

「NPO法人だから税務調査は来ない」は思い込みで、収益事業があれば普通法人と同じ税率で追徴課税されます。
NPO法人に関わる税金は、思いのほか多岐にわたります。「非営利だから税金とは無縁」という印象を持ちがちですが、それは大きな誤解です。
主な税目を整理すると、法人税、法人住民税(道府県民税・市町村民税)、法人事業税・地方法人特別税、消費税、源泉所得税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税などが挙げられます。このうち法人税・法人事業税は、収益事業を行っているNPO法人のみが課税対象となりますが、法人住民税の均等割については、収益事業の有無にかかわらず原則として課税されます。
均等割の金額は、都道府県民税と市町村民税を合わせて年間7〜9万円程度です。これは法人が「存在しているだけ」でかかるコストとも言えます。ただし、多くの自治体では、収益事業を行わないNPO法人に対して均等割の減免制度を設けています。減免を受けるには申請手続きが必要なため、設立後すみやかに所轄の自治体窓口に確認するのが重要です。
また、固定資産税や不動産取得税は、NPO法人が土地・建物を保有・取得した場合には課税されます。登記の有無は関係なく、受贈や自己建設による取得も課税対象になります。この点はNPO法人特有の注意事項として覚えておきましょう。
法人税の適用税率は収益事業から生じた所得に対して適用され、NPO法人の場合は年間所得800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が23.2%と、普通法人と同じ税率です。「非営利法人だから税率が低い」とは言えません。
国税庁|特定非営利活動促進法により設立されたNPO法人の法人税法上の取扱い(収益事業課税の基本的な考え方が確認できます)
NPO法人が法人税の対象になるかどうかを判断する上で、もっとも重要な概念が「収益事業」の判定です。収益事業が原則です。
法人税法施行令第5条では、収益事業として課税対象になる業種が34種類、明確にリストアップされています。主なものを挙げると、物品販売業・不動産貸付業・請負業・出版業・飲食店業・医療保健業・一定の技芸教授業・駐車場業・人材派遣業などです。NPO法人であっても、これらに該当する活動を継続して事業場を設けて行っていれば、収益事業として課税対象となります。
特に見落としやすいのが「技芸・学力教授業」です。音楽・絵画・書道・料理・茶道・生花・演劇・舞踊・デザイン・自動車操縦など23種類の技芸教授が対象に含まれます。地域の市民教室や文化講座を運営しているNPO法人は、自分たちの活動がここに該当していないかどうかを確認する必要があります。
収益事業として課税される条件は3つそろったときです。①34業種に該当する、②事業場を設けて行う、③継続して行う、の3点がそろって初めて収益事業と判断されます。一回限りのイベント販売や単発の講座などは、継続性がないと判断されれば課税対象にならない場合があります。
一方で、従業員の過半数が障害者や高齢者であり、福祉や生活支援に直結する活動と認められる場合は、34業種に該当していても収益事業から除外されるケースがあります。判断が難しいケースは税務署や税理士への事前確認が必要です。
収益事業を新たに開始する場合は、「収益事業開始の届出書」を所轄の税務署に提出しなければなりません。提出期限は、収益事業を開始した日から3か月を経過した日と事業年度終了の日のいずれか早い日の前日です。届出と同時に「青色申告の承認申請書」も提出しておくのがベストです。
freee|NPO法人は税金免除?法人税の非課税と課税の対象とは(34業種の一覧表と技芸教授業の詳細が確認できます)
| 判定要素 | 内容 |
|----------|------|
| 業種の該当性 | 法人税法施行令の34業種に含まれるか |
| 継続性 | 定期的・反復的に行われているか |
| 事業場 | 固定・移動問わず事業拠点があるか |
| 除外規定 | 障害者雇用等の特例に当たらないか |
消費税に関してもNPO法人特有のルールがあります。これは意外ですね。
まず基本として、NPO法人も消費税の課税事業者になり得ます。前々年度(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の申告・納付義務が発生します。課税売上が1,000万円超5,000万円未満の場合は簡易課税方式を選択できます。
ここで特にNPO法人が注意すべきなのが「特定収入」に関するルールです。補助金、助成金、寄付金、会費といった収入は、消費税が課されない「不課税収入(特定収入)」です。問題は、これらの特定収入で課税仕入れを行った場合の消費税処理にあります。
通常の事業者は、仕入れにかかった消費税を全額控除(仕入税額控除)できます。しかしNPO法人のように補助金などで仕入れを行った場合、その仕入れの財源には消費税が課されていないため、仕入税額控除をそのまま適用すると不公平な結果になります。
そのため、特定収入割合(=特定収入÷課税売上高等の合計)が5%を超える場合は、特定収入に対応する課税仕入れの仕入税額控除が制限されます。補助金依存度が高いNPO法人ほど、この計算が複雑になります。なお、簡易課税制度を適用している場合にはこの特例の適用はありません。
また、消費税の課税対象かどうかは、収入の名目だけでは判断できません。「賛助会費」という名目でも、モノやサービスの提供を伴う場合は課税売上と判断されます。例えば、賛助会員に試合の招待券を渡す場合は対価性があるとして課税売上に含まれます。一方、会報誌を定期送付するだけであれば課税対象外です。金額の線引きより「対価性があるかどうか」が判定の核心です。
国税庁|国、地方公共団体や公共・公益法人等と消費税(特定収入と仕入税額控除の制限について詳細が確認できます)
NPO法人の税務には、知っていれば大きくメリットを得られる制度もあります。これは使えそうです。
認定NPO法人制度と税制優遇
一定の基準を満たしたNPO法人は「認定NPO法人」として国税庁(または都道府県)から認定を受けられます。認定の主な基準として、実績判定期間中に3,000円以上の寄付者が年平均100人以上いることが求められます。
認定NPO法人を支援する個人・法人には、大きな税制優遇が適用されます。個人が寄付した場合、寄付金額から2,000円を差し引いた額の40%が所得税額から控除されます。さらに、神奈川県・川崎市のような地方税の税額控除も加わると、国税・地方税合わせて最大50%相当が税額から控除されます。
例えば、10万円を認定NPO法人に寄付した場合、(100,000円−2,000円)×40%=39,200円が所得税から直接控除されます。これは一般の寄付金控除(所得控除)と比べても大きな節税効果です。
認定NPO法人自身にも「みなし寄附金制度」があります。収益事業から非収益事業に資金を移した場合、その金額を寄附金とみなして損金算入できます。損金算入の上限は、所得金額の50%または200万円のいずれか多い額です。
NPO法人の領収書に収入印紙は不要
これは多くの人が知らない盲点です。NPO法人が発行する領収書(受取書)は、金額がいくらであっても印紙税が非課税です。印紙税法において、「営業に関しない受取書」は非課税と定められており、NPO法人の行為はすべて「営業」に該当しないと判断されるためです。
通常の企業であれば5万円以上の領収書には収入印紙の貼付が必要ですが、NPO法人の領収書には一切不要です。100万円、1,000万円の領収書であっても印紙は0円です。ただし、請負契約に基づく契約書などには印紙税が課税されるケースがあるため、「領収書のみ非課税」という点を正確に理解しておく必要があります。
国税庁|NPO法人が作成する受取書(受取書が印紙税非課税となる根拠が確認できます)
内閣府NPOホームページ|認定NPO法人自身に対する税の優遇措置(みなし寄附金制度の計算例が確認できます)
税務実務の中でも、源泉徴収と各種申告手続きはNPO法人の担当者が特に迷いやすいポイントです。
源泉徴収義務とその特例
NPO法人が職員に給与を支払う場合、または顧問税理士や講師に報酬を支払う場合、所得税の源泉徴収が必要です。源泉徴収は必須です。
原則として、徴収した源泉所得税は翌月10日までに納付しなければなりません。ただし、給与の支給人員が常時10人未満の場合は、「納期の特例」として半年分をまとめて納付できます。具体的には、1〜6月分を7月10日までに、7〜12月分を翌年1月20日までに納付する方式です。
この特例を受けるには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄の税務署に提出し、承認を受ける必要があります。多くの小規模NPO法人が対象となりますが、申請を忘れると毎月納付が義務となるため注意しましょう。
なお、講演料として税引手取額で100,000円を支払いたい場合、復興特別所得税も含めた合計税率10.21%を考慮した支払金額の計算が必要です。100,000円÷(1−0.1021)≒111,370円が支払金額となります。日頃の給与計算や報酬支払の際にはこの計算を押さえておきましょう。
青色申告と帳簿保存のメリット
収益事業を行うNPO法人は、青色申告を選択することができます。青色申告のメリットは大きく、欠損金の9年間繰越控除、各種税額控除の適用、少額減価償却資産の損金算入(上限300万円)などが受けられます。白色申告では受けられない恩恵です。
青色申告の適用を受けるには、収益事業開始日から3か月を経過した日と事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに、「青色申告の承認申請書」を提出する必要があります。翌事業年度開始後の提出では当期は白色申告になってしまいます。タイミングに注意が必要です。
帳簿や請求書・領収書等は確定申告期限の翌月から原則7年間(欠損金の繰越控除を適用する場合は9年間)の保存が義務です。インボイス制度(適格請求書等保存方式)にも対応した電子データ管理を整備しておくと、税務調査の際にも安心です。
NPO法人の収益事業と非収益事業の経理は明確に区分することが重要です。区分が不明瞭な場合、収益事業の所得計算の段階でトラブルが生じやすく、税務調査でも指摘を受けやすくなります。共通費が発生した場合の按分計算についても、合理的な基準(人件費・面積・使用時間など)を事前に決めて一貫して適用することが原則です。
小谷野税理士法人|NPO法人にも税務調査はある?収益事業と対応のポイントを解説(税務調査時の具体的な対応方法が確認できます)
日本公認会計士協会近畿会|NPO法人の税務Q&A(改訂版)PDF(収益事業の判定事例・消費税・認定NPO制度など網羅的に確認できます)