簡易課税制度の個人事業主向け届出と節税のポイント

簡易課税制度の個人事業主向け届出と節税のポイント

簡易課税制度の個人事業主向け届出と手続きの完全ガイド

届出を一度出すだけで、翌年以降もずっと簡易課税が自動で続きます。


この記事の3つのポイント
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届出は「前年12月31日」が絶対期限

個人事業主が翌年から簡易課税を使うには、前年末までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署へ提出する必要があります。1日でも過ぎると、その年は適用できません。

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選んだら2年間は変更できない

簡易課税を一度選択すると、原則として2年間は一般課税に戻せません。設備投資や赤字が見込まれる場合は、選択前に十分なシミュレーションが必要です。

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2割特例は2026年分で終了、3割特例へ移行

インボイス開始時の負担軽減として使えた「2割特例」は2026年分が最終。個人事業主は2027・2028年分について「3割特例」への移行が予定されており、今から届出の準備が必要です。


簡易課税制度とは?個人事業主が知るべき基本の仕組み


簡易課税制度は、消費税の計算を大幅に簡略化するために設けられた制度です。通常の消費税計算(一般課税・本則課税)では、売上にかかる消費税から仕入れ経費に支払った消費税を差し引いて納税額を出します。この作業は、取引ごとに10%と軽減税率8%を区分しながら記録しなければならず、個人事業主にとっては相当な手間になります。


簡易課税制度では、こうした細かい集計作業が不要です。「売上にかかった消費税額 × 業種ごとのみなし仕入率」で仕入税額控除を計算するため、実際の仕入れ消費税をいちいち記録しなくて済みます。つまり手間が大幅に減ります。


ただし、誰でも使えるわけではありません。適用できる事業者は「基準期間(個人は前々年)の課税売上高が5,000万円以下」であること、そして事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していることが条件です。この2つが条件です。


みなし仕入率は事業区分ごとに以下のとおり定められています。


| 事業区分 | 業種例 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業 | 90% |
| 第2種 | 小売業、農林漁業(飲食料品) | 80% |
| 第3種 | 製造業、建設業 | 70% |
| 第4種 | その他(飲食店など) | 60% |
| 第5種 | 金融業・保険業・サービス業・運輸通信業 | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% |


金融に関わる事業(金融業・保険業など)は第5種でみなし仕入率50%です。これは「売上消費税の半分が控除される」ということ。仕入れや経費が少ない金融系の個人事業主にとっては、一般課税よりも有利になるケースがあります。


🔗 国税庁|No.6505 簡易課税制度(みなし仕入率の公式一覧はこちら)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm


簡易課税制度の個人事業主向け届出の書き方と提出方法

届出書の正式名称は「消費税簡易課税制度選択届出書」といいます。国税庁のホームページからPDFで無料ダウンロードできます。記入項目は主に8つ程度で、難易度はそれほど高くありません。


記入する主な内容は次のとおりです。


- 提出日・提出先:届出書を税務署へ持ち込む日と、所轄の税務署名
- 届出者の情報:住所・氏名(個人事業主は法人番号不要)
- 適用開始課税期間:いつから簡易課税を使いたいかの開始日
- 基準期間:適用開始年の2年前の期間
- 課税売上高:基準期間の売上金額(税抜)
- 事業内容と区分:業種とみなし仕入率に対応する事業区分番号
- 提出要件の確認:該当しない条件にチェック(「いいえ」を選ぶ)


提出方法は書面とe-Taxの2種類です。書面の場合、税務署の窓口に持参するか郵送します。郵送は「消印の日」が提出日とみなされます。なお申請書類は「信書」に分類されるため、宅配便での送付は不可で、郵便局や書留・レターパックを使う必要があります。


e-Taxを使う場合は、マイナンバーカードや利用者識別番号が事前に必要です。個人事業主は「e-Taxソフト(WEB版)」のマイページから手続きを完了できます。わざわざ税務署に行かなくてよいのは便利ですね。


🔗 国税庁|消費税簡易課税制度選択届出手続(書類ダウンロードと手続き詳細)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_13.htm


簡易課税制度の届出の提出期限と出し忘れた場合の対処法

個人事業主が翌年から簡易課税を適用したい場合、届出書の提出期限は前年12月31日です。たとえば2026年1月1日から適用したいなら、2025年12月31日までに提出しなければなりません。この期限は土日・祝日が重なっても延長されないため注意が必要です。


出し忘れてしまった場合はどうなるか。原則として、その年(当該課税期間)からは適用できず、翌年以降の適用となってしまいます。これは大きな損失になりえます。


ただし、出し忘れに対応する方法が1つあります。「課税期間の短縮制度」を活用する方法です。個人事業主がその年の3月31日までに課税期間を「3ヶ月ごと」に短縮する届出を出すことで、7月1日開始の3ヶ月課税期間から簡易課税を適用できるケースがあります。ただし、これは専門的な判断が必要です。


また、「災害その他やむを得ない事情」がある場合は特例が適用され、期限後でも届出が認められることがあります。単純な提出忘れは対象外ですが、地震や水害、相続直後など真に特別な事情がある場合は、税務署への相談で認められることがあります。これは例外的な対応です。


もう一つ重要な点として、一度届出を出すと毎年提出し直す必要はありません。自動的に翌年以降も継続して簡易課税が適用されます。つまり一度出せばずっと有効です。やめたいときは別途「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を、やめたい年の前年12月31日までに提出する必要があります。


🔗 マネーフォワード クラウド|簡易課税制度選択届出書の書き方と出し忘れ対処法(具体的な対応例が詳しい)
https://biz.moneyforward.com/tax_return/basic/64302/


簡易課税制度の選択で損をするケース|2年縛りと設備投資の落とし穴

簡易課税制度は便利な一方で、選択後は原則2年間は一般課税に戻せないというルールがあります。これが「2年縛り」と呼ばれる制約です。2年縛りが原則です。


2年縛りの期間中に以下のような状況が発生すると、消費税の負担が増えてしまうことがあります。


- 大規模な設備投資をした年:100万円以上の機材・PCなどを購入すると、実際に支払った消費税が大きくなる。一般課税なら還付・控除が大きいが、簡易課税ではみなし仕入率しか引けない。


- 赤字になった年:収入が激減した場合でも、売上に応じてみなし計算するため納税額がゼロにならない。一般課税なら「支払い消費税 > 受取消費税」で還付が受けられる。


また、「調整対象固定資産」(税抜100万円以上の事業用資産)を取得したケースでは、さらに厳しい「3年縛り」が発生する場合があります。一定の条件下では3年間、簡易課税制度への変更や免税事業者への戻りが制限されます。


たとえば年間売上500万円のフリーランスが、事務所設備として税抜150万円(消費税15万円)の機器を購入したとします。一般課税なら15万円が丸々控除できますが、みなし仕入率50%の簡易課税では売上消費税の50%しか引けないため、実質的に差が出てきます。これは痛いですね。


🔗 国税庁|課税事業者選択の取りやめと簡易課税制度選択の制限(2年縛りのルールと例外の公式解説)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/22/11.htm


2割特例終了後の個人事業主向け届出の戦略|3割特例と簡易課税の選択

インボイス制度の開始(2023年10月)に伴い、免税事業者から課税事業者になった個人事業主向けに「2割特例」が設けられていました。売上にかかる消費税額の2割だけ納めればよい、という大きな負担軽減です。この特例は2026年分(個人事業主)をもって終了する予定でした。


ところが、令和8年度税制改正により状況が変わっています。個人事業主に限っては「3割特例」という新たな経過措置として、2027年・2028年の2年間の延長が予定されています。売上消費税額の3割を納めればよいという仕組みで、負担は2割特例よりやや増えますが、通常の計算より軽くなります。


法人はこの延長がなく、令和8年9月末で2割特例が終了します。個人事業主とは扱いが異なります。


3割特例を使う場合、事前の届出は不要で確定申告書への付記だけで申請できます。ただし、3割特例から簡易課税へ移行したい場合には、「翌課税期間の確定申告期限」までに届出を出せば移行できる救済措置が設けられています(税制改正に基づく措置のため、最終的な成立内容は国税庁の公表資料でご確認ください)。


🔗 インボイスの2割特例が終了!3割特例と税理士の説明ポイントを解説(最新情報まとめ)
https://fm-suishinkyogikai.jp/media/20077/


2割特例・3割特例・簡易課税・一般課税のどれが有利かは業種と売上によって異なります。業種ごとのみなし仕入率と自分の実際の経費構造を照らし合わせて、事前にシミュレーションをすることが最も重要です。


| 制度 | 納税の目安 | 事前届出 | メモ |
|---|---|---|---|
| 2割特例(終了) | 売上消費税の2割 | 不要 | 2026年分まで(個人) |
| 3割特例(予定) | 売上消費税の3割 | 不要 | 2027〜2028年分(個人のみ) |
| 簡易課税 | 売上消費税×(1-みなし仕入率) | 前年末まで必要 | 業種によって変わる |
| 一般(本則)課税 | 売上消費税-仕入消費税 | 不要 | 設備投資時に還付あり |


税負担が2倍以上に増える可能性があるのが特例終了後のリスクです。「まだ先の話」と思わずに、今から届出の要否を確認しておくと安心です。確認が条件です。


🔗 国税庁|2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm




令和6年度改正対応 インボイス制度の仕入税額控除