

年収901万円を超えると配偶者控除が38万円から一気に13万円まで下がり、税金が数万円単位で増えます。
配偶者控除とは、一定の要件を満たす配偶者がいる場合に、納税者本人の所得から一定額を差し引くことができる「所得控除」の一種です。所得が減ることで課税対象額が下がり、結果として所得税・住民税の両方が安くなる仕組みです。
控除される金額は、納税者本人の合計所得金額によって次のように変わります。
| 納税者本人の合計所得金額 | 一般配偶者(70歳未満) | 老人控除対象配偶者(70歳以上) |
|---|---|---|
| 900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
| 900万円超〜950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
| 950万円超〜1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
| 1,000万円超 | 対象外 | 対象外 |
所得税率が20%の方(課税所得330万円超〜695万円以下)が38万円の控除を受けると、所得税だけで 38万円 × 20% = 7万6,000円 の節税になります。さらに住民税の控除額33万円にも10%の税率が乗るため、住民税でも 3万3,000円 減ります。合計すると年間で約11万円近い節税効果です。これは「知っているだけで得をする」制度です。
つまり配偶者控除は、申告すれば確実に家計の税負担を減らせる制度です。
参考:国税庁が公式に定めた控除額の詳細はこちら。
国税庁 No.1191 配偶者控除(控除額と要件の公式情報)
配偶者控除を受けるためには、4つの要件をすべて満たす必要があります。これが条件です。
- 民法上の配偶者であること(婚姻届が受理されていること。内縁関係や事実婚は対象外)
- 納税者と生計を一にしていること(同一の財布で生活を共にしている状態)
- 配偶者の年間合計所得金額が58万円以下であること(2025年分から。給与収入のみの場合は年収123万円以下)
- 青色申告者の事業専従者として給与を受け取っていないこと(または白色申告者の事業専従者でないこと)
特に注意したいのが3つ目の要件です。2025年(令和7年)の税制改正により、配偶者の合計所得金額の上限が「48万円(給与収入103万円)」から「58万円(給与収入123万円)」に引き上げられました。これは大きな変更点です。
意外ですね。「103万円の壁」を意識して働き方を制限してきた方も多いはずですが、2025年分からは123万円まで引き上げられているため、今まで通りの考え方では逆に損をする可能性があります。
また4つ目の要件も見落とされがちです。自営業者や個人事業主が配偶者を「青色申告専従者」として雇用している場合、その配偶者には配偶者控除を適用できません。青色専従者として給与を経費計上するか、配偶者控除を受けるか、どちらか一方しか選べないのがルールです。どちらが有利かは給与額と税率によって変わるため、慎重な比較が必要です。
参考:配偶者の所得の上限がいくらまでかを詳しく解説している国税庁の公式ページ。
国税庁 No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか
配偶者の年収が123万円を超えても、即座に控除ゼロになるわけではありません。そこで登場するのが「配偶者特別控除」です。配偶者特別控除は、配偶者の年収(給与収入)が123万円超〜201万6,000円未満の場合に、段階的に控除を受けられる制度です。
2025年改正後の配偶者特別控除のポイントを整理すると、以下の通りです。
- 配偶者の年収が160万円以下かつ本人所得が900万円以下 → 満額38万円の控除(2024年分までは150万円以下が満額ライン)
- 配偶者の年収が160万円超〜201万6,000円未満 → 段階的に控除額が減少
- 配偶者の年収が201万6,000円以上 → 控除ゼロ
これは使えそうです。
「150万円の壁」という言葉を覚えている方も、2025年分からは「160万円の壁」へと引き上げられていることを把握しておく必要があります。年収160万円以内に抑えれば満額38万円の控除が受けられるという意味で、働き方の選択に直結する情報です。
以下に、2025年分(令和7年分)の控除額の目安をまとめます。
| 配偶者の年収(給与のみ) | 控除額(本人所得900万円以下の場合) |
|---|---|
| 123万円以下 | 38万円(配偶者控除) |
| 123万円超〜160万円以下 | 38万円(配偶者特別控除・満額) |
| 160万円超〜167万円以下 | 36万円 |
| 167万円超〜175万円以下 | 31万円 |
| 175万円超〜183万円以下 | 26万円 |
| 183万円超〜190万円以下 | 21万円 |
| 190万円超〜197万円以下 | 16万円 |
| 197万円超〜201万6,000円未満 | 3万円〜11万円(段階的) |
| 201万6,000円以上 | 0円 |
これが基本です。配偶者の年収が201万6,000円を超えるまでは、何らかの控除が残ります。「100円でも超えたら一切ゼロになる」という思い込みは、機会損失につながる誤解です。
参考:三菱UFJ銀行による配偶者控除・配偶者特別控除の早見表付き解説。
三菱UFJ銀行 配偶者控除・配偶者特別控除とは?違いや年収の壁をわかりやすく解説
「年収の壁」は複数存在しており、それぞれが別の制度に基づいています。混同すると損をします。現在(2025年分〜)の主要な壁を整理すると次のようになります。
- 🏦 123万円の壁(税金):配偶者の年収がこれを超えると配偶者控除から外れ、配偶者特別控除の対象になる(旧:103万円)
- 💼 106万円の壁(社会保険):従業員数51人以上の企業に勤める場合、週20時間以上・月8万8,000円以上の報酬で厚生年金・健康保険への加入義務が発生
- 🏥 130万円の壁(社会保険):これを超えると配偶者の扶養から外れ、自分で社会保険料を負担することになる
- 📊 160万円の壁(税金):配偶者特別控除の満額(38万円)を受けられる年収の上限(旧:150万円)
- 📉 201万円の壁(税金):これを超えると配偶者特別控除もゼロになる
注意すべき点は、配偶者控除(税金)と社会保険の扶養(130万円)はまったく別の制度だということです。配偶者控除は「納税者の税負担を減らす制度」、社会保険の扶養は「被扶養者が保険料を自己負担しなくて済む制度」です。この2つは連動しておらず、個別に判断する必要があります。
2025年の改正で103万円→123万円に引き上げられたのは「税金」の話。社会保険の130万円の壁は変わっていません。130万円が条件です。
130万円を少し超えてしまうと、年間数十万円規模の社会保険料が新たに発生する可能性があるため、年収が壁のライン近辺にある場合は世帯全体の手取りで試算してから判断することが重要です。控除の有無だけを見ていると、肝心の手取りが減るケースがあるためです。
生命保険文化センター:配偶者の収入と「配偶者控除」などとの関係(わかりやすい図解あり)
配偶者控除は、申告しなければ自動的には適用されません。申告が必要です。
会社員の場合は「年末調整」で申告します。毎年10〜11月ごろに勤務先から配布される「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書」に必要事項を記入して提出します。記入が必要な情報は、本人の所得見積額と配偶者の合計所得見積額の2つです。
個人事業主・フリーランスの方は「確定申告」で対応します。確定申告書第一表の「配偶者(特別)控除」欄に控除額を記入し、第二表に配偶者の氏名・生年月日・マイナンバーを記載します。
🔔 申告を忘れていた場合はどうするか?
年末調整で申告を忘れた場合は、翌年の確定申告期間(翌年2月16日〜3月15日)に申告できます。過去分については「還付申告」という方法があり、過去5年分まで遡って申請が可能です。
たとえば配偶者控除38万円を3年間申告し忘れていた場合(所得税率10%として)、取り戻せる金額の試算は以下の通りです。
$$38万円 \times 10\% \times 3年 = 11万4,000円$$
加えて住民税分(33万円×10%=3万3,000円)も含めると、3年間で約17万円以上が戻る可能性があります。これは痛いですね。
まず自分が過去に申告していたかどうかを確認する方法として、源泉徴収票の「配偶者控除の額」欄をチェックする方法があります。「0円」や空白になっているなら、申告されていない可能性があります。
なお、還付申告は税務署への来署だけでなく、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からe-Taxを使ってオンラインで提出することもできます。時間のない方でも対応しやすくなっています。
国税庁:過去の確定申告(還付申告)は何年まで遡れるか(公式Q&A)
多くの解説記事は「配偶者の年収がいくら以下なら控除を受けられるか」に焦点を当てます。しかし金融リテラシーを持つ方なら、「世帯全体の手取り」で考えることが重要です。これが原則です。
たとえば配偶者の年収が130万円を1万円超えた場合を考えてみましょう。配偶者控除の損失は約3万8,000円(所得税率10%の場合)ですが、社会保険の扶養を外れることで国民健康保険料や国民年金保険料が新たに発生します。国民健康保険料は住む自治体によって異なりますが、年収130〜140万円の場合で年間10〜20万円規模になることも珍しくありません。
この構図をまとめると次のようになります。
| 影響の種類 | 概算の変化額(例) |
|---|---|
| 配偶者控除の喪失(所得税) | 約3万8,000〜7万6,000円の増税 |
| 住民税での控除喪失 | 約3万3,000円の増税 |
| 社会保険料の自己負担 | 年間10〜25万円規模の新規負担 |
つまり年収の壁は「税金の控除が減るかどうか」だけの問題ではありません。社会保険料の自己負担増を含めて「世帯の実質手取り」を試算しなければ、正しい判断はできません。
このような計算をする際に役立つのが、ライフプラン全体を考えたマネーシミュレーションです。最近ではiDeCoや積立NISAと組み合わせて「税控除+資産形成」を両立させるシナリオを作ることが、金融に関心のある世帯の間で広まっています。まずは年収の壁ごとの世帯手取りを比較するシミュレーションツールで試算してみると、直感的に把握できます。
また、配偶者が育児休業中の場合も注意が必要です。育児休業給付金は非課税所得のため合計所得に含まれません。育休中に一時的に収入が減った結果として配偶者控除の要件を満たす場合には、申告することで節税になるケースがあります。厚生年金に加入している配偶者が育休中に収入ゼロに近くなった年は、積極的に確認する価値があります。これは使えそうです。
夫婦どちらか一方のみが控除を申請できる点も押さえておきましょう。夫と妻が互いに相手の配偶者控除を申請することは制度上認められておらず、どちらかの側でのみ適用されます。所得の高い方が申告するほど節税効果が大きいため、世帯の収入バランスを見て判断することが賢明です。