連結納税制度廃止でグループ通算制度へ移行する全手順

連結納税制度廃止でグループ通算制度へ移行する全手順

連結納税制度廃止とグループ通算制度への移行を完全理解する

書面申告のまま放置すると、無申告加算税が課される可能性があります。


📋 この記事の3つのポイント
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連結納税制度は2022年3月に完全廃止

令和2年度税制改正により、2002年から約20年続いた連結納税制度が廃止。2022年4月1日以後の事業年度からグループ通算制度へ自動移行となった。

⚠️
全グループ法人に電子申告が義務化

グループ通算制度では親法人・子法人すべてに電子申告が義務付けられ、書面申告は無効とみなされ無申告加算税の対象になる。

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損益通算の節税メリットは維持されるが落とし穴も

グループ内の損益通算による節税効果は継続する一方、親法人の繰越欠損金が子法人の所得と相殺できなくなるなど、連結納税制度時代との差異に注意が必要。


連結納税制度廃止の背景:20年間の課題と令和2年度税制改正

連結納税制度は2002年(平成14年)に導入された制度で、企業グループをひとつの法人とみなして法人税を申告・納付する仕組みでした。親会社がグループ全体の所得を集約し、連結ベースで損益通算を行うことで節税を図れるというメリットがあった一方、長年にわたって実務上の問題が積み重なっていました。


制度の最大の欠陥として指摘されていたのが、「事務負担の重さ」です。グループ内のある子法人で申告ミスや税務調査による修正が発生した場合、グループ全体の申告書を作り直す必要がありました。たとえば100社のグループ企業を持つ親会社が、そのうちの1社の計上ミスを理由に全社分の申告を再計算しなければならない状況は、実務担当者にとって深刻な負担でした。


もうひとつの問題点が「開始・加入時の時価評価と欠損金の切捨て」です。連結納税制度に新たに子法人を加える際、原則として子法人資産の時価評価が必要となり、繰越欠損金が切り捨てられるケースがありました。これが制度適用の大きな障壁となっていた事実があります。


こうした背景を受け、令和2年度(2020年度)税制改正において抜本的な見直しが行われ、連結納税制度を廃止してグループ通算制度を創設することが決まりました。施行は2022年4月1日以後開始の事業年度からです。つまり、連結納税制度は2022年3月をもって約20年の歴史に幕を下ろしたことになります。


有価証券報告書の開示データによると、グループ通算制度への移行後も制度の適用割合はほぼ横ばいで推移しており、2024年3月期時点で調査対象2,503社のうち538社(約21.5%)が制度を適用しています。約2割という数字は、多くの企業グループが制度を積極的に活用している実態を示しており、その動向は金融・財務に関わる方にとって無視できません。


参考リンク(連結納税制度廃止の経緯と改正内容について、国税庁の詳細解説)。
国税庁「連結納税制度はグループ通算制度へ移行します」(PDF)


連結納税制度とグループ通算制度の違い:申告方式と損益通算の変化

連結納税制度とグループ通算制度を比較したとき、最も重要な違いは「申告方式」です。連結納税制度では親法人がグループ全体をひとつの法人として一括申告していましたが、グループ通算制度では各法人がそれぞれ個別に申告・納税を行います。ただし、その中でグループ間の損益通算は引き続き実施できます。個別申告方式が基本です。


この変更による最大のメリットは「遮断方式」の導入です。グループ内のある法人で税務調査の修正事由が発生しても、原則としてその法人のみが修正申告を行えばよく、他のグループ法人の申告書を作り直す必要がなくなりました。これは実務担当者にとって大きな負担軽減と言えます。


両制度の主な相違点を整理すると、以下のようになります。


































項目 連結納税制度(廃止) グループ通算制度(現行)
申告・納付 親法人が一括して申告・納付 各法人が個別に申告・納付
修正対応 グループ全体で再計算が必要 原則として当該法人のみで完結
親法人の繰越欠損金 子法人の所得との相殺が可能 親法人自身の所得のみで控除(特定欠損金扱い)
中小法人判定 親法人の資本金額で判定 グループ内に1社でも資本金1億円超の法人があれば全社が大法人扱い
電子申告 書面申告も認められていた 全法人に電子申告が義務化


損益通算の仕組みそのものは継続しているため、グループ内に赤字法人と黒字法人が混在する場合、その損益を相殺して全体の法人税負担を軽減できる点は変わりません。たとえば親会社が年間5,000万円の黒字、子会社が年間3,000万円の赤字だとすれば、通算後の課税所得は2,000万円となり、子会社の赤字分だけ税負担が減る計算になります。これが制度の核心的なメリットです。


参考リンク(グループ通算制度の概要と連結納税制度との違いをわかりやすく解説)。
freee「グループ通算制度とは?連結納税制度との違いなどを図解」


連結納税制度廃止による繰越欠損金への影響:見落としやすいSRLYルール

連結納税制度からグループ通算制度への移行において、特に注意が必要な変更点のひとつが「親法人の繰越欠損金の扱い」です。ここを理解せずに新制度へ移行すると、想定していた節税効果が消えてしまう危険性があります。


連結納税制度では、親法人が制度開始前から保有していた繰越欠損金は「非特定連結欠損金」として扱われ、グループ全体の所得から控除することができました。平たく言えば、親法人が過去に積み上げてきた赤字を、子法人が稼いだ黒字と相殺して税金を減らせる仕組みがあったわけです。


しかしグループ通算制度では、この仕組みが廃止されました。親法人の開始前繰越欠損金にもSRLYルール(Separate Return Limitation Year:個別申告制限年度)が適用されるようになり、親法人自身の所得の範囲でしか繰越欠損金を使えなくなっています。子法人の所得との相殺はできません。


SRLYルールが原則です。たとえば親法人に10億円の繰越欠損金があっても、親法人自身のその年の課税所得が2億円であれば、使えるのは最大でも2億円(所得の50%を上限とする大法人の場合は1億円)にとどまります。子法人グループ全体の黒字から控除することはできないのです。


この変更は、「親法人に多額の繰越欠損金を持ちながら連結納税を使っていたグループ」にとって実質的な増税に相当します。制度移行前に親法人の欠損金活用戦略を見直しておくことが重要な対応策となります。


ただし経過措置として、連結納税制度を適用していた既存グループの親法人の非特定欠損金については、グループ通算制度への移行後も非特定欠損金として引き続き通算が可能とされています。この経過措置があるかどうかで、税負担が大きく変わることもあるため、移行前の確認が必須です。


参考リンク(繰越欠損金の取り扱いとSRLYルールについて専門的に解説)。
税理士法人山田&パートナーズ「連結納税制度の見直し」


連結納税制度廃止後の電子申告義務化:書面申告は無効になる

グループ通算制度への移行にともなって新たに設けられた重大なルールが「電子申告の義務化」です。連結納税制度では書面による法人税申告も認められていましたが、グループ通算制度では親法人・子法人を問わず、グループに属するすべての法人がe-Tax(電子申告)によって申告を行わなければなりません。


これは見落とされがちな変更点です。書面で法人税申告書を提出した場合、その申告書はそもそも「無効」とみなされます。無効ということは、申告をしていないのと同じ扱いです。その結果、無申告加算税(通常は納付すべき税額の15%、50万円超の部分は20%)が課せられる可能性があります。


電子申告に対応するためには、以下のような準備が必要となります。



  • 💻 e-Taxの利用環境(電子証明書、ソフトウェア等)の整備

  • 📝 グループ通算制度の適用開始日から1ヶ月以内に「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を管轄税務署へ提出

  • 🏢 親法人・子法人の全法人が対象(すでに提出済みの法人は再提出不要)

  • 🔗 親法人の電子署名によって子法人の申告・申請・届出を代行提出することも可能


特に注意が必要なのは、これまでe-Taxを利用したことがない子法人の扱いです。中小規模の子法人がグループに含まれている場合、電子申告システムの導入や担当者のスキル習得に時間がかかることがあります。対応が遅れて申告期限を迎えないよう、早期に体制を整えることが重要です。


また、グループ通算制度では確定申告の提出期限は原則として各事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内と定められています。期限延長の特例を適用すると全法人一律で2ヶ月延長されますが、その場合もグループ全法人の申告書が電子申告でなければなりません。


参考リンク(グループ通算制度の電子申告義務化と手続き方法について詳細な国税庁のQ&A)。
国税庁「連結法人が通算制度へ移行する場合におけるe-Taxによる申告の特例の取扱い」


連結納税制度廃止で中小法人が受ける意外なデメリット:資本金1億円の落とし穴

グループ通算制度への移行によって、実は中小規模の子法人が不利な状況に置かれる可能性があります。これはあまり広く知られていない落とし穴のひとつです。


問題となるのは「中小法人の判定方法」の変更です。連結納税制度では、中小法人かどうかは親法人の資本金額のみで判定されていました。しかしグループ通算制度では、グループ内の法人に1社でも資本金が1億円を超える「大法人」が存在すると、グループ内の全法人が中小法人には該当しないと判定されてしまいます。


これにより、中小法人だった子法人が以下の優遇措置を受けられなくなるケースがあります。



  • 📉 法人税の軽減税率(年800万円以下の所得に対する15%の軽減税率)

  • 📋 欠損金の繰越控除制度の特例(控除限度額の拡大)

  • 💸 交際費等の損金算入の特例(年間800万円の損金算入枠がグループ全体で800万円に圧縮)

  • 🏦 貸倒引当金の適用

  • 🔄 欠損金の繰戻還付


具体的なイメージで考えてみましょう。たとえば資本金5,000万円の中小子法人Aと、資本金2億円の子法人Bが同じグループに属しているとします。グループ通算制度を適用すると、子法人Bが「大法人」に該当するため、実質的に中小法人である子法人Aも軽減税率などの恩恵を受けられなくなります。軽減税率の差(15%と23.2%)は約8.2ポイントで、年800万円の所得に適用すれば約65万6,000円の差が生まれる計算です。


痛いですね。この点を見落として安易にグループ通算制度を導入すると、むしろ増税となるリスクがあります。制度の導入判断をする際には、グループ内の全法人の資本金規模と現在享受している優遇措置を事前に棚卸しすることが必要です。


なお、単体納税制度を継続したままグループ法人税制の適用を受けることも選択肢のひとつです。制度適用の有無は任意であるため、自社グループの状況に応じた最適な選択が求められます。


参考リンク(グループ通算制度の中小法人特例への影響とデメリットの整理)。
OBC「いよいよ施行!グループ通算制度 連結納税制度とどう違う?経理担当者が押さえるポイント」