退職所得控除19年ルール国税庁の計算方法と実務注意点

退職所得控除19年ルール国税庁の計算方法と実務注意点

退職所得控除19年ルール国税庁制度概要

退職所得控除19年ルール制度概要
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19年ルールの基本概念

先に退職金を受け取ってから19年以内にiDeCo一時金を受け取る場合、重複期間分の退職所得控除が減額される規定

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5年ルールとの違い

確定拠出年金を先に受け取る場合は5年ルール、退職金を先に受け取る場合は19年ルールが適用される

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国税庁の規定根拠

所得税法第30条により確定拠出年金の重複期間調整が規定され、二重適用防止が目的とされている

退職所得控除19年ルールの適用条件と基本概念

退職所得控除の19年ルールは、企業からの退職金を受け取った後、19年以内にiDeCoや企業型DCの一時金を受け取る場合に適用される制度です。国税庁の規定により、先に受け取った退職金の勤続期間と後から受け取るiDeCo等の加入期間が重複している場合、その重複期間分の退職所得控除額が後から受け取る一時金から減額されます。
参考)【iDeCo】受取時の退職所得控除、5年ルールが10年に変更…

 

この制度の背景には、退職所得控除の二重適用を防ぐという税制上の公平性があります。同一期間について複数回の控除適用を認めると、過度な税優遇となるため、国税庁は重複期間の調整を義務付けています。
参考)新宿税理士事務所|BIZARQ(ビズアーク)会計事務所

 

19年ルールと5年ルールの違いは受け取り順序にあります。確定拠出年金を先に受け取り、その後退職金を受け取る場合は5年ルール(2026年以降は10年ルール)が適用されますが、退職金を先に受け取る場合は19年ルールが適用されるのが特徴です。

退職所得控除額の計算方法と勤続年数の端数処理

退職所得控除額は勤続年数によって計算方法が異なります。勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数」、20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で算出されます。
参考)No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁

 

勤続年数に1年未満の端数がある場合の処理も重要なポイントです。国税庁の規定では、勤続期間に1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年に切り上げて計算することが定められています。
参考)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm

 

例えば勤続年数が10年2か月の場合、端数の2か月は1年に切り上げされ、11年として扱われます。この場合の退職所得控除額は「40万円×11年=440万円」となります。最低控除額として80万円が設定されており、計算結果が80万円未満の場合は80万円が適用されます。
参考)https://hagukumikikin.jp/qaa/%E9%80%80%E8%81%B7%E6%89%80%E5%BE%97%E6%8E%A7%E9%99%A4%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%81%E5%8B%A4%E7%B6%9A%E5%B9%B4%E6%95%B0%E3%81%8C%EF%BC%91%E5%B9%B4%E6%9C%AA%E6%BA%80%E3%81%AE%E7%AB%AF/

 

19年ルール適用時のiDeCo一時金税額計算実例

19年ルールが適用される具体的な計算例を見てみましょう。退職金を受け取ってから19年以内にiDeCoの一時金を受け取る場合、重複期間分の退職所得控除が調整されます。
参考)退職金とiDeCo/退職金を先、iDeCoを後の場合②

 

例えば、会社勤務30年で退職金1,800万円を受け取り、その後iDeCo加入20年で500万円の一時金を受け取るケースを考えます。通常であればiDeCoの退職所得控除額は「40万円×20年=800万円」となりますが、19年ルールにより重複期間20年分の調整が行われ、実際の控除額は大幅に減額されます。
この重複期間の調整計算では、先に受け取った退職金の収入金額を基に「調整後の重複期間」を算出し、その期間に対応する退職所得控除額をiDeCoの控除額から差し引きます。結果として、本来800万円の控除を受けられるはずが、重複期間調整により控除額が大幅に減少し、税負担が増加する可能性があります。
参考)退職金の5年ルールを活用して所得控除を受ける方法

 

確定申告の必要性と申告書提出の重要性

退職金の受け取りにおいて確定申告が必要かどうかは、「退職所得の受給に関する申告書」の提出状況によって決まります。この申告書を退職時に会社に提出すれば、退職所得控除が適用され、適正な所得税・住民税・復興特別所得税が源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。
参考)退職金に税金がかからない?控除の計算方法と確定申告について解…

 

一方、申告書を提出しなかった場合は、退職所得控除が適用されず、退職金に対して一律20.42%の税率で源泉徴収が行われます。この場合は確定申告を行うことで、払い過ぎた税金の還付を受けることができます。
参考)退職金とiDeCo一時金/前年以前4年内と19年内!?

 

ただし、医療費控除や寄附金控除などの適用を受ける場合は、申告書を提出していても確定申告書に退職所得金額の記載が必要となります。また、年金形式で退職金を受け取る場合は、公的年金の収入が400万円を超える場合や雑所得が20万円を超える場合に確定申告が必要です。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-kakuteishinkoku/severance_pay_tax/

 

退職所得控除活用における戦略的受け取りタイミング

19年ルールを踏まえた戦略的な受け取り方法として、退職金とiDeCoの受け取りタイミングの検討が重要です。最も税負担を軽減できる方法は、退職金を受け取ってから19年以上経過した後にiDeCoを受け取ることですが、これは現実的ではありません。
実務的な対策としては、iDeCoを先に受け取り、その後5年(2026年以降は10年)以上の期間を空けて退職金を受け取る方法があります。この場合、5年ルール(10年ルール)が適用され、それぞれの退職所得控除を満額活用できる可能性が高まります。
参考)退職金と確定拠出年金の受け取り方で【税金】は大きく違う - …

 

しかし、多くの企業では退職金の支給が60歳時点であることが多く、iDeCoの受け取りタイミングとの調整が困難な場合もあります。そのため、勤務先の退職金制度やiDeCoの加入期間を考慮し、税理士などの専門家に相談して最適な受け取り戦略を検討することが重要です。税制改正により控除期間が延長される傾向にあるため、最新の法改正情報にも注意が必要です。
参考)退職所得が増税に?令和7年度税制改正により5年ルールが10年…

 

国税庁の退職所得に関する詳細な情報
退職金を受け取ったときの税額計算方法や控除額について詳しく解説されています
退職所得の源泉徴収に関する実務手続き
退職手当等に対する源泉徴収の計算方法と申告書提出の重要性が記載されています