株式の損益通算・確定申告で節税する完全ガイド

株式の損益通算・確定申告で節税する完全ガイド

株式の損益通算と確定申告を正しく理解して節税する方法

損益通算すれば必ず得になる、とは限りません。


📋 この記事でわかること3選
💴
損益通算の基本と節税効果

株の損失を同年の利益や配当所得と相殺し、源泉徴収済みの税金を取り戻す仕組みと、具体的な節税金額の考え方を解説します。

📝
確定申告が必要なケースと不要なケース

口座の種類(特定口座・一般口座・NISA)ごとに、確定申告が必要かどうかを整理。複数の証券会社を使っている人が見落としがちなポイントも紹介します。

⚠️
申告することで逆に損をするケース

国民健康保険料の増加・扶養控除の喪失・住宅ローン控除への影響など、損益通算を行う前に必ず確認すべきデメリットを具体的な数字で解説します。


株式の損益通算とは何か・確定申告との関係


損益通算とは、同じ年に発生した利益と損失を合算して、課税対象となる所得を計算する仕組みのことです。株式投資の場合、ある銘柄の売却益と別の銘柄の売却損を相殺できます。また、売却損を、申告分離課税を選択した配当所得と通算することも可能です。


たとえばA株で50万円の利益が出ていて、B株で30万円の損失が出ていたとします。損益通算すると課税対象は「50万円−30万円=20万円」になります。そのまま申告しなければ50万円全額に約20.315%が課税され、税額は約10万円になる計算です。損益通算を活用すれば課税額は約4万円で済み、6万円ほど節税できます。これは使えそうです。


ただし、株式の譲渡損失は「申告分離課税」に分類されます。そのため、給与所得や事業所得など他のカテゴリーの所得とは損益通算できない点が原則です。通算できるのは、同じ上場株式等の売却益や、申告分離課税を選択した配当所得・利子所得に限られています。これが原則です。


配当所得を損益通算に使う場合は、確定申告時に「申告分離課税」を選ぶ必要があります。何も申告しなければ「申告不要制度」が自動的に適用されるため、損失との通算ができません。この判断は自分でする必要があります。




株式の損益通算を行うには、原則として確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)を1社だけで使っている場合、同一口座内での損益通算は証券会社が自動で行ってくれます。しかし、複数の証券会社をまたいだ通算や、配当所得との通算は自分で確定申告しなければできません。


国税庁:No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除(損益通算・繰越控除の制度概要を確認できる公式ページ)


株式の確定申告が必要なケース・不要なケースを口座別に整理

口座の種類によって確定申告の要否が大きく変わります。整理しておくと確認しやすいです。


まず「特定口座(源泉徴収あり)」の場合、同一口座内の損益は証券会社が自動的に通算し、約20.315%の税金を源泉徴収してくれます。基本的には確定申告は不要です。ただし、別の証券会社の損失と通算したい場合や、繰越控除を使いたい場合は、自分で確定申告する必要があります。


「特定口座(源泉徴収なし)」の場合、年間損益の計算は証券会社がしてくれますが、税金の天引きは行われません。利益が出た場合は確定申告が必要で、損失の場合も損益通算や繰越控除を使いたいなら申告が必要です。「一般口座」は損益計算も確定申告もすべて自分で行う必要があります。




NISA口座は少し特殊な扱いです。NISA口座内の利益は非課税なので確定申告は不要です。しかし非課税である代わりに、NISA口座で発生した損失は特定口座や一般口座の利益と損益通算できません。NISA口座の損失は税務上「なかったもの」として扱われます。


以下の表で確認してください。





























口座の種類 利益が出た場合の確定申告 損失での損益通算・繰越
特定口座(源泉徴収あり) 原則不要 複数口座・配当通算は申告必要
特定口座(源泉徴収なし) 必要 申告必要
一般口座 必要 申告必要
NISA口座 不要(非課税) 損益通算・繰越控除 不可


会社員で給与以外の所得が年間20万円以下の場合は、所得税の確定申告が不要なケースもあります。ただしこれは所得税に関するルールであり、住民税の申告が不要になるわけではないため注意が必要です。株式投資以外に所得がない人は、利益が95万円以下(基礎控除48万円+株式の特別控除相当)であれば申告不要になる場合があります(2025年以降の基礎控除改正に基づく)。


国税庁:株式・配当・利子と税(上場株式等の損益通算ルールを公式が解説しているページ)


株式の損益通算・繰越控除を確定申告で行う具体的な手順

実際に確定申告で損益通算をする場合の流れを確認しましょう。大きく分けて書類の準備・申告書の作成・提出の3ステップです。


まず必要書類を揃えます。証券会社から毎年1月ごろに届く「特定口座年間取引報告書」が最重要です。複数の証券会社を使っている場合は、すべての報告書が必要です。なお2019年4月以降、確定申告書への特定口座年間取引報告書の添付は不要になりましたが、金額を転記する際に参照するため手元に保管しておきましょう。サラリーマンの場合は勤務先からの「源泉徴収票」、マイナンバーカードや本人確認書類も用意します。




申告書の作成は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)を使うのが最もスムーズです。画面の案内に従って年間取引報告書の数字を入力するだけで、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」と「確定申告書第三表」が自動作成されます。損失の繰越控除をする場合は、さらに「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用の付表」の作成も必要です。


申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日までです。(年によって前後します)e-Taxを使えばスマートフォンでも提出できます。郵送や窓口持参も可能です。




損益通算の計算手順は以下の通りです。



  • 📌 各口座の年間取引損益をすべて合計する(複数証券会社がある場合はすべて合計)

  • 📌 合計がマイナスなら、申告分離課税を選択した配当所得・利子所得と通算する

  • 📌 通算後もまだマイナスが残れば、翌年以降の「繰越控除」として申告する

  • 📌 繰越控除は損失が発生した年から最長3年間、毎年連続で確定申告が必要


「毎年連続で」という点がポイントです。取引がない年でも申告を1年でも飛ばすと、繰越の権利が消えてしまいます。損失を出した年の翌年から3年間はカレンダーに確定申告の予定を必ず入れておきましょう。


freee:株で損失が出ても確定申告は必要?損益通算や書き方について解説(確定申告書の書き方・損益通算の計算例をわかりやすく解説)


株式の損益通算で確定申告すると国民健康保険料が増える落とし穴

ここが最も見落とされがちなポイントです。実は損益通算で税金が戻っても、国民健康保険料(国保)が増えてトータルで損をするケースがあります。


なぜそうなるのかというと、国民健康保険料の計算は「合計所得金額」や「総所得金額等」をベースにするためです。株式の譲渡所得や配当所得を確定申告すると、これらの金額が増え、国保料の算定基準も上がってしまいます。特定口座(源泉徴収あり)で「申告不要」を選んでいた場合は合計所得に含まれないため、国保料は増えません。しかし確定申告すると国保料の算定基準に含まれます。




実際の事例として、税理士の実務相談では「株の損益通算で所得税・住民税が2万円還付された一方、国民健康保険料が7万円増えた」というケースが報告されています。差し引きで5万円の損になってしまいます。痛いですね。


この問題は特に以下の人に起きやすいです。



  • 🔴 フリーランス自営業者など国民健康保険に加入している人

  • 🔴 退職後に国保に切り替えた人(セミリタイア・早期退職者)

  • 🔴 高齢で後期高齢者医療保険に加入している人

  • 🔴 配偶者や親の扶養に入っている人


会社員で勤務先の健康保険(協会けんぽや組合健保)に加入している人の場合は、株式の申告をしても原則として社会保険料は変わりません。ただし扶養している家族がいる場合は別の影響が出る可能性があります。




もう一つ注意すべきケースが扶養控除への影響です。親の扶養に入っている成人した子どもが株式投資をしている場合、損益通算で合計所得金額が48万円(2025年以降の基礎控除適用)を超えると扶養控除から外れてしまいます。子どもの税金が2万円戻っても、親側で扶養控除(38万円)が消えて7〜8万円の増税になるケースがあります。世帯全体で計算する視点が必要です。


さらに、住宅ローン控除を受けている場合も注意が必要です。住宅ローン控除には「合計所得金額2,000万円以下」という要件があります。もともと合計所得が1,990万円の人が株式の所得を10万円申告して2,000万円を超えると、住宅ローン控除(例:年間31.5万円)を丸ごと失うことがあります。10万円の申告で31.5万円の控除を失うのは明らかに不利です。


申告する前に「トータルの損得」を必ずシミュレーションすることが条件です。市区町村の窓口や国税庁の確定申告書等作成コーナーのシミュレーション機能を活用することをおすすめします。


税理士コラム:落とし穴がいっぱい!株・配当金・投資信託の確定申告で損をしないために(国保料・扶養・住宅ローン控除への影響を具体的な数字で解説)


株式の損益通算・繰越控除を最大活用するための独自視点ガイド

損益通算の制度を理解したうえで、さらに一歩踏み込んだ活用法を紹介します。多くの解説記事では「損益通算すればお得」とだけ書かれていますが、実際は「いつ・どの口座で・どの課税方法を選ぶか」の判断で手取りが大きく変わります。


まず「複数の証券会社の口座を持っている人」が最も恩恵を受けやすいケースです。A証券で50万円の利益、B証券で10万円の損失が出ていた場合、申告しなければB証券の損失は無駄になります。申告することで約2万円が還付されます。




繰越控除の「3年縛り」を逆利用する方法もあります。大きな損失が出た年は必ず確定申告し、翌年以降3年間は利益が出るたびに損失と相殺していきます。たとえば100万円の損失を繰り越した場合、翌年30万円・翌々年30万円・その翌年40万円の利益と順に相殺できれば、3年間で約20万円の税金を節約できます。100万円の損失が20万円分の「税の節約権利」に変わるイメージです。


配当所得の課税方法の選択も損益通算と組み合わせる価値があります。通常、配当所得は「申告不要制度」で20.315%が源泉徴収され終わります。しかし株式の売却損が出ている年に「申告分離課税」を選択すると、配当所得に源泉徴収された税金も取り戻せます。




ただし、配当所得を申告分離課税で申告する際には、その年の「すべての」上場株式等の配当所得について同一の課税方法を選ぶ必要があります。一部だけ申告分離課税にすることはできません。これが原則です。


最後に、e-Taxと確定申告ソフトの活用も見逃せません。国税庁の確定申告書等作成コーナーは無料で使え、特定口座年間取引報告書の数字を入力するだけで複数口座の通算計算も自動で行ってくれます。複数の証券口座を持っている場合は、すべての口座の年間取引報告書を手元に揃えてから一括入力するとスムーズです。


損益通算は「知っているかどうか」で税負担に数万〜数十万円の差が生まれる制度です。ただし「申告すれば必ずお得」ではなく、国民健康保険料や扶養控除、住宅ローン控除への影響を含めたトータルの判断が必要です。不安な場合は税理士への相談が最も確実な選択肢です。


国税庁:No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除(制度の根拠となる公式情報)




経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて