給料控除とは|種類・計算方法・税務担当者が知るべき注意点

給料控除とは|種類・計算方法・税務担当者が知るべき注意点

給料控除とは

労使協定なしで社宅費を天引きすると30万円の罰金です

この記事の3つのポイント
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給料控除の基本

給料から差し引く法定控除と法定外控除の違い、税務担当者が押さえるべき種類を解説

⚖️
控除計算と申告

源泉徴収の正確な計算方法と扶養控除申告書の重要性を説明

⚠️
リスクと対策

控除ミスによる追徴課税・延滞税のペナルティと防止策を紹介

給料控除の定義と税務実務における位置づけ


給料控除とは、従業員の給料から一定の金額を差し引くことを指します。税務担当者にとって給料控除は、毎月の給与計算で必ず発生する重要な業務です。


参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/the-deduction-for-employment-income/


控除には大きく分けて「法定控除」と「法定外控除」の2種類があります。法定控除は法律で控除が義務付けられている項目で、所得税住民税、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料雇用保険料、介護保険料)が該当します。これらは税務担当者が給与から必ず差し引かなければならない項目です。


参考)給与明細の控除項目・計算方法を解説!マイナス控除はなぜ発生す…


一方、法定外控除は会社と労働者代表との間で「労使協定」を締結することで初めて控除できる項目です。社内預金、親睦会費、社宅家賃、食事代などが該当します。労使協定を締結せずに法定外控除を行うと、労働基準法第24条違反となり30万円以下の罰金が科される可能性があります。


参考)給与明細の控除項目とは?計算から記載方法まで解説


つまり法定控除だけが自動的に控除できるということですね。


給料控除における所得控除と給与所得控除の違い

税務担当者が混同しやすいのが「所得控除」と「給与所得控除」です。給与所得控除は、会社員や公務員などの給与収入を得ている人を対象に、自営業者の必要経費に相当する金額を収入から差し引く制度です。1年間の給与収入額に応じて自動的に計算される経費的な控除で、税務担当者が個別に申告を受ける必要はありません。


参考)【令和7年税制改正対応】給与所得控除とは?所得控除との違いや…


これに対して所得控除は、納税者本人や家族の生活状況に応じて認められる控除で、全部で15種類あります。基礎控除配偶者控除、扶養控除、障害者控除寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除社会保険料控除小規模企業共済等掛金控除、寄附金控除、雑損控除があります。


参考)所得控除とは?基礎控除などの種類や控除額の計算方法を解説|m…


税務担当者は、従業員から提出される扶養控除等申告書や保険料控除申告書などをもとに、個別に所得控除額を計算して年末調整を行います。給与所得控除は自動計算、所得控除は個別申告が原則です。


参考)給与計算を支える税法を解説 担当者が知るべき法改正や実務への…


給料控除の法定項目と計算タイミング

税務担当者が毎月必ず処理する法定控除は6項目あります。所得税は、給与総額から社会保険料を差し引いた金額を「給与所得の源泉徴収税額表」に当てはめて計算します。扶養親族の数によって税額が変わるため、扶養控除申告書の情報が正確でないと、毎月の源泉徴収額が誤ってしまいます。


参考)給与計算ミスとは?原因と影響を徹底解説 - 【麻生グループ】…


住民税は前年の所得に基づいて市区町村が計算し、6月から翌年5月まで12分割で控除します。税務担当者は毎年5月に届く特別徴収税額決定通知書をもとに、6月分の給与計算から新しい税額に更新する必要があります。この更新を忘れると住民税の控除額が古いままになり、従業員に迷惑をかけます。


社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)は、標準報酬月額に基づいて計算され、通常は毎年9月に見直されます。雇用保険料は給与総額に保険料率を乗じて毎月計算します。介護保険料は40歳以上の従業員から控除が始まります。


6月と9月は控除額変更の時期です。


給料控除における税務担当者の独自リスク管理視点

税務担当者が特に注意すべきは、源泉徴収漏れによる追徴課税と延滞税です。源泉徴収は事業者の法律上の義務であり、うっかりミスでも税務調査で指摘されると、本来の税額に加えて延滞税や加算税が課されます。


参考)重加算税と延滞税 « 京都ミライズ税理士法人/京…


延滞税は、法定納期限の翌日から2か月までは年7.3%(上限)、2か月を超えると年14.6%(上限)の割合で日数に応じて計算されます。さらに悪質と判断されると重加算税が課され、その場合は延滞税の計算期間も長くなります。例えば3年前の申告に重加算税が課されると、3年分の延滞税が発生します。

また、定額減税の実務では、配偶者控除や16歳未満の扶養親族を給与計算システムに登録していない場合、月次減税事務に含めるためには従業員から「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を提出してもらう必要があります。この手続きを怠ると、従業員が定額減税の恩恵を受けられなくなります。


参考)経営者・経理担当必見!「定額減税」の給与計算実務ポイントや注…

源泉徴収の失敗は刑事責任リスクもあります。


参考)飲食店等で源泉徴収漏れが発覚した場合の法的リスクと刑事責任 …

さらに、年収が2,000万円を超える従業員や、災害減免法の適用を受けた従業員は年末調整の対象外となるため、税務担当者は該当者を正確に把握する必要があります。これらの従業員には源泉徴収票を交付し、各自で確定申告を行うよう案内します。


参考)知らないと損?年末調整の意外なポイント

給料控除の適法性を確保する労使協定の実務

税務担当者が見落としやすいのが、法定外控除における労使協定の締結です。賃金は「全額払いの原則」が適用され、法定控除以外を控除する場合は労使協定が必須です。労使協定なしで社宅家賃、食事代、社内預金、親睦会費などを天引きすると、労働基準法第24条違反で30万円以下の罰金が科されます。


参考)給料からの控除、原則・例外 – 梅新東法律事務所…


よくある違法パターンは「以前からの慣習だから」「就業規則に書いてあるから」「本人が口頭で了承したから」という理由で控除してしまうケースです。就業規則に記載があっても、労使協定が未締結なら違法です。従業員の口頭同意だけでは法的効力がありません。


参考)賃金から控除できる項目とは?賃金控除に関する協定書の必要性を…

損害賠償金や貸付金の返済も、労使協定があっても控除できない場合があります。例えば従業員が社用車で自損事故を起こした場合の修理費を給料から天引きする行為は、たとえ従業員が同意しても違法とされる可能性が高いです。これは「自由意思によるものではない」と判断されるためです。


参考)» 損害賠償金や貸付金を給料から天引きできる?意…


控除できる項目には厳格な制限があります。


参考)https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/content/contents/002230320.pdf

税務担当者は、控除項目ごとに労使協定の有無を確認し、協定がない場合は速やかに締結する必要があります。協定書には控除する項目を具体的に列挙し、労働者の過半数代表または労働組合の署名・押印を得ます。この協定書は労働基準監督署への届出は不要ですが、社内で保管しておく必要があります。


参考)労使協定とは?種類や違反した場合の罰則を弁護士が解説


厚生労働省の記載例を参考に、自社の控除項目をリストアップして協定書を作成するのが確実です。

厚生労働省の労使協定記載例(PDF)

給料控除ミスが引き起こす具体的なペナルティと事例

給与計算のミスは従業員の信頼を損ねるだけでなく、企業に法的リスクをもたらします。税務担当者が最も警戒すべきは、控除額の計算ミスによる過少申告です。社会保険料の控除誤り(標準報酬月額の変更未反映)、所得税の源泉徴収ミス(扶養家族数の誤り)、住民税の控除額間違い(6月の税額変更時の反映漏れ)などがよくあるミスです。


参考)給与計算のミスの対処方法とリスク、防止策を詳しく解説 - 名…


これらのミスが税務調査で発覚すると、本来納付すべきだった税額に加えて、不納付加算税(10%)と延滞税が課されます。源泉徴収漏れの場合、会社が後から従業員に負担を求めることもできますが(所得税法第222条)、従業員との信頼関係を考慮して会社負担とするケースも多いです。

給与明細に「マイナス控除」という表記が出ることがありますが、これは前月の控除額に誤りがあった場合の調整です。税務担当者は、調整を必要とする事情が判明したら間を置かずに該当者に事前予告して控除する必要があります。予告なしで突然マイナス控除を行うと、実支給額が著しく低くなり、全額払いの原則違反とされる可能性があります。


事前予告が全額払い原則の例外です。


年末調整での控除漏れも要注意です。配偶者のパート収入を正確に把握せずに配偶者控除を適用してしまったり、生命保険料控除の申告を受け付け忘れたりすると、従業員が本来受けられる控除を逃してしまいます。このような場合、従業員は自分で確定申告をして正しい税額に修正する必要があり、手間をかけさせてしまいます。


参考)年末調整のよくある「ミスと勘違い」…控除の申告漏れで損しない…

税務担当者は、扶養控除申告書の提出を徹底し、年末調整の書類チェックを厳格に行うことが重要です。特に令和7年税制改正では給与所得控除の計算方法が変更される可能性があるため、最新の税制情報を国税庁のウェブサイトで確認する習慣をつけましょう。


参考)給与所得者の基礎控除申告書の書き方は?控除額の計算方法も紹介…


国税庁「給与所得控除」
また、給与計算ソフトを導入している場合でも、マスタ情報(扶養人数、標準報酬月額、住民税額など)の更新を怠ると自動計算が誤ってしまいます。毎月の給与計算前にマスタ情報を点検し、変更があった従業員については必ず反映させることが、ミス防止の基本です。


給料控除におけるチェックリストと運用のポイント

税務担当者が日常的に確認すべき項目をリストにまとめます。


  • 法定控除6項目(所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料)の計算根拠を毎月確認する​
  • 6月に住民税額の更新、9月に社会保険料の改定を確実に反映する​
  • 扶養控除申告書の提出を全従業員から受ける(未提出者は乙欄適用で税額が高くなる)​
  • 法定外控除を行う場合は労使協定の有無を確認し、未締結なら速やかに締結する
  • 年収2,000万円超の従業員は年末調整対象外であることを把握する​
  • 定額減税の対象者(配偶者、16歳未満の扶養親族)を正確に把握し、必要なら申告書を提出してもらう​
  • 給与計算ソフトのマスタ情報(扶養人数、標準報酬月額、住民税額)を毎月点検する

これらを実行すれば大半のミスは防げます。


給料控除の実務では、法令遵守と正確な計算が何よりも重要です。税務担当者は最新の税制改正情報をキャッチアップし、社内の控除ルールを定期的に見直すことで、従業員と会社の双方を守ることができます。




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