

年収600万円の人が社会保険料控除を使うと、約27万円もの節税効果があります。
社会保険料控除とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に実際に支払った社会保険料の全額を、課税所得から差し引ける所得控除の制度です。所得税や住民税は「課税所得」に対してかかる仕組みなので、控除が大きいほど税負担が軽くなります。
つまり、支払った保険料が丸ごとマイナスになるということです。
日本の所得税は「超過累進課税」を採用しているため、年収が高い人ほど適用される税率も高くなります。課税所得を減らすことで、所得税率そのものが下がるケースもある点がポイントです。住民税は一律10%なので、社会保険料控除の分だけそのまま住民税の負担が減ります。
たとえば年収600万円の人が約90万円の社会保険料を支払っているとすると、所得税(税率20%)で18万円、住民税(10%)で9万円、合計約27万円の節税効果が生まれます。社会保険料の控除は上限がなく、支払った全額が対象です。これが原則です。
社会保険料控除は、所得控除の中でも数少ない「上限なし・全額控除」の強力な制度です。ただし、「支払った事実があること」が大前提です。未払いの保険料は控除できません。
参考:国税庁の公式情報(社会保険料控除の対象・要件)
No.1130 社会保険料控除|国税庁
対象となる社会保険料の種類は、想像以上に幅広いです。以下の表で整理します。
| 保険料の種類 | 対象者の目安 | 控除証明書の要否 |
|---|---|---|
| 国民年金保険料 | 自営業・フリーランス・20歳以上の学生など | ✅ 必要(日本年金機構から送付) |
| 厚生年金保険料 | 会社員・公務員 | ❌ 不要(源泉徴収票に記載) |
| 国民健康保険料 | 自営業・退職後に国保加入の人 | ❌ 不要(自治体の納付書で確認) |
| 介護保険料 | 40歳以上 | ❌ 不要 |
| 雇用保険料(労働保険料) | 会社員 | ❌ 不要(給与明細で確認) |
| 国民年金基金の掛金 | 自営業・フリーランス | ✅ 必要(国民年金基金連合会から送付) |
| 後期高齢者医療保険料 | 75歳以上 | ❌ 不要 |
生命保険料や医療保険(民間の保険)は、社会保険料控除ではなく「生命保険料控除」の対象です。混同しないよう注意です。生命保険料控除には上限(最大12万円)がありますが、社会保険料控除に上限はありません。この差は大きいです。
国民健康保険料については、控除証明書の添付は不要です。ただし、自治体から届く「国民健康保険料納付額のお知らせ」や領収書は必ず保管しておきましょう。紛失した場合は市区町村の窓口で再確認できます。
また、労災保険料は通常会社が全額負担するため、一般の会社員は社会保険料控除の対象外です。雇用保険料(給与から天引きされる分)は控除の対象になります。対象と対象外を明確に把握しておくのが条件です。
参考:マネーフォワードによる対象保険料の詳細解説
社会保険料控除とは?対象となる保険料や確定申告で控除を受ける方法|マネーフォワード クラウド
確定申告で社会保険料控除を申請する手順は、大きく3ステップです。
e-Taxを使う場合は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に沿って入力するだけです。スマートフォンとマイナンバーカードがあれば自宅から申告まで完結します。マイナポータルと連携すれば、国民年金保険料の控除証明書を電子データで自動取得することも可能です。これは使えそうです。
紙で提出する場合、国民年金保険料と国民年金基金の掛金については控除証明書の原本を申告書に添付または提示する必要があります。e-Tax申告の場合は添付不要ですが、5年間の自己保管が義務付けられています。
参考:e-Taxでの社会保険料控除の入力方法(国税庁)
作成コーナーで「社会保険料控除」を入力したい|e-Tax
「会社が年末調整してくれるから、自分は何もしなくていい」と思っている人は要注意です。
会社が把握できない社会保険料は、年末調整に自動反映されません。申告しなければ控除はゼロのままです。
具体的に確定申告が必要になる代表的なケースは以下のとおりです。
転職経験者は特に注意が必要です。退職期間中の国民健康保険料が年間で数十万円になるケースも珍しくなく、これを申告せずに放置すると大きな損失につながります。転職した年の確定申告は必ず確認することをおすすめします。
参考:転職時の確定申告と社会保険料控除の関係(All About)
社会保険料控除書き忘れに転職者は注意|All About
制度の基本を押さえたうえで、知っているだけで得できる活用方法を2つ紹介します。いずれも合法的な節税策であり、特別な手続きも複雑ではありません。
① 子の国民年金保険料を親が払って親の控除を増やす
20歳になった学生の子どもは、収入がなくても国民年金への加入義務が生じます。令和7年度(2025年度)の国民年金保険料は月額17,510円。年間では約21万円です。
この保険料を親が代わりに払うと、子ではなく「支払った親」が社会保険料控除を受けられます。子が「学生納付特例制度」を使って猶予を受けた場合は将来の受給額が減るリスクもあります。親が払えば子の年金記録も維持されたうえで、親の課税所得が約21万円分も下がります。
親の所得税率が20%なら、約21万円 × 30%(所得税20%+住民税10%)= 約6.3万円の節税効果です。年間6万円以上の節税は大きいです。
年末調整や確定申告で、子どもの分の「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を親が添付して申告するだけで手続き完了します。
② 国民年金保険料の2年前納で割引+節税効果を二重取り
国民年金保険料は2年分をまとめて前払いできる「2年前納制度」があります。2年分を一括口座振替で払うと、2年間で約1万5,690円(令和7年度時点)の割引が受けられます。新幹線の自由席1〜2区間分ほどのお得感です。
さらに節税面では、前払いした2年分の保険料をその支払った年に全額まとめて社会保険料控除として申告できます。その年の所得が高かった場合、高い税率に対して大きな控除をかけられるため、節税効果が増幅されます。
所得税率が高い年(副業収入があった年、不動産売却をした年など)に合わせて2年前納を実行することで、節税の最大化が図れます。逆に各年分に分割して控除することも選択できます。国税庁のQAに明記されているルールです。
参考:2年前納された国民年金保険料の社会保険料控除(国税庁)
2年前納された国民年金保険料の社会保険料控除について|国税庁