死亡一時金とは厚生年金加入者の遺族が知るべき全知識

死亡一時金とは厚生年金加入者の遺族が知るべき全知識

死亡一時金とは:厚生年金との関係と遺族が受け取る全知識

厚生年金に加入していた家族が亡くなった時、実は死亡一時金をもらえるケースがあります。


この記事の3つのポイント
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死亡一時金は「国民年金専用」の制度

死亡一時金は国民年金の第1号被保険者(自営業者・フリーランスなど)が対象の給付であり、厚生年金には原則として同名の制度は存在しません。

⚠️
請求期限はわずか2年で時効消滅

死亡日の翌日から2年を過ぎると受給権は消滅します。申請しなければ自動的にはもらえないため、早めの確認と手続きが不可欠です。

厚生年金加入者でも併給できる場合がある

国民年金第1号期間が36ヶ月以上あれば、遺族厚生年金と死亡一時金を両方受け取れるケースがあります。状況を必ず確認しましょう。


死亡一時金とは何か:国民年金における制度の基本を理解する

死亡一時金は、国民年金法に基づいて遺族に支給される一時的な給付金です。制度の目的は、長年保険料を納め続けた被保険者が老齢基礎年金も障害基礎年金も受け取らないまま亡くなった場合に、納付した保険料を「掛け捨て」にさせないことにあります。つまり、遺族への最低限のセーフティネットとして設計されています。


受給の基本要件は3点です。


- 亡くなった方が国民年金の第1号被保険者として保険料を納付した期間が36ヶ月以上あること
- 老齢基礎年金・障害基礎年金を受給したことがないまま死亡したこと
- 遺族が亡くなった方と生計を同じくしていたこと


第1号被保険者とは、主に自営業者・フリーランス・学生・無職の方などが該当します。会社員として厚生年金に加入している間は第2号被保険者になるため、その期間は死亡一時金の対象となる保険料納付月数には算入されません。これが重要です。


つまり、ずっと会社員として厚生年金のみに加入してきた方が亡くなった場合、死亡一時金の受給対象にはなりません。ただし、過去に自営業や無職の期間があり、第1号被保険者として36ヶ月以上保険料を納めていた記録がある場合は、受給できる可能性があります。これは多くの方が見落としているポイントです。


支給額は、保険料を納めた月数に応じて段階的に決まります。


| 保険料納付月数 | 支給額 |
|---|---|
| 36ヶ月以上180ヶ月未満 | 120,000円 |
| 180ヶ月以上240ヶ月未満 | 145,000円 |
| 240ヶ月以上300ヶ月未満 | 170,000円 |
| 300ヶ月以上360ヶ月未満 | 220,000円 |
| 360ヶ月以上420ヶ月未満 | 270,000円 |
| 420ヶ月以上 | 320,000円 |


さらに、付加保険料を36ヶ月以上納めていた場合は8,500円が加算されます。最大でも32万円という金額は、葬儀費用の一部にしかなりませんが、申請漏れると完全に受け取れなくなるため確認が必須です。


参考:死亡一時金の支給要件・金額は日本年金機構の公式ページで確認できます。


死亡一時金 | 日本年金機構(受給要件・支給額の公式情報)


死亡一時金と厚生年金の関係:もらえないケースとも受け取れるケースを整理する

厚生年金は死亡一時金の対象外です。これが大前提です。


ただし実際には、会社員であっても過去に第1号被保険者だった時期を持つ方は珍しくありません。たとえば、若い頃にフリーランスや自営業として国民年金に加入していた後、就職して厚生年金に切り替えたというケースです。こうした場合、第1号被保険者期間が36ヶ月以上あれば、死亡一時金の受給要件を満たす可能性があります。


死亡一時金が支給されない主な場合は以下の通りです。


- 第1号被保険者としての保険料納付月数が36ヶ月未満の場合
- 亡くなった方が老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していた場合
- 遺族が遺族基礎年金を受給できる場合(原則)
- 死亡日の翌日から2年を経過した場合(時効)
- 寡婦年金と死亡一時金の両方の受給権があり、寡婦年金を選択した場合


「遺族基礎年金を受給できる場合は支給されない」という点は特に要注意です。ただしこれには例外があります。遺族が遺族基礎年金の受給権を持っていても、死亡月に遺族基礎年金の支給が停止されている場合などは、死亡一時金が支給されることがあります。やや複雑なルールです。


厚生年金加入者の遺族が受け取れる主な給付を整理すると、遺族厚生年金・遺族基礎年金(子のある配偶者等)・埋葬料(健康保険から5万円)などがあります。これらは死亡一時金とは別の制度なので、混同しないようにしましょう。


重要なのは、遺族厚生年金と死亡一時金は、条件を満たせば併給が可能という点です。これは多くの人が「もらえない」と思い込んでいる事実です。具体的には、亡くなった方が第1号被保険者期間を36ヶ月以上持ち、かつ遺族が遺族基礎年金の受給要件を満たさない(たとえば子のいない配偶者)場合には、遺族厚生年金を受け取りながら死亡一時金も請求できます。


参考:厚生年金と死亡一時金の関係をわかりやすくまとめた専門解説です。


死亡一時金の受給順位と相続税:遺族の「誰が」「税金なしで」受け取れるかを正しく知る

死亡一時金を受け取れる遺族には優先順位があります。優先順位が高い人が1名受け取った場合、それ以外の遺族には支給されません。


受給できる遺族の順位は次の通りです。


1. 配偶者
2. 子
3. 父母
4. 孫
5. 祖父母
6. 兄弟姉妹


大切なのは、これらすべての人が「亡くなった方と生計を同じくしていた」ことが条件という点です。単に続柄があるだけでは不十分で、実際に生活を共にしていたかどうかが判断基準になります。


兄弟姉妹まで受給順位に含まれるのは意外ですね。配偶者や子がいない場合でも、生計を共にしていた兄弟姉妹が受け取れる可能性があります。これを知らないまま請求を見送ってしまうと、最大32万円の受給機会を失ってしまいます。


税金の扱いについても重要です。国民年金法に基づく死亡一時金は、所得税相続税ともに課税されません。国税庁のQ&Aでも「国民年金法、厚生年金保険法などに基づいて支給される遺族への給付金は原則として所得税も相続税も課税されない」と明記されています。受け取った金額がそのまま手元に残るということです。


ただし、これは国民年金法に基づく死亡一時金の話です。厚生年金基金から支給される「遺族給付金(死亡一時金に相当するもの)」も非課税扱いとなりますが、根拠法令が異なりますので混同に注意してください。


なお、死亡一時金は遺産分割の対象にもなりません。亡くなった方の財産ではなく、遺族固有の権利として支給されるものだからです。相続放棄をしていても受け取れる給付です。これも知らないと損する知識の一つです。


参考:税の観点から遺族が受け取る公的年金等の課税関係を確認できます。


No.1605 遺族の方に支給される公的年金等 | 国税庁(所得税・相続税の非課税の根拠)


死亡一時金と寡婦年金の選択:独自の損得計算で損をしない選び方

死亡一時金と並んで、国民年金独自の給付として「寡婦年金」があります。両方の受給要件を満たす場合、どちらか一方しか受け取れないため、選択を迫られます。これは見過ごされやすいポイントです。


寡婦年金の受給条件は、死亡一時金より複雑です。


- 亡くなった夫が第1号被保険者として10年以上保険料を納めていること
- 婚姻期間が10年以上あること(事実婚含む)
- 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受給したことがないこと
- 妻の年齢が60歳以上65歳未満の間のみ受給可能


受給額は「夫が本来受け取るはずだった老齢基礎年金額の4分の3」です。60歳から65歳までの最大5年間受け取れるため、トータル受給額では死亡一時金の最大32万円を大きく上回るケースがほとんどです。


では、常に寡婦年金が得かというとそうでもありません。選択の際には以下の点を考慮する必要があります。


- 妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給する予定がある場合、寡婦年金との同時受給ができないため死亡一時金を選ぶほうが合理的です
- 夫が亡くなった時に妻が若く(例えば40代)、寡婦年金の受給開始まで20年近く待たなければならない場合は、今すぐ受け取れる死亡一時金を選ぶという判断もあります
- 妻が短期間で亡くなる可能性がある健康状態の場合、確実に受け取れる一時金のほうがリスクヘッジになります


迷ったときの判断基準は、「65歳まで寡婦年金を受け続けられる見込みがあるかどうか」です。健康で繰り上げ受給も考えていない方は、原則として寡婦年金を選択するほうが総受取額は大きくなります。寡婦年金を選ぶのが基本です。


参考:寡婦年金と死亡一時金の選択基準について詳しく解説されています。


寡婦年金とは?いくらもらえる?支給条件や死亡一時金と比較して解説 | 相続プロ


死亡一時金の請求手続きと2年の期限:申請しないと32万円が消える現実

死亡一時金は、申請しなければ1円も受け取れません。自動的に振り込まれる制度ではないのです。しかも請求期限は死亡日の翌日から2年。この2年という期限は遺族年金の5年よりも短く、バタバタしている遺族が見落としやすい落とし穴になっています。痛いですね。


実際、葬儀費用や相続手続きが一段落して「そういえばもらえるお金があったはず…」と思い出したころには、すでに2年が経過していたというケースも珍しくありません。2年を1日でも超えると権利は消滅します。


請求先と提出書類をまとめます。


請求先:
- 市区町村役場(国民年金担当窓口)または所管の年金事務所


主な必要書類:


| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 国民年金死亡一時金請求書 | 年金事務所・市区町村窓口で入手可能 |
| 亡くなった方の基礎年金番号通知書または年金手帳 | 提出不可の場合は理由書 |
| 戸籍謄本(死亡日以降に発行されたもの) | マイナンバー記入で省略可 |
| 世帯全員の住民票の写し(死亡日以降発行) | マイナンバー記入で省略可 |
| 死亡者の住民票の除票 | 住民票に含まれる場合は不要 |
| 受取口座の通帳またはキャッシュカードのコピー | 本人名義のもの |


手続きの流れとしては、まず死亡した方の年金加入記録を年金事務所で確認し、第1号被保険者期間が36ヶ月以上あるかをチェックすることから始めます。これで受給要件を満たすかどうかが判明します。次に上記書類をそろえて、市区町村の国民年金窓口または年金事務所に提出します。この1ステップを早めに踏むことが大切です。


なお、マイナンバーを活用することで、戸籍謄本や住民票の添付を省略できるケースもあるため、手続き前に窓口に確認してみることをおすすめします。手間を大幅に減らせます。


家族が亡くなった直後は、死亡届の提出・葬儀・相続手続きと慌ただしくなります。そのため、死亡一時金をはじめとする各種給付の請求期限をまとめてメモしておくことが有効です。期限管理は必須です。


参考:請求書の書式と必要書類の詳細は日本年金機構の公式ページで確認できます。


死亡一時金を受けるとき | 日本年金機構(必要書類・請求先の公式情報)


死亡一時金を正しく活用するための家計管理術:受け取った後の資金の使い方まで考える

死亡一時金は最大32万円の一時的な給付です。金額自体は大きくありませんが、遺族が突然の収入減に直面する時期に受け取れるキャッシュとして、使い道を事前に考えておくことが賢い対応です。


まず前提として、死亡一時金は非課税で手元に全額残ります。相続財産でもないため、遺産分割を気にせず受け取ることができます。これがポイントです。


実際に遺族が直面する費用として、葬儀費用の平均は近年の簡略化傾向を踏まえても100〜150万円程度かかるとされています。死亡一時金の32万円はその約2〜3割をカバーできる水準です。加えて、埋葬料(健康保険から5万円)なども組み合わせることで、急場をしのぐ手助けになります。


一方で、長期的な生活設計も考える必要があります。特に、亡くなった方が家計の主な稼ぎ手だった場合、遺族厚生年金や遺族基礎年金だけで生活費をまかなえるかを早期に確認することが重要です。遺族年金の受給額は、加入期間や標準報酬月額などによって大きく異なります。


不安な点がある場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)や年金事務所の相談窓口に問い合わせるのが有効な手段です。年金事務所の相談は無料で、家族が亡くなってからの給付全体(遺族年金・死亡一時金・埋葬料など)について一括して確認できます。基礎年金番号を持参すれば、その場でシミュレーションしてもらえることもあります。


また、遺族が受け取れる給付金を把握したうえで、残された保険や貯蓄も合算して「今後の生活費を何年分カバーできるか」を計算することをおすすめします。死亡一時金はその計算の出発点になる給付の一つです。


さらに視点を変えると、今後自分が死亡一時金の受給対象になるかどうかを生前に確認しておくことも重要な家計管理です。特に「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を使えば、自分の第1号被保険者期間が何ヶ月あるかを確認でき、将来的に遺族が死亡一時金を受け取れるかどうかが事前にわかります。知っておくと安心です。


参考:ねんきんネットでは自分の年金加入記録をオンラインで確認できます。


ねんきんネット | 日本年金機構(加入記録・納付月数の確認に活用)