

副業収入がある人が必ずしも確定申告で得をしているとは限らず、この特例を知らないだけで年間数万円以上の税金を余分に払っているケースがあります。
家内労働者等の特例とは、自宅で内職や在宅ワークをしている人が確定申告をする際に、実際にかかった経費が少なくても、最低55万円(青色申告特別控除を適用しない場合)を必要経費として認めてもらえる制度です。正式には「家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例」と呼ばれ、所得税法施行令第96条に定められています。
この特例が生まれた背景には、内職者の実態があります。内職は材料の購入費や光熱費などの経費が極めて少ないため、通常の必要経費計算では控除できる金額がほとんど残りません。そこで国が「最低でも55万円は経費として認める」というルールを設けたわけです。つまり収入が少ない在宅ワーカーを守る制度です。
適用対象となるのは、下請け業者や仲介業者からの依頼で作業を行う「家内労働者」「外交員」「集金人」「電力量計の検針人」、およびこれらに類する仕事をしている人です。近年ではクラウドソーシングを使ったライター業やデータ入力なども、条件を満たせば対象となる場合があります。これは意外と知られていません。
給与収入がある場合は特に注意が必要です。給与所得控除と合算したうえで最大55万円が認められますが、給与所得控除がすでに55万円を超えている場合は、この特例による上乗せ効果はゼロになります。給与との組み合わせには注意が必要です。
e-taxでこの特例を申告する場合、「所得の内訳書(確定申告書付表)」に必要事項を記入し、「家内労働者等の特例」の欄に金額を入力することで適用されます。e-taxの画面上では「その他の特例」から選択するケースが多いため、見落とさないよう注意してください。
参考:国税庁「家内労働者等の必要経費の特例」
国税庁タックスアンサー No.1810 家内労働者等の必要経費の特例
e-taxで家内労働者等の特例を申告する手順は、大きく分けて「事前準備」「申告書の作成」「送信・完了」の3ステップです。順を追って確認していきましょう。
まず事前に必要なものを揃えます。必要なのは①マイナンバーカードまたはID・パスワード方式の認証情報、②収入が確認できる支払調書または自分で作成した収支記録、③経費の領収書(少なくても記録として保管)、④給与収入がある場合は源泉徴収票、以上の4点です。これだけ用意すれば大丈夫です。
次に「確定申告書等作成コーナー」(国税庁のウェブサービス)にアクセスし、所得の種類として「事業所得」または「雑所得」を選択します。ここで注意が必要なのは、家内労働者等の特例は「事業所得」にも「雑所得」にも適用できるという点です。どちらの所得区分でもOKです。
収入金額と実際の経費を入力した後、「その他の項目」または「特例」の欄に進みます。e-taxの入力画面では「家内労働者等の必要経費の特例」という項目が表示されるので、そこに適用する金額(最大55万円、または55万円から給与所得控除額を引いた残額)を入力します。給与収入がない場合は55万円がそのまま上限です。
申告書が完成したら、マイナンバーカードを使ったICカードリーダーまたはスマートフォンのNFC機能で電子署名を行い、送信します。送信後は「受信通知」が届くので、必ず保存しておきましょう。確認は必須です。
申告が完了したら、還付金がある場合は通常1〜2ヶ月以内に指定口座に振り込まれます。初めてe-taxを使う場合は、2月中旬までに申告すると比較的スムーズに処理されることが多いです。早めの申告が得策です。
参考:国税庁「確定申告書等作成コーナー」
国税庁 確定申告書等作成コーナー(e-tax対応)
家内労働者等の特例で認められる必要経費の上限は55万円ですが、給与収入がある人はこの計算が少し複雑になります。ここが多くの人がつまずくポイントです。
計算の基本ルールは「55万円から給与所得控除額を差し引いた残額が、特例による経費の上限になる」というものです。たとえば給与収入が103万円の場合、給与所得控除は55万円(最低保証額)となるため、特例による上乗せはゼロになります。一方、給与収入がゼロの場合は55万円がそのまま使えます。
具体的な計算例で確認してみましょう。
| 給与収入 | 給与所得控除 | 特例で使える上限 | 節税効果(所得税率20%の場合) |
|---|---|---|---|
| 0円(給与なし) | 0円 | 55万円 | 最大11万円の節税 |
| 50万円 | 55万円(最低保証) | 0円 | 節税効果なし |
| 103万円 | 55万円 | 0円 | 節税効果なし |
| 200万円 | 80万円(200万円×40%) | 0円 | 節税効果なし |
この表を見ると、給与収入がある正社員や主婦・主夫の方が副業として内職をしている場合、すでに給与所得控除が55万円を超えているケースが多く、実質的にこの特例の恩恵を受けられない人も多いです。これは痛いですね。
特例が最も有効に機能するのは、給与収入がゼロか非常に少なく、主な収入が内職・在宅ワーク報酬のみという方です。専業で内職をしている方、扶養内でパート収入がほぼない方などが該当します。給与収入ゼロが条件です。
実際の経費が55万円より少なくても(たとえば実費が5万円しかなくても)、特例を使えば55万円として計算できるため、50万円分の余分な経費控除が得られます。所得税率10%であれば5万円の節税、20%なら10万円の節税になります。これは使えそうです。
家内労働者等の特例は、知っていても申告時に適用漏れが起きやすい制度のひとつです。実際にe-taxで申告する際にミスが多い箇所を具体的に整理します。
最も多いミスは「特例の入力欄を見つけられずに申告を完了してしまう」というものです。e-taxの入力フローは所得の種類ごとに画面が分かれており、事業所得や雑所得の入力を終えた後に「その他の控除・特例」へ進む必要があります。途中で「入力完了」と思ってしまうと、特例が未適用のまま送信されてしまいます。送信前の確認が必須です。
2つ目のミスは、所得区分の選択誤りです。内職収入を「給与所得」として入力してしまうと、家内労働者等の特例を適用できません。支払調書に「給与」と書かれていても、実態が請負・委託であれば「事業所得」または「雑所得」として申告するのが正しい処理です。判断に迷う場合は税務署やe-taxサポートデスクに確認しましょう。
3つ目は「実際の経費が55万円を超えるのに特例を使ってしまう」というケースです。この特例は経費が少ない人のための最低保証です。実際の経費の方が多い場合は、当然ながら実際の経費を計上した方が有利になります。実費計上のほうが得な場合もあります。
過去に特例を適用し忘れた場合、更正の請求(期限:申告期限から5年以内)を行うことで還付を受けられる可能性があります。申告済みでも諦めないでください。5年以内なら遡れます。
e-taxで更正の請求を行う場合も、確定申告書等作成コーナーから手続きが可能です。「更正の請求書」を選択し、修正内容を入力して送信するだけです。比較的簡単に手続きできます。
参考:国税庁「更正の請求」
国税庁 更正の請求(申告内容の訂正)の手続き案内
近年、クラウドソーシングを利用するフリーランスや副業ワーカーが増えていますが、この特例が「自分に使えるかどうか」を正確に判断できている人は多くありません。意外と知られていない現実です。
特例が使える典型的なケースは次のとおりです。
一方、特例が使えない・使いにくいケースもあります。
青色申告との関係は特に重要です。青色申告で65万円の特別控除を受ける場合、家内労働者等の特例と重複して適用することは原則できません。どちらが有利かを比較したうえで選択する必要があります。どちらかの選択が必要です。
実際の経費が5万円以下で、給与収入もない内職専業の方が最も恩恵を受けやすい特例と言えます。金融資産の運用や副業収入の多様化が進む中で、「この特例は自分には関係ない」と思い込んでいる在宅ワーカーが多いのが現実です。一度自分の収入状況と照らし合わせて確認してみる価値は十分あります。
e-taxを使えば申告作業そのものは30分〜1時間程度で完了します。手間と節税効果のバランスを考えると、対象者にとっては積極的に使うべき制度です。短時間で申告完了できます。
参考:国税庁「事業所得・雑所得の違いと申告方法」
国税庁タックスアンサー No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)