

「年金収入400万円以下なら確定申告しなくても、源泉徴収された税金は1円も戻ってこない。」
年金は税制上「雑所得」に分類されます。つまり、課税の対象です。ただし、すべての年金受給者が毎年確定申告をしなければならないわけではありません。
国税庁が定める「確定申告不要制度」により、以下の2つの条件を両方満たす場合は確定申告が不要とされています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① | 公的年金等の収入金額の合計が年間400万円以下、かつすべてが源泉徴収の対象 |
| ② | 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が年間20万円以下 |
多くの年金受給者がこの条件に当てはまります。しかし注意が必要なのは、「不要」はあくまでも「義務としての申告が不要」という意味だという点です。
申告不要制度の対象者であっても、医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)、生命保険料控除などを申請したい場合は、確定申告(還付申告)をしなければなりません。申告しなければ、すでに年金から天引きされていた所得税は戻ってきません。これが大原則です。
逆に確定申告が義務となるのは、次のケースです。
「アルバイトで月2万円弱(年24万円)稼いでいる」程度でも、年間20万円超になれば確定申告が必要です。これは見落とされやすいポイントです。
また、複数の年金(国民年金・厚生年金・企業年金など)を受け取っている場合は、それぞれの源泉徴収票の「支払金額」を合算して判断します。年金の種類ごとに400万円以下かどうかを見るのではなく、合計額で判断する点を忘れないようにしてください。
参考:年金受給者の確定申告不要制度について詳しく知りたい方はこちら(政府広報オンライン)
申告をスムーズに進めるために、事前準備が重要です。主に必要な書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 入手先・備考 |
|---|---|
| 公的年金等の源泉徴収票 | 毎年1月頃、日本年金機構から郵送。複数受給の場合はすべて必要 |
| マイナンバー確認書類 | マイナンバーカード、または番号通知書+本人確認書類 |
| 医療費の領収書・明細書 | 医療費控除を申請する場合。5年間の保管が推奨 |
| 生命保険・地震保険の控除証明書 | 毎年10〜11月頃に各保険会社から郵送 |
| ふるさと納税の寄附金受領証明書 | 寄附した自治体から郵送 |
| 金融機関の口座番号がわかるもの | 還付金の振込先として必要(通帳など) |
源泉徴収票は、平成31年4月以降、確定申告書への添付が不要となっています。ただし、申告書に記載する内容の根拠として手元に保管が必須です。e-Taxを利用する場合は、電子データとして取り込むことも可能です。
大切なのは、書類を早めにそろえることです。
源泉徴収票を紛失した場合は、ねんきんネット(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)から確認・再発行の申請ができます。スマートフォンからも対応しており、年金支払額の確認も可能です。
また、国民健康保険料の領収書は控除証明書が別途発行されないため、1年間の支払額を通帳や納付履歴で確認しておく必要があります。これも見落とされがちなポイントです。
参考:日本年金機構「令和7年分 公的年金等の源泉徴収票の送付について」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2025/202512/1223.html
2026年現在、年金受給者が確定申告をする最もシンプルな方法は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」をスマートフォンで利用する方法です。マイナンバーカードさえあれば、自宅から申告書の作成・送信まで完結します。
手順は以下のとおりです。
e-Taxを使うと、紙で郵送する場合より還付が早い傾向があります。
なお、確定申告の期間は原則として毎年2月16日から3月15日まで(土日の場合は翌月曜日に繰り越し)です。2025年(令和7年)分の申告は、2026年2月16日〜3月16日が対象期間でした。一方、還付申告(税金の還付だけを目的とした申告)は、対象年の翌年1月1日から5年間いつでも受け付けています。「去年申告し忘れた」という場合でも、5年以内であれば遡って還付を受けることが可能です。これは覚えておきたい情報です。
参考:国税庁「確定申告書等作成コーナー」スマホ利用ガイド
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/pdf/r07/sakukonatebiki/sp.pdf
年金受給者が確定申告で取り戻せる税金は、使える控除の種類と金額によって大きく変わります。よく見落とされる控除を整理します。
まず、医療費控除は「年間医療費が10万円超えた人の制度」と思われがちですが、年金受給者には有利な計算ルールがあります。所得が200万円未満の場合、10万円ではなく「所得の5%」を超えた部分から控除の対象です。たとえば所得が100万円なら、医療費が5万円を超えれば医療費控除が使えます。これは意外ですね。
病院の診察費だけでなく、市販薬・交通費(公共交通機関)・歯科矯正(治療目的)なども対象に含まれます。領収書は5年間の保管が義務です。
次に、社会保険料控除についても注意が必要です。年金から特別徴収(天引き)されている介護保険料や後期高齢者医療保険料は、すでに控除されているため重複申告は不要です。一方、口座振替や窓口で直接支払った国民健康保険料の分は、確定申告で改めて申告できます。
| 控除の種類 | 控除される金額の上限・目安 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 医療費控除 | 最高200万円 | 年間医療費が所得の5%(または10万円)超 |
| セルフメディケーション税制 | 最高88,000円 | 特定の市販薬の購入費が年12,000円超(医療費控除との併用不可) |
| 生命保険料控除 | 最高120,000円 | 生命・医療・個人年金保険の保険料支払い |
| 地震保険料控除 | 最高50,000円 | 地震保険の保険料支払い |
| ふるさと納税(寄附金控除) | 総所得の40%が上限 | ワンストップ特例を使わない場合は確定申告必要 |
| 雑損控除 | 損害額の一定割合 | 災害・盗難・横領による資産損害 |
| 配偶者控除・扶養控除 | 所定の金額 | 生計を一にする家族の所得が一定以下 |
具体例で考えてみます。65歳以上で年間年金収入が200万円の場合、公的年金等控除(110万円)を差し引いた雑所得は90万円です。この方が年間8万円の医療費を支払った場合、所得90万円の5%は45,000円です。8万円−45,000円=35,000円が医療費控除の対象となります。所得税率5%で計算すると、1,750円の還付(住民税の軽減も別途発生)が見込めます。
「たいした金額じゃない」と思うかもしれませんが、住民税への影響も含めると実際の節税効果はさらに大きくなります。また、生命保険料控除やふるさと納税と組み合わせれば、合計で数万円単位の節税になるケースもあります。つまり、やって損はないということです。
参考:年金受給者が確定申告で得する8つのケース(Money&You / fpcafe)
https://fpcafe.jp/mocha/3635
ここからは、金融に興味のある方なら特に押さえておきたい視点を解説します。
年金を受け取りながら株式投資や投資信託の運用をしている方は、確定申告で「損益通算」を行うことで、課税対象の所得を圧縮できます。これが原則です。
損益通算とは、複数の証券口座で出た利益と損失を合算して課税対象を計算し直す手続きです。たとえば、A社で30万円の利益が出て、B社で20万円の損失が出た場合、確定申告で損益通算をすれば課税される利益は差引10万円になります。通常、30万円の利益には約6万円(税率約20%)の税金がかかりますが、損益通算により約2万円に圧縮できます。差額は約4万円の節税です。
さらに、損益通算後もなお引ききれない損失が残った場合は「繰越控除」が使えます。損失を最大3年間にわたって翌年以降の利益と相殺できる仕組みです。損失を抱えた年に確定申告をしておかないと、この繰越控除の権利が消えてしまう点に注意が必要です。
ただし、NISAやiDeCoの口座内での利益・損失は損益通算の対象外です。ここは混同しやすいポイントです。
また、iDeCoで受け取る老齢給付金は受け取り方(年金形式か一時金形式か)によって税制上の扱いが異なり、公的年金と合算した総額によっては雑所得の計算に影響します。iDeCoの年金形式受け取りを選んだ場合、公的年金と合算されて課税対象になるため、申告不要制度の判定にも関わってきます。
自分の受け取り方や口座の状況を把握するには、証券会社の「特定口座年間取引報告書」を確認するのが最短です。毎年1月末から2月頃に各証券会社から送付されます。複数の口座を持っている場合はすべての報告書を手元にそろえておきましょう。
参考:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
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