
基礎年金と国民年金は、実は同じ制度を異なる視点から表現した用語です。混同されやすいこの2つの言葉について、明確な違いを理解しましょう。
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金制度の名称です。一方、基礎年金は、国民年金制度から支給される年金給付そのものを指します。
つまり、国民年金という制度があり、そこから支給される年金が基礎年金と呼ばれるということです。日本の年金制度は2階建て構造になっており、1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金という構造になっています。
この関係性を理解することで、年金制度全体の仕組みがより明確になります。国民年金制度は、すべての国民が加入する基盤的な年金制度であり、ここから支給される年金が基礎年金として、すべての年金受給者の基礎となる部分を担っています。
基礎年金の受給額は、保険料の納付期間によって決まります。満額の基礎年金を受給するためには、20歳から60歳までの40年間、保険料を完納する必要があります。
2025年度の基礎年金満額は、年額約79.5万円(月額約6.6万円)となっています。この金額は、40年間の完納を前提とした金額です。
受給額の計算方法は以下の通りです。
基礎年金の受給額は、加入者の所得に関係なく一定です。これは厚生年金が収入に比例して増減するのとは大きく異なる特徴です。この定額制により、低所得者にも一定の年金保障が提供される仕組みになっています。
また、基礎年金には物価や賃金の変動に応じた改定制度があり、毎年度見直しが行われています。これにより、インフレーションなどの経済変動に対応した年金額の調整が図られています。
国民年金の保険料は、加入者全員が同じ金額を納付する定額制です。2025年度の保険料は月額17,510円となっており、毎年4月に改定されます。
保険料の納付方法は加入者の種別によって異なります。
第1号被保険者(自営業者、学生、無職など)
第2号被保険者(会社員、公務員)
第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者)
国民年金の保険料は、2004年度から段階的に引き上げられ、2017年度に上限額に達しました。この引き上げは、将来の年金財政の安定化を目的としたものです。
保険料の納付が困難な場合、免除制度や納付猶予制度を利用できます。これらの制度を利用すると、将来の年金額は減額されますが、受給資格期間にはカウントされます。
日本の年金制度は「2階建て」構造と呼ばれ、1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金という構成になっています。
1階部分:国民年金(基礎年金)
2階部分:厚生年金
厚生年金加入者の平均受給額は、男性が約196万円、女性が約126万円となっています。これは基礎年金と厚生年金を合わせた金額です。
国民年金のみの加入者(第1号被保険者)と厚生年金加入者では、将来の年金受給額に大きな差が生じます。この格差を解消するため、第1号被保険者には国民年金基金やiDeCoなどの制度が用意されています。
厚生年金の特徴として、加入期間に上限がなく、70歳まで加入可能である点があります。また、厚生年金は賃金に比例するため、高収入者ほど高い年金を受給できますが、基礎年金部分があることで低収入者への配慮も行われています。
基礎年金の支給開始年齢は原則として65歳です。これは国民年金、厚生年金ともに共通の年齢となっています。
受給資格要件
繰上げ・繰下げ受給制度
基礎年金は、受給開始年齢を変更することができます。
繰下げ受給を選択した場合、75歳まで繰り下げると年金額が84%増額されます。これは長寿化社会に対応した制度改正により、2022年4月から75歳まで延長されました。
年金制度の財政方式
日本の年金制度は「賦課方式」を採用しています。これは、現役世代が納付する保険料で現在の年金受給者の年金を支払う方式です。少子高齢化の進行により、この方式には持続可能性の課題があります。
将来の制度改正予定
厚生年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられており、男性は2025年度まで、女性は2030年度までに65歳に統一される予定です。これにより、将来的には基礎年金と厚生年金の支給開始年齢が完全に統一されることになります。
基礎年金の受給には、国籍要件もあります。日本国籍を有しない方でも、一定の要件を満たせば基礎年金の受給が可能です。また、海外居住者に対する特例制度も設けられており、グローバル化に対応した制度運営が行われています。
厚生労働省の年金制度に関する詳細情報
https://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/manga/04.html
日本年金機構による公的年金制度の解説
https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/20140710.html