タワーマンション節税改正で相続税評価額はどう変わるか

タワーマンション節税改正で相続税評価額はどう変わるか

タワーマンション節税改正で変わる相続税評価額と対策の全貌

改正後のタワーマンション購入でも、都心の物件なら相続税評価額が時価の3割台になるケースがある。


この記事の3つのポイント
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2024年改正の核心

2024年1月1日以降の相続・贈与から、マンションの相続税評価額は「時価の60%以上」になるよう補正される新ルールが適用。乖離率1.67倍超の物件は大幅に評価額が引き上げられる。

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節税効果は「二極化」している

都心のタワマン高層階は改正後も乖離率が2〜3倍以上残るケースがある一方、地方の物件や築古マンションは逆に「増税」になるリスクがある。物件選びが以前にも増して重要に。

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総則6項リスクと追徴課税

改正前・改正後を問わず、直前購入や行き過ぎた節税は「総則6項」で否認される可能性がある。2022年の最高裁判決では約3億円の追徴課税が確定した事例もあり、専門家への相談が必須。


タワーマンション節税の仕組みと改正前の相続税評価額の計算

タワーマンション節税とは、タワマンを購入することで相続税評価額を時価よりも大幅に低く抑え、相続税の負担を軽減する手法です。そもそも不動産全般において、相続税評価額は時価よりも割安に算出されます。土地部分は国税庁が公表する路線価(時価の約80%水準)、建物部分は固定資産税評価額(時価の50〜70%程度)をベースに計算されるためです。


タワマンが特に節税効果の高い資産とされてきたのには、2つの構造的な理由があります。1つ目は、1棟のマンションに数百戸が入居しているため、1戸あたりの敷地権割合が極めて小さくなる点です。たとえば敷地全体の評価額が10億円でも、300戸で按分すれば1戸あたりの土地評価は約333万円に過ぎません。2つ目は、相続税評価では「何階の部屋か」という眺望・希少性が一切考慮されない点です。5,000万円の1階と2億円の40階でも、床面積が同じなら相続税評価額はほぼ同額になります。


この構造の結果、改正前(2023年以前)の平均的なマンションの相続税評価額は時価の約42.7%、20階以上のタワマンに限ると乖離率が平均3.16倍にのぼり、相続税評価額が時価の3割前後になるケースも珍しくありませんでした。つまり、市場価格2億円のタワマンの相続税評価額が6,000万円程度になっていたわけです。これが「タワマン節税」と呼ばれる手法の根幹でした。


小規模宅地等の特例も節税効果を高める要因です。亡くなった人が住んでいた自宅の土地は、配偶者や同居親族が相続する場合、330㎡まで評価額が80%減額されます。タワマンは敷地権割合が小さいため、特例の上限330㎡に収まりやすく、特例を最大限に使いやすいという特徴があります。


国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」(乖離率の統計データ)


タワーマンション節税改正の内容と2024年からの新評価計算方法

2024年1月1日以降に相続または贈与で取得したマンションに適用される新しいルールでは、「評価乖離率」と「評価水準」という2つの指標を使って補正が行われます。これが改正のポイントです。


評価乖離率は以下の計算式で求めます。


  • ①築年数 × ▲0.033
  • ②総階数 ÷ 33 × 0.239(÷33が1.0超の場合は1.0で計算)
  • ③所在する階 × 0.018
  • ④敷地持分狭小度(敷地利用権の面積 ÷ 専有面積)× ▲1.195
  • ⑤上記①〜④の合計 + 3.220 = 評価乖離率


評価水準は「1 ÷ 評価乖離率」で求められます。この評価水準が0.6未満の場合(乖離率が1.67超の場合)、相続税評価額は時価の60%相当になるよう引き上げられます。つまり、補正後の相続税評価額は「従来の評価額 × 評価乖離率 × 0.6」です。


具体的な数字でイメージしてみましょう。時価2億円・現行評価額6,000万円の35階建てタワマン32階の部屋(築5年)の場合、計算を行うと評価乖離率は約2.28倍となり、補正後の評価額は約8,200万円になります。改正前の6,000万円から約2,200万円の引き上げです。ただし、それでも時価の約41%に収まっており、現金で保有するよりは依然として低い評価額です。


注意が必要なのは、評価水準が0.6以上1以下(乖離率が1〜1.67倍)の場合は補正なしで従来通りの評価額が適用される点です。一方、評価水準が1超(乖離率が1未満)の物件は評価額が「引き下げられる」ことになります。つまり改正後は、一部の物件では相続税評価額が逆に下がるケースもあるのです。これは意外なポイントです。


さらに重要なのは、この新ルールが取得年数とは無関係に適用される点です。20年前に購入したマンションであっても、相続が2024年1月1日以降に発生すれば新ルールが適用されます。改正「前」に購入済みだから安心、という思い込みは危険です。


国税庁「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」(新計算ルールの公式通達)


タワーマンション節税は「完全終了」ではなく節税効果が二極化している現実

「タワマン節税は2024年に終わった」というのは、半分正しく半分誤りです。結論は二極化です。


都心の超高層タワマン高層階に限っていえば、改正後も依然として相当の節税効果が残っています。たとえば港区・渋谷区・中央区などの一等地にある50階建て以上のタワマンの高層階では、時価と相続税評価額の乖離率が2〜3倍、物件によっては5倍超に達するケースも報告されています。新ルール適用後でも「時価の60%」まで圧縮されるだけであり、現金(時価100%)や有価証券と比べれば依然として割安な評価です。


一方で、地方都市や郊外のマンションでは逆の問題が起きています。元々の相続税評価額が時価とほぼ同水準だった物件に新ルールを適用すると、「評価水準が1超」と判定されるケースが出てきます。この場合、評価額が引き上げられて「増税」になるのです。


自宅用マンションを持っている一般的な家庭でも影響があります。たとえば、妻・子ども2人(法定相続人3名)で基礎控除4,800万円の家庭が、預金2,000万円と時価8,500万円・従来評価額2,500万円の自宅マンションを保有している場合を見てみましょう。改正前は遺産総額4,500万円で非課税でしたが、改正後はマンション評価額が5,100万円(時価8,500万×60%)に引き上げられ、遺産総額7,100万円となり約237万円の相続税が発生します。この場合、「申告しなくていいや」と放置すると、小規模宅地等の特例や配偶者控除が使えず、237万円を丸ごと納税することになります。痛いですね。


節税効果の残る物件を見分ける鍵は、①立地(都心の一等地か)、②総階数(20階以上か)、③所在階(高ければ高いほど乖離率が大きくなる)、④敷地持分狭小度(住戸数が多いほど有利)の4要素です。これらが組み合わさると、改正後でも相当な節税ポテンシャルを持つ物件は存在します。


freee「タワマン節税とは?3つの仕組みと2024年改正の内容を解説」(節税の仕組みと改正後の具体的解説)


タワーマンション節税における総則6項リスクと追徴課税の実例

改正前の問題として最も注目されたのが、「財産評価基本通達総則6項」による評価の否認です。これは俗に「伝家の宝刀」と呼ばれ、通達による評価額が「著しく不適当」と判断された場合に、国税庁長官が独自に評価額を修正できる規定です。


2022年4月19日の最高裁判決がこの問題を世に知らしめました。被相続人が計10億円の借入を行い、2棟のマンションを計13億円で購入。相続人は財産評価基本通達に基づき評価額3億3,000万円と申告し、借入金との相殺で相続税を0円としました。しかし国税庁はこれを「著しく不適当」として総則6項を発動。不動産鑑定評価で12億7,000万円と再評価し、約3億円の追徴課税が確定しました。3億円という数字は、新築マンション数戸分に相当する金額です。


総則6項が発動されやすいパターンがあります。


  • 相続の直前(数ヶ月以内)に多額の借入でタワマンを購入した場合
  • 節税目的が露骨で、投資収益を目的とした合理的な理由がない場合
  • 時価と評価額の乖離が極めて大きい(5倍超など)場合


改正後の2024年以降は、新しい計算ルールによって評価水準が60%を下回る物件は自動的に補正されます。ただし、改正後であっても「補正後の評価額で申告した場合でも、取引状況や節税意図によっては総則6項が適用されるリスクがゼロになったわけではない」という点は覚えておく必要があります。改正はあくまで「計算方法の標準化」であり、悪意ある節税スキームを排除するための総則6項はまだ生きています。


こうしたリスクを正確に把握するには、国税庁が発表している実際の否認事例を確認するのが有効です。


チェスター税理士法人「タワマン節税とは?相続税を節税できる仕組みや改正後の評価方法」(総則6項と最高裁判決の詳細解説)


タワーマンション節税改正後の代替策と相続対策の組み合わせ方

タワマン節税の効果が縮小した今、相続対策は「単一の手法への依存」から「複数の手法の組み合わせ」へシフトする必要があります。これが基本です。


まず見直したいのが生命保険の活用です。死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」分の非課税枠があります。たとえば法定相続人が3人いれば1,500万円分が非課税になります。この枠はタワマン節税の影響を受けず、2024年改正でも変更なく使えます。現金を保険料に変換するだけで、かなりの節税になります。


生前贈与も引き続き有効な手段ですが、2023年度税制改正により暦年贈与の相続前加算期間が3年から7年に延長されました(2024年1月以降の贈与から段階的に適用)。これは贈与した財産が相続財産に戻る期間が長くなることを意味します。焦って大量の暦年贈与をするよりも、相続時精算課税制度(2,500万円まで非課税・年110万円の基礎控除も付与)や、教育資金・結婚子育て資金の一括贈与の非課税特例を組み合わせる戦略が有効です。


一棟賃貸マンションやアパートの活用については注意が必要です。2027年1月以降に相続が発生する場合、「取得から5年以内」の一棟物件は時価に近い評価額で計算されることになります。つまり、焦って直前購入するスキームは通用しなくなります。長期保有が前提の投資として検討すべきです。


不動産活用においては、タワマン節税の縮小後も「賃貸用物件の建物評価30%引き・土地評価15〜20%引き」や「小規模宅地等の特例(貸付事業用で土地評価50%引き)」は依然として有効です。ただし、「投資用物件の方が自宅より節税になる」という不動産業者の営業トークを鵜呑みにするのは禁物です。自宅の土地には小規模宅地等の特例で最大80%引きが使える一方、投資用は50%引きに留まります。最終的な税負担は総合的に計算しないと判断できません。


こうした複数の手法を組み合わせた相続対策プランは、税理士との連携なしに自力で最適化するのは困難です。少なくとも年1回は「相続税シミュレーション」を専門家に依頼し、自身の資産状況に合った最新の対策を把握することが、長期的な節税につながります。