確定給付企業年金いくらもらえるか平均額と計算方法

確定給付企業年金いくらもらえるか平均額と計算方法

確定給付企業年金でいくらもらえるか:平均額と計算方法を徹底解説

転職を繰り返した人は、定年時に企業年金がゼロになる可能性があります。


📊 この記事の3ポイント要約
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DBの平均受給額は年62万円

企業年金連合会のデータによると、確定給付企業年金(DB)全体の老齢給付金の平均受給額は年額62万円。規約型は約95万円、基金型は約58万円と、タイプによって大きな差がある。

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受給額は「給与×加入期間×率」で決まる

給付額は会社が定めた規約によって異なるが、基本は「平均給与×加入期間×給付率」で算出される。勤続年数が長いほど金額は大きくなるのが原則。

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受け取り方で手取り額が大きく変わる

一時金は「退職所得」として非課税枠が大きく、年金受取は「雑所得」として公的年金等控除の対象になる。どちらが得かはライフプランや他の収入次第で異なる。


確定給付企業年金の平均受給額と相場データ


確定給付企業年金(DB)は「給付額があらかじめ約束されている」年金制度です。会社が掛金を拠出し、運用し、万が一運用成績が悪くても約束した金額を従業員に支払う責任を企業が負います。つまり運用リスクは会社側にある、という点が最大の特徴です。


実際にいくらもらえるのかを見てみましょう。


企業年金連合会「企業年金に関する基本統計」によれば、確定給付企業年金(DB)全体の老齢給付金の平均受給額(年額)は約62万円です。月換算では約5万円強になります。これはあくまで全体の平均なので、細分化するとさらに差があります。



  • 規約型DB:年額 約95万円(月換算 約7.9万円)

  • 基金型DB:年額 約58万円(月換算 約4.8万円)


規約型と基金型で約37万円もの開きがある点は意外かもしれません。規約型は主に大企業が採用しやすく、掛金水準が高い傾向があるためです。基金型は中小企業が複数集まって基金を設立するケースが多いため、1人あたりの掛金が抑えられやすい構造になっています。


つまり、同じ「確定給付企業年金」でも会社の規模や制度の形態によって受給額が大きく変わる、というのが実態です。


なお、フィデリティ投信が整理した厚生労働省データ(令和5年就労条件総合調査)によると、大企業の大卒定年退職者(総合職)の退職一時金+退職年金の合計はモデルで3,019万円という数字も出ています。この中に企業年金が含まれる場合、退職年金分の現価が1,403万円とされており、年金で受け取ると月5〜6万円程度の上乗せが期待できる水準感です。


これは大企業のモデルケースです。中小企業では平均1,149万円(東京都調査・令和6年版)と差があります。


参考リンク(企業年金連合会の基本統計:平均受給額の元データを確認できます)。
企業年金連合会「企業年金に関する基本統計」


確定給付企業年金の給付額の計算方法とシミュレーション

実際の計算方法を知ることが大事です。


確定給付企業年金の給付額の計算式は、会社の規約によって定められており、大きく2パターンに分かれます。


パターン①:給与連動型


$$\text{年金額(年額)} = \text{加入期間中の平均給与} \times \text{給付率} \times \text{加入月数}$$


例えば、平均給与40万円・加入月数360ヶ月(30年)・給付率0.0025(0.25%)の場合、


$$40\text{万円} \times 0.0025 \times 360 = 36\text{万円}$$


これが年金原資(一時金相当額)となり、この原資をもとに年金額が計算されます。


パターン②:定額型(ポイント制)


勤続年数や職能等級ごとにポイントを付与し、退職時の累積ポイントに単価を掛けて計算します。役職・等級が上がるほど1年あたりのポイントが増える仕組みで、年功序列型の企業に多いパターンです。


さらに近年、「キャッシュ・バランス・プラン」という第3のタイプも増えています。これは確定給付企業年金の一種ですが、市場金利や国債利回りに連動して給付額が変動します。確定給付ではあるものの「最低保証はあるが、金利次第で上振れもある」という性質を持っています。企業型DCと似た部分もありますが、運用リスクは企業が負う点が異なります。これは知っておくと得する情報です。


$\text{個人勘定残高} = \sum(\text{各年の基礎給} \times 1.7 \times \frac{2.5\%}{12})$


実際の数字は各社の規約に依存するため、自分の受給額の目安は「会社の人事・総務部門への問い合わせ」か「加入者向けWebサイトのシミュレーション機能」で確認するのが最も確実です。


DBの場合、事業主は毎事業年度に1回以上、積立状況等を加入者に周知することが法律で定められています。年1回届く「年金額のお知らせ」を見落とさないようにしましょう。


参考リンク(フィデリティ投信:退職金・企業年金の平均額と制度の概要がわかりやすくまとめられています)。
フィデリティ投信「退職金や企業年金はいくらもらえる?」


確定給付企業年金の受給額に影響する3つの要因

受給額は「制度設計次第」という部分が大きいですが、個人レベルで影響する要因も存在します。知っておくだけで将来設計の精度が上がります。


① 加入期間(≒勤続年数)


加入期間は受給額に最も直接的に影響します。加入期間が長いほど受給額が増えるのが基本です。ただし、注意点があります。


企業によっては「一定年齢以上の従業員しか加入できない」「逆に入社から一定期間は加入不可」というルールを設けているケースがあります。勤続年数と加入期間が必ずしも一致しない場合があるということです。特に中途採用者は入社直後の数年間が加入期間にカウントされないケースも珍しくありません。


② 給与水準


確定給付企業年金法では「給付額は加入期間中の給与額等と照らして適正・合理的に算定されなければならない」と定められています。


つまり、在職中に昇給できた人ほど受給額も大きくなる傾向があります。加入期間中の平均給与が計算に使われるため、後半の高い給与が平均を引き上げ、結果的に受給額が増えるという構造です。


③ 会社の財務状況と掛金


DBは「運用リスクを会社が負う」制度ですが、あくまで会社が健全であることが前提です。ここが意外な盲点です。


過去にはNTTグループが経営悪化を理由に企業年金の減額を申請した事例(2010年)があり、厚生労働省が不認可とした経緯があります。ただし、業績悪化が深刻な場合、労使合意のうえで給付額が減額されるリスクは法的にゼロではありません。倒産・解散の際は積立金の範囲内での給付になる可能性があります。これは大企業に勤めていても意識しておくべき事実です。


参考リンク(金融広報中央委員会「知るぽると」:加入確認方法から受け取り方まで公的機関の情報が一覧で確認できます)。
金融広報中央委員会「知るぽると」企業年金の確認方法


確定給付企業年金の受け取り方:一時金vs年金の税金比較

受け取り方で手取り額が数十万円〜数百万円変わることがあります。これは見逃せないポイントです。


一時金で受け取る場合(退職所得扱い)


一時金として受け取ると「退職所得」として課税されます。退職所得控除という非常に大きな控除が使えるため、多くの場合、税負担が軽くなります。


退職所得控除額の計算式は次の通りです。


$$\text{退職所得控除額} = \begin{cases} 40\text{万円} \times \text{勤続年数} & \text{(20年以下の場合)} \\ 800\text{万円} + 70\text{万円} \times (\text{勤続年数} - 20) & \text{(20年超の場合)} \end{cases}$$


例えば勤続30年なら控除額は1,500万円です。これを超えた金額の半分だけが課税対象になります。ざっくり言えば、退職金+企業年金の一時金が1,500万円以下なら税金がほぼかからない水準です。


年金で受け取る場合(雑所得扱い)


年金として分割受け取りにすると「雑所得」として課税されます。公的年金等控除の対象にはなりますが、他の年金収入(厚生年金・国民年金)と合算されるため、合計額が大きいほど税負担が増えます。


注意が必要な「5年ルール」→「10年ルール」への改正


令和7年度税制改正では、iDeCoや企業型DCの一時金を受け取った後に退職金や確定給付企業年金の一時金を受け取る際の退職所得控除の調整期間が、これまでの「5年」から「10年」に延長されます(令和8年1月1日以降の受取分から適用)。


つまり、iDeCoを60歳で受け取り、65歳で確定給付企業年金を受け取る場合、間隔が5年では不十分になる可能性が出てきます。これは金融に詳しい人でも見落としやすい落とし穴です。



  • 📌 一時金と退職金を受け取るタイミングは、今後「10年以上」の間隔が節税のキーポイントになる

  • 📌 公的年金等控除は年間110万円(65歳以上)が基礎控除的に機能するが、DBの年金と厚生年金を合算すると枠を超えやすい


どちらが有利かは一概に言えませんが、手取り面だけを見ると退職所得控除をフル活用できる一時金が有利なケースが多いです。ただし長生きリスクを考えると、年金として定期的な収入を確保する価値も大きい、というのが実情です。


参考リンク(三菱UFJ信託銀行:退職所得控除の5年ルールから10年ルールへの変更をわかりやすく解説しています)。
三菱UFJ信託銀行「退職金の税金」解説コラム


転職・中途退職したとき確定給付企業年金はどうなるか

転職が多い時代に、DBについて最も誤解が多い部分がここです。


DBは定年退職者や長期勤続者向けの制度設計になっていることが多く、中途退職した場合は「脱退一時金」として受け取るケースがほとんどです。これが問題です。


転職を繰り返すたびに小額の脱退一時金を受け取ってしまうと、老後にまとまった企業年金がゼロになる可能性があります。


ただし、対策はあります。脱退一時金を受け取らず、以下の制度に「ポータビリティ(年金資産の持ち運び)」を使って移換することが可能です。



  • 💼 転職先の企業型DC(確定拠出年金)に移換

  • 💼 転職先に企業年金がない場合はiDeCo(個人型確定拠出年金)に移換

  • 💼 企業年金連合会の「通算企業年金」に移換


ただし、「法律上は移換できる」と「実際に移換できる」はイコールではありません。転職先の制度規約がポータビリティに対応していないと移換できないケースもあります。これが意外な盲点です。


移換手続きには期限があります。退職後2年以内に手続きをしないと資産が自動移換(特定運営管理機関に放置)され、管理費用だけがかかり続けるリスクがあります。転職した際はできるだけ早く前職の人事部または企業年金連合会に問い合わせることが重要です。


また、中途退職者が受け取れる脱退一時金の額は、勤続年数の短さによって「算定比例が低くなる」制度設計になっている企業も多く、たとえば20年勤めた場合と10年で辞めた場合では、単純な比例計算より少なくなるケースがあります。これが転職による「目減りリスク」の実態です。


自分の転職状況や年金資産の移管状況を確認したい場合は、企業年金連合会のWebサイトから照会することができます。


参考リンク(企業年金連合会:転職・中途退職後の年金資産の移換手続きを確認できます)。
企業年金連合会「中途脱退者の方へ」


参考リンク(厚生労働省:ポータビリティの制度概要と対応制度の一覧がまとめられています)。
厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」




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