個別法と銘柄別簡便法の違いを徹底解説

個別法と銘柄別簡便法の違いを徹底解説

個別法と銘柄別簡便法の違いと選び方を完全解説

簡便法を選ぶと、毎年数万円単位で控除額が少なくなっている法人が実在します。


📋 この記事の3つのポイント
🔢
個別法と銘柄別簡便法は毎期選択できる

継続適用の縛りはなく、事業年度ごとに有利な計算方法を自由に選ぶことができます。同じ会社でも年によって有利な方法が変わるため、毎期の比較計算が節税の鍵です。

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期中に株式を取得したかどうかで有利・不利が逆転する

期中取得がある場合は個別法が有利になりやすく、期中に株式を売却(減少)した場合は両方ともほぼ同額か簡便法有利になるケースが多いです。

⚠️
連結・グループ通算では選択のルールが異なる

グループ通算制度では、元本の区分ごとにグループ全体で統一した方法を選ばなければなりません。一部の法人だけ別の方法を適用することは認められていません。


個別法と銘柄別簡便法の基本的な違いとは何か


法人が受け取る配当金や株式の分配金には、受取時点で20.315%の源泉所得税が差し引かれます。この源泉所得税は、法人税の計算において「所得税額控除」として法人税額から差し引くことができる仕組みになっています。


ただし、全額が控除できるわけではありません。控除できるのは「元本を所有していた期間に対応する部分」に限られます。そのため、何らかの方法で期間按分(あんぶん)の計算が必要になります。


この按分計算の方法が2種類あり、それが「個別法」と「銘柄別簡便法」です。


個別法は、元本の銘柄ごと・所有期間の月数ごとに1件1件計算する「原則的な方法」です。実際の取得日から配当計算期間終了日(基準日)までの月数を正確に把握して計算します。月数は端数を切り上げる点も特徴のひとつです。


計算式は次のとおりです。


方法 計算式(概要)
個別法(原則) 源泉所得税 × 所有期間の月数 ÷ 配当計算期間の月数
銘柄別簡便法(計算期間1年以下) 源泉所得税 × {A+(B-A)×1/2}÷ B
銘柄別簡便法(計算期間1年超) 源泉所得税 × {A+(B-A)×1/12}÷ B


(A=計算期間の開始時に所有していた元本数、B=計算期間の終了時に所有していた元本数)


銘柄別簡便法は、期中に取得した株式をすべて「期央(計算期間の真ん中)で取得した」と仮定して計算します。実際の取得日は関係なく、開始時(A)と終了時(B)の2時点だけを参照する方法です。


計算が大幅にシンプルになります。


これが大きな差です。


国税庁タックスアンサー No.5760「所得税額控除」 ─ 原則的な方法・簡便法の両方の計算式と対象となる元本の区分が公式に示されています


個別法の計算方法と所有期間月数の数え方

個別法では「実際の取得日から配当の基準日までの月数」が計算の核心になります。月数は暦に従って計算し、1月に満たない端数は1月に切り上げる規定があります(法人税法施行令第140条の2第6項)。


例えば5月10日に株式を取得した場合、1月1日〜12月31日を計算期間とする配当であれば、所有期間は5月10日から12月31日なので8ヶ月(端数切り上げ)となります。


具体例で確認しましょう。


項目 内容
銘柄 A社株式
1月1日時点の保有株数 6,000株
5月10日に追加取得 3,000株
12月31日時点の保有株数(B) 9,000株
配当計算期間 1月1日〜12月31日(12ヶ月)
源泉所得税額 18,000円


この場合の個別法の計算は次のようになります。


- 6,000株(期首から所有):18,000円 × 6,000/9,000 × 12/12 = 12,000円
- 3,000株(5月10日取得、所有期間8ヶ月):18,000円 × 3,000/9,000 × 8/12 ≒ 1,338円
- 合計:13,338円


一方、銘柄別簡便法の場合は「全員が期央(7月1日頃)で取得した」とみなすため、追加取得した3,000株も期央取得として処理されます。計算が単純になるぶん、控除額は個別法と異なる金額になります。


個別法が原則です。


実務家のための法人税塾「所得税額控除額の計算方法」 ─ 個別法の具体的なケース別計算例(期中増加・減少・増減混在)が詳細に解説されています


銘柄別簡便法の計算方法と「期央取得の仮定」の意味

銘柄別簡便法の最大の特徴は「実際の取得日を無視する」点にあります。期中に新たに株式を取得した場合、いつ取得したかにかかわらず、すべて「計算期間の真ん中(期央)で取得した」と仮定して計算します。


これは計算を簡便にするための制度的な仮定です。


計算式中の「(B-A)×1/2」という部分がその仮定を表しています。期央とは計算期間の1/2の時点ですから、新たに取得した分については半期分(1/2)の所有しか認めない、という扱いになります。


ここで注意点があります。簡便法では、期中の取得が期首(A)の保有数に達するまでの分については、「全期間保有していた」ものとして全額控除が認められます。期首保有数(A)を超えた追加取得分にのみ、1/2(または1/12)の按分が適用される仕組みです。


計算期間が1年を超える配当の場合は1/2ではなく1/12を使います。


これは意外な点ですね。


また、B(期末の株数)がA(期首の株数)以下の場合、つまり期中に株を売却して期末の保有数が減っているケースでは、比率が「1.000(全部)」に固定されます。


つまり源泉所得税の全額が控除の対象になります。


銘柄別簡便法ならではの有利ポイントです。


個別法と銘柄別簡便法のどちらが有利かの判定方法

どちらが有利かは、状況によって変わります。


まず覚えておきたい原則が1つあります。「期中に株式を取得(増加)した場合は個別法が有利になりやすい」という傾向です。なぜなら、実際の取得日が期央より前であれば、個別法のほうが所有期間が長く算定されるからです。逆に期央より後ろの取得(下半期に取得)であれば、簡便法のほうが期央で取得とみなしてくれるため所有期間が長くなり有利になる場合があります。


状況 有利な方法 理由
期中に株を取得(上半期) 個別法✅ 実際の取得日が期央より前なので所有期間が長い
期中に株を取得(下半期) 簡便法✅ 期央より後の取得でも期央扱いになり有利
期中に株を売却(減少) どちらも同額 両方とも全額控除になる(B≦Aの場合)
期首から一切増減なし どちらも同額 A=Bの場合は計算結果が一致


これは使えそうです。


ただし実際には、1つの法人が複数の銘柄を保有している場合、銘柄によって個別法が有利だったり簡便法が有利だったりするケースが混在します。選択は「元本の区分ごと(株式・集団投資信託の受益権など)」で統一しなければならないため、すべての銘柄をまとめて比較した上でどちらが有利か判断する必要があります。個々の銘柄ごとに別々の方法を混用することはできません。


個別法と銘柄別簡便法は毎期選択が可能という重要ポイント

多くの経理担当者が見落としがちなのが「継続適用は要件とされていない」という点です。法人税法施行令第140条の2第3項に基づき、個別法と銘柄別簡便法の選択は事業年度ごとに変更することができます。


これは節税上、非常に重要な仕組みです。


たとえば今期は多くの株式を上半期に取得したから個別法を選択、来期は下半期に取得した銘柄が多いから簡便法を選択、という柔軟な対応が認められています。毎期ごとに試算して有利な方を選ぶことが法律上許されているわけです。


実務では、決算前に以下のステップで判定することが一般的です。


- 📌 各銘柄の取得日・取得株数・売却日・売却株数を整理する
- 📌 個別法・銘柄別簡便法それぞれの控除額を試算する
- 📌 元本の区分(株式グループ・集団投資信託グループ)別に合計して比較する
- 📌 有利な方の計算欄を別表6(1)に記載する


別表6(1)には個別法・簡便法それぞれの計算欄が用意されているので、両方試算した上で有利な欄を使う形になります。


継続適用不要が条件です。


マネーフォワードクラウド「法人税申告書の別表6(1)とは?」 ─ 個別法・簡便法の計算式と別表6(1)の記載方法が公認会計士監修でわかりやすく解説されています


個別法と銘柄別簡便法の対象となる元本の種類と区分

所得税額控除の計算で按分が必要な元本の種類には限りがあります。すべての収入に按分が必要なわけではなく、預貯金の利子など一部は全額控除が認められているため区別が重要です。


按分計算が必要な元本(配当等)は主に次のものです。


- 📋 法人から受ける剰余金の配当・利益の配当・剰余金の分配
- 📋 集団投資信託(株式投資信託、ETFなど)の収益の分配
- 📋 国外投資信託の配当等・国外株式等の配当等
- 📋 一定の短期公社債以外の割引債の償還差益


銘柄別簡便法を使う場合、これらの元本をさらに次の区分に分けて計算します。


①株式および出資(特定公社債等運用投資信託の受益権・社債的受益権を除く)
②集団投資信託(合同運用信託・公社債投資信託・公社債等運用投資信託を除く)の受益権


さらに各区分を「計算期間が1年以下のもの」と「1年を超えるもの」に分け、合計で最大4区分を処理することになります。個別法を選択する場合は、銘柄ごとに1件1件の計算になるため、銘柄数が多い法人では作業量が大きくなる点を理解しておく必要があります。


区分の整理が前提です。


期中に株式を売却した場合の個別法と銘柄別簡便法の扱いの違い

期中売却のケースは、両方法を理解するうえで非常に重要です。


個別法では、期中に売却した株式については「配当の基準日時点で保有していない」ため、そもそも配当を受け取っていません。


配当がなければ源泉所得税もゼロです。


つまり売却分については控除計算の対象外となります。一方で、期首から保有し続けて基準日まで保有していた残りの株式については、全期間(12ヶ月)所有していたとして全額控除が認められます。


銘柄別簡便法では、期末の保有株数B(基準日時点)が期首の保有株数Aを下回る場合、計算式中の按分率が「1.000(全部)」に固定されます。


つまり源泉所得税の全額が控除されます。


これが「B≦Aの場合の全額控除」のルールです。


結論は同じです。


ただし厳密には、個別法では後入先出法的な発想で売却株を特定するなど、やや複雑な考え方が必要になるケースもあります。期中に増加・減少の両方があった場合(例:上半期に取得し下半期に売却)では、個別法と銘柄別簡便法で計算結果が異なることがあるため注意が必要です。


連結納税・グループ通算制度での個別法と銘柄別簡便法の選択ルール

連結納税制度(現在はグループ通算制度)では、個別法と銘柄別簡便法の選択に特別なルールが適用されます。これを知らずに申告すると後で修正が必要になる場合があります。


単体申告では「元本の区分ごとに統一」すれば足りますが、グループ通算制度では「グループ全体で統一」することが求められます。同一区分に属する元本を複数のグループ法人が保有している場合、一部の法人だけ個別法、残りの法人は銘柄別簡便法、という適用は認められません。


これは法令上明確に定められており、国税庁法人税基本通達(旧・連結納税関連通達19−2−13)でも確認できます。


厳しいところですね。


実務では、グループ内で計算方法の選択を一元管理する担当部署を定め、全社分をまとめて比較検討した上で選択することが重要です。また、銘柄別簡便法を適用する場合は、同一区分に属するすべての元本についてグループ全体のデータを集約して銘柄ごとに計算する必要があります。これはグループ法人数が多いほど作業が複雑になります。


国税庁「連結法人税額から控除する所得税額の計算」 ─ 連結グループでの銘柄別簡便法の適用範囲とルールについて公式の解説が記載されています


個別法と銘柄別簡便法の計算を間違えた場合のリスク

所得税額控除は、正しく計算・申告しないと過大控除(取り過ぎ)または過少控除(損)のどちらかが発生します。


過大控除の場合、税務調査で指摘されると修正申告延滞税過少申告加算税の対象になります。具体的には、過少申告加算税は通常10%(調査前の自主修正であれば0%)、延滞税は最大年14.6%(令和7年現在は原則7.3%か特例基準割合+1%のいずれか低い方)です。控除計算を誤ったまま長期間放置すると、追加税負担が相当な金額になるリスクがあります。


痛いですね。


逆に過少控除(本来控除できる金額より少なく申告した)の場合、法人が損をしているだけで加算税は発生しませんが、申告期限後に修正するためには更正の請求が必要です。更正の請求は申告期限から原則5年以内であれば可能ですが、気づかないまま期限を過ぎると取り戻せなくなる点に注意が必要です。


申告前に両方法を試算する習慣をつけておくことが、最も確実なリスク回避になります。決算の準備段階で「今期はどちらが有利か」を必ずチェックすることをお勧めします。


別表6(1)の記載と個別法・銘柄別簡便法の実務的な書き方

別表6(1)は「所得税額の控除に関する明細書」という正式名称で、法人税の確定申告書に添付する書類です。源泉所得税の控除を受けるためには、この別表を正確に作成・添付しなければなりません。


個別法を選択した場合は、元本の銘柄ごとに行を作り、①収入金額、②源泉所得税額、③所有期間の月数、④配当計算期間の月数、⑤控除所得税額を記載します。


銘柄別簡便法を選択した場合は、「所有元本割合」の欄に計算した割合(例:0.834)を記載し、それを源泉所得税に掛けた金額を控除額として記載します。なお、B≦A(期末保有≦期首保有)の場合は「1.000」と記載する点が実務上のポイントです。


記載欄の確認が必須です。


国税庁が公表している別表6(1)の記載要領(パンフレット)には、銘柄別簡便法と個別法それぞれの記載例が図示されており、初めて作成する際の参考として非常に役立ちます。


国税庁「別表6(1)所得税額の控除に関する明細書 記載要領」PDF ─ 銘柄別簡便法・個別法それぞれの実際の記載例が図付きで確認できます


個別法と銘柄別簡便法の選択が有利・不利を左右する実例比較

実際の数字で比較してみましょう。


A社は3月決算法人で、B社株式を次のように保有しています。


- 🔢 4月1日(期首)時点の保有株数(A):500株
- 🔢 令和3年6月15日に追加取得:200株
- 🔢 3月31日(期末)時点の保有株数(B):700株
- 🔢 配当計算期間:4月1日〜3月31日(12ヶ月、1年以下)
- 🔢 源泉所得税額:4,594円


個別法では、期中取得200株の所有期間は6月15日〜3月31日=10ヶ月(端数切り上げ)となります。


- 500株(全期間保有):4,594円 × 500/700 × 12/12 ≒ 3,281円
- 200株(10ヶ月保有):4,594円 × 200/700 × 10/12 ≒ 1,094円
- 合計:約4,375円(※実際の算式では小数点処理あり)


銘柄別簡便法では。
4,594円 × {500+(700-500)×1/2}÷700 = 4,594円 × 600/700 ≒ 3,938円


個別法(約4,375円)>銘柄別簡便法(約3,938円)となり、個別法が有利です。


これが原則です。


実は銘柄別簡便法が有利になるのは「実際の取得日が期央より遅い(下半期の取得)」ケースです。例えば11月に株を取得した場合、実際の所有期間は約5ヶ月ですが、銘柄別簡便法では「期央(10月頃)取得」と仮定されるため、約6ヶ月分として計算されます。この差が数千円〜数万円の控除額の違いを生みます。


個別法と銘柄別簡便法の選択で生まれる意外な盲点:公社債の扱い

あまり語られない視点として、「公社債と割引債における個別法の独自ルール」があります。


株式の配当金については個別法・銘柄別簡便法の選択が広く活用されていますが、割引債の償還差益については取り扱いが異なります。割引債を償還前に第三者に譲渡した場合、「所得税を差し引いて払い込んだ者(取得者)」が控除を受けるのではなく、「実際に償還を受ける者」が所得税額控除を受ける点に注意が必要です。


また、公社債の利子については銘柄別簡便法の適用対象が限られており、一般的な国債・社債の利子は全額控除が認められているため、按分計算(個別法・銘柄別簡便法)の選択が不要なケースがほとんどです。


意外ですね。


これを知らずに公社債の利子まで按分計算しようとする誤りが実務では見受けられます。対象外のものに誤って按分を適用すると、本来控除できる金額が減ってしまう可能性があるため注意が必要です。元本の種類と按分の要否を最初に確認する習慣が重要です。


個別法と銘柄別簡便法の選択をスムーズにする実務フロー

最後に、実務での選択判断を効率化するためのフローを整理します。


ステップ 作業内容 チェックポイント
① 元本の分類 保有する有価証券を「按分必要」「全額控除」に振り分ける 株式・投資信託は按分必要
② 増減の確認 各銘柄の期首・期末・期中取得日・売却日を一覧化する 増減がなければ結果は同じ
③ 双方試算 個別法・銘柄別簡便法それぞれの合計控除額を算出する 区分ごとの合算で比較
④ 選択・記載 有利な方を選択し別表6(1)に記載する 区分混用は不可


特に保有銘柄が多い法人では、Excelなどで管理シートを作成し毎期流用できる形にしておくと作業効率が大幅に上がります。また、税務会計ソフト弥生会計マネーフォワードクラウド、TKCなど)の一部では、有価証券マスターを登録することで個別法・銘柄別簡便法の比較計算を自動化できる機能が備わっています。


これは使えそうです。


継続的に確認することで、毎年数千円〜場合によっては数万円単位の節税効果が積み重なります。別表6(1)の記載は見逃されがちですが、確実に取り組む価値のある申告作業のひとつです。選択の余地がある以上、毎期ごとに比較する手間を惜しまないことが最大のポイントです。


節税ビズ「法人税申告書別表6(1)所得税額の控除に関する明細書の区分と記載方法」 ─ 銘柄別簡便法での「所有元本割合1.000」の記載方法など実務的な記載の細部が解説されています




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