提供し、2階部分の厚生年金保険は、会社員や公務員に対してより手厚い保障を上乗せしています 。この2階建て構造により、職業や立場に応じた適切な年金給付が実現されています 。
参考)日本の年金制度
現在の制度では、平成27年10月から共済年金が厚生年金に統合されており、被用者年金制度の一元化が図られています 。これにより、会社員と公務員の年金制度が統一され、より公平な制度運営が行われています 。
参考)https://www.monkakyosai.or.jp/kouhou/pdf/hiyoushanenkin_ichigenka.pdf
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する基礎的な年金制度です 。国民年金から支給される給付は「基礎年金」と呼ばれ、老齢・障害・遺族の3つの事由で給付が行われます 。
参考)公的年金制度の種類 - 三郷町公式ホームページ
国民年金の被保険者は、職業や働き方に応じて第1号、第2号、第3号の3種類に分類されています 。第1号被保険者は自営業者や学生など、第2号被保険者は会社員や公務員、第3号被保険者は第2号被保険者に扶養されている配偶者です 。
参考)年金の被保険者には、1号・2号・3号の種類がありますが、どう…
この分類により、保険料の納付方法や手続きが異なっています 。第1号被保険者は毎月定額の保険料を自分で納付し、第2号被保険者は給料から天引きで納付、第3号被保険者は個人負担がありません 。2022年度の国民年金保険料は月額16,590円となっています 。
参考)国民年金「第3号→第1号」への切り替えが必要な時は意外と多い…
厚生年金保険は、国民年金に加えて会社員や公務員が加入する2階部分の年金制度です 。厚生年金の保険料は、給与(標準報酬月額)に保険料率を乗じて算出され、労使で折半負担となっています 。
参考)https://www.smbc.co.jp/kojin/money-viva/nenkin/0004/
厚生年金からの給付は、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金の3種類があり、それぞれ基礎年金に上乗せして支給されます 。老齢厚生年金の額は、平均標準報酬額と被保険者期間によって決まり、加入期間が長く、給与が高いほど受給額が多くなります 。
参考)厚生年金保険の給付の種類・内容|社長のための労働相談マニュア…
厚生年金に加入している人は、自動的に国民年金の第2号被保険者となり、基礎年金の受給権も取得します 。これにより、老後には老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取ることができ、国民年金のみの加入者より手厚い保障を得られます 。
参考)厚生年金と国民年金の違いとは?両方払う必要はある?仕組みや加…
国民年金の被保険者分類は、個人の就労状況や家族構成によって決定される重要な制度です 。この分類により、保険料の納付方法、届出手続き、給付内容が大きく異なります 。
第1号被保険者は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人で、第2号・第3号被保険者以外の人が該当します 。具体的には、自営業者、農業・漁業従事者、フリーランス、学生、無職者などが含まれます 。保険料は月額定額で、2022年度は16,590円となっており、収入に関係なく一律の金額です 。
参考)年金制度の仕組みと考え方_第2_公的年金制度の体系(被保険者…
第2号被保険者は、会社員や公務員など、厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する人です 。この場合、国民年金と厚生年金保険の両方に同時加入し、保険料は給与から天引きされます 。保険料は収入に応じた定率制で、事業主と折半負担となります 。
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者で、年収130万円未満などの条件を満たす人が対象です 。国民年金保険料の個人負担はなく、配偶者が加入している年金制度全体で負担する仕組みとなっています 。
公的年金制度では、老齢・障害・遺族の3つの事由に対して給付が行われ、それぞれに基礎年金と厚生年金の給付があります 。この多面的な保障により、単なる老後資金だけでなく、現役世代の生活リスクもカバーしています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei01/dl/zu07.pdf
老齢給付では、基礎年金は保険料納付期間に応じた定額給付、厚生年金は報酬比例による給付となります 。2024年度の満額老齢基礎年金は年額816,000円で、厚生年金は平均標準報酬額と加入期間に応じて算定されます 。厚生年金加入者は、基礎年金と厚生年金の両方を受給でき、より手厚い老後保障を得られます 。
参考)大樹生命保険株式会社:大樹の認知症サポートサービス
障害給付は、病気やケガで障害状態になった場合に支給される年金です 。障害基礎年金は1級・2級の障害等級に応じて定額支給され、子がいる場合は加算があります 。障害厚生年金は独自の3級基準もあり、基礎年金に該当しない軽度の障害でも障害手当金が支給される場合があります 。
遺族給付は、年金加入者が亡くなった場合に遺族に支給される年金です 。遺族基礎年金は18歳未満の子がある配偶者または子に支給され、遺族厚生年金は子の有無に関係なく遺族に支給されます 。遺族厚生年金の額は、亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3相当額となります 。
日本の公的年金制度は、少子高齢化の進行に伴い、持続可能性を確保するための制度改革が継続的に実施されています。最近の大きな変更として、平成27年10月の被用者年金制度一元化があります 。
この一元化により、国家公務員・地方公務員・私学教職員の共済年金が厚生年金に統合されました 。従来の共済年金の3階部分(職域部分)は廃止され、新たに「年金払い退職給付」が創設されています 。これにより、民間企業の会社員と公務員の年金制度格差が是正されています。
参考)公務員の年金制度ってどんな仕組み?正しく理解して老後の人生設…
制度の財政面では、現役世代の保険料負担、年金積立金の運用収益、国庫負担による税金投入の3つの財源で運営されています 。今後も人口構造の変化に対応した制度調整が継続的に行われると予想されます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/01/01-02.html
金融業従事者として注目すべきは、企業年金制度の多様化です 。確定給付企業年金、確定拠出年金、退職一時金などの3階部分の充実により、顧客の老後資金準備ニーズは多様化しています。公的年金の基本構造を理解することで、より適切な金融商品提案が可能になります。