

青色申告を提出済みでも、紙で出すと65万円控除が受けられず損しています。
会社員として働いていた頃は、税金は給与から自動的に引かれるので、実感が薄いものでした。しかし、フリーランスになると自分で税金の種類と金額を把握し、自ら申告・納付しなければなりません。これが「フリーランスの税金はやばい」と言われる最大の理由のひとつです。
フリーランスに課される税金は、大きく以下の5種類があります。
- 所得税:1年間の事業所得に対してかかる国税。課税所得が195万円以下なら税率5%ですが、330万〜695万円で20%、900万円超では33%と、累進課税で上がっていきます。
- 住民税:前年の所得をもとに翌年に課税される地方税。所得割(税率約10%)+均等割(年約5,000円)の合算です。
- 消費税:2年前の課税売上高が1,000万円を超えた場合に納税義務が発生します。インボイス制度への登録により、売上が1,000万円以下でも課税事業者になった方も多いです。
- 個人事業税:法定70業種に該当する事業を営む個人が都道府県に納める地方税。290万円の事業主控除があるため、所得290万円以下なら課税なしです。
- 固定資産税・自動車税など:事務所や車両を保有する場合に発生します。
つまり最大5種類が重なって課税されます。
フリーランスが「手取りが思ったより少ない」と感じる原因のひとつが、この複数課税の重なりです。なかでも注意が必要なのは「住民税」で、確定申告した翌年の6月に突然、年4回払いで請求が届きます。前年に50万円の所得があれば、翌年に約5万円の住民税がまとめて通知される計算になります。初年度に備えていないと、資金繰りが苦しくなることがあります。
参考:フリーランスにかかる税金の種類・税率・計算方法が詳しく解説されています。
フリーランスの税金がやばい?課せられる税金の種類や節税方法を解説|小谷野税理士法人
前年の所得税が15万円以上になると、翌年7月と11月に「予定納税」として税金を前払いするよう求められます。これが意外に知られていないポイントです。
予定納税の仕組みはシンプルで、前年の確定申告での所得税額(予定納税基準額)が15万円以上であれば、その3分の1ずつを2回に分けて先払いします。つまり前年の所得税が30万円だった場合、7月と11月にそれぞれ10万円、合計20万円を先払いすることになります。東京ドームで言えば「入場前にチケット代を2回に分けて払う」イメージです。
痛いですね。
なぜこれが問題になるかというと、フリーランス1〜2年目の方は「前年が繁忙期で、今年は仕事が減っている」ということがよくあるからです。前年の高収入に基づいて予定納税が発生しているのに、今年の収入は落ちている、という状況では、資金ショートのリスクがあります。
ただし、この予定納税には「減額申請」という制度があります。その年の7月15日(第1期)または11月15日(第2期)までに所轄の税務署へ申請すれば、当年の実情に合わせた減額が認められる場合があります。収入が落ち込みそうな年は、この減額申請を忘れずに確認することが大切です。
対策として、会計ソフト(freee会計やマネーフォワードクラウドなど)で前年の税額を確認し、予定納税が発生しそうな金額かどうか早めに把握しておくのがよいでしょう。予測を立てるだけなら無料プランで十分対応できます。
参考:予定納税の仕組み・対象者・減額申請の手順が官公庁情報として確認できます。
節税の王道として知られるのが「青色申告特別控除」です。最大65万円の控除が所得から引かれるため、課税所得がその分だけ減り、所得税・住民税のどちらにも節税効果が波及します。所得税率20%のゾーンにいる方であれば、65万円×20%=13万円、住民税でさらに65万円×10%=6.5万円、合計約19万円以上の減税になる計算です。
これは使えそうです。
ただし、65万円控除には「e-Taxで電子申告すること」または「優良な電子帳簿を保存すること」という要件があります。紙で申告(書面提出)した場合は最大でも55万円控除にとどまります。10万円の差は小さく見えますが、所得税率20%なら2万円の差、住民税10%なら1万円の差になります。合計3万円もの損失です。
65万円控除が条件です。
青色申告特別控除を受けるためには、まず「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。開業時に届出を出している場合は問題ありませんが、フリーランス活動を始めてから何年も経って初めて知る方も多いです。翌年から青色申告に切り替えたい場合は、その年の3月15日までに申請書を提出することが必要です。
また、青色申告は複式簿記による記帳が求められます。「複式簿記なんて難しそう」と感じる方も多いですが、freee会計やマネーフォワードクラウド確定申告などの会計ソフトを使えば、取引を入力するだけで自動的に複式帳簿が作成されます。手書きや表計算ソフトで管理している方は、切り替えを検討する価値があります。
参考:青色申告特別控除の65万円・55万円・10万円の違いと適用要件が詳しく掲載されています。
青色申告の次に活用したい節税手段が、「小規模企業共済」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の組み合わせです。どちらも掛金が全額所得控除の対象になるため、節税効果が非常に高い制度です。
小規模企業共済は、個人事業主やフリーランス向けの「退職金制度」にあたるもので、月々1,000円〜7万円の範囲で掛金を設定できます。仮に月額7万円をフルに掛けると、年間84万円が所得控除の対象になります。課税所得が500万円のフリーランスの場合、所得税率20%として計算すると、84万円×20%=約16.8万円の所得税削減が期待できます。
iDeCoは月額最大6.8万円(国民年金基金との合算上限)を掛けることができ、こちらも全額が所得控除になります。小規模企業共済とiDeCoの両方をフル活用した場合、最大で年間約33万円の節税効果が見込める試算もあります。
つまり所得控除の二重活用が可能です。
注意点として、小規模企業共済もiDeCoも、原則として60歳まで(iDeCoの場合)や廃業・解約時(小規模企業共済)まで資金が拘束されます。月々の掛金の払い込みが事業キャッシュフローを圧迫しないか確認してから加入するのが原則です。余剰資金がないのに掛金を増やすと、逆に資金繰りに困る場面が出てきます。
掛金の設定は月単位で変更できるため、まずは少額から始めて、確定申告後に節税効果を実感しながら増やしていく方法が現実的です。
参考:小規模企業共済とiDeCoの控除の仕組みや併用した場合の節税シミュレーションが確認できます。
「収入が少ないから申告しなくていいだろう」「副業程度だから大丈夫」と思いがちなフリーランスの方も少なくありません。しかし、無申告のまま放置することは非常にリスクが高く、税務調査が入った場合の代償は大きくなります。
フリーランス(個人事業主を含む)への税務調査確率は0.5〜1%程度とされています。確率だけ見ると低く感じられますが、調査が入った場合の追徴課税の平均額は、所得税・消費税・加算税を合算すると1件あたり約430万円前後という試算もあります(税理士事務所の複数の公表データより)。これはコンパクトカー1台分以上の出費です。
厳しいところですね。
特に怖いのが「無申告加算税」と「延滞税」の二重負担です。税務調査を受けてから申告した場合の無申告加算税は納付税額の15%(50万円超の部分は20%)、さらに延滞税が最大年率14.6%加算されます。5年間無申告のまま調査が入ると、本来の税額に加えてそれらが累積するため、総額が本税の2〜3倍になることもあります。
一方、税務調査が入る前に自主的に「期限後申告」をした場合、無申告加算税は5%に大幅軽減されます。気づいたら早めに自主申告することが大切です。
税務調査を受けやすいフリーランスの特徴として、売上が毎年ちょうど消費税課税ラインの1,000万円を下回り続けている・前年比で売上が急増している・経費計上が不自然に多いなどが挙げられます。心当たりがある場合は、記帳・申告の内容を今一度見直しておくことをおすすめします。
税務に不安を感じたときは、確定申告の時期だけスポット契約で税理士に依頼することも選択肢のひとつです。費用は数万円程度のケースも多く、追徴課税リスクを考えると費用対効果は十分あります。
参考:フリーランスの税務調査の確率・疑われる特徴・自主申告のメリットについて詳しく解説されています。
フリーランスも税務調査される!疑われる5つの特徴と対策方法|H&T税理士法人
意外と知られていないのが、フリーランスの中には「個人事業税がかからない業種」が存在するという点です。多くのフリーランスが「確定申告書を出したら個人事業税もかかってくるはずだ」と思い込んでいますが、実際にはそうではないケースがあります。
個人事業税は法定70業種に該当する事業者に課される地方税です。税率は3〜5%で、290万円の事業主控除があります。つまり所得が290万円以下であれば、業種を問わず個人事業税は課税されません。
ただし、個人事業税の法定業種に含まれない業種もあります。具体的には次のような職種が非課税とされるケースが多いです。
- プログラマー・エンジニアなどのITエンジニア系(請負契約ではなく準委任契約の場合)
- ライター・ブロガー・テキストコンテンツ制作
- 作家・脚本家・漫画家・イラストレーター(絵を描く業務)
- 通訳・翻訳家
- 農業・林業従事者
これは大きいですね。
例えばWebエンジニアとして年収500万円を稼いでいるフリーランスが、「請負業」ではなく「準委任契約」で業務を行っている場合、個人事業税(税率5%)が非課税になる可能性があります。500万円から290万円の控除を引いた210万円に対して5%をかけると約10.5万円です。これが丸ごと節税できるかどうかは業種・契約形態の判断によります。
ただし、同じエンジニアでも「請負業」として契約している場合は法定業種に該当し課税対象となります。自分の契約形態がどちらに当たるかは、都道府県税事務所または税理士に確認することをおすすめします。自己判断で非課税と思い込んでいると、後から追徴されるリスクがあります。
業種を正しく把握するだけで数万円単位の差が生まれる可能性があるため、確定申告書の職業欄に何を記載しているかを改めて確認しておくことが重要です。
参考:個人事業税がかからない業種の一覧と具体的な職業別の判断基準が詳しく解説されています。
個人事業税のかからない業種とは?ケースや職業別に解説|小谷野税理士法人