小規模宅地等の特例要件を正しく理解して相続税を節税する方法

小規模宅地等の特例要件を正しく理解して相続税を節税する方法

小規模宅地等の特例の要件と節税効果を徹底解説

申告期限まで土地を売らずに持ち続けても、特例を「申告し忘れる」と相続税が数百万円以上そのまま消えます。


この記事でわかる3つのポイント
🏠
最大80%の評価額減額が可能

特定居住用宅地等なら330㎡まで評価額が8割引に。1億円の土地が評価額2,000万円になるケースもあります。

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宅地の種類によって要件が異なる

居住用・事業用・貸付事業用の3種4類型で、それぞれ限度面積・減額率・要件がすべて違います。

⚠️
「知らないと損」な落とし穴が多い

家なき子・老人ホーム・相続時精算課税など、意外な場面で特例が使えなくなるケースが続出しています。


小規模宅地等の特例とは何か?基本要件と仕組みを理解する


小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった方)や、被相続人と生計を一にしていた親族が居住・事業・貸付に使っていた土地を相続する際に、相続税の評価額を大幅に下げられる制度です。これは租税特別措置法第69条の4に定められた制度で、国税庁が正式に認めた節税手段です。


最大の特長は「最大80%の評価額減額」という点です。たとえば評価額1億円の自宅敷地(330㎡以内)を配偶者または同居親族が相続する場合、評価額が2,000万円まで一気に下がります。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を考慮すると、相続税ゼロになるケースも少なくありません。


つまり、特例を「使う・使わない」の差で相続税が数百万円から1,000万円以上変わることがあるということです。


特例の対象となる宅地等には大きく4種類あります。


| 種類 | 限度面積 | 減額割合 |
|------|---------|---------|
| ①特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| ②特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| ③特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| ④貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |


「どの種類に当たるか」によって、条件も減額率もまったく異なります。これが基本です。


なお、この特例の適用を受けるためには、たとえ相続税がゼロになる場合でも必ず相続税の申告書を税務署に提出しなければなりません。申告が必要です。申告しなければ特例は自動的には適用されず、多額の相続税が課される危険があります。


参考:国税庁タックスアンサー「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm


特定居住用宅地等の要件:同居・配偶者・家なき子それぞれの条件

最もよく使われるのが「特定居住用宅地等(自宅の土地)」です。330㎡(約100坪)まで、評価額を80%減額できます。ただし、誰が相続するかによって要件がまったく違います。これが条件です。


まず、被相続人の配偶者が相続する場合は、特段の要件はありません。同居・別居に関わらず、無条件で特例を適用できます。相続後に土地を売却しても問題ありません。


次に、被相続人と同居していた親族が相続する場合は2つの要件があります。①相続開始の直前(亡くなる直前)からその家屋に住んでいること、②相続税の申告期限(死亡を知った翌日から10か月以内)まで引き続き居住し、かつその土地を所有し続けることです。申告期限前に売却・転居すると特例が使えなくなります。厳しいところですね。


そして最も条件が複雑なのが「家なき子特例」です。これは、被相続人に配偶者も同居親族もいない場合に限り、別居していた親族でも80%減額を受けられるという特例です。


家なき子特例の要件は以下の通りです。


- 🏠 被相続人に配偶者・同居の法定相続人がいないこと
- 📅 相続開始前3年以内に、「本人・本人の配偶者・3親等内の親族・特別関係のある法人」が所有する家屋に住んでいないこと
- 🔑 相続開始時に居住している家屋を、過去に一度も所有したことがないこと
- 📝 申告期限まで取得した土地を保有し続けること


ここで多くの人が誤解するのが「賃貸マンションに住んでいれば家なき子になれる」という点です。しかし、3親等内の親族が所有する家屋に住んでいても要件を満たせません。たとえば、親所有の家に住んでいる子が「家なき子」として申請しようとしても、2018年(平成30年)の法改正以降は認められないのです。意外ですね。


この改正前は「自分の家を先に子や孫に贈与して意図的に家なき子を作る」節税スキームが横行していたため、要件が大幅に厳格化された経緯があります。


参考:家なき子特例の要件と改正詳細(相続税専門税理士法人チェスター)
https://chester-tax.com/contents/estate/step3-1-1.html


事業用・貸付事業用宅地等の要件:承継・継続・3年縛りに注意

被相続人が個人事業主だった場合や、アパート・駐車場などを経営していた場合は、それぞれ「特定事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」が適用対象になります。


特定事業用宅地等(400㎡まで80%減額)では、次の2つが要件です。①相続税申告期限までに被相続人の事業を引き継ぎ、かつ申告期限までその事業を継続して営んでいること(事業承継要件)、②その土地を申告期限まで保有し続けること(保有継続要件)です。


ここで重要なのが「相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された土地は対象外」という点です。たとえば、被相続人が亡くなる2年前に事業を始めたばかりの土地は、原則として特例を受けられません。ただし、既存の事業に係る建物や機械等の価額が土地価額の15%以上を占めるほど規模が大きい場合には例外が認められます。


貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減額)にも同様の「3年縛り」があります。相続開始前3年以内に新たに貸付事業に使い始めた土地は原則対象外です。アパートを建て始めて間もなく相続が発生した場合、この制限に引っかかる可能性があります。


また、よくある失敗例として「土地は被相続人の親名義で、アパート建物は子名義」というケースがあります。この場合、親が子に土地を無償で貸している(使用貸借)状態になります。無償貸付では貸付事業とはみなされず、特例が使えないことがあります。地代のやりとりをするかどうかが、特例適用の分岐点になる場合があるのです。これは使えそうです。


特定同族会社事業用宅地等(400㎡まで80%減額)については、相続税申告期限において「法人の役員(取締役・監査役等)であること」が要件に加わります。役員でなければ適用できません。


参考:貸付事業用宅地の3年縛りと例外の詳細
https://tax.prime-partners.co.jp/貸付事業用宅地の3年縛りとは?相続税対策で知っておきたい例外/


老人ホーム入所中の被相続人でも特例は使える?見落とされがちな要件

「親が老人ホームに入所して、自宅が空き家になっている状態で亡くなった場合は特例を使えないのでは?」と思っている方は多いです。実は、一定の要件を満たせば特例の適用が可能です。


老人ホーム等への入所があった場合でも特例が使えるのは、次の条件を満たす場合に限られます。


まず①被相続人が要介護認定または要支援認定(介護保険法第19条に基づく認定)を受けていたこと、または障害支援区分の認定を受けていたことが前提です。単に「本人が老人ホームに住みたかった」という理由だけでは認められません。認定が条件です。


次に②入所した施設が法律で定める「一定の施設」であることが必要です。対象は、老人福祉法に基づく特別養護老人ホーム・軽費老人ホーム・有料老人ホーム、介護保険法に基づく介護老人保健施設・介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅(特定施設入居者生活介護の指定を受けているもの)などです。


そして③被相続人が老人ホームに入所した後、もともとの自宅が「事業用」や「別の人の居住用」として使われていないことが必要です。入所後に自宅を他人に賃貸してしまうと、特例が使えなくなります。


加えて、老人ホーム入所のケースでは申告書に追加の添付書類が必要です。具体的には「被相続人が要介護認定を受けていたことを示す介護保険の被保険者証の写し」「施設との入所契約書の写し」「被相続人の戸籍の附票」などが求められます。書類の準備が遅れて申告期限に間に合わないリスクがあるため、早めに動くことが重要です。


参考:老人ホーム入居と小規模宅地等の特例(VS税理士法人)
https://vs-group.jp/sozokuzei/inhe-h26amendment/


小規模宅地等の特例の申告手続きと、相続時精算課税との組み合わせ禁止ルール

特例の適用を受けるには、相続税の申告書と一緒に必要書類をそろえて税務署に提出します。申告期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内」です。仮に相続税の額がゼロになるとしても、この申告は必須です。「申告不要」と思い込んで手続きをしないと、後から修正申告更正の請求)で特例を追加適用することは原則認められないという非常に厳しいルールがあります。


全ケース共通で必要な主な書類は以下の通りです。


- 📄 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(または法定相続情報一覧図)
- 📄 遺言書の写し、または遺産分割協議書の写し
- 📄 相続人全員の印鑑証明書
- 📄 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書(税務署所定の書式)


家なき子特例の場合は、これに加えて「相続開始前3年以内の住所がわかる書類(住民票・戸籍の附票)」「自分や配偶者・3親等内親族が所有する家屋に住んでいないことを証明する書類(賃貸借契約書など)」「過去に居住家屋を所有したことがないことを証明する書類(登記簿謄本)」も必要です。書類の量が多いと感じるかもしれませんが、一つでも欠けると特例が否認されるリスクがあります。


もう一つ知っておくべき重要な制限があります。それは相続時精算課税制度で贈与を受けた土地には、小規模宅地等の特例を適用できないという点です。相続時精算課税制度は「60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与」で2,500万円まで贈与税を非課税にできる制度ですが、その贈与を受けた土地はその後相続が発生しても特例の対象外となります。組み合わせ不可が原則です。


たとえば、親が生前に「相続時精算課税で自宅の土地を子に贈与」した場合、相続税の申告時に自宅土地の評価額が80%減額されることを期待していたとしても、その期待は裏切られます。「相続時精算課税でもらった土地は特例対象外」という事実を知らずに手続きを進めてしまうと、節税効果がゼロになりかねません。


また、遺産分割がまだ確定していない未分割の土地については、原則として申告期限内に分割が完了していないと特例を適用できません。ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書と一緒に提出しておけば、申告期限から3年以内に分割が完了した時点で特例の適用を申告し直すことができます。期限内に書類を出しておくことが条件です。


参考:小規模宅地等の特例に関するQ&A(相続税専門のバリューソリューションズ)
https://vs-group.jp/sozokuzei/shoukibo-qa/


【金融リテラシーで差がつく】複数宅地の組み合わせ計算と特例の選択戦略

複数種類の宅地を同時に相続した場合、それぞれに特例を使えますが、限度面積の「調整計算」が必要になります。これは検索上位の記事ではあまり深掘りされない、実務的なポイントです。


貸付事業用宅地等が含まれない場合(特定居住用+特定事業用の組み合わせ)は、それぞれの限度面積を独立して使えます。特定居住用330㎡+特定事業用400㎡で合計730㎡まで適用可能です。


一方、貸付事業用宅地等が含まれる場合は、以下の調整計算式が適用されます。


$$\text{特定事業用面積} \times \frac{200}{400} + \text{特定居住用面積} \times \frac{200}{330} + \text{貸付事業用面積} \leq 200㎡$$


つまり、貸付事業用宅地が絡む場合は他の宅地の「使える枠」が大幅に圧縮されます。200㎡という制限の中に、他の宅地の面積が換算値として合算されるためです。


この計算が重要になるのは、たとえば「自宅(特定居住用)と賃貸アパートの土地(貸付事業用)を両方相続する」ケースです。単純に「どちらの土地にも特例を使おう」と考えていると、限度面積の超過で想定通りの節税ができない可能性があります。


このような複数宅地の組み合わせ計算では、「どの宅地に特例を優先適用するか」という選択が節税額に直接影響します。一般的には評価額の高い宅地から優先的に特例を充てるのが基本ですが、減額割合の違い(80%と50%)や宅地ごとの面積も考慮した最適化が必要です。


こうした計算は、相続税専門の税理士に依頼することで大きなミスを防げます。「税理士費用がかかるから自分でやる」という判断が、結果として数百万円の節税機会損失につながる場合があります。相続税に強い税理士への早期相談が条件です。


相続税専門の税理士を探す際は、「相続税申告件数の実績」「小規模宅地等の特例の適用経験が豊富かどうか」を確認ポイントにすることをおすすめします。国税庁のウェブサイトで公開されている税理士情報や、日本税理士会連合会の検索機能を活用するのが第一歩です。


参考:小規模宅地等の特例の計算・選択方法(相続専門プロ)
https://souzoku-pro.info/columns/souzokuzei/274/




フローチャートで分かりやすい 小規模宅地等の評価減の実務(第5版)