

受取人を孫にするだけで、非課税枠がゼロになり相続税が丸ごとかかります。
生命保険の死亡保険金は、残された家族の生活を支えるためのお金です。そのため税法では、一定額まで相続税を免除する「非課税枠」が設けられています。
非課税限度額の計算式はシンプルです。
> 非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
たとえば法定相続人が配偶者・子供2人の計3人であれば、非課税限度額は1,500万円になります。東京都内のマンション1部屋の頭金に相当するほどの金額が、そのまま丸ごと非課税になるわけです。
ただし、この非課税枠を適用するためには、受け取る相続人全員の保険金合計が対象になります。たとえば配偶者が500万円・子が各250万円ずつ受け取る場合、合計1,000万円が非課税限度額1,500万円を下回るため、全額非課税です。
つまり、受取人=法定相続人であることが条件です。
仮に死亡保険金が非課税枠を超えた場合、超えた部分だけが他の相続財産と合算されて相続税の計算に加わります。全額に相続税がかかるわけではないため、この点も誤解しないようにしましょう。
死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税上は課税対象に含まれますが、現金や不動産と異なり遺産分割協議の対象にはなりません。これは大切なポイントです。受取人が直接保険会社から保険金を受け取れるため、他の相続人との協議を経ずに素早く現金を手にできます。葬儀費用や当面の生活費として活用しやすい点は、生命保険ならではのメリットといえます。
なお、この非課税枠のルールは国税庁が正式に定めているものです。
国税庁の公式ページ(相続税の課税対象になる死亡保険金)で制度の根拠法令(相法3・12・15)も確認できます。
非課税枠が使えないケースが複数存在します。これを知らないまま契約していると、大きな税負担が生じます。
① 受取人が孫(代襲相続人でない場合)
孫は原則として法定相続人ではありません。そのため孫を受取人にした場合、死亡保険金の全額に相続税がかかります。非課税枠がゼロという状態です。
さらに孫は「相続税の2割加算」の対象にもなります。通常の相続税額に20%上乗せされるため、ダブルのデメリットが発生します。仮に1,000万円の保険金に100万円の相続税がかかる計算だったとしても、孫が受け取ると120万円を納める必要が生じます。
② 受取人が相続放棄をした人
相続放棄した人は死亡保険金自体を受け取れますが、非課税枠の恩恵は受けられません。これは意外と知られていない落とし穴です。
一方で、非課税枠の計算に使う「法定相続人の数」には相続放棄した人もカウントされます。つまり、放棄した人がいても非課税枠の総額は変わりません。ただし放棄した本人が受け取る分には非課税枠が適用されない、という区別が重要です。
③ 受取人が内縁の配偶者・友人など
戸籍上の法定相続人でない人は、たとえ長年連れ添った内縁関係であっても非課税枠の対象外です。保険金全額が相続税の課税対象になります。
相続人以外が非課税になると思っている方は多いです。
生命保険文化センターの資料では、受取人が相続人である場合にのみ非課税金額が適用されることが明記されています。
生命保険文化センター「死亡保険金に相続税がかかる場合の具体例は?」
死亡保険金にかかる税金は、「誰が保険料を払い・誰が亡くなり・誰が受け取るか」という3者の組み合わせによって、相続税・所得税・贈与税の3種類に変わります。この点を把握していないと、想定外の税金を払うことになります。
| 契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | かかる税金 |
|---|---|---|---|
| 夫 | 夫 | 妻・子 | 相続税 |
| 夫 | 妻 | 夫 | 所得税(一時所得) |
| 夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
相続税がかかるのは「契約者=被保険者」のパターンです。たとえば「夫が自分自身に保険をかけ、妻または子が受け取る」場合がこれにあたります。
一方で「夫が妻に保険をかけて、自分(夫)が受け取る」場合は所得税が課されます。受け取った死亡保険金が一時所得として扱われるため、計算方法がまったく異なります。一時所得には50万円の特別控除があるため、保険金が払込保険料を大幅に上回らない限り、税負担は軽めです。
贈与税がかかるのは、契約者・被保険者・受取人がすべて異なるケースです。夫が保険料を払い、妻が被保険者で、子が受け取るというパターンがこれにあたります。贈与税は基礎控除が110万円しかなく、相続税の非課税枠よりもはるかに小さいため、税負担が最も重くなるリスクがあります。
組み合わせは相続税が条件です。
このように、保険の税金区分は契約内容次第で大きく変わります。加入前または受取人変更前に税理士へ確認する一手間が、数十万〜数百万円の節税につながるケースもあります。
国税庁「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」(税金の種類の区分)
多くの方が、生命保険の受取人を何となく配偶者に設定しています。しかし節税の観点から見ると、受取人を子供にした方が得をするケースがほとんどです。
理由は「配偶者の税額軽減制度」にあります。
配偶者が相続で受け取った財産のうち、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分」のどちらか大きい金額までは相続税がかかりません。これは法定相続人の誰に対しても適用される非課税枠とは別の、配偶者専用の大型控除制度です。
配偶者には1億6,000万円まで別枠があります。
つまり、配偶者は死亡保険金の非課税枠を使わなくても、もともと大きな控除を受けられる立場にいます。そのため生命保険の500万円×人数分の非課税枠を配偶者に充ててもメリットが薄れ、控除の恩恵が「重複」してしまうのです。
一方、子供は配偶者のような特別控除がありません。死亡保険金の非課税枠をフルに活用することで、初めて節税効果が最大化されます。
さらに、受取人を子供にすることで「二次相続対策」にもなります。配偶者が保険金を受け取ると、その財産は将来的に配偶者が亡くなった際の相続(二次相続)にも含まれます。一次相続の段階で子供に移転しておけば、二次相続での課税財産を圧縮できるのです。
相続税の試算や受取人の変更を検討したい場合は、相続専門の税理士や金融機関のFP(ファイナンシャルプランナー)に無料相談できるサービスを利用するのが手軽な一歩です。
税理士法人チェスター「死亡保険金の受取人は誰にする?相続税の節税方法を徹底解説」
相続税対策として特に活用されているのが「一時払い終身保険」です。まとまった現金を持っている方が、それを保険に替えることで非課税枠を活用しつつ、確実に資産を次世代へ渡す手段として機能します。
仕組みはシンプルです。
たとえば手元に1,500万円の現金がある場合、そのままでは相続財産として全額課税対象になります。これを一時払い終身保険の保険料として払い込むと、死亡時に受け取る保険金として法定相続人3人なら1,500万円まで丸ごと非課税になる可能性があります。
現金1,500万円 → 保険金1,500万円に変換するだけで、課税ゼロになるわけです。
ただし、この方法にはいくつかの注意点があります。
一点目は、早期解約リスクです。契約直後に解約すると、払込保険料よりも解約返還金が少なくなる場合があります。老後の現金ニーズも考慮した上で活用する必要があります。
二点目は、生命保険料控除は初年度1回のみという制約です。一時払いで払い込む場合、生命保険料控除の適用は支払った年の1回限りです。毎年控除が使える月払い型と比べて、所得税・住民税の節税効果は限定的です。
三点目は、健康状態による加入可否です。高齢になってから加入しようとすると、健康上の理由で審査が通らないケースもあります。相続対策は元気なうちに始めることが重要です。
具体的な試算では、法定相続人3人の場合、現金を1,500万円保険に替えることで最大数十万円単位の節税効果が生まれるシミュレーション結果もあります。利用前には必ず保険会社や税理士に詳細の確認をすることが欠かせません。
一時払い終身保険での節税は「早めの検討」が条件です。
税理士法人チェスター「生命保険で相続税対策、一時払い終身保険がおすすめ」
一般的に「相続税対策は資産家のもの」と思われがちです。しかし実は、貯蓄があまりなく自宅不動産もほとんどない家庭でも、生命保険の非課税枠は非常に大きな意味を持ちます。
財産が少ない家庭では、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えないことが多いため、そもそも相続税がかからないケースが大半です。しかしそのような家庭でも、生命保険は「現金を即座に遺族の手元に届ける道具」として機能します。
死亡後の相続財産は、遺産分割協議が完了するまで銀行口座が凍結されます。凍結中は光熱費・葬儀費用・ローンの返済といった出費が続く一方で、現金が引き出せない状況が発生します。これは資産の多い少ないに関係なく、全ての家庭に起きるリスクです。
死亡保険金は「遺産分割協議の対象外」の固有財産のため、協議の完了を待たずに受取人が直接受け取れます。相続開始後の現金不足を補う「緊急の生活費」として機能するわけです。
保険金は受取人の口座へ直接振り込まれます。
さらに相続税の計算上は、以下のステップで非課税部分を除外します。
1. 💰 法定相続人全員が受け取った死亡保険金の合計額を算出する
2. 🔢 非課税限度額(500万円×法定相続人数)を計算する
3. ➖ 合計保険金額から非課税限度額を差し引く
4. 📊 差し引いた残額を、他の相続財産と合算して相続税を計算する
たとえば配偶者と子供2人の計3人が法定相続人で、全員合計2,000万円の死亡保険金を受け取った場合を考えます。非課税限度額は500万円×3人=1,500万円。2,000万円-1,500万円=500万円のみが課税対象の保険金となります。この500万円だけが他の相続財産に加算されて計算される、という仕組みです。
正確な申告には「相続税申告書第9表(生命保険金などの明細書)」が必要になります。記入ミスを防ぐためにも、複数の保険契約がある場合は税理士への相談を強くおすすめします。
相続税の申告要否の目安は、国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」でも簡易チェックが可能です。