

予定納税の納付を忘れると、最大で年率14.6%の延滞税が翌日から発生します。
予定納税とは、その年の所得税および復興特別所得税の一部を、確定申告の前に2回に分けてあらかじめ納付する制度です。国税庁の定義では「予定納税基準額が15万円以上となる方が対象」とされており、国の歳入を平準化しつつ、納税者が一度に大きな税負担を抱えることを防ぐ目的で設けられています。
つまり所得税の前払いです。
前年分の確定申告で納付した所得税額(申告納税額)が、そのまま予定納税基準額として扱われるのが原則です。ただし、前年の所得に山林所得・退職所得などの分離課税所得、一時所得、雑所得が含まれている場合や、外国税額控除・災害減免法の適用を受けていた場合は、計算方法が異なります。この場合は「前年の課税総所得金額および分離課税の上場株式等にかかる課税配当所得等の金額にかかる所得税額」から源泉徴収税額を差し引いた金額が基準となります。
個人事業主だけでなく、会社員でも副業収入や不動産所得があり、前年の申告納税額が15万円以上であれば対象になります。毎年6月中旬ごろ、税務署から「予定納税額の通知書」が封書で届くため、見落とさないように注意が必要です。
参考:国税庁「No.2040 予定納税」に、予定納税基準額の計算方法・対象者・納付期限が公式に掲載されています。
予定納税の対象になるかどうかは、年収の金額ではなく「前年の申告納税額(確定申告書に記載された最終的な所得税の納付額)が15万円以上かどうか」で決まります。これが原則です。
課税所得が195万円を超えると所得税率が10%になるため、課税所得が150万円(所得税率10%)のとき、所得税はおよそ15万円です。個人事業主・フリーランス・副業で事業所得や不動産所得がある会社員が、確定申告で15万円以上の税金を納めた翌年は要注意です。
納付額は次の計算で求められます。
| 納付回 | 納期限(原則) | 納付額の計算 |
|---|---|---|
| 第1期分 | 7月31日まで | 予定納税基準額 × 1/3(100円未満切捨) |
| 第2期分 | 11月30日まで | 予定納税基準額 × 1/3(100円未満切捨) |
たとえば前年の申告納税額が45万円の人なら、7月に15万円・11月に15万円を前払いし、残りの15万円分を翌年の確定申告で精算する流れです。合計30万円を2回に分けて先に払うイメージで、手元資金の管理がポイントになります。
e-Taxを利用している場合は、通知書が電子通知として届くため紙の封書が来ません。郵便で届かないからといって対象外とは限らないので、e-Taxのメッセージボックスの確認が必須です。
参考:マネーフォワード クラウド確定申告が予定納税基準額の計算と通知書の見方を図解で解説しています。
マネーフォワード|所得税の予定納税とは?個人事業主は計算方法や納付方法、タイミングを知っておこう
予定納税の納付方法は現在6種類あります。キャッシュレス化が進んでいるため、窓口に行かずに完結できる方法が増えました。それぞれの特徴を整理します。
手数料を一切かけたくないなら、ダイレクト納付やインターネットバンキングが最適です。ポイントを貯めたい場合はクレジットカード納付が有利ですが、決済手数料分と獲得ポイントの価値を比較してから判断しましょう。
振替納税(口座引き落とし)を利用している場合、第1期分は7月31日・第2期分は11月30日に自動で引き落とされます。ただし領収書は発行されないため、引き落とし確認を通帳やアプリで必ず行ってください。残高不足で引き落とされなかった場合も、翌日から延滞税が発生するため、残高管理は徹底が必要です。
予定納税は前年の所得税額を基準にするため、今年の収入が大幅に減った場合には、実態とかけ離れた高い金額を前払いしなければならないケースが生じます。そのための救済制度が「減額申請」です。
減額申請が認められる主なケースは次の通りです。
申請書の提出期限は以下の通りです。
| 対象 | 申請期限 | 見積もりの基準日 |
|---|---|---|
| 第1期・第2期分(両方) | 7月1日〜7月15日 | 6月30日時点 |
| 第2期分のみ | 11月1日〜11月15日 | 10月31日時点 |
申請書は国税庁ウェブサイトからダウンロードでき、e-Taxでの電子提出も可能です。承認・却下の結果は書面で通知されます。
減額が必要です。ただし、注意すべき点があります。
資金に余裕がある場合は、あえて減額申請をしないという選択肢も検討に値します。理由は次のセクションで説明する「還付加算金」の存在です。手続きの手間を省きながら、払いすぎた税金に利息をつけて返してもらえる場合があるためです。
参考:国税庁の公式ページで、予定納税額の減額申請書の様式と記入方法が確認できます。
予定納税で前払いした額が、年間の実際の所得税額を上回った場合、翌年の確定申告で差額が還付されます。還付申告の期限は、支払った年の翌年1月1日から5年間です。
これが基本です。さらに知っておきたいのが「還付加算金」の存在です。
還付加算金とは、納めすぎた税金が戻ってくる際に国が上乗せしてくれる利息のことです。令和8年(2026年)中の還付加算金特例基準割合は年1.3%です。メガバンクの普通預金金利(0.1%程度)や定期預金(0.2〜0.3%程度)と比較すると、条件によっては銀行預金より高い利率で返ってくる計算になります。
たとえば、前年の予定納税基準額が45万円(第1期15万円・第2期15万円、合計30万円を前払い)で、実際の所得税が20万円だった場合、10万円の還付が発生します。この10万円には還付加算金として年1.3%の利息が加算されます。
ただし、いくつかの注意点があります。
意外ですね。利息がつくのは良いことですが、その利息自体にも税金がかかります。金融に関心がある方は、この点を把握した上で減額申請をするかどうかを判断するとよいでしょう。
参考:BEARO税理士事務所が、令和8年の還付加算金の利率と注意点をわかりやすく解説しています。
BEARO税理士事務所|税務署から「利息」がもらえる 知られざる「還付加算金」の仕組みと注意点
予定納税は納付を忘れると、翌日から自動的に延滞税が発生します。これは確定申告の延滞と同様の扱いです。
延滞税の割合は次の通りです。
| 遅延期間 | 延滞税の割合(令和8年適用) |
|---|---|
| 納期限の翌日〜2か月以内 | 年2.4%(延滞税特例基準割合+1%) |
| 納期限の翌日から2か月超 | 年8.7%(延滞税特例基準割合+7.3%) |
痛いですね。2か月を超えると割合が3倍以上に跳ね上がります。
たとえば予定納税額が20万円で、2か月以上遅れた場合の延滞税は「20万円 × 年8.7% × 遅延日数 ÷ 365日」で計算されます。90日遅れたとすると、約4,300円の延滞税が追加で発生します。金額としては小さく見えますが、そもそも払わなくて済む出費であることを踏まえると、対策する価値は十分あります。
延滞税の発生を防ぐための実践的な対策として、「納税準備預金」の活用が挙げられます。これは納税専用の口座で、原則として納税時にしか引き出せない代わりに、預金利息にかかる税金(通常20.315%)が非課税になる仕組みです。確定申告後に税額の見込みを把握し、毎月積み立てる習慣をつけると、7月・11月の納付時に慌てずに済みます。
また、e-Taxで納付情報を事前に登録し、ダイレクト納付の「日付指定引き落とし」を設定しておくことも有効な手段です。これを設定するだけで、払い忘れのリスクをほぼゼロにできます。
振替納税を利用している場合も、口座の残高不足には注意が必要です。残高が足りないと引き落とし不能となり、その翌日から延滞税が発生します。7月初旬と10月末に口座残高を意識的に確認する習慣が大切です。
参考:freeeの確定申告ガイドが、延滞税・無申告加算税のペナルティと対処法を具体的に説明しています。
freee|予定納税とは?対象者・納付時期・納付方法および減額申請できるケースについて解説