
賃貸借契約書は不動産取引で締結する正式な契約書で、金融業従事者にとっても基本知識として重要。同書には貸主・借主双方の署名捺印が必要で、契約の成立要件や契約期間、賃料、更新料支払い義務、解約規定、禁止事項、保証人、特約事項などが詳述されている。法的根拠は宅地建物取引業法第37条(いわゆる「37条書面」)にあり、契約しないと成約自体が無効になる厳格な書面。借主・貸主の権利と義務が記載され、借主を保護する観点でも慎重なチェックが不可欠。
重要事項説明書は、契約成立前に宅地建物取引士が借主に対して説明すべき要点をまとめた書面。対象物件のルールや設備、権利関係、法令制限、石綿調査や耐震性などについて詳細が明記されている。金融業従事者が関与する場合、リスクや契約の透明性、適法性を担保するためにも内容精査が求められる。賃貸借契約書へのサイン前に必ず説明を受け、疑問点は現場で確認することがリスク回避の第一歩。
契約時のトラブルの多くは設備や特約事項に起因。たとえば重要事項説明書に未記載の設備は自己負担になる恐れがある。特約事項には退去時クリーニング費用・原状回復、敷金精算方法、事故物件や嫌悪施設の存在も含まれることが多く、くまなくチェック。金融業従事者は、「定型約款としての特約」や、重要事項説明書への反映不備によるリスクも視野に入れて検証。
金融機関で不動産担保ローンや与信判断を行う際には、賃貸借契約書・重要事項説明書の記載が資産評価やリスク管理に直結。特に契約解除条件、賃料未払時の遅延損害金・解除条項など、貸方に有利な条項や貸借人保護条項、担保権者と契約上の権利関係は精査しておきたい。反社会的勢力排除条項の有無や、更新時の法定更新・合意更新の違いにも留意。
近年では、賃貸借契約も電子契約(電子署名・電子交付)対応が広がりつつある。電子契約では改ざんリスクや原本性、ID漏洩などの新たな課題があり、特に金融業従事者は「真正性担保」「証跡保存」「本人確認方法」など従来型契約と異なるリスクポイントを押さえる必要がある。電子交付の場合でも内容・法的効力・保存方法を契約前に徹底確認。
「不動産の契約や重要事項説明書、特約等に関する制度的背景や詳細なトラブル事例についてはこちらの用語解説が体系的。