相続放棄の手続きはどこでする?費用や期限の注意点

相続放棄の手続きはどこでする?費用や期限の注意点

相続放棄の手続きはどこでする?費用・必要書類・期限を完全解説

相続放棄の申述書を自分の地元の家庭裁判所に出すと、手続きが無効になって借金をそのまま引き継ぐことになります。


この記事の3つのポイント
🏛️
手続き先は「被相続人の最後の住所地」の家庭裁判所

自分が住んでいる地域の裁判所ではなく、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述します。郵送でも対応可能です。

期限は「相続を知った日から3ヶ月以内」が原則

被相続人の死亡日ではなく、自分が相続人であると知った日が起算点です。間に合わない場合は期間伸長の申立てができます。

💴
自分で手続きすれば費用は3,000〜5,000円程度

収入印紙800円+郵便切手代+戸籍謄本等の取得費用が主な出費です。専門家に依頼する場合は3〜10万円が目安になります。


相続放棄の手続きをどこでするのか:被相続人の住所地の家庭裁判所


相続放棄の申述先は、「被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。これは民法第938条と家事事件手続法第201条に定められており、申述人が自由に申述先を選ぶことはできません。


よくある勘違いが「自分の家の近くの家庭裁判所でいい」という思い込みです。それは誤りです。


たとえば、両親が大阪府大阪市に住んでいて、子どもが東京都渋谷区に在住している場合、相続放棄の申述先は大阪家庭裁判所になります。東京家庭裁判所に申述しても受理されません。管轄を間違えると手続きがやり直しになり、3ヶ月の期限が迫っている場合には大きなリスクとなります。


自分が担当すべき家庭裁判所がどこかを調べるには、裁判所公式サイトの「裁判所の管轄区域」ページを利用するのが最も確実です。被相続人の最後の住所が記載された住民票の除票を入手した上で、その住所地の管轄裁判所を確認しましょう。


裁判所公式:相続の放棄の申述(手続き・書式・費用の公式情報)


相続放棄の手続きに必要な書類と費用の全リスト

手続きに必要な書類は、申述人と被相続人の関係によって異なります。まず基本となる共通書類を確認しましょう。







































書類名 取得場所 費用目安
相続放棄申述書 裁判所HP(無料ダウンロード)または窓口 無料
被相続人の住民票の除票 被相続人の住民登録があった市区町村役場 300〜350円程度
被相続人の戸籍謄本(死亡記載のもの) 本籍地の市区町村役場 450円/通
申述人(放棄する方)の戸籍謄本 本籍地の市区町村役場 450円/通
収入印紙 郵便局・法務局・コンビニ 800円(申述人1人につき)
連絡用郵便切手 郵便局・コンビニ 400〜500円程度


子として相続放棄する場合は上記の書類で足りますが、孫・兄弟姉妹・叔父叔母として相続放棄する場合はさらに追加の戸籍謄本が必要になります。これは「申述人が相続人である」ことを証明する必要があるためです。


たとえばの例で考えると、第一順位の相続人(子ども全員)が放棄したために第二順位の父母が相続人になった場合、父母が相続放棄するには「子どもが全員放棄した事実」を示す書類も一緒に提出します。


つまり関係が複雑なほど書類が増えるということですね。


収入印紙は申述人1人につき800円です。家族全員が相続放棄するなら、その人数分の申述書と収入印紙が必要になります。たとえば子ども3人が全員放棄するなら、収入印紙だけで2,400円かかります。


自分で手続きした場合の総費用はおおよそ3,000〜5,000円程度で、書類郵送で取り寄せる場合はさらに郵便代が加算されます。


裁判所公式:相続の承認又は放棄の期間の伸長(申立方法・費用の公式情報)


相続放棄の手続きの流れ:申述書の提出から受理通知書まで

実際に手続きを進める流れを把握しておけば、期限内に余裕をもって動けます。大きく4つのステップで完結します。


まず「STEP①:相続財産の調査」を行います。プラスの財産(預貯金・不動産・有価証券など)とマイナスの財産(借金・未払いの税金など)をできるだけ洗い出します。信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に照会すれば、借金の有無も確認できます。


「STEP②:書類の収集と申述書の作成」に移ります。申述書は裁判所のホームページから無料でダウンロードでき、記入例も公開されています。書き方に迷ったら記入例を参照しながら作成しましょう。これは使えそうです。


「STEP③:家庭裁判所への提出」は、窓口への持参か郵送かを選択できます。遠方の場合や平日に時間が取れない場合は郵送が便利です。郵送する際は、書類の紛失リスクを避けるため簡易書留やレターパックの使用を強くおすすめします。なお、現時点では相続放棄手続きのオンライン申請には対応していません。


「STEP④:照会書への回答と受理通知書の受取」です。書類提出からおよそ1〜2週間後に裁判所から「照会書(質問票)」が郵送されてきます。「相続放棄の意思は本当にあるか」「いつ相続を知ったか」などが確認される内容です。回答書を返送して審査が通れば「相続放棄申述受理通知書」が届きます。書類提出から受理まで、通常1〜2ヶ月が目安です。



  • 📋 STEP①:相続財産の調査(プラス・マイナス両方の確認)

  • 📄 STEP②:申述書と必要書類の収集・作成

  • 🏛️ STEP③:家庭裁判所へ提出(窓口または郵送)

  • 📬 STEP④:照会書に回答し、受理通知書を受け取る


相続放棄の期限3ヶ月の正確な起算点と期間伸長の申立て方法

相続放棄には「3ヶ月以内」という期限があります。ただしこの3ヶ月は、被相続人が死亡した日からではありません。


正確には「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月です。つまり「自分が相続人であると認識した日」が起算点になります(民法第915条)。これが原則です。


たとえば、被相続人が亡くなってから半年後に「実はあなたも相続人だった」と知らされた場合、その知らされた日から3ヶ月以内であれば相続放棄は可能です。また、先順位の相続人全員が相続放棄したことで自分が相続人になった場合も、その事実を知った日から3ヶ月が起算されます。


では、3ヶ月以内に決断できない状況にある場合はどうなるでしょう?


そのようなケースでは「相続の承認または放棄の期間の伸長の申立て」を利用できます。この申立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。財産調査に時間がかかる、被相続人の借金の全貌がわからないなどの理由があれば認められる可能性があります。延長が認められる期間は一般的に1〜3ヶ月程度です。


ただし申立ては必ず熟慮期間(3ヶ月)が終わる前に行わなければなりません。3ヶ月が経過してからでは申立て自体が受理されない場合があります。期限に注意すれば大丈夫です。


なお、「仕事が忙しくて手続きできなかった」といった理由は認められません。財産の内容が把握できないなど、客観的に判断できる具体的な事情が必要です。


相続放棄が無効になる「単純承認」の落とし穴:知らずにやりがちな行動

相続放棄を考えていても、ある行動をとるだけで放棄できる権利を失います。これが「法定単純承認」です。


民法第921条では、相続人が以下の行為を行った場合に単純承認とみなすと定めています。



  • 💸 相続財産の全部または一部を処分した場合

  • ⌛ 熟慮期間(3ヶ月)内に相続放棄・限定承認をしなかった場合

  • 🙈 相続財産の全部または一部を隠蔽した場合


「財産の処分」と聞いてもピンとこないかもしれません。厳しいところですね。


たとえば、被相続人の口座から葬儀費用以外の目的でお金を引き出してしまうのは「相続財産の処分」とみなされるリスクがあります。また、被相続人のクレジットカードの引き落としを立て替えてしまうケース、遺品整理のつもりで動産(家具や車など)を売却してしまうケースも、単純承認と判断される可能性があります。


単純承認が成立した後に相続放棄の申述をしても、原則として受理されません。つまり、すべての借金や負債をそのまま引き継ぐことになります。やり直しはできません。


一方で「単純承認にならない行為」もあります。被相続人の葬儀費用を相続財産から支出することは、社会通念上の必要行為として判例上も認められているケースが多いです。遺体を病院から引き取るための費用、お墓の手配なども基本的には問題ありません。


相続放棄を検討しているなら、被相続人の財産には手をつけないのが基本です。万が一、すでに財産に手をつけてしまった場合は、相続問題に詳しい弁護士に早急に相談することをおすすめします。


デイライト法律事務所:相続放棄ができない場合とは?事例と対処法を弁護士が解説


相続放棄を弁護士・司法書士に依頼する場合の費用と判断基準

相続放棄の手続きは自分でも行えますが、状況によっては専門家への依頼を検討すべきケースがあります。判断基準を整理しておきましょう。


依頼先として選べるのは弁護士と司法書士です。どちらも相続放棄の申述代行が可能ですが、役割に違いがあります。


































状況 おすすめの専門家 費用目安
申述書の作成・提出だけ頼みたい 司法書士 3〜6万円
財産調査・借金の調査も必要 弁護士 5〜10万円
3ヶ月の期限がすでに過ぎている 弁護士(必須) 別途相談
相続人間のトラブルがある 弁護士 別途相談
家族関係が複雑(再婚・養子など) 弁護士または司法書士 3〜10万円


費用対効果で考えると、引き継ぐ可能性のある借金が数十万円以上あるなら、専門家への依頼費用(3〜10万円)は十分にペイできます。手続きの失敗リスクも考慮すると、金額は小さくありません。


専門家に依頼した場合でも、照会書(裁判所からの質問票)への回答は申述人本人が行う必要があります。本人の意思確認として裁判所が直接確認するものなので、代理人が代わりに回答することはできません。


費用を抑えたい方には、まず法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談を活用するという選択肢もあります。収入・資産が一定基準以下の方であれば、弁護士費用の立替制度の利用も可能です。法テラスの電話番号は0570-078374です。


相続放棄の判断は一度きりです。熟慮した上で動いてください。撤回はできません。


辻・本郷 税理士法人:相続放棄の期間は3ヶ月!期限を過ぎた時の対処法や期間伸長の申立まで解説




Q&A 単純承認・限定承認・相続放棄の法律実務~判断ポイントと事例・書式