

期限内に再提出しても、税務署への連絡は一切不要です。
確定申告の期限内であれば、一度提出した申告書を何度でも出し直せます。これを「訂正申告」と呼びます。税務署は同一人物から複数の申告書が届いた場合、最後に提出されたものを正式な申告書として処理します。
ペナルティは一切ありません。
ただし、訂正申告には大切なルールが一つあります。訂正した部分だけを差し替えることはできず、申告書の全帳票を一式で再作成・再提出しなければならないという点です。「1か所ミスしたから、その箇所の書類だけを差し替えれば済む」と思っている方が多いですが、それは認められていません。
以下が訂正申告の基本的な流れです。
| 提出方法 | 訂正申告の手順 |
|---|---|
| e-Tax(電子申告) | ①「申告・申請等一覧」から元データを選択 → ②訂正して「作成完了」 → ③別名保存 → ④電子署名を付与して送信 |
| 紙(窓口・郵送) | ①正しい内容で申告書一式を再作成 → ②余白に赤字で「訂正申告」と記入 → ③以前提出した申告書のコピーを添付して提出 |
e-Taxで訂正申告をする場合、訂正した旨を税務署に電話や書面で連絡する必要は一切ありません。送信するだけで完了します。これは知らずに電話連絡している方も多いため、覚えておくと手間が省けます。
また、一度提出済みの控除証明書などの添付書類は、再提出の必要はありません。追加で申請する控除がある場合のみ、対応する書類を新たに添付してください。
参考:訂正申告の手順について(国税庁 e-Tax よくある質問)
https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/yokuaru05/02.htm
訂正申告を期限内に行えれば基本的に問題ありませんが、一つ重要な例外があります。それは、既に還付処理が完了している場合です。
具体的に言うと、たとえば2月中旬に確定申告を提出し、税務署が速やかに還付処理を進めた結果、3月15日の期限が来る前に口座に還付金が振り込まれているケースが起きることがあります。この状態で訂正申告を行い、還付額が減る・または追加納税が発生する内容だった場合は、訂正申告だけでは精算が完了しません。精算手続きが別途必要になります。
期限内に気づいた場合でも要注意です。
このケースに該当する場合は、訂正した内容で申告書を提出した上で、税務署へ「訂正の旨と精算が必要な旨」を連絡するのが確実な対応です。自分で判断せず、まず管轄の税務署に電話で確認することをおすすめします。
一方、還付金の額が増える方向への訂正(たとえば控除の記入漏れが判明した場合など)は、期限内であれば訂正申告で問題なく対応できます。同じ「訂正」でも方向性によって対応が変わります。
つまり、訂正内容によって手順が異なります。
参考:還付申告後の訂正に関する注意点(弥生株式会社)
https://www.yayoi-kk.co.jp/shinkoku/oyakudachi/correction/
「期限内に気づけば何でも直せる」と思いがちですが、申告期限が過ぎると修正・変更が一切できなくなる選択事項が存在します。これを知らずに申告を確定させてしまうと、大きな損失につながる場合があります。
意外ですね。
代表的なものを3つ挙げます。
① 上場株式の配当所得の申告方法
上場株式の配当等については、「申告不要」「申告分離課税」「総合課税」の3種類から選びます。一定の条件を満たす方が総合課税を選ぶと、源泉徴収分の一部が配当控除として還付されることがあります。しかし、一度「申告不要」で確定申告を終了させると、後から総合課税へ変更することはできません(国税庁の見解より)。
② 住宅ローン控除の失念
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、必要書類を添付した確定申告書を提出することで初めて適用されます。確定申告が終了した後、「単に忘れていた」という理由での遡及適用は、判例上認められていません。「やむを得ない事情」がなければ、その年分の控除は受けられなくなります。1年分の住宅ローン控除額は数十万円規模になることもあり、失念のコストは非常に大きいといえます。
③ 控除対象扶養親族の所属変更
夫婦どちらかがすでに確定申告を完了している場合、扶養親族の振り分けを後から変更することはできません。節税効果を最大化するためには、申告前に夫婦間で扶養の振り分けを十分に検討することが不可欠です。
これらは期限内(3月15日まで)であれば訂正申告で対応可能です。期限を過ぎると修正できません。期限前に一度申告内容をチェックする習慣が、こうした大きな損失を防ぎます。
申告前の最終確認が原則です。
参考:確定申告後に訂正できないものの具体例(ペンデル税理士法人)
https://www.pendel.jp/topics/column/2363/
確定申告の期限(3月15日)を過ぎてから誤りに気づいた場合は、「訂正申告」は使えません。この場合は、誤りの方向性によって手続きが2種類に分かれます。
税金を多く払っていた場合と少なく払っていた場合、手続きが異なります。
| 状況 | 手続き | 期限 | ペナルティ |
|---|---|---|---|
| 税金を多く払っていた(控除漏れなど) | 更正の請求 | 法定申告期限から5年以内 | なし |
| 税金を少なく払っていた(売上漏れなど) | 修正申告 | 明確な期限なし(早いほど有利) | 延滞税・加算税が発生する場合あり |
更正の請求は「払い過ぎた税金を取り戻す手続き」です。控除の記入漏れや計算ミスで本来より多く納税していた場合に使えます。たとえば、3年前の確定申告で生命保険料控除を入力し忘れていた場合も、現時点が法定申告期限から5年以内であれば更正の請求が可能です。この手続きは義務ではなく任意のため、ペナルティはありません。これは使えそうです。
更正の請求書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から作成・送信できます。提出後、税務署がその内容を調査して認められれば、払い過ぎた税金が還付されます。
一方、修正申告は「税金を少なく申告していた場合の自主的な訂正」です。売上の計上漏れや経費の誤った計上などで、本来の税額より少ない申告をしていたケースで行います。
修正申告においてペナルティを最小限に抑えるポイントは「自主性」です。
これが原則です。
たとえば新たに納付する税額が100万円だった場合、自主申告なら加算税ゼロ、調査後だと最低でも10万円の過少申告加算税が上乗せされます。さらに納付が遅れた日数分の延滞税(年率2.4〜8.7%)も別途かかります。これが税務調査前の自主修正が「圧倒的に有利」といわれる理由です。
参考:修正申告・更正の請求の詳細(国税庁 No.2026)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
訂正申告は手続き自体はシンプルですが、「なぜ申告ミスが起きるか」を把握しておくと再発防止に役立ちます。また、多くの記事では触れられていない「期限内の訂正申告を逆手に取った戦略的な使い方」についても知っておく価値があります。
ミスが起きやすい場面は決まっています。
申告ミスが起きやすい主な原因
ここで一つ独自の視点を紹介します。
「戦略的な訂正申告」という考え方です。
通常、訂正申告は「ミスを直す」ために使います。しかし、熟練した投資家や個人事業主の中には、確定申告の締め切り前に「まず申告書を出しておいて、後から有利な選択をした申告書で訂正する」という使い方をする人もいます。たとえば、株式譲渡損と配当所得をどう組み合わせるか計算が複雑で期限が迫っている場合、一旦保守的な内容で申告し、残り数日で計算を詰め直して訂正申告を提出するという流れです。
これは合法的な使い方です。
ただし、前述のとおり「上場株式の配当の申告方法」など、一度確定すると変更できない選択事項があります。この「戦略的訂正申告」を活用する場合は、変更できない選択事項を最初から正しく選んでおくことが絶対条件になります。
申告漏れや計算ミスのリスクを減らすために、確定申告ソフトの活用も有効な手段です。たとえば、年間の売上・経費が自動で集計され、e-Tax送信まで一貫して対応できるクラウド型の確定申告ソフトを使えば、手入力によるミスを大幅に抑えられます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」も無料で使えるため、まずはこちらから試してみることもできます。
申告書は早めに仮作成しておくのがコツです。
期限ギリギリに一から作成するのではなく、2月中に一度仮の申告書を作って内容を確認する習慣をつけると、期限内訂正申告の余裕も生まれます。申告期限は毎年原則として3月15日(土日祝日の場合は翌平日)です。2025年分の確定申告(2026年提出分)の期限は2026年3月16日(月)となっています。
参考:確定申告書等作成コーナー(国税庁)
https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl