

年末調整で控除を1つ申請し忘れるだけで、18万円の還付を丸ごと取り損なうことがある。
タックスプランニングとは、税法の範囲内で合法的に税負担を軽くするための戦略的な計画のことです。FP(ファイナンシャルプランナー)の試験では「D分野:タックスプランニング」として6分野のうちの1つに位置づけられており、所得税を中心に、法人税・消費税・不動産関連の税金・相続税・贈与税までを幅広く扱います。
FPがタックスプランニングを学ぶ意義は、試験合格にとどまりません。税金の仕組みを体系的に理解することで、自分自身の家計でも「どの控除が使えるか」「どの申告方法が得か」という判断ができるようになります。つまり節税感覚が身につくということです。
重要なのはここです。所得税はFPのすべての分野と密接に絡んでいます。たとえば、年金収入には雑所得として所得税がかかり、生命保険の保険料は所得控除の対象になり、株式投資で得た配当金も課税対象になります。タックスプランニングの知識は"単独の分野"ではなく、他の5分野すべてを横断する共通言語として機能するのです。
所得税の課税の流れを大まかに整理すると、以下の通りです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 各種所得を計算 | 給与所得・事業所得・不動産所得・配当所得など10種類に分類 |
| ② 損益通算・繰越控除 | 赤字所得を他の所得と合算して税負担を減らす |
| ③ 所得控除を差し引く | 基礎控除・社会保険料控除・医療費控除などを適用 |
| ④ 税率をかけて税額を算出 | 課税所得金額 × 税率(5〜45%の超過累進税率) |
| ⑤ 税額控除を差し引く | 住宅ローン控除・配当控除などを適用→最終納税額 |
この流れを頭に入れておくと、個々の控除の"どこで効いてくるか"がひと目でわかります。つまり全体像が基本です。
参考:国税庁「所得税のしくみ」(所得税の計算の流れと各種控除の位置づけについて公式情報を確認できます)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_1.htm
FPのタックスプランニング学習で最初の大きなつまずきポイントが「所得控除」と「税額控除」の違いです。どちらも節税に使えますが、効果の強さがまるで違います。
所得控除は、課税される所得そのものを減らす仕組みです。たとえば基礎控除(48万円)、社会保険料控除、生命保険料控除(最大12万円)、医療費控除などが代表例です。課税所得が減れば、そこにかかる税率も下がるため、間接的に税額が下がります。
一方、税額控除は計算後の税金そのものから直接差し引く制度です。これは強力です。たとえば住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%を所得税額から直接差し引けます。所得控除が「1万円の控除で節税効果は税率分だけ」なのに対し、税額控除は「1万円の控除でそのまま1万円の節税」になります。
| 種類 | 主な例 | 節税効果のイメージ |
|---|---|---|
| 所得控除 | 基礎控除・医療費控除・iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)・生命保険料控除など | 控除額 × 税率 分の節税 |
| 税額控除 | 住宅ローン控除・配当控除・外国税額控除 | 控除額そのまま節税(効果大) |
見落とされやすい事実があります。FPのプリズムで見ると、年末調整で申請できる所得控除は全15種類のうち12種類で、残り3種類(医療費控除・雑損控除・寄附金控除)は確定申告が必要です。つまり申請しなければ控除はゼロです。年末調整だけで完結すると思い込んでいると、実は数万円単位の還付を受け損なう可能性があります。
FPのファイナンシャルプランナー・井戸美枝氏によれば、申請し忘れの控除が積み重なると最大18万円の還付を受け損なうケースもあるといいます。痛いですね。
控除の申請漏れを防ぐためには、毎年の控除チェックリストを作成しておくのが効果的です。「確定申告が必要な控除」と「年末調整でできる控除」を分けてメモしておくだけで、取り逃がしのリスクを大幅に下げられます。
参考:プレジデントオンライン「申請を忘れると18万円の損…FPが注意喚起する年末調整で絶対に見落とせない3つの控除」(年末調整で見逃しやすい具体的な控除の詳細について解説されています)
FPのタックスプランニング学習の中でも「損益通算」は、知っているだけで実生活の節税効果が大きく変わる重要な仕組みです。
損益通算とは、ある所得で生じた赤字(損失)を、他の所得の黒字と合算して課税対象の所得を減らす制度です。損益通算できる所得は原則として「不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得(総合課税)」の4種類で、FP試験では頭文字を取って「不・事・山・譲(富士山上)」と覚えるのが定番です。
たとえば、給与所得が400万円ある会社員が副業で30万円の事業所得の赤字を出したとします。損益通算を適用すると課税所得は400万円から370万円へ下がります。税率20%なら、それだけで年間6万円の節税になる計算です。これは使えそうです。
重要なポイントが1つあります。副業の所得が「雑所得」に分類された場合は損益通算ができません。2022年以降、国税庁の通達により副業収入が年300万円以下の場合は原則「雑所得」として扱われるケースが増えており、事業所得として認められるには帳簿の作成・保存などの実態が必要です。
さらに節税効果を高める手段が青色申告です。事業所得・不動産所得・山林所得がある人が所定の帳簿を作成して確定申告をすることで、最大65万円の「青色申告特別控除」を受けられます。これは白色申告との比較で年間65万円分の所得が丸ごと消えるようなもので、たとえば税率20%であれば最大13万円の節税につながります。
青色申告の申請は、開業後2か月以内(既存の事業者は前年12月31日まで)に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。期限に注意が必要です。
副業を始めた・不動産投資をしている、という方は特に損益通算と青色申告のセットを強く意識してください。帳簿作成のハードルを感じる場合は、マネーフォワードやfreeeなどのクラウド会計ソフトを活用すると、帳簿入力から確定申告書の作成まで一括して対応できます。
参考:国税庁「青色申告制度のあらまし」(青色申告の申請方法と要件について詳しく確認できます)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
FPが実際のライフプランニングで提案する節税の定番セットが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「ふるさと納税」の活用です。この2つは、タックスプランニングの所得控除の知識を実生活に直接応用できる代表例です。
iDeCoは、掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除になります。会社員の場合、拠出上限は月2万3,000円(年27万6,000円)です。たとえば年収500万円・税率20%の会社員が満額拠出すると、所得税と住民税を合わせて年間約5万5,200円の節税効果が生まれる計算になります。これが原則です。
一方、ふるさと納税は実質2,000円の自己負担で地方自治体に寄附し、返礼品を受け取りながら所得税・住民税の控除を受けられる仕組みです。控除の仕組みは「寄附金控除(所得控除)+住民税からの控除」という複合的なものです。
ここで注意が必要なのは、iDeCoとふるさと納税を併用すると、ふるさと納税の上限額が減少するという点です。iDeCoを満額拠出すると課税所得が下がり、その課税所得をもとに計算されるふるさと納税の限度額も自動的に下がります。たとえば年収500万円の方がiDeCoを月2万3,000円で拠出した場合、ふるさと納税の限度額は約6,000円下がるという試算もあります。
iDeCoとふるさと納税を両方使う場合は、自分の課税所得と住民税額を正確に把握した上で限度額を計算することが重要です。総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」では自動計算ツールが用意されており、iDeCo拠出後の上限額も簡単に試算できます。確認する手間は5分もかかりません。
参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」(ふるさと納税の控除の仕組みと限度額の自動計算ツールが使えます)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/about/
FPのタックスプランニング学習の中でも、投資家にとって特に実践的な知識が「総合課税と申告分離課税の選択」です。上場株式の配当金に関しては、実は3つの申告方法から自分で選べるという制度設計になっています。
重要な分岐点があります。課税所得が695万円未満の人は、総合課税を選択して配当控除を活用すると税率が源泉徴収より低くなり有利です。一方、課税所得が695万円以上になると適用税率が30%を超えるため、申告不要制度や申告分離課税を選ぶほうが税負担を抑えられます。これが条件です。
たとえば、課税所得300万円・配当所得が50万円ある投資家が総合課税を選択した場合と申告不要制度を選択した場合を比較してみます。課税所得300万円の場合の税率は10%です。配当控除(課税所得1,000万円以下の場合、上場株式の配当所得の10%)を加味すると、実質的な税率はさらに下がります。対して申告不要の源泉徴収は一律20.315%なので、総合課税のほうが有利になる計算です。
もう一つ見逃せないのが、申告分離課税を選ぶと株式の譲渡損失と配当所得を「損益通算」できる点です。たとえば株で20万円の譲渡損失がある年に配当所得が20万円あった場合、申告分離課税を選択して損益通算すれば、配当所得への課税をゼロにできます。これも使えそうです。
ただし、申告分離課税を選択すると配当控除は使えなくなります。どちらが有利かは個人の課税状況によって異なるため、毎年確定申告時にシミュレーションすることが重要です。
参考:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」(申告分離課税の要件と計算方法について公式情報を確認できます)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm
FPのタックスプランニング学習でほとんど語られないのが「節税の費用対効果」という視点です。多くの人は「控除が使える=必ずやるべき」と考えますが、これは必ずしも正しくありません。
たとえば医療費控除は、年間の医療費が10万円(または総所得の5%、いずれか低い方)を超えた部分が控除対象になります。しかし確定申告の手間・時間を考えると、節税額が数千円程度にとどまるケースでは費用対効果が低いとも言えます。意外ですね。
一方、iDeCoは手続きが一度完了すれば毎年自動的に節税効果が積み上がります。年収500万円の会社員が満額拠出(月2万3,000円)を30年間続けると、累計節税額は所得税・住民税合計で約165万6,000円に達する計算(年5万5,200円×30年)になります。
FP的な思考では、以下のように節税手段を「コスト×効果」で評価することが大切です。
| 節税手段 | 手続きコスト | 年間節税効果(年収500万円・税率20%の場合) | 継続性 |
|---|---|---|---|
| iDeCo(満額) | 初回のみ申込 | 約55,200円 | 毎年自動 |
| ふるさと納税(上限) | 毎年申告 or ワンストップ特例 | 返礼品相当額(実質2,000円負担) | 毎年申込が必要 |
| 青色申告特別控除(65万円) | 帳簿作成・確定申告 | 最大130,000円 | 毎年申告が必要 |
| 医療費控除 | 領収書集計・確定申告 | 超過分×税率(年収・医療費次第) | 該当年のみ |
| 住宅ローン控除 | 初年度のみ確定申告 | ローン残高の0.7%(上限あり) | 最長13年間 |
優先順位の考え方が基本です。コストが低く継続効果が高い節税手段(iDeCo・住宅ローン控除)から先に確実に実行し、次に毎年の手続きが必要なもの(ふるさと納税・青色申告)という順番で取り組むと、無理なく節税効果を最大化できます。
FP試験の学習を通じてタックスプランニングを体系的に学ぶと、この「優先順位のロジック」が自然と身につきます。試験勉強が直接、家計の改善につながる点がFPのタックス分野の一番の魅力です。それが目標です。
FP技能検定2級・3級の試験日程や申し込み方法については、日本FP協会の公式サイトで最新情報を確認してください。独学での学習には、日本FP協会公認の「FPキャンプ」のようなオンライン講座も活用できます。
参考:日本FP協会「FP技能検定」(FP2・3級の試験内容・申込・日程について公式情報を確認できます)
https://www.jafp.or.jp/exam/