

妻の年収が年間850万円を超えると、夫が国家公務員でも遺族年金を一切受け取れません。
国家公務員共済の年金は、2015年(平成27年)10月に大きな転換点を迎えました。それ以前は「共済年金」という独自の制度で運営されていましたが、被用者年金制度の一元化によって、民間企業の会社員と同じ「厚生年金」に統合されています。つまり、今の国家公務員は厚生年金の被保険者として保険料を納め、将来的には厚生年金を受け取る仕組みです。
ただし、2015年9月30日以前の共済加入期間については、旧制度の取り扱いが経過措置として残っています。これが遺族給付を複雑にしている最大の理由です。
| 加入期間 | 遺族が受け取れる給付 | 窓口 |
|---|---|---|
| 2015年10月以降(厚生年金期間) | 遺族厚生年金 | KKR(国家公務員共済組合連合会) |
| 2015年9月以前(旧共済期間) | 遺族共済年金(経過的職域加算額) | KKR(国家公務員共済組合連合会) |
| 公務による死亡(2015年10月以降) | 公務遺族年金(年金払い退職給付) | KKR(国家公務員共済組合連合会) |
一元化前に国家公務員として働いていた人が亡くなった場合、遺族は「遺族厚生年金」と「遺族共済年金(経過的職域加算額)」の両方を請求できる可能性があります。これは民間の会社員にはない給付です。
この手続きはKKR(国家公務員共済組合連合会)への請求ひとつで一括処理されるため、うっかり片方だけ申請して終わりにしている遺族も少なくないとされています。つまり知識が給付漏れを防ぎます。
参考:国家公務員共済組合連合会(KKR)の遺族厚生年金・年金制度一元化の概要ページ
KKR|遺族厚生年金(一元化後)の制度ページ
国家公務員共済の組合員やその退職者が亡くなった場合、生計を維持されていた遺族に「遺族厚生年金」が支給されます。ただし、「誰でも受け取れる」わけではなく、いくつかの条件をクリアする必要があります。
まず、受給要件として以下のいずれかに該当することが必要です。
次に、受給できる遺族の範囲と優先順位が重要です。順位は「①配偶者・子 → ②父母 → ③孫 → ④祖父母」の順で、上位の遺族がいる場合は下位の遺族には支給されません。
また、「生計を維持していた」という条件が厳密に定められています。生計を共にしていて、かつ、恒常的な年収が850万円未満(所得額が655万5千円未満)であることが必須です。これが意外と見落とされがちな落とし穴です。
遺族厚生年金の金額は、原則として故人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3の額です。在職中に亡くなった場合など、加入期間が300月(25年)未満のときは、300月とみなして計算する保障措置があります。たとえば故人の年金報酬比例部分が年額120万円なら、遺族厚生年金は年額90万円(月額7万5,000円程度)が目安になります。
65歳以上で自分自身の老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある配偶者の場合は、次の2つのうち高い方が支給されます。
自分の年金が多ければ多いほど、合算ルールが適用されやすく有利になる可能性があります。これは使えそうです。
参考:KKRの遺族共済年金(一元化前)の受給要件と年金額の公式説明
KKR|遺族共済年金(一元化前)の制度ページ
会社員との違いで最も見落とされやすいのが、「遺族共済年金(経過的職域加算額)」という給付です。民間の会社員には存在しない上乗せ給付で、2015年9月以前の共済加入期間がある国家公務員の遺族だけが受け取れます。
これはもともと共済年金の「職域部分(3階部分)」と呼ばれていた給付で、一元化後も経過措置として残されたものです。遺族厚生年金の請求手続きと同時に請求できるため、その存在自体を知らないまま手続きを終えてしまうケースが後を絶ちません。
金額は、原則として退職共済年金(経過的職域加算額)または障害共済年金(経過的職域加算額)の4分の3(75%)に相当する額です。ただし、この75%という乗率には期限があります。
| 給付事由発生日(死亡日) | 遺族への支給割合 |
|---|---|
| 〜2025年9月30日 | 4分の3(75%) |
| 2025年10月1日〜2026年9月30日 | 29/30(約96.7%×元の比率) |
| 2034年10月1日以降 | 2分の1(50%)まで段階的に縮小 |
2026年現在、経過的職域加算額の支給割合は段階的に縮小が始まっています。これは年々遺族が受け取れる額が減っていくことを意味します。「経過措置だから関係ない」と思っている人も、2015年9月前に共済に加入していた親族がいるなら必ず確認が必要です。
参考:KKRの経過的職域加算額(遺族共済年金)の年金額と割合の詳細
KKR|遺族共済年金(経過的職域加算額)の制度ページ
国家公務員共済の年金受給者が亡くなった場合、遺族は10日以内にKKR(国家公務員共済組合連合会)へ連絡する必要があります。国民年金のみ加入者の14日以内とは異なり、厚生年金・共済年金は10日以内が原則です。この期限は意外と短いです。
届出が遅れると、亡くなった月の翌月以降も年金が故人の口座に振り込まれ続けることがあります。亡くなった月の翌月以降に振り込まれた分は「過払い年金」となり、相続人が返還する義務を負います。二重に経済的な負担が生じるため、早めの連絡が非常に重要です。
同時に、「未支給年金」の請求手続きも行います。未支給年金とは、亡くなった方がまだ受け取っていなかった月分の年金のことです。年金は後払い(偶数月に前々月・前月分が振り込まれる仕組み)のため、死亡月までの未受取分が必ず発生します。
主な必要書類は以下のとおりです。
未支給年金を受け取れる人の優先順位は「配偶者 → 子 → 父母 → 孫 → 祖父母 → 兄弟姉妹」の順です。生計を同じくしていた必要があります。
未支給年金の請求期限は原則5年の時効があります。急いで手続きしなくてもよいように思えますが、相続の処理と並行して行うことで書類の取り寄せが一度で済むため、できるだけ早い段階で一緒に手続きするのが効率的です。
参考:日本年金機構の死亡後の手続き・未支給年金の請求方法
日本年金機構|年金を受けている方が亡くなったとき
多くの遺族が勘違いしているのが、未支給年金の税務上の扱いです。結論は明確です。未支給年金は相続財産ではありません。
未支給年金は故人の財産として遺産分割の対象になると思われがちですが、法律上は「遺族固有の権利」として位置づけられています。国税庁の通達でも、遺族が受け取った未支給年金は「当該遺族の一時所得」に該当することが明確に定められています。
一時所得の計算式は「(受取額 − 必要経費 − 特別控除50万円)× 1/2」です。未支給年金の金額が50万円以下であれば、他の一時所得と合算しても50万円を超えない限り、確定申告は不要です。
ただし、遺族年金それ自体(亡くなった方の配偶者などに継続的に支給される年金)については、所得税も相続税も非課税です。未支給年金と遺族年金は「まったく別の扱い」になるため、混同しないことが重要です。
相続手続きと並行して、「未支給年金を誰が受け取ったか」「金額がいくらか」を記録しておくと、翌年の確定申告のときに慌てずに済みます。申告漏れを防ぐために、税理士や最寄りの税務署への相談も選択肢のひとつです。
参考:国税庁による未支給年金と相続税の課税関係に関する公式見解
国税庁|未支給の国民年金に係る相続税の課税関係
遺族厚生年金・遺族共済年金は「一生涯もらえる年金」と思っている人がほとんどです。しかし、受け取れなくなるケースがあります。
平成19年4月以降、夫が死亡した時点で妻が30歳未満かつ子がいない場合、遺族共済年金(または遺族厚生年金)の受給権は5年間が経過したところで消滅します。これは「有期給付」と呼ばれるルールで、ずっと受け取れると信じて生活設計をしていると、突然収入が途絶えるリスクがあります。
条件を整理するとこうなります。
さらに、2028年4月から施行予定の遺族厚生年金の改正では、20〜50代で子がいない配偶者の遺族厚生年金が、男女問わず一律5年間の有期給付に変更される予定です。これは現行制度と大きく異なります。
厳しいところですね。30代・40代でも子がいなければ、将来的に遺族年金が5年で打ち切られる可能性があるわけです。
こうしたリスクに備えるためには、遺族年金に頼らない生活保障の設計が求められます。遺族のための保障を確認したい場合は、収入保障保険や生命保険の見直しを検討する機会にもなります。死亡保障を含む保険を比較するサービス(保険見直し本舗、FP相談サービスなど)で、自分の世帯に合った保障額を無料でシミュレーションしてみることをおすすめします。
参考:厚生労働省による遺族厚生年金の見直し(2028年改正)の詳細
厚生労働省|遺族厚生年金の見直しについて