公的年金等の雑所得・税率と控除の計算法を徹底解説

公的年金等の雑所得・税率と控除の計算法を徹底解説

公的年金等の雑所得と税率の仕組みを正しく理解する

確定申告が不要でも、住民税だけ数万円取られているケースが実は多数あります。


この記事の3つのポイント
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源泉徴収税率は一律5.105%

公的年金等から天引きされる源泉徴収は、年金額から控除を差し引いた後の金額に5.105%(復興特別所得税含む)を乗じた額。65歳以上は年金収入110万円以下なら課税ゼロになります。

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「確定申告不要」≠「住民税も不要」

所得税の確定申告不要制度は住民税には適用されません。年金収入が155万円を超えると住民税が課税され始め、申告しないと控除の恩恵を受けられない場合があります。

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年金以外の所得が20万円超で確定申告が必要

副業・配当・個人年金などで年間20万円を超える所得があると、確定申告不要制度は使えません。ただし、申告することで医療費控除などの還付を受けられるチャンスにもなります。


公的年金等の雑所得とは何か:制度の基本と対象範囲

公的年金等は、税法上「雑所得」に分類されます。雑所得とは給与所得不動産所得・事業所得・一時所得など10種類の所得のどれにも該当しない所得をまとめた区分です。年金だからといって別扱いにはならず、受け取った金額に応じて所得税と住民税がかかります。


雑所得に該当する公的年金等の種類は、主に以下です。


- 国民年金法厚生年金保険法・公務員等の共済組合法などに基づく年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金・老齢共済年金)
- 過去の勤務先から支払われる年金(会社の企業年金など)
- 確定給付企業年金法に基づく年金
- 外国の社会保険・共済制度に類する制度に基づく年金


一方で、課税対象外になる年金も存在します。障害年金遺族年金は非課税です。また、生命保険契約や生命共済契約に基づく個人年金・互助年金は、公的年金等ではなく「その他の雑所得」として別の計算式が適用されます。ここは混同しやすいポイントです。


つまり「年金」という名がついていても、すべてが同じ計算ルールで動くわけではありません。雑所得の中でも区分が異なれば計算式も変わるため、自分が受け取る年金がどの区分に入るかをまず確認することが基本です。


公的年金等には原則として源泉徴収が行われます。年金が支払われる際に、一定の控除を差し引いた後の金額に対して5.105%(所得税5%×復興特別所得税率102.1%)が天引きされます。ただしこれは「仮の税額」であり、確定申告や確定申告不要制度によって最終的な税額が決まります。源泉徴収はあくまで概算値です。


参考:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」で、対象となる年金の種類と計算方法が公式に確認できます。


国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係(令和7年4月1日現在)


公的年金等の雑所得の税率・速算表:65歳未満と65歳以上の違い

公的年金等の雑所得を計算するには「公的年金等控除額」を年金収入から差し引く必要があります。この控除額は、受給者の年齢と年金収入額によって変わります。令和2年(2020年)分以降の速算表(年金以外の所得が1,000万円以下の場合)を確認しましょう。


🔢 65歳以上の方の速算表(令和2年分以後・年金以外の所得1,000万円以下)


| 年金収入(A) | 公的年金等に係る雑所得の金額 |
|---|---|
| 110万円以下 | 0円(非課税) |
| 110万円超〜330万円未満 | A−110万円 |
| 330万円以上〜410万円未満 | A×75%−27万5,000円 |
| 410万円以上〜770万円未満 | A×85%−68万5,000円 |
| 770万円以上〜1,000万円未満 | A×95%−145万5,000円 |
| 1,000万円以上 | A−195万5,000円 |


🔢 65歳未満の方の速算表(令和2年分以後・年金以外の所得1,000万円以下)


| 年金収入(A) | 公的年金等に係る雑所得の金額 |
|---|---|
| 60万円以下 | 0円(非課税) |
| 60万円超〜130万円未満 | A−60万円 |
| 130万円以上〜410万円未満 | A×75%−27万5,000円 |
| 410万円以上〜770万円未満 | A×85%−68万5,000円 |
| 770万円以上〜1,000万円未満 | A×95%−145万5,000円 |
| 1,000万円以上 | A−195万5,000円 |


表から分かるとおり、65歳未満と65歳以上では非課税になる上限が大きく異なります。65歳以上なら年金収入が110万円以下であれば雑所得はゼロ、つまり課税されません。65歳未満は60万円以下が非課税ラインです。シンプルに言うと、65歳になると控除の手厚さが増す設計です。


実際に計算してみましょう。65歳以上で年金収入が200万円の場合、雑所得は「200万円−110万円=90万円」となります。この90万円にさらに社会保険料控除基礎控除などを差し引いた後の金額が、所得税の課税対象です。仮にほかの控除を考慮しない場合の所得税額は「90万円×5%(最低税率)=4万5,000円」前後です。実際には社会保険料控除なども加わるため、最終的な手取りへの影響はさらに小さくなるケースが多いです。


なお、年金以外の所得が1,000万円を超えると控除額が10万円単位で下がっていきます。投資収益が多い人は控除額が少なくなる点に注意が必要です。


雑所得が確定したあとの所得税は総合課税として計算され、課税所得に応じて5%〜45%の超過累進税率が適用されます。年金収入のみで所得が比較的小さい場合は最低税率5%の範囲に収まることがほとんどですが、不動産所得や配当所得などほかの所得が合算されると税率が跳ね上がる可能性もあります。


公的年金等の雑所得の確定申告不要制度:税率を下げる節税ポイント

年金受給者の税務上の負担を軽減する仕組みとして「確定申告不要制度」があります。以下の2つの条件を同時に満たす場合、所得税の確定申告は不要です。


- ① 公的年金等の収入金額の合計が400万円以下(全額が源泉徴収の対象であること)
- ② 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下


年金収入が400万円を超える受給者は全体の中で極めてまれですので、多くの方が①の条件はクリアします。重要なのは②です。「年金以外の所得が20万円以下」というのは、副業・パートの給与・配当・個人年金・生命保険の満期返戻金などを合計した所得額が20万円を超えないことを意味します。


これは金融に興味がある人にとって盲点になりやすい条件です。例えば、配当金を年間20万円以上受け取っていると確定申告不要制度は使えません。ただし、上場株式などの配当を申告分離課税を選択して源泉徴収で完結させている場合は「所得」に含まれないため、20万円ルールの対象外になります。受け取り方によって取り扱いが変わるため、事前に確認することが大切です。


確定申告不要制度を使えない場合は原則として確定申告が必要ですが、逆に「あえて確定申告した方が得になる」ケースも存在します。以下のような控除が適用できる場合は、確定申告をすることで払いすぎた税金が戻ってきます。


- 医療費が年間10万円を超えた場合(医療費控除
- 生命保険料を支払っている場合(最大12万円の控除)
- ふるさと納税をした場合(寄附金控除)
- 地震保険料を支払っている場合(地震保険料控除)
- 住宅ローンを利用している場合(住宅ローン控除)


医療費控除は使えそうです。70歳以上の方は医療費が年間10万円に達しやすく、確定申告をするだけで数千円〜数万円の還付が受けられるケースが実際にあります。


参考:政府広報オンラインでは確定申告不要制度のフローチャートが分かりやすく解説されています。


公的年金等の雑所得と住民税:確定申告不要でも課税される落とし穴

確定申告が不要だからといって、住民税まで自動的に不要になるわけではありません。これが多くの年金受給者が見落とす落とし穴です。


所得税の確定申告不要制度と住民税は、まったく別の制度として動いています。住民税には「20万円以下の所得は申告不要」という所得税のようなルールがありません。1円でも所得があれば、原則として住民税の課税対象です。


さらに、課税が始まるラインが所得税と住民税で大きく異なります。65歳以上・単身者の場合を比べてみましょう。


| 税の種類 | 非課税となる年金収入の目安(65歳以上・単身) |
|---|---|
| 所得税 | 約205万円まで |
| 住民税(一般市区町村) | 約155万円まで |


所得税の非課税ライン(約205万円)と住民税の非課税ライン(約155万円)の間には50万円もの差があります。この差の中に収まる受給者、具体的には年金収入が155万円超〜205万円以下の方は「所得税はかかっていないのに住民税だけ取られる」という状態になりやすいです。


厚生年金の平均受給月額は令和4年度で約14万円前後、年間換算で約168万円ですから、この層に多くの方が該当します。


住民税の課税対象になった場合、税率は道府県民税4%+市区町村民税6%の合計10%です。さらに均等割として年間4,000円(令和6年度以降は森林環境税1,000円が加わり計5,000円)が一人あたり一律で課税されます。


住民税の申告を行うことで、医療費控除・生命保険料控除・社会保険料控除などを適用し、住民税の負担を減らすことができます。申告は確定申告書ではなく「市民税・県民税申告書」を使い、お住まいの市区町村の窓口で手続きします。申告期限は原則3月15日です。


確定申告が不要だと思って何もしないでいると、本来受けられる控除を見逃して住民税を過剰に払い続けるリスクがあります。


参考:年金受給者の住民税申告と確定申告不要制度の違いについては税理士等の解説も参考になります。


良い税理士「年金受給者が知らない落とし穴!確定申告不要でも住民税が課税されるケースを解説」


公的年金等の雑所得・税率の計算例と控除を最大活用する独自視点

ここでは、実際にどのくらいの税負担になるかを具体的な数字で確認します。そして、金融に興味がある人が見落としやすい「控除の掛け合わせ」という視点を加えて解説します。


【計算例①:65歳以上・年金収入200万円・社会保険料20万円の場合】


雑所得の計算:200万円−110万円(公的年金等控除)=90万円
基礎控除(所得税):48万円
社会保険料控除:20万円
課税所得:90万円−48万円−20万円=22万円
所得税:22万円×5%=1万1,000円(復興特別所得税含め約1万1,200円)


年金200万円の受給者でも、最終的な所得税の負担は1万円少々にとどまります。意外に少ない印象を受けるかもしれません。


【計算例②:65歳以上・年金収入200万円・配当収入50万円がある場合】


年金の雑所得:200万円−110万円=90万円
配当所得(総合課税を選択):50万円
合計所得:90万円+50万円=140万円
各種控除後の課税所得:140万円−68万円(基礎控除・社保控除など概算)=72万円
所得税:72万円×5%=3万6,000円


配当収入が加わるだけで課税所得が跳ね上がることが分かります。これが「年金以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要になる」仕組みの実態です。


なお、配当収入の取り扱いには選択肢があります。上場株式の配当を申告分離課税(20.315%)で源泉徴収のみにして確定申告をしない選択をすれば、公的年金の雑所得との合算が避けられます。逆に課税所得が低い方は、総合課税を選んで確定申告すると、配当控除が使えて実質的な税率が下がるケースもあります。最低税率5%の方が配当控除を使えば、実質的な配当の税率は0%に近くなることもあります。これは使えそうです。


金融に興味がある方の多くは複数の金融商品を保有しています。年金収入との合算で総所得がどう変化するかを年に一度シミュレーションしておくことが、節税の第一歩です。無料で使える国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でシミュレーションが可能です。手元の源泉徴収票と保有する金融商品の年間取引報告書を用意するだけで、簡単に計算できます。


参考:三菱UFJ銀行のコラムでは雑所得の税率・計算方法が整理されています。


三菱UFJ銀行「雑所得とは?税率や計算方法はどうなる?確定申告の注意点も解説!」


またオリックス銀行の記事では、公的年金等控除の速算表と配偶者控除との関係が詳しくまとめられています。