青色申告特別控除(65万円)の条件と節税効果を徹底解説

青色申告特別控除(65万円)の条件と節税効果を徹底解説

青色申告特別控除(65万円)の条件・節税効果・注意点まとめ

紙で青色申告を出し続けると、65万円から10万円控除に下がります。


📋 この記事の3つのポイント
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65万円控除は「5つの条件」すべてが必要

青色申告をしているだけでは不十分。複式簿記・貸借対照表・e-Taxなどの条件を1つでも欠くと、控除額が55万円または10万円に自動的に下がります。

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節税効果は所得税だけではない

65万円控除は所得税・住民税・国民健康保険料の3つを同時に下げる効果があります。税率20%の人なら合計で約20万円超の節税につながるケースも。

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令和9年分から制度が大きく変わる

令和8年度税制改正により、書面申告のままでは控除額が10万円に大幅減額。一方、電子帳簿保存まで対応すると最大75万円に引き上げられる改正が予定されています。


青色申告特別控除(65万円)とは何か:制度の基本と控除の仕組み


青色申告特別控除(65万円)とは、青色申告で確定申告を行う個人事業主が、所得金額から最大65万円を差し引ける制度です。この控除が適用されると、税金計算のベースとなる課税所得が下がるため、所得税の負担が直接軽くなります。重要なのは、所得税だけでなく、課税所得に連動する住民税国民健康保険料にも同時に効いてくる点です。これは白色申告にはない、青色申告だけの特典です。


個人事業主の所得税は「売上 − 経費所得控除 = 課税所得」に対して計算されます。青色申告特別控除は、この計算の「経費」でも「所得控除」でもなく、それとは別に所得金額から直接引ける「特別控除」という位置づけです。


節税額のイメージを数字で示すと、所得税率が20%の事業者が65万円の控除を受けた場合、所得税だけで約13万円の節税になります。住民税(一律10%)では約6.5万円、さらに国民健康保険料の軽減分を加えると、合計で20万円を超える節税効果となるケースもあります。


青色申告特別控除には10万円・55万円・65万円の3段階があります。65万円が最上位で、条件を1つ欠くだけで下の段階に落ちてしまう設計になっています。この3段階の違いを最初に理解しておくことが大切です。








控除額 主な要件
65万円 複式簿記貸借対照表添付+期限内申告+e-Tax(または優良な電子帳簿保存)
55万円 複式簿記+貸借対照表添付+期限内申告(紙提出でも可)
10万円 単式(簡易)簿記での記帳でも適用可


65万円控除が条件です。以下では、その条件を一つひとつ具体的に確認していきます。


国税庁が公開する制度の根拠情報はこちらで確認できます。


国税庁 No.2072 青色申告特別控除(令和7年4月1日現在法令等)


青色申告特別控除(65万円)を受けるための5つの必須条件

65万円の控除を受けるためには、複数の条件をすべて同時に満たす必要があります。1つでも欠けると、自動的に55万円か10万円に下がります。これが原則です。


①事業所得または事業的規模の不動産所得があること


青色申告特別控除(65万円)の対象は、事業所得と「事業的規模」と認められる不動産所得に限られます。フリーランス・個人事業主として事業を営んでいる場合は、基本的に事業所得に該当します。不動産所得の場合は「事業的規模」かどうかの判断が必要で、一般的にはアパートで10室以上・戸建て貸家で5棟以上が目安(5棟10室基準)です。


この基準を満たさない不動産賃貸の場合、65万円ではなく10万円の控除しか受けられません。アパート1棟9室しか持っていない大家さんが「65万円控除を受けているつもり」でいると、実は要件を満たしていないというケースが実際に存在します。


②複式簿記で記帳していること


家計簿のような単式(簡易)簿記では65万円控除は受けられません。取引を「借方・貸方」の2面から記録する複式簿記が必要です。具体的には仕訳帳と総勘定元帳を作成します。


弥生会計やfreee、マネーフォワードなどのクラウド会計ソフトは、入力内容に基づいて自動的に複式簿記の帳簿を生成します。ただし、ソフトを使っていれば自動でOKというわけではなく、記帳漏れや残高不一致があれば認められません。


③貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付すること


確定申告書には「青色申告決算書(4枚組)」を添付する必要があります。65万円控除では、損益計算書だけでなく貸借対照表(B/S)の添付が必須です。貸借対照表が添付されていない場合は、65万円・55万円控除の要件を満たしません。


10万円控除の場合は損益計算書のみで構いませんが、65万円を狙うならB/Sまでセットで提出が必要です。貸借対照表が合わないままになっているケースは多く、確認が必要です。


④確定申告期限(3月15日)までに申告すること


1日でも期限を過ぎると、65万円・55万円の控除は受けられなくなり、10万円に下がります。


これは非常に厳しいルールです。複式簿記でしっかり記帳し、貸借対照表を完成させ、e-Taxで申告する準備がすべて整っていたとしても、3月15日を1日過ぎれば控除額は10万円になります。


⑤e-Taxで申告するか、優良な電子帳簿保存を行うこと


55万円控除との決定的な差がここです。紙(書面)で申告を提出している場合は、55万円控除にはなりますが65万円にはなりません。65万円にするには、インターネット経由でe-Taxを使って申告データを送信するか、電子帳簿保存法の「優良な電子帳簿」の要件を満たした帳簿を保存している必要があります。


e-Taxを使えば追加の届出は不要で、その年の申告をe-Tax経由で行うだけで65万円控除が適用されます。実務上はe-Taxを使う方法が最も簡単です。


国税庁 e-Tax(国税電子申告・納税システム)公式サイト


青色申告特別控除(65万円)の節税効果:所得税・住民税・保険料への影響

65万円控除の節税効果は、所得税だけに留まらない点が重要です。


所得税・住民税・国民健康保険料という3つの税・保険料がまとめて下がる仕組みになっています。これは青色申告特別控除が「課税所得を下げる」効果を持っているためで、国民健康保険料の計算に利用される所得は、所得控除が適用されないものの、青色申告特別控除の適用は受けられます。


所得税率20%(課税所得195万〜330万円の区間)の個人事業主の場合の試算を示します。








対象 計算式 節税額
所得税 65万円 × 20.42%(復興特別所得税込) 約132,730円
住民税 65万円 × 10% 65,000円
国民健康保険料 自治体により異なる(所得割料率 × 65万円) 数万円〜


3つ合算すると、20万円前後の節税効果が生まれるケースもあります。


一方、所得税率が5%(課税所得195万円以下の区間)の場合でも、所得税で約3.3万円・住民税で6.5万円・保険料軽減を合わせると10万円超の節税になります。所得が少ない段階から青色申告を始めても、十分な恩恵があります。


さらに、65万円控除は所得税の「確定申告分だけ」に影響するわけではありません。翌年の住民税の納税通知書、そして国民健康保険の保険料計算にも反映されます。つまり、1度の申告の効果が1年以上にわたって続くといえます。


弥生会計が公開している控除と課税所得の詳細解説はこちらで確認できます。


弥生会計|青色申告特別控除とは?65万円控除の適用要件をわかりやすく解説


青色申告特別控除(65万円)を失うよくある落とし穴:期限・e-Tax・簿記の見落とし

制度の概要を理解していても、実際の申告で失敗するパターンがあります。


落とし穴①:3月15日をわずかに過ぎてしまった


期限後申告になると、65万円・55万円控除は一律10万円に下がります。これは「1日だけ遅れた」場合でも例外なく適用されます。複式簿記や貸借対照表の準備をしっかりしていても、提出が1日遅れただけで数十万円単位の控除を失います。痛いですね。


期限後申告は青色申告の承認自体を取り消されるわけではありませんが、その年の65万円(または55万円)控除の恩恵を丸ごと失う点は覚えておく必要があります。


落とし穴②:e-Taxでなく紙(書面)で提出している


「毎年税務署の窓口に持ち込んでいる」「郵送で申告している」という個人事業主が65万円控除を申告している場合、実際には55万円控除しか受けられていない可能性があります。e-Taxを使わない書面申告は55万円が上限です。65万円控除を受けるつもりで申告書に65万円と書いていても、提出方法が紙なら適用されません。


落とし穴③:クラウド会計を使っているが帳簿の残高が合っていない


freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを使えば、手軽に複式簿記の帳簿が作れます。しかしソフトを使うこと自体が条件を満たすわけではなく、正確に記帳できていることが前提です。売掛金や買掛金の残高が合わない、プライベートの取引が混入している、勘定科目の設定が間違っているといった状態では、正規の複式簿記とは認められません。


落とし穴④:不動産所得者が事業的規模を勘違いしている


アパートを2棟・7室保有している場合、5棟10室基準を満たさないため「事業的規模」に該当しません。この場合、65万円ではなく10万円の控除しか受けられません。不動産賃貸業を営む個人が65万円控除を目指す場合、まず事業的規模かどうかの確認が必要です。


落とし穴⑤:副業の収入雑所得に分類されている


サラリーマンが副業として受けているライターやコンサルなどの収入が「雑所得」に分類されている場合、青色申告特別控除の対象外です。65万円控除は事業所得・事業的規模の不動産所得・山林所得のみが対象で、雑所得には適用されません。


副業収入が事業所得として認められるためには、継続性・反復性・帳簿書類の保存などが判断基準となります。この点は税務当局の解釈が厳しくなっており、注意が必要です。


freee|副業で青色申告できる条件とは?節税効果や注意点を解説


青色申告特別控除(65万円)を確実に受けるための手順と会計ソフト活用

65万円控除を確実に取るためには、「開業前後」「記帳中」「申告直前」の3つのフェーズで準備することが効率的です。


開業前後にやること:青色申告承認申請書の提出


65万円控除の大前提は青色申告の承認を受けることです。新規開業の場合は、開業日から2ヶ月以内(1月15日以前に開業した場合はその年の3月15日まで)に「所得税の青色申告承認申請書」を管轄の税務署に提出します。


これを忘れた場合、その年は白色申告しかできず、控除ゼロになります。開業届を提出するタイミングで同時に出してしまうのが確実です。「開業届と青色申告承認申請書をセットで出す」これが基本です。


記帳中にやること:複式簿記での正確な帳簿作成


毎月の取引を複式簿記で記録し、仕訳帳・総勘定元帳を整備します。クラウド会計ソフト(弥生・freee・マネーフォワード等)を使えば、日常の入力から貸借対照表・損益計算書の自動作成まで一括で対応できます。


ここで重要なのは、事業用とプライベートの口座・クレジットカードを完全に分離しておくことです。混在したまま記帳しようとすると、残高が合わなくなったり、経費の按分計算が複雑になったりします。口座分離は記帳の正確性を保つための実務的な対策として有効です。


申告直前にやること:e-Taxの設定確認


確定申告の期限(3月15日)より前に、e-Taxで申告できる環境を整えておきます。マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)があれば、e-Taxを無料で利用できます。


クラウド会計ソフトからe-Taxへの直接データ送信に対応しているサービスを使えば、申告の手間を大幅に削減できます。実際の送信は2月16日以降になりますが、環境整備や操作確認は1月中に完了させておくと安心です。


貸借対照表の「残高確認」を忘れずに


申告前の最終チェックとして、貸借対照表の資産合計と負債・純資産合計が一致しているか確認します。この貸借対照表の一致(バランス)が合っていない場合、税務署から問い合わせを受ける可能性があります。また、正規の複式簿記とは認められず、65万円控除が否認されるリスクもあります。貸借対照表の一致は必須です。


弥生会計のクラウド版では、青色申告決算書の作成からe-Tax送信まで一貫して対応しています。一度設定すれば毎年の手間を大幅に減らせるため、複式簿記の経験が少ない個人事業主でも取り組みやすいです。


弥生のクラウド青色申告ソフト|e-Taxまで対応した申告ソフト


青色申告特別控除(65万円)の今後:令和8年度税制改正で制度が大きく変わる

令和8年度(2026年度)の税制改正大綱では、青色申告特別控除の仕組みが大きく見直される予定です。この改正は令和9年(2027年)分の所得税から適用される見通しで、今から準備が必要な内容です。


改正のポイントは主に2点です。


最大控除額が75万円に引き上げられる(電子帳簿保存対応者限定)


e-Taxによる電子申告に加えて、電子帳簿保存法の「優良な電子帳簿」の要件を満たして帳簿保存まで行っている場合、控除額が65万円から75万円に引き上げられる予定です。つまり、e-Tax申告だけなら65万円(現状維持)、電子帳簿保存まで対応すれば75万円になります。


書面申告は大幅減額:55万円から10万円へ


現状でも書面申告では65万円にならず55万円が上限ですが、改正後は書面申告で複式簿記の場合でも55万円から10万円への大幅減額が予定されています。これは事実上の増税です。これは使えそうです。


「毎年税務署の窓口に書類を持ち込んでいる」「郵送で申告している」という個人事業主にとって、この改正は緊急の対応が必要なレベルの変更と言えます。


会計ソフトを使っていれば自動でOKではない


「クラウド会計ソフトを使っている=電子帳簿保存に対応している」とは限りません。「優良な電子帳簿」として認められるためには、訂正・削除の履歴が残ること、検索機能があること、仕訳帳と総勘定元帳が相互に参照できることなど、具体的な要件があります。


Excelで自作した帳簿は、これらの要件を満たすことが非常に難しいです。クラウド会計ソフトの中でも、電子帳簿保存法の要件に対応した設定が必要です。会計ソフトの設定確認は早めに行うのが得策です。


改正が本格的に適用される令和9年分(2027年申告)に向けて、2026年中が準備の最重要期間です。e-Taxへの切り替えと優良な電子帳簿保存の整備を進めることが、将来の節税を守るうえで重要になります。


令和8年度税制改正の詳細はこちらで確認できます。


GROW UP MAGAZINE|青色申告特別控除の見直し|令和8年度税制改正のポイント




青色申告らくだ2012